恋敵 ~ずっと・その②~
そして、その日の夜。
所かわって、店のガレージでツナギを着た主人公が溶接作業を行っていると二人がやって来てさ
主人公の孫は 「あれ――― 元気になったじゃん おばさ――ん」 って言って、そんな彼に
「ありがとう テツくんのおかげよ」 と答えた鞠絵さんは 「でも… 」 と言いながらいきなり顔を近づけてきてね、
そのあまりの近さに一瞬ドキッとした主人公の孫の顔を思いっきりひっぱたくと
「”おばさん” は余計よ」 ってプリプリした様子でさ、
ひっぱたかれた孫は、見事な手形の浮き上がった顔で泣きながら 「元気なりすぎ… 」 ってね
で、そんな孫を置いといてZに目をやった彼女は
「わッ!! これが明信さんのZ!?
信じられない これがあの車だなんて」 って感嘆の声をあげてさ、
橋爪さんも 「ほほォ~~~しかしまた大がかりな修理ですな」 って言ってさ。
主人公は 「ん?鞠絵さん こちらの方は?」 と、初めて見る橋爪さんの事を尋ねてさ。
それで、彼女は橋爪さんの事を紹介するんだけどさ。
自分がまだ駆け出しだったころに某有名ファッション誌の編集主任で、彼が自分の雑誌で私の作品を取り上げてくれたから今の私とETERNITYがあるんです…
こんなカンジで説明してさ、
そんな鞠絵さんの紹介に、少しこそばゆいような笑顔で
「ま そんな経緯で出版社をやめるまでになってしまいまして
まぁ社長とはクサレ縁ってヤツですかね ハハハ… 」
そんな橋爪さんに、主人公が 「じゃ ひょっとしてアンタもこの車と明信さんの事をご存じなんで」 とたずねるとさ
「ええ よく存じておりますよ」 そう答えた橋爪さんは
「社長の服の撮影のときは いつも明信さんがこの車でスタジオまで
服を運んできてくれましてね 私にとってもこのZは思い出深い車なんですよ」
そう言った橋爪さんは、とてもうれしそうに顔をあげて
「ETERNITYの原点には いつもこのZがあった
この車を見ていると楽しかったあの頃を思い出しますよ」 そんなふうに、少しセンチになってる彼に、鞠絵さんは
「何たそがれてるんですか 副社長!
ETERNITYはこれからなのよ しっかりしてくださいよ」 って言って、そんな彼女に
社長にはかなわないなぁ、って感じで苦笑いしてた橋爪さんだったけどさ…
そこで彼女の携帯が鳴って、急な打ち合わせが入ったって言うと彼女は会社に帰っていくんだ…
そんな彼女を乗せたタクシーを見送ると、橋爪さんは言ったよ。
「でもよかった元気になって
これでETERNITYも安泰です」 って。
で、主人公はそんな橋爪さんの顔を無言で見ていたんだ。
~つづく~
所かわって、店のガレージでツナギを着た主人公が溶接作業を行っていると二人がやって来てさ
主人公の孫は 「あれ――― 元気になったじゃん おばさ――ん」 って言って、そんな彼に
「ありがとう テツくんのおかげよ」 と答えた鞠絵さんは 「でも… 」 と言いながらいきなり顔を近づけてきてね、
そのあまりの近さに一瞬ドキッとした主人公の孫の顔を思いっきりひっぱたくと
「”おばさん” は余計よ」 ってプリプリした様子でさ、
ひっぱたかれた孫は、見事な手形の浮き上がった顔で泣きながら 「元気なりすぎ… 」 ってね
で、そんな孫を置いといてZに目をやった彼女は
「わッ!! これが明信さんのZ!?
