この先の行く末~お客が男になった時~
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負け…?

家路へ向かおうと駅に着くと、ホームでは扉が閉まるのを告げるメロディーが鳴り響いていた。








気落ちしていたのも手伝い、私は急ぐ事も出来ずノロノロとホームへ向かい、乗れたであろう列車を見送る。







整体院を出た後、彼と食事も、そしてベッドも共にするだろうと、当然のように思っていた私はかなり打ちひしがれていた。








『寂しい』





10分後に来る電車を待ちながら、溢れ出そうになる涙を押し留めるべく、煙草でも吸おうと私は喫煙所に行く。







なのに、火をつけようにも、風が邪魔してなかなか思うようにならない。








自分の置かれた状況を忌々しく思っていると、携帯が震えた。






彼からの電話だ。







怒り半分で出てみると








『何処にいるの~?待ちくたびれちゃったよ~』






呑気な彼の声が聞こえてくる。









嘘!?
待ってたんだ‥。






でも、どこで?






沢山の疑問符が頭をよぎる中、私はつい冷たく言い放ってしまう。








『駅のホームよ。これから帰るところ』







本当は







この後も一緒に居れる。そして、やっぱり待っててくれたんだ。という嬉しさで頭が一杯だったのに。






けれど、何も言わずに消えた彼を許す事も出来ず、私は少し意地悪な気持ちになっていたのかもしれない。







『電車が来ます』の電光掲示板を横目に、『そろそろ電車が来るから‥』と、私は冷静に答えた。








列車が来るべくアナウンスが鳴り響く。







私は吸っていた煙草の火を消し、移動しながら携帯を耳に当てていた。








『ごめん。待ってるから来て』







でも、余裕が感じられる彼の声が癪に障る。









『行かないよ。あたし疲れてるの。だったら迎えに来て』








言い淀んでいる彼に構わず、私は言葉を被せる。








『もう駅の改札出たからね』





言うと同時に電話を切った。










つまらない賭け。








人様から見たら尚の事。







でも、私はつまらない意地とプライドを、その時掛けてみた。









多大な不安と少しの高揚感を持ちあわせながら。






改札を出ると





一番逢いたい人。





彼が私を待っていた。

ひとりぼっち

『連れの男性は、コレ?』






親指を立てるゼスチャーをしながら、冗談めかして、整体師の友人が私をからかう。






今日は早速、彼と二人で整体院に。







私は友人の言葉を笑って受け流し、近々予定されている、同級生達との飲み会の話しに切り替えた。






集まる面子は、懐かしい顔ぶればかり。





二人で思い出話に花が咲き、私の腰へのメンテナンスはあっという間に終了。





時間差で、私より先に来院していた彼は、少し前に院を後にしていた。






会計を済ませ、外に出ると、待っていると思っていた彼の姿はどこにもなかった。





携帯をチェックするも、連絡が入った様子もない。







『帰った…?』






予想だにしない状況に、私は狼狽えた。







暫く、携帯を見つめみたりもしたが、私の携帯には、何の変化も訪れない。







帰ったんだ…。





私はひどく裏切られたような気分だった。





確かに、この後の約束は交わしていなかったけど…。





だからって、何も言わずにいなくなってしまうなんて。






寂しさと悔しさと怒りが、ないまぜになった気持ちのまま、家路に向かうべく、私は駅に向かった。

奇遇

『可能なら、定期的においで。いつでも大丈夫だから』






ギックリ腰に見舞われてからというもの、続けて通院している私に、整体師の友人は言った。






彼にも、そんな経緯を話していた折り、整体院の場所が話題に上った。






『駅を降りて…』
詳細を述べると、彼は少し弾んだ声で返す。







『知ってる。俺の現場へ行く途中にあるよ』





ほんの些細な事。





単なる、偶然。





それでも、彼と共通の『何か』を共有出来たようで、私は嬉しくなってしまった。








元々、客として彼が私と出逢った頃、地元が同じ。と言う共通項が私達の距離を縮めたのは確かだけど…。







仕事に関わる部分にまで、オーバークロスするのには、少し驚いた。






明るく返す彼に、私は提案する。







『今度、一緒に行ってみようよ』
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