ちゃんと終わるのに

区切りなどつけなくても


ちゃんと終わるのに

式なんてしなくても


切なさもなく

なんとなく別れて

笑顔で別れて


ふと気づく

いつもの時間が

ぽっかりしている


終わりの始まりが

すぐそばに来ている

優しい陽に染められて

賑やかな小鳥が乗っかって

険しそうに見えた冬の木々も

なんとなく和らいで映る午後


花のない夜も

枝は何処かを指していた

根は土とたわむれていた

幹は内なる

輪を秘めていた


裸の木々は凛としている

それは春のと同じように

凍える世界に咲いている

枝の周りにくっついた

薄青い空を花にして

僕は君に言った

一番言ってはいけないことを


時間は少し止まった

そして君の瞳が潤んだ

唇は震えていた


時間は速度を上げ

君は闇に消え

後悔が部屋を覆った


あれは本音だったろうか

僕の時間はまだ動けない

他の誰にも伝わらない

二人が意味を持たせた禁句

足跡は証拠じゃない

生きてきたことの

波が過ぎ去りし後も

たどった道筋が体に残る


記憶の砂浜には刻まれる

転んだ時の手の跡も

立ち止まった場所の砂の深みも


昨日の駆け足が

振り出しに戻った今日の

背中を軽く押すよ


消されても続いていく

ひるむことのない足跡

怖ろしくも懐かしい

波打ち際にきらめいている命

流されるだけ

流れても

気が付きゃ一人はぐれてる


流されるだけ

流れても

気が付きゃどこかの岸に着く


陸に上がったら

どのみち歩かにゃならんのだ


足を生やした僕だから

結局立たずにおれんのだ

なごんだ空気の隙間に挟んだ

長く温めてきた言葉

少し間が空いた後で

あなたは微笑んでそれっきり


こちらに答えを悟らせるように

気まずい余韻から逃れるように

軽く流して何もなかったのだと

あなたは微笑みで断ち切った

俺よ

目覚めかけの街を行け

薄れゆく闇の中から

生まれてくる自分を待て


寒々とした空気に

凝縮された時間を

新鮮な孤独を

感じながら行け


消えかけの夜をくぐり

海の前に立て

日が上る水平線を

スタートラインにするため


朝よ

雲を赤く浸しながら

震える肌に

新しい年を思い知らせて行け

ことし一年にぴったりとくる

名前は浮かばないけれど

ことし一年を彩った

名曲は浮かばないけれど

一年の終りは

誰にでもやって来る


だから言える

今年最後の別れに

願いの言葉

「よいお年を」


大掃除をしても

散らかったままの一年だけど

今日は褒めてやる

「よい年だったね」

言い切れないことが増えていけば

黙っている場面も多くなる

気遣いの糸がすれ違うたび

胸は絡まり締め付けられる


風の静まった昼の半ばに

少し重ための雪が落ちる

ため息に逃げられた体には

優しくもある感触


始めは溶けていたはずの雪が

街の上に残り始める

人通りのない道の上に
ためらった言葉の上に

あなたから受けた愛を

問いかけにして


答えていけたらいいな

この生き方で


まだ硬い革靴を履いて

新しい一日の旅に出る


今の僕に何ができる?

今の僕に何ができる