孤独という言葉の

絶対的な存在感


いくつもの吐息が

入り乱れる地下鉄


孤独な者の魂は

今日も見つけてもらえぬのに

孤独という言葉は

この街を歩く誰かの耳に

拾い上げられる

突然押しかけちゃ迷惑かい

「逢いたい」って言葉の前に


突然抱き寄せてもいいかな

「恋人」って言葉の前に


言葉にしなきゃ不安

言葉にしたらしたでどうせ

別の不安が待ってるんだろ


言葉という目印を

付けていなかったとしても

また同じ場所で出会えるような

二人になりたいんだ

かけがえのないものを得るために

いくつの代償を払わってきた?

唯一無二の存在になるために

どれだけのスタイルを真似してきた?


矛盾しながら

見失いながら思う

ただの一を得ることが

どうしてこんなに難しいのだろうと


うんざりするほどここにいて

果てしなく遠い存在

ありがちを積み重ねてできた

他のどこにもいない自分

見損ねた初夢

無意識の中でなすびや鷹と

出会えるのはいつだ


正月はいつもより空が気になる

透き通った朝に

気高く山がそびえてる


たどり着いた海で

さざなみの音を浴びて

いいことも悪いことも

水平線の彼方に


やり直しのきかない現実に

心だけは位置につきなおして

また仕切りなおし

テレビ越しの太陽だって

全身に染み込んでくる朝

妙に引き締まった気持ちも

こたつの中ですぐ緩む


意外な人からの年賀状が来た

親戚が挨拶に来た

ばたばたしているうちに

徐々に方向付けられていく気持ち


目標はないけど

訳のわからない希望が満ちてくる

365の昼と夜が

僕らの訪れを待っている


時を連れて

世界を連れて

再び旅は始まる

誰かに向けられたのではない願いを

この心臓の鼓動に乗せて

雪を巻き込んだ風が

窓を揺らして吹き抜ける時

私たちはその内側で

ゆったりと除夜の鐘を待っている


一瞬に燃え上がった激情や

胸につかえた出来事も

遠い昔の出来事のよう

記憶の淵に薄らいで


忘れ去りゆくこの年を

せめて私から出る言葉たちは

覚えてくれているだろうか

ぽつんと浮かんだ一言が

今年と来年を隔てる川に架かる


静かに降り積もる雪

除夜の鐘が響いた余韻の隙間に

そばをすする音が漏れ

君の言葉には

いつも注釈がついてくる

君の豊かに動く口元に

「ただし」って書いてある


君は君を人質に

無言の要求を突きつける

僕は僕を盾にして

「かんべんしてよ」を顔に出す


恋のバランスを天秤で表す

例えがあるけど

天秤が壊れない限りは

この不安定な釣り合いを続けていくつもり

痛いほどの冬風の中で

二人身を寄せ合うこと

頼りなく燃える焚き火を

大勢で取り囲むこと


生きながら

死にながらこれからも

祈りという灯は

生まれ来る命に

移されていくだろう


涙が汚れても

笑顔が悶えても

守り続けたい場所にいる

生きることの厳しさが

僕らをつないでいる

前日から

始まっていた

わくわくが今日

違うものに変わる


家のタンスに押し込めていた

もう一人の自分が

解き放たれる


全身で浴びるよ

いつもは窓越しに

入り込んでいた太陽

大人になって奪われていた

昼間の世界


狭い見方から

自由になる

広がった視界からは

穏やかな空が見える

むすっとした顔の自分も見える


少し可笑しくなって

足取りも軽くなって

人のまばらな大通りを行く

心が深呼吸する

僕が整理されてゆく休日

いわしはなぜおいしいのだろう

ふかくもあさくもないうみのなかで

いわしはきづいているのだろうか

じぶんのおいしさに


たべられたくなくて

毒をもついきものもいるのに

たべにくいすがたになるいきものもいるのに

ああどうして

いわしはおいしいのだろう


ぶりはいわしをたべながら

おいしいとおもっているのだろうか

いわしはきづいているのだろうか

じぶんのおいしさに

ぼくがつかんだはしのさきで

いわしはなぜおいしそうに

おさらによこたわっているのだろうか