信じられない これがあの車だなんて」 って感嘆の声をあげてさ、
橋爪さんも 「ほほォ~~~しかしまた大がかりな修理ですな」 って言ってさ。
主人公は 「ん?鞠絵さん こちらの方は?」 と、初めて見る橋爪さんの事を尋ねてさ。
それで、彼女は橋爪さんの事を紹介するんだけどさ。
自分がまだ駆け出しだったころに某有名ファッション誌の編集主任で、彼が自分の雑誌で私の作品を取り上げてくれたから今の私とETERNITYがあるんです…
こんなカンジで説明してさ、
そんな鞠絵さんの紹介に、少しこそばゆいような笑顔で
「ま そんな経緯で出版社をやめるまでになってしまいまして
まぁ社長とはクサレ縁ってヤツですかね ハハハ… 」
そんな橋爪さんに、主人公が 「じゃ ひょっとしてアンタもこの車と明信さんの事をご存じなんで」 とたずねるとさ
「ええ よく存じておりますよ」 そう答えた橋爪さんは
「社長の服の撮影のときは いつも明信さんがこの車でスタジオまで
服を運んできてくれましてね 私にとってもこのZは思い出深い車なんですよ」
そう言った橋爪さんは、とてもうれしそうに顔をあげて
「ETERNITYの原点には いつもこのZがあった
この車を見ていると楽しかったあの頃を思い出しますよ」 そんなふうに、少しセンチになってる彼に、鞠絵さんは
「何たそがれてるんですか 副社長!
ETERNITYはこれからなのよ しっかりしてくださいよ」 って言って、そんな彼女に
社長にはかなわないなぁ、って感じで苦笑いしてた橋爪さんだったけどさ…
そこで彼女の携帯が鳴って、急な打ち合わせが入ったって言うと彼女は会社に帰っていくんだ…
そんな彼女を乗せたタクシーを見送ると、橋爪さんは言ったよ。
「でもよかった元気になって
これでETERNITYも安泰です」 って。
で、主人公はそんな橋爪さんの顔を無言で見ていたんだ。
~つづく~
恋敵 ~ずっと・その①~
それからしばらくして、鞠絵さんの会社では
「最近 社長が元気になった」 とか 「一段と頼もしくなった」 そんな話題が飛び交うようになったんだ。
で、そんな中 鞠絵さんは社長室の自分のデスクにある写真立てを見ながらとてもうれしそうに微笑んでいたんだ。
するとドアの方から 「いやーー いい笑顔ですなァ――― 」 って声が聞こえてきて、
驚いて顔をあげた彼女が、声の主の方に目をやるとそこには優しそうな笑顔をたたえたスーツ姿の男性が立っていてね
彼女は 「は… 橋爪さん」 って言ってさ
その橋爪さんって男性が
「最近はご機嫌麗しくて何よりですなぁ
何かいいことでもありましたかな?」
って言うと、彼女は
「ええとっても!
あ、橋爪さん 明信さんの乗ってた車 覚えてる?」 そんな風に話してさ
橋爪さんは
「もちろんですよ フェアレディZ! 今も社長は解体屋にあずけてあるんですよね」
と答えてね、鞠絵さんは言うんだ
「あのZ 今レストアしてもらってるの
あの車 走るようになるんですって!!」
その言葉を聞いた橋爪さんはとても驚いて
「ええッ!? 20数年前の しかも あの事故車が?」 って言ったんだけどさ
鞠絵さんは、さっきの写真立てを手に持ってね
「そう!でね その作業中に車の中からこの写真が出てきたの ほら見て」
そう言って、彼女はさらに話し続けるんだ。
「この写真を見た小料理屋のママが言うのよ
これは絶対 明信さんがわざと撮ったツーショット写真だって」
その言葉に 「な、なるほど」 と相槌をうつ橋爪さんに、彼女はこう言ったよ。
「そう言われてあらためて私 気づいたわ
どんなに明信さんが私を愛してくれてたか そして どんなに私が明信さんを好きだったのかを」
そんな彼女の言葉に、橋爪さんは自分でも無意識のクセなのか?額をポリポリとかいたんだ。
でも彼女は、ただただ自分の気持ちを聞いて欲しいカンジで
「思いっ切り泣いちゃった でも そうしたら
涙と一緒に長年ひっかかっていた心のつかえも消えちゃったの」
そう言って
「私 もうふっ切れた これからは思いっ切り仕事に生きるから安心してね 副社長!!」 そう言いながら鞠絵さんは橋爪さんの背中をけっこう強めに叩いてさ、
彼女の ”パワー” に圧倒されたような感じの橋爪さんが 「は、はいッ」 って返事をすると
彼女はこんな事を言ったよ
「そうだ! 今夜一緒に車 見に行かない?」 って、その言葉に橋爪さんは
「えッ…私も… ですか?」 と答えた後に、少し困惑した表情を浮かべながら… またポリポリとやってさ。
で、やっぱりまた優しい笑顔で 「わかりました 参りましょう」 と答えたんだ。
~つづく~
「最近 社長が元気になった」 とか 「一段と頼もしくなった」 そんな話題が飛び交うようになったんだ。
で、そんな中 鞠絵さんは社長室の自分のデスクにある写真立てを見ながらとてもうれしそうに微笑んでいたんだ。
するとドアの方から 「いやーー いい笑顔ですなァ――― 」 って声が聞こえてきて、
驚いて顔をあげた彼女が、声の主の方に目をやるとそこには優しそうな笑顔をたたえたスーツ姿の男性が立っていてね
彼女は 「は… 橋爪さん」 って言ってさ
その橋爪さんって男性が
「最近はご機嫌麗しくて何よりですなぁ
何かいいことでもありましたかな?」
って言うと、彼女は
「ええとっても!
