バカ息子 ~人間だからこそ臆病になるんだッ~
太一の言葉に何も言い返せずに、大門が立ち尽くしていると・・・
太一は強く断定的な口調で言い切るんだ。
「だが、どんなに怖くてもプロレスを続けたいと思っている」
その言葉に、大門の心臓はひときわ大きく 『ドクン』 と鼓動するんだ。
まるで、自分の心の奥底を言い当てられた事に驚いたようにね。
そして、太一はその言葉の根拠を示したよ。
さっき東京タワーに登った時の事、そして食事の様子など・・・
「足腰を鍛えるためにエレベーターではなく階段を使う。
身体の事を考えて肉ではなく豆腐や野菜ばかり食べる」 とね。
大門のそんな何気ない行動を指摘して、そして太一は一気にこう言うんだ。
「生涯をかけて、全力を傾けてきたものにつまづいた時、
人間なら誰でもうろたえる!
人間だからこそ臆病になるんだッ」
その言葉で、大門は自分の状態にようやく気づくんだ。
~つづく~
太一は強く断定的な口調で言い切るんだ。
「だが、どんなに怖くてもプロレスを続けたいと思っている」
その言葉に、大門の心臓はひときわ大きく 『ドクン』 と鼓動するんだ。
まるで、自分の心の奥底を言い当てられた事に驚いたようにね。
そして、太一はその言葉の根拠を示したよ。
さっき東京タワーに登った時の事、そして食事の様子など・・・
「足腰を鍛えるためにエレベーターではなく階段を使う。
身体の事を考えて肉ではなく豆腐や野菜ばかり食べる」 とね。
大門のそんな何気ない行動を指摘して、そして太一は一気にこう言うんだ。
「生涯をかけて、全力を傾けてきたものにつまづいた時、
人間なら誰でもうろたえる!
人間だからこそ臆病になるんだッ」
その言葉で、大門は自分の状態にようやく気づくんだ。
~つづく~
バカ息子 ~こわくて何が悪い?~
太一に 「負け犬の言い訳」 そう言われた大門は、一瞬もの凄い形相をしてその場に立ち上がったんだけどさ。
全く驚いた様子もない太一は、目の前の・・・ 大門が立ち上がった勢いで鍋からこぼれた汁をかぶってダメになったカメラを指差して言うんだ。
「これ、どうする?」 とね。
それで、彼らはもう一度東京タワーに登る事になったんだけどさ、その道中で大門がようやく自分の本音を晒すんだ。
「アンタには分からねぇ。
たった一ヶ月のド新人に負ける悔しさも、自分の身体が思う通りに動かねえ事への悔しさもな!」
「怖いんだよ、対戦相手も思うように動いてくれねえ自分の身体もな!
ちくしょう、逃げるにはリングは広すぎるんだよ!」 そう叫ぶ大門に、太一は言うんだ。
「こわくて何が悪い?」 と。
~つづく~
全く驚いた様子もない太一は、目の前の・・・ 大門が立ち上がった勢いで鍋からこぼれた汁をかぶってダメになったカメラを指差して言うんだ。
「これ、どうする?」 とね。
それで、彼らはもう一度東京タワーに登る事になったんだけどさ、その道中で大門がようやく自分の本音を晒すんだ。
「アンタには分からねぇ。
たった一ヶ月のド新人に負ける悔しさも、自分の身体が思う通りに動かねえ事への悔しさもな!」
「怖いんだよ、対戦相手も思うように動いてくれねえ自分の身体もな!
ちくしょう、逃げるにはリングは広すぎるんだよ!」 そう叫ぶ大門に、太一は言うんだ。
「こわくて何が悪い?」 と。
~つづく~
バカ息子 ~負け犬の言い訳~
そこで太一は静かに聞き返すんだ 「なぜ 俺にそんな話しをする?」 とね。
大門は、ただあっさりと 「誰かに聞いてもらいたくなっただけだ」 そう言ってね、
太一はそんな大門を挑発するように
「ふうん。
俺はまた、誰かに止めてほしいのかと思ったんだがな。」 そう言ってさ、
その言葉に大門が 「じゃあ、アンタは止めるのかい?」 って言うと
「止めない!
男の決断に口を出せるのは、妻 と 家族と 母親だけだ」
どこか、突き放すように淡々と言う太一に、大門は笑いながら。
「アンタは不思議で面白い男だな。
だが、あいにく俺にはガキはいないし女房にも逃げられちまってね。
オフクロもいい歳だ、ちょうどいい頃合いだったんだよ」
まるで自分に言い聞かせるようにつぶやく大門に、今度は明らかに挑発的な態度で太一がこう言うんだ。
「言い訳だろ、負け犬の言い訳」 と。
~つづく~
大門は、ただあっさりと 「誰かに聞いてもらいたくなっただけだ」 そう言ってね、
太一はそんな大門を挑発するように
「ふうん。
俺はまた、誰かに止めてほしいのかと思ったんだがな。」 そう言ってさ、
その言葉に大門が 「じゃあ、アンタは止めるのかい?」 って言うと
「止めない!
