ナガレホトケドジョウを無事に釣り上げた翌日は、淡路島経由で本州に戻り、大阪に向かった。狙いは、ナガレカマツカだった。府内某河川にナガレカマツカらしき個体が多いとの情報を得たので、確認の意味もあった。

 

アクセスポイントからウェーディングして対岸まで行き、小さな用水の流れ込みを覗くと、小ぶりなカマツカ類が群れていた。

 

早速仕掛けの準備に取り掛かる。使ったのは、ひなた六尺の脈仕掛けで、ワカサギ用の1.5グラムの六面体オモリにハリス2.5センチの新半月を付けたもの。エサは家の近くの腐葉土の中から採ってきたミミズをハリの長さ分にカットして通し刺しにして使い、ハリ先は出しておいた。

 

群まで少し距離があるのと、流れが結構あるので、魚の口の前にエサを置くことは難しかったため、群の上流にオモリを置いて流れで徐々にエサが群の中を通過する形になった。

 

そうして聞きアワセを繰り返していると、タモロコアブラハヤ数尾ずつの後で、ついに掛かった、待望の一尾が!

 

暫定初ナガレカマツカ、6センチ強。左目を欠いていたので右側で撮影し左右反転した。

 

暫定初ナガレカマツカの別影(左右反転)

 

暫定初ナガレカマツカの頭部(左右反転)。ヒゲはカーブした状態でかろうじて眼の前縁を越えていた。

 

暫定初ナガレカマツカの吻の俯瞰(上)。筑後川水系のカマツカ(下)と比べて、口唇に密生した乳頭突起が上からでも見えるほどよく発達していた。

 

暫定初ナガレカマツカの胸びれ(上)。筑後川水系のカマツカ(下)に比べて棘状軟条(i)が明らかに短い(6:第6軟条)。

 

ナガレカマツカのハビタット

 

この後、さらに釣りを続けたが、群がいなくなっており、釣れないので納竿とした。

 

ヒゲが眼の前縁を越えること、口唇の乳頭突起が発達していること、胸びれの棘状軟条が短いことに加え、このポイントを含めた約2.2キロメートルのストレッチをウェーディングで歩いてみたが、ざっと見て12センチを超える個体は見られなかったことから、この流域の個体群はナガレカマツカと言って差し支えないと思うが、唯一釣れた個体については若干吻が長く、カマツカとの交雑個体の可能性もないわけではないので、暫定初物とし、いずれ再訪してもう少し大きな魚体サイズで、もっと条件を満たした個体を釣る予定だ。

 

ナガレカマツカを狙い始めたのは2020年の秋からで、新種として発表された論文に掲載された分布図、fishasiaの採集地位置情報、その他のネット情報などをもとに西は山口県から東は愛知県まで探し回った。ただし、愛知県は有力な河川があるにもかかわらず、の存在や天候に恵まれなかったりで、結局川に入ることはなかった。

 

スナゴカマツカとは違い、カマツカと同じ川で棲み分けまたは混棲していることが曲者で、ようやく見つけたと思ってなんとか釣り上げてみたらカマツカだったということが何度もあった

 

また、いるとされている川を下流からウェーディングで遡りながら探しても、一尾かせいぜい数尾見つかればいい方で、見つけても砂から飛び出た個体なので追いかけてもエサを喰ってはくれない。

 

ナガレカマツカである保証がない、棲息数が少ない、砂の中に隠れている場合が多い、砂の上にいても活性が高くないとエサを喰ってはくれない... これでは何年かけても釣れるわけがなかった。

 

逆に考えると、ナガレカマツカしかいない流域で、棲息数が多く、群でかたまっていて、しかも砂がないスポットならば自ずと釣れることになる。

 

そんな理想的なスポットについに到達することができ、暫定初物に繋がった。公開情報の提供者の方には感謝に堪えない。

今年は諦めていた秋の遠征だったが、四国某所内のナガレホトケドジョウのピンスポットの情報が得られたので、ちょっと無理してでも行ってみることにした。

 

離合困難な深い山の中の道を通ってポイントに到着。下を覗くと、昼なお暗き中、期待通り、源流がチョロチョロと流れていた。

 

支度を整え、降りて行き、流れを凝視するが、魚影はなし。そこで浮き石をどけて行くが、依然何も出なかった。

 

少し不安になりながら、ちょっと下流へ移動。

 

すると、落ち葉が積もった小さな水溜まりを発見。いかにもナガレホトケがいそうなポイントだった。

 

 

仕掛けの準備を始めた。四尺のたなごウキ仕掛けを竿につなぎ、ハリを秋田狐2号ハリス3センチに替えた。エサは家の近くの腐葉土の中から採ってきたミミズの、ハリのふところ分ほどの長さの小片を通し刺しにして使った。

 

まずは、奥の方の石の前のちょっと開けたスポットに入れてみた。ウキは使わず、脈釣りの要領で糸を張りながら、オモリから下をそっと底に置いた。

 

