この先の行く末~お客が男になった時~ -15ページ目

愛人

『今夜、都合どうかな?』


仕事帰りの私に、彼から電話が入った。



待ち合わせの場所と時間を決め、電話を切る。



いつも前もって誘ってくる彼にしては、珍しい事だ。



急遽、代休にでもなったのかしら?



しかし、彼はスーツ姿で待ち合わせ場所にやって来た。



彼の勤務先の定時が気になるところではあったが、日に焼けた彼を見て、そんな事はどうでも良くなってしまった。



そうだ。新婚旅行に行ってたんだっけ…。



少しの切なさを抱えたまま、二人で食事をしに店に向かう。



店内に入り席に着くと、自然と話題は新婚旅行の事に…。



笑えるエピソードを交えながら話す彼に、私は聞いた。



『いつ、日本に帰って来たんだっけ?』



聞けば、それは二日前ショック!


時差ボケもあるだろうに、相変わらずパワフルな彼に感心してしまう。



呆れ半分で笑っている私に、彼が小さな包みを手渡して来た。



『たいしたモンじゃないけど…』



開けてみると、中には数本の爪ヤスリ。



『いつも、綺麗にしてるからさ。使ってくれたらな。と思って』



お土産もさることながら、こういうマメさが無いと愛人は作れないのかも…。

苦笑い

『気をつけてね』
『行ってらっしゃい』



そう言って、私は苦笑いと共に、にこやかに彼との電話を切った。



賞味、一・二分の会話。


掛けてきたのは彼。



成田空港からだった。



あと、二時間もすれば空の上だ。



新婚旅行へむけて…。

男とは

携帯が震えた。



土曜日の日中に珍しい。


今日は誰とも約束はしてない筈なのに。


液晶を見ると彼の名前が映し出されている。


『おかしいな…?だって今日は…』



電話口に出ると、聞き慣れた彼の声が私の耳に流れ込んできた。



『やっと終わったよ(泣)』



その言葉に私は、彼が式を終えた後だという事を悟る。



全くの下戸である彼は、式で散々お酒を飲まされ、かなり参っている様子だった。



これから二次会だという。



しかし、人生の晴れ舞台ともいえる結婚式の直後、私に電話を掛けてきたのには驚いた。



仕事柄、沢山の男性を見てきた私ですら、理解に苦しむ言動だった。



それとも『男』とは、そういう突飛な行動を取ってしまう生き物なのだろうか?



かと言って、彼が私にのめり込んでいる様子は全くない。



あくまで私は『二番手なのだよ』と、常に言外に滲ませて接している。



だからこそ、理解に苦しむのだ。



なのになぜ、結婚したのだろう?という疑問と共に…。