あ、橋爪さん 明信さんの乗ってた車 覚えてる?」 そんな風に話してさ
橋爪さんは
「もちろんですよ フェアレディZ! 今も社長は解体屋にあずけてあるんですよね」
と答えてね、鞠絵さんは言うんだ
「あのZ 今レストアしてもらってるの
あの車 走るようになるんですって!!」
その言葉を聞いた橋爪さんはとても驚いて
「ええッ!? 20数年前の しかも あの事故車が?」 って言ったんだけどさ
鞠絵さんは、さっきの写真立てを手に持ってね
「そう!でね その作業中に車の中からこの写真が出てきたの ほら見て」
そう言って、彼女はさらに話し続けるんだ。
「この写真を見た小料理屋のママが言うのよ
これは絶対 明信さんがわざと撮ったツーショット写真だって」
その言葉に 「な、なるほど」 と相槌をうつ橋爪さんに、彼女はこう言ったよ。
「そう言われてあらためて私 気づいたわ
どんなに明信さんが私を愛してくれてたか そして どんなに私が明信さんを好きだったのかを」
そんな彼女の言葉に、橋爪さんは自分でも無意識のクセなのか?額をポリポリとかいたんだ。
でも彼女は、ただただ自分の気持ちを聞いて欲しいカンジで
「思いっ切り泣いちゃった でも そうしたら
涙と一緒に長年ひっかかっていた心のつかえも消えちゃったの」
そう言って
「私 もうふっ切れた これからは思いっ切り仕事に生きるから安心してね 副社長!!」 そう言いながら鞠絵さんは橋爪さんの背中をけっこう強めに叩いてさ、
彼女の ”パワー” に圧倒されたような感じの橋爪さんが 「は、はいッ」 って返事をすると
彼女はこんな事を言ったよ
「そうだ! 今夜一緒に車 見に行かない?」 って、その言葉に橋爪さんは
「えッ…私も… ですか?」 と答えた後に、少し困惑した表情を浮かべながら… またポリポリとやってさ。
で、やっぱりまた優しい笑顔で 「わかりました 参りましょう」 と答えたんだ。
~つづく~
恋敵 ~失敗写真・その②~
「なるほど… 控え目な男の精一杯の思い出作り …って訳かァ」 主人公が言うと
オヤジさんも 「シャイなアキちゃんらしい」 って、
でおかみさんも 「素敵な写真じゃないですか」 って二人とも涙ぐんでいたんだけどさ、
鞠絵さんは
「私ってどこまで馬鹿なの…
この写真を見ても彼の気持ちに気づかないなんて…
そんな私を好きになった明信さんが可愛そう・・・ 」
そう言ってまた泣き出してしまったんだ、で みんなが押し黙ってしまった中で主人公の孫が
彼女にハンカチを差し出すとぶっきらぼうに言うんだ 「ブランドもんのハンカチじゃねーけど」 ってさ。
それを見て、主人公は 「テツ… 」 って、孫の行動に少し感心してるとね
彼女はひとしきり泣いたんだ… まるで自分の思いに区切りをつけるかのように、そしてそのハンカチで涙をぬぐうと
「この車を直してあげてください… 」
そう言って、驚く主人公に
「明信さんへの供養です よろしくお願いします」 そうハッキリと自分の意志を伝えてさ、
そんな彼女の真剣なまなざしに、主人公もまた真剣な表情で
「ありがとう… 任せて下さい」 そう答えて、本格的なレストアが始まることになったんだ。
~つづく~
オヤジさんも 「シャイなアキちゃんらしい」 って、
でおかみさんも 「素敵な写真じゃないですか」 って二人とも涙ぐんでいたんだけどさ、
鞠絵さんは
「私ってどこまで馬鹿なの…
この写真を見ても彼の気持ちに気づかないなんて…
そんな私を好きになった明信さんが可愛そう・・・ 」
そう言ってまた泣き出してしまったんだ、で みんなが押し黙ってしまった中で主人公の孫が
彼女にハンカチを差し出すとぶっきらぼうに言うんだ 「ブランドもんのハンカチじゃねーけど」 ってさ。
それを見て、主人公は 「テツ… 」 って、孫の行動に少し感心してるとね
彼女はひとしきり泣いたんだ… まるで自分の思いに区切りをつけるかのように、そしてそのハンカチで涙をぬぐうと
「この車を直してあげてください… 」