すると、左の落ち葉の下から、何かがクネクネと泳ぎながら姿を現した。ナガレホトケだ、やった!と思った。

 

シナイモツゴを釣った時の展開を思い出した。あの時はまさにホトケドジョウが出てきたと思ったものだった

 

だがその魚体サイズを見て、ハリを交換することにした。同じ秋田狐の1号に替え、エサもできるだけ小さくした。

 

同じスポットへ再投入。すると、今度は右の石の下から2尾が出てきた。

 

口を下に向け、頭を振ってエサを喰っている様子だった。頃合いをはかって上げてみたが、空振りだったり葉っぱに引っ掛かってバレたりで、そのうちどの個体も石の下に引っ込んでしまった。

 

仕方なく、手前の石の前のスポットにエサを投入。

 

すると、一尾が石の下から出てきて、やはり同じ仕草をしていたので、前よりも少し長く間を置いて上げると、ようやく掛かった!

 

魚は空中で激しく体をくねらせた瞬間、落ちた、幸い陸の砂利の上に。サンヨウコガタスジシマドジョウの時のことが頭に浮かんだ。

 

砂利の上でも意外と動きが俊敏で、放っといたら水に戻りそうな勢いだったのでちょっと手こずったが、無事に小網に確保した。やったー、ついにナガレホトケドジョウを釣った!

 

初めて釣ったナガレホトケドジョウ、約4.5センチ

 

初ナガレホトケドジョウの別影二様(下は左右反転)。眼から吻にかけての明瞭な一対の暗色のラインが特徴。

 

初ナガレホトケドジョウの俯瞰(左右反転)

 

初ナガレホトケドジョウの腹側(左右反転)。胸びれから腹びれにかけて一対の明色線が確かにあった。

 

初ナガレホトケドジョウの斜め正面

 

ナガレホトケドジョウのハビタット

 

初物をリリース後、本流の浅いプールのゴミの下などを探って二尾目を釣ろうとしたが、魚は複数出てきたものの、サイズアップは望めないと判断し、それ以上は釣らずに里に戻った。

 

ナガレホトケドジョウは日本固有種で、70年代にはすでにホトケドジョウとの違いが指摘され、地理的変異による一型として扱われ、その後1993年には和名が提唱されたものの、2018年までの長い間、新種として記載されなかった。 

 

ナガレホトケドジョウの中にも遺伝的変異が見られ、山陽集団、紀伊・四国集団、日本海集団、嶺北集団と名付けられたが、このうち嶺北集団が2024年に新種レイホクナガレホトケドジョウとなっている。

 

ナガレホトケドジョウを狙い始めたのは、2021年の秋の遠征時からで、1999年の調査結果に基づいて四国某所に赴いたが、さすがに情報が古すぎたようで、見つけられなかった。その後は、新しいピンポイント情報がなかなかないので後回しにしたり、大まかな位置情報に基づいて行ってみても魚が見つからなかったり、防獣フェンスや集落に阻まれたりした。2024年の春の遠征前にようやく岡山でのピンポイント情報が得られたのだが、今度は生成AIの凄まじい破壊力のせいで経済的に行けなくなってしまった。そんな中、非常に新しく、かつかなりの確率で無駄足にはならない情報に接することができたので、無理をしてでも遠征に踏み切り、今回の初物に繋がった。公開情報提供者の方には感謝に堪えない。

 

どういう所に行けば釣れるかがわかったので、機会があれば、今度は豹紋柄ではない本州のナガレホトケを釣ってみたいが、離合できない山道は恐怖でしかないので、歩きか自転車で行くことになるだろう。

大阪以西までプチ遠征に行ってきた。

 

秋の旅の最後の締めはやっぱりいつものポイントで、ということで、一年ぶりに訪れてみた。

 

一年前は何故か魚影が全くなかったので、今回もなければ絶えてしまったと諦めるつもりでいた。

 

が、覗いてみると、あちこちでヒラ打ちが見られ、魚影が元に戻っていることがわかって大いに安心した。

 

この日は初めから人目があったので、少し離れたスポットで釣ることにした。

 

 

七尺ウキ仕掛けにハリは秋田狐1号スレ、エサは自家製黄身練りを使った。

 

見えている群に投入すると、すぐに一尾目が上がった。小ぶりなヤリタナゴだった。

 

その後も時折群が遠かることはあったが、ほぼ入れ食いで釣れた。サイズはこの個体より一回り大きいのがマックスだった。

 

ヤリタナゴ、オス

 

50尾釣れたところで納竿とした。

 

リリース直前の40分の釣果。全てヤリで、今回もイチモンジは混じらなかった。

 

前回の五ヶ月ぶりのたなご釣りからさらに二ヶ月が空いた今回のたなご釣りだったが、普段はガソリン代を気にしてなかなか足を運ばないポイントで釣ることができた。今年は諦めていた秋の遠征を規模を縮小しながらもなんとか敢行した甲斐があった。