男の決断に口を出せるのは、妻 と 家族と 母親だけだ」
どこか、突き放すように淡々と言う太一に、大門は笑いながら。
「アンタは不思議で面白い男だな。
だが、あいにく俺にはガキはいないし女房にも逃げられちまってね。
オフクロもいい歳だ、ちょうどいい頃合いだったんだよ」
まるで自分に言い聞かせるようにつぶやく大門に、今度は明らかに挑発的な態度で太一がこう言うんだ。
「言い訳だろ、負け犬の言い訳」 と。
~つづく~
バカ息子 ~『潮時だ!』~
お店に入って鍋物を頼んだ大門は確かに見事な食べっぷりで、ご飯をかきこむように食べながら鍋をつついていたんだけどさ、
それを眺めながら、太一はただ黙ってビールを飲んでいたんだ。
それを見た大門が
「アンタは食べないのか?」 と言うと
「これ(ビール)だけで十分だ!」 そう答えてね、
「しかし気持ちいいほどの食べっぷりだな。
ところで、なぜ俺をメシに誘った?」
そう尋ねた太一に大門は
「ハッ! こういうのは一人で食っても美味くないだろう。」 と、
なぜか自分は豆腐や野菜ばかり食べているのに、太一には
「ほら、アンタは細いからもっと肉を食わなきゃダメだ!」 なんて言ってね。
そうしているウチに、さっきの 「田舎に帰る」 って話しの続きになって、大門は言うんだ。
「最初はなんて事ないケガだったんだ、実際すぐにリングに復帰出来たしな。
だが、いざリングに上がると思ったように身体が動かねえんだ・・・ 」
大門はそうつぶやいて、そこから “ある日の試合” の事を回想するんだ。
相手のチョークスリーパーが自分の首にガッチリ決まって、失神しかけて思わずタップして負けを認めた試合・・・ しかも、その相手はデビューして一ヶ月程度のルーキーだったこと。
彼は 「誰もいないリングの上で思ったんだ 『潮時だ!』 と」 そう言ったんだ。
~つづく~
それを眺めながら、太一はただ黙ってビールを飲んでいたんだ。
それを見た大門が
「アンタは食べないのか?」 と言うと
「これ(ビール)だけで十分だ!」 そう答えてね、
「しかし気持ちいいほどの食べっぷりだな。
ところで、なぜ俺をメシに誘った?」
そう尋ねた太一に大門は
「ハッ! こういうのは一人で食っても美味くないだろう。」 と、
なぜか自分は豆腐や野菜ばかり食べているのに、太一には
「ほら、アンタは細いからもっと肉を食わなきゃダメだ!」 なんて言ってね。
そうしているウチに、さっきの 「田舎に帰る」 って話しの続きになって、大門は言うんだ。
「最初はなんて事ないケガだったんだ、実際すぐにリングに復帰出来たしな。
だが、いざリングに上がると思ったように身体が動かねえんだ・・・ 」
大門はそうつぶやいて、そこから “ある日の試合” の事を回想するんだ。
相手のチョークスリーパーが自分の首にガッチリ決まって、失神しかけて思わずタップして負けを認めた試合・・・ しかも、その相手はデビューして一ヶ月程度のルーキーだったこと。
彼は 「誰もいないリングの上で思ったんだ 『潮時だ!』 と」 そう言ったんだ。
~つづく~
バカ息子 ~『記念に東京タワーで写真でも撮ってこい』~
さて、今回は 『背中に入れ墨を入れた臨床心理士 聖徳太一』 のお話しでも書いてみますか。
今回のお話しは、主人公が外に出かけている時にある男から声をかけられるところから始まるんだ。
その男は 「全身に筋肉の鎧をまとった」 という表現がぴったりの大男で、
「そこのアンタ、ちょっと時間あるかい?」 そんなふうに突然話しかけてくるところから始まるんだけどさ、
その大男を見た通行人が、彼の事を見ながら言うんだ。
「おい アレ、プロレスラーの大門幸一だぜ」
「ホントだ!アイツ怪我してからスランプに陥ったって聞いてたけど、一体どうしてるんだろうな?」 そんな通行人の声を聞きながら、大門は
「立ち話しもなんだし、少し歩こうか?」 そう言ってね。
「アンタにも聞こえてただろうが、ケガをして以来めっきりスランプでな、オフクロもいい歳だから田舎に帰ろうと思ってよ、
そしたら 『記念に東京タワーで写真でも撮ってこい』 って言われてな。」
道中、そんな話しをしながらわざわざ階段を登った二人は展望台に着くと、
さっそく持ってきた使い捨てカメラで写真を撮ってね、大門は
「この後もう少し時間があるかい?
お礼と言っちゃあなんだが、メシでもオゴらせてくれよ」 そういってさ、太一は一緒に近所のメシ屋に入って行ったんだ。
~つづく~
今回のお話しは、主人公が外に出かけている時にある男から声をかけられるところから始まるんだ。
その男は 「全身に筋肉の鎧をまとった」 という表現がぴったりの大男で、
「そこのアンタ、ちょっと時間あるかい?」 そんなふうに突然話しかけてくるところから始まるんだけどさ、
その大男を見た通行人が、彼の事を見ながら言うんだ。
「おい アレ、プロレスラーの大門幸一だぜ」
「ホントだ!アイツ怪我してからスランプに陥ったって聞いてたけど、一体どうしてるんだろうな?」 そんな通行人の声を聞きながら、大門は
「立ち話しもなんだし、少し歩こうか?」 そう言ってね。
「アンタにも聞こえてただろうが、ケガをして以来めっきりスランプでな、オフクロもいい歳だから田舎に帰ろうと思ってよ、
そしたら 『記念に東京タワーで写真でも撮ってこい』 って言われてな。」
道中、そんな話しをしながらわざわざ階段を登った二人は展望台に着くと、
さっそく持ってきた使い捨てカメラで写真を撮ってね、大門は
「この後もう少し時間があるかい?
お礼と言っちゃあなんだが、メシでもオゴらせてくれよ」 そういってさ、太一は一緒に近所のメシ屋に入って行ったんだ。
~つづく~