そう言って、驚く主人公に
「明信さんへの供養です よろしくお願いします」 そうハッキリと自分の意志を伝えてさ、
そんな彼女の真剣なまなざしに、主人公もまた真剣な表情で
「ありがとう… 任せて下さい」 そう答えて、本格的なレストアが始まることになったんだ。
~つづく~
恋敵 ~失敗写真・その①~
そんな明信さんの事を一通り語ると、オヤジさんはこういうんだ。
「警察の調べによると 事故は居眠りによる単独事故… 奴ァ頑張り過ぎたんだろうなぁ
オイラが煽りすぎたかなぁ」 って、
そんなやるせない顔をする解体屋のオヤジさんに、主人公は
「おめえのせいじゃねえよ 明信さんが一番分かってくれてるさ」 って言ってね。
でも、鞠絵さんはまた写真に目を落とすとこんなふうにつぶやくんだ。
「珍しいわ、彼がこんな失敗写真をとるなんて」
「失敗写真?」
聞き返した主人公に、彼女はこう答えたよ。
「だって プロカメラマンにとって自分の影が写り込むなんて恥…
だからこっそり車の中に隠してたのね」
そんな鞠絵さんの言葉に今度はおかみさんが
「それは違うと思うなァ」 って言って、驚いた鞠絵さんにおかみさんは言うんだ。
「ほら!これ ツーショット写真ですよ絶対ッ!!」
ってね。
「警察の調べによると 事故は居眠りによる単独事故… 奴ァ頑張り過ぎたんだろうなぁ
オイラが煽りすぎたかなぁ」 って、
そんなやるせない顔をする解体屋のオヤジさんに、主人公は
「おめえのせいじゃねえよ 明信さんが一番分かってくれてるさ」 って言ってね。
でも、鞠絵さんはまた写真に目を落とすとこんなふうにつぶやくんだ。
「珍しいわ、彼がこんな失敗写真をとるなんて」
「失敗写真?」
聞き返した主人公に、彼女はこう答えたよ。
「だって プロカメラマンにとって自分の影が写り込むなんて恥…
だからこっそり車の中に隠してたのね」
そんな鞠絵さんの言葉に今度はおかみさんが
「それは違うと思うなァ」 って言って、驚いた鞠絵さんにおかみさんは言うんだ。
「ほら!これ ツーショット写真ですよ絶対ッ!!」
ってね。
恋敵 ~男の叫び・その②~
「アイツ自身の男の叫びだったんだよ」 そんなオヤジさんの言葉に誰もが驚くなか、
オヤジさんは、明信さんが亡くなる三か月前の話をしてくれたんだ
「あれは事故の3ヶ月前にヤツが来た時だった
話しのほとんどはいつものようにZの自慢話だったんだが… 」
そんな風に話し始めて、オヤジさんは当時彼と話した情景を思い浮かべていてさ
彼はあいかわらず 「いやー ホントこの車最高だよ」 なんて話しをしててさ、
オヤジさんは 「なぁアキちゃんよぉ、車もいいけどアンタもいい歳なんだし
嫁さんでももらったらどうなんだい」 っていってさ、でもオヤジさんはその反面 ”いつもの答え” が返ってくるんだろうと思ってるとさ。
彼は、ドキッとしながら
「ヨ… ヨメさん ……かァ」 なんて言ったもんだから、ついついオヤジさんも冷やかすように
「おいおい、いつものはどうしたんだよ
『嫁さんならここにいるじゃないか 最高の貴婦人が!』 ってのはよお」 って言ったんだけどさ、
その直後にピンときたオヤジさんは
「あ… アキちゃん… まさか」 って言ったら、彼も照れながら
「あ、あぁ
ちょっと気になる女が出来てさァ… 」 なんて少し照れながら話してね
まるで、息子の彼女の話しを聞きたがる親父のような感じで
「で?で?どんな女なんだよ」 なんてせかしてさ
明信さんは 「そ そのぉ ファッションデザイナーの卵」 って…
嬉しそうにひやかすオヤジさんに、彼は鞠絵さんの写真を取り出すと
「 …ただ 彼女はまだ22歳… 俺と20歳以上も年が離れてんだぜ
しかも彼女は伸び盛りの金の卵
それに比べて 俺はしがねえ中年カメラマン
どう考えたって釣り合いがとれねよなぁ」
なんつってさ、それをきいたオヤジさんは小さくため息をつくと
いきなり彼の横っ面をひっぱたいて言うんだ
「中年が何だッ!
