この先の行く末~お客が男になった時~ -13ページ目

旅の終わり

プールサイドでお酒を飲み、気怠さを弄びながらガラムを吸う。


顔馴染みになった人達と、他愛のない会話を楽しむ。



そんな風に、私はゆるやかで心地良い時間を過ごしていた。


時折、モーニングを取る前に波乗りをしたりして。



なのに、今、私はこの土地のデパートメントで彼へのお土産を探している。


男とは二日前から笑顔で会話をしていない。



ちょっとした諍い。


体を重ねれば。



男の胸に顔を埋めてしまえば解決してしまう。


その程度のものだった。


けれど、男に身を委ねる事も、可愛らしく胸に飛び込む事も出来なかった。



もう、目の前にいる男は、私にとって美味しくはなくなっていた。


きっと男にとっての私も。



結局、美味しい筈のお酒も、互いの肌を重ね合わせる事をもってしても、溝は埋まらないまま日本へ帰る事となった。



彼の言う『最高の香り』を持つ、海も共有できぬまま。



この旅の終わり。
それは同時に、男との終わりでもあった。

バカンス

初めて踏む熱帯の土地。


隣には恋する男。



肌にまとまりつく、心地良い熱気。



男と手をつなぎながら、あてもなく歩いていると、色々なものとの出会いがある。



日陰を作る大きな椰子の葉



どこからか聞こえてくるガムランの音色。



丁子やドリアンの匂いが立ち込める路地裏。



ドラッグを売る人。


骨の浮き出た野良犬。



店先でチェスに興じる男達。



それらは、私達が異空間にいるかのような錯覚をも呼び起こす。



何もかもが新鮮で、楽しく刺激的な時間が過ぎて行く。



あちらこちらから漂う、この土地独特の香辛料の匂いが、私達が空腹だった事を思い出させた。


美味しいものを食べに行こう。



そう言って、男は私の手を引き、一軒のお店に入っていく。



お米で作られたワイン。辛いけど甘い味付けの料理。



私は甘いものや、美味しいもの、楽しい事が好き。


それらで満たされているバカンスでは、彼の事など思い出す暇などなかった。

最高な土地

まだ見ぬその土地へは、あと数時間。



真っ白な雲を機内から眺めながら、私は数日前の彼との会話をぼんやりと思い出していた。



男が私に提案した、これから行くその土地の名前を聞いた時、私の頭をよぎるものがあった。



確か、彼も行った事があった筈だと。




そう思い、仕事中に来た彼に聞いた。



私は浮かれた気持ちを抑えきれないまま、矢継ぎ早に質問した。



どんな所だった?
いつ行ったの?
海はどうだった?



すると彼は懐かしそうに、笑顔で答えた。


『波も香りも最高だったよ』と。



私にも、それを感じられる瞬間が訪れるだろうか。