この先の行く末~お客が男になった時~ -3ページ目

魔女の一刺し

『最低、3日間はおとなしく寝ててね。それと、その凶器になりそうな靴!踵高いのは禁止!』






治療台の上でうずくまる私に、整体師の友人は言う。





元来、腰の弱い私は定期的に、この治療院へと足を運んでいた。





しかし、今までに無い腰の痛みに、座っている事もままならず、すぐさま友人の元へ。





診断はギックリ腰。






しかも、原因はくしゃみ…。






情けないやら、おかしいやら…。





幸い、仕事も連休を取っていたので、支障は出ないけど、一度なると癖になるって言うし…参ったな。







治療台の上で、自由に向きも変えられない私に、友人は言う。







『魔女の一刺し』って言うんだよ。





特に、暑さで冷房などで体を冷やし続けた後の秋口に多いらしい。







『それにしても、似合わないなぁ!』





腰を屈め、ヨロヨロしている私に友人は笑う。





確かに、この体たらくは悪友達には見せられない。






しかし、これじゃ、騎乗位も出来ないよ。





とほほ…。

覚悟

仕事仲間が結婚する。






彼女のお腹の中には、既に新しい生命も宿っているらしい。






出会いは、私と共に働いているこのお店。だそうだ。






『最初は子種だけ欲しいって話で成立してたんだけどね』





凛とした佇まいが美しい彼女は、照れくさそうにそう話してくれた。





家も買い、資金も充分貯め、薬剤師の資格も持つ彼女の口癖は『男は必要。でも夫は必要ない』だった。





それがなぜ?





思った事を、私は素直に聞いてみた。






『あたしもさ、種付け以外アンタのする事なんて無いのに、なんでよ?って聞いたんだよね』




『で、相手の人はなんて?』




私はつかさず、言葉を挟む。




『それでも、君の人生を見届けたいんだ。だってさ』





口振りは素っ気なくとも、その表情には幸せそうな笑みがたたえられていて、側で聞いている私も、なんだか温かい気持ちになった。





きっと、あらゆるものに対し覚悟をした彼女に、相手の男性もまた、自分の人生に覚悟を決めたのかもしれない。





そんなお二人に、幸あれ。
月並みだけど、いつまでもお幸せに…。

自業自得

『出来ない約束はしないで』






繰り返される、非情理な彼の態度に私は自分の思いをぶつけた。






携帯越しに、涙を浮かべながら。





すると、その人は怒りに満ちた声をたたえ、静かに言う




『彼氏…、居るんだって?』






それが『彼』を指している事は、私にもすぐ分かった。





隠すつもりも、騙すつもりも私には無かった。




ただ、聞かれなかったから答えなかった。




機会を伺っていた。





でもそれは、自分勝手な小狡い言い分なのだと、私は自分の浅はかさを思い知る。





『終わった…』






と、思いついでに私は一番の疑問を、その人に投げかけてみた。







『なぜ、そう思うの?』




すると、その人は更に冷めた様子で答えた。





『あの子が言ってたよ‥辛い恋愛してるって』





してやられた。






『彼女』か。





私と彼との付き合いに『イイとこ取り』と、軽蔑した、あの彼女。






なのに何故か、その後も『出会えて良かった~』と、私との友情を讃え、それを周囲に公言していた彼女。




彼女の装う『無垢』の下に隠れている悪意を見抜いているつもりでいた自分を私は嘲笑った。





でも…。






誰のせいでもない。



自業自得だ。




問われないから。と、それを言い訳にして、私は逃げていたのだから。




その人に飛び込む勇気を持つ事から。




なにより、一番傷ついたのは『その人』なのだ。




少し前、その人が結婚し、子を成した事を風の便りに聞いた。




伝えられるなら、言いたい。





『おめでとう』そして、沢山の『ありがとう』と『ごめんなさい』を。