この先の行く末~お客が男になった時~ -14ページ目

恋に落ちて

『気をつけて』
『ありがとう』



空港に居る私に彼が電話を寄越す。



私は、これから熱帯の土地へ。



少し前に恋に落ちた男と一緒に。





ダイビングのインストラクターし、海を愛して病まない男。



一向に波乗りが上達しないながらも、海に恋している私。



その二人が出会い、互いに触れ合いたい。と、思うのには、そう時間はかからなかった。



でも、まだ互いをよく知らない。



だからこそ、楽しい時期。



賞味、二週間のバカンスへ。



相手をもっと知りたい。という欲望を携えて。

嫉妬

ある春の日、家族が増える事を彼は口にした。


桜が舞い散るが如く、ひらり・するり。と、それを会話に挟んできた。



彼は、本来の飼い主にも忠実だったと言う訳だ。


そこには、ベタな昼ドラのように傷ついている私がいる。



私はその時初めて、嫉妬という感情を持ったような気がする。



これから、守られるべき絶対の存在を持ち得たその人を羨み、私は嫉妬したのだ。



そんな私の心をよそに、相変わらず彼の態度や笑顔はいつも通りだ。



柔らかく私を押し倒し、暖かな手で私を包み、他人には伺い知れない激しさで、私を揺さぶる。

逢瀬の日を決めるのは彼。


でも、それにGOサインを出すかどうかは、私。


ここのところ、互いのタイミングも合わず、連絡を取り合う事もままならない。



彼からの誘いに、もう何度GOサインが出せなかった事だろう。


思うようには、なかなか行かないものだ。



それでも、彼は毎回変わらぬ態度で私を誘う。



怒るわけでも、拗ねるでもなく、電話口に出るのは、いつも通りの彼。



たかだか、浮気相手。



その私に、こうも立て続けに断られていたら、普通の男なら、とっくに諦めているだろう。



そんな彼を見ていると、犬を連想してしまう。



悲しいかな。邪険に扱われる事があっても、尾を振りながら側に寄っていってしまう犬。



そして彼もまた、我慢強く、へこたれる事なく私に向かってくる。



少し警戒しながら。


同時に、少しの征服欲を隠し持って。