この先の行く末~お客が男になった時~ -11ページ目

無防備

『この時間を作る為でもあるから』



休日返上・残業続きの彼を心配する私に、笑顔で答える彼。



あぁ、なんて無防備な人なのだろう。



常に理性的な彼が、こうしてルール違反を犯す度に、私は一歩・また一歩…と甘い沼へと足を踏み入れてしまう。



大人の男が無防備である事。



私は、魅力の一つ。才能の一つだと思っている。


理性という名の蓋が少しずれ、そこから零れ落ちるもの。



私はそれをすくい上げ、罪という名の雫を舐める取る。


それは、時には甘く、そして苦い。

ルール

梅雨が明けた。



でも、私の気持ちはなんとなくスッキリしない…。


帰る身支度を終え、お金を手にしながら、ポツリと彼は言った。


『これら全てが、あなたに入ればいいのに』



意味を図りかねている私に彼は続ける



『お店の…じゃなくて、あなたに逢いたくて来てるのだから』



彼が私への気持ちを洩らしたのは、この時が初めてだった。



私たちは、今まで互いに対する気持ちや想いを伝え合った事は一度もない。



まるで、それがタブーとされているかのように、一度口にしてしまったらゲームオーバーになる。そんな空気が私達の間には流れていた。



なのに『逢いたくて』だなんて…。



ルール違反だわ。



私は彼の言葉に何と答えて良いのか分からないまま、話題を変えた。



そう。
私までルールを犯し、ゲームを終わらせる訳にはいかないからだ。

苦痛

未だに、時折仕事場に訪れる彼。



真意が測れないまま、私の気持ちは募っていた。


そして、そんな私の元にやって来る彼を迎え入れるのは、苦痛を伴う作業に他ならなかった。



店で、彼から手渡される現金を見て、私の心はざらつく。



お金に換算できない。



そんな愛しさが込み上げるからだ。