年なんか関係ねーだろッ
男なら自分の仕事に自信を持ちなッ!!」 ってね。
「オイラ あんたの写真好きだゼ
いつか必ず認められる日が来るさ」
その言葉に勇気づけられたのか、明信さんは
「じ… 実は彼女も俺の写真を気に入ってくれて」 そういうとオヤジさんは
「それならいい女に決まってる 大切にしなよ」 って言って、
その言葉に勇気づけられた彼は
「そうか そうだよな 歳なんて関係ない…
俺だってまだ走れる いや もっと走りたい
そして彼女と釣りあいの取れるカメラマンになってみせるッ」
そう、叫んだんだ…
~つづく~
オヤジさんは、明信さんが亡くなる三か月前の話をしてくれたんだ
「あれは事故の3ヶ月前にヤツが来た時だった
話しのほとんどはいつものようにZの自慢話だったんだが… 」
そんな風に話し始めて、オヤジさんは当時彼と話した情景を思い浮かべていてさ
彼はあいかわらず 「いやー ホントこの車最高だよ」 なんて話しをしててさ、
オヤジさんは 「なぁアキちゃんよぉ、車もいいけどアンタもいい歳なんだし
嫁さんでももらったらどうなんだい」 っていってさ、でもオヤジさんはその反面 ”いつもの答え” が返ってくるんだろうと思ってるとさ。
彼は、ドキッとしながら
「ヨ… ヨメさん ……かァ」 なんて言ったもんだから、ついついオヤジさんも冷やかすように
「おいおい、いつものはどうしたんだよ
『嫁さんならここにいるじゃないか 最高の貴婦人が!』 ってのはよお」 って言ったんだけどさ、
その直後にピンときたオヤジさんは
「あ… アキちゃん… まさか」 って言ったら、彼も照れながら
「あ、あぁ
ちょっと気になる女が出来てさァ… 」 なんて少し照れながら話してね
まるで、息子の彼女の話しを聞きたがる親父のような感じで
「で?で?どんな女なんだよ」 なんてせかしてさ
明信さんは 「そ そのぉ ファッションデザイナーの卵」 って…
嬉しそうにひやかすオヤジさんに、彼は鞠絵さんの写真を取り出すと
「 …ただ 彼女はまだ22歳… 俺と20歳以上も年が離れてんだぜ
しかも彼女は伸び盛りの金の卵
それに比べて 俺はしがねえ中年カメラマン
どう考えたって釣り合いがとれねよなぁ」
なんつってさ、それをきいたオヤジさんは小さくため息をつくと
いきなり彼の横っ面をひっぱたいて言うんだ
「中年が何だッ!
年なんか関係ねーだろッ
男なら自分の仕事に自信を持ちなッ!!」 ってね。
「オイラ あんたの写真好きだゼ
いつか必ず認められる日が来るさ」
その言葉に勇気づけられたのか、明信さんは
「じ… 実は彼女も俺の写真を気に入ってくれて」 そういうとオヤジさんは
「それならいい女に決まってる 大切にしなよ」 って言って、
その言葉に勇気づけられた彼は
「そうか そうだよな 歳なんて関係ない…
俺だってまだ走れる いや もっと走りたい
そして彼女と釣りあいの取れるカメラマンになってみせるッ」
そう、叫んだんだ…
~つづく~