この先の行く末~お客が男になった時~ -17ページ目

結婚

結婚をする。


彼はそう言った。



彼が恋人と同棲している事は既に聞いていた。



そして、独身を謳歌する程彼も若くは無い。




なのに、その言葉は私の動きを一瞬止めた。



悟られないよう、つかさず私は祝の言葉を彼にかける。



お式を都内で挙げる事、引っ越しをする事。


それらの準備の為に、雑事に追われている事を彼は話した。



暫くデートの誘いが無かった訳が判明する。



結婚するまでの火遊びをしたかったんだな。



今更ながら、私は一人納得した。



もう、会う事は無いのだ。という一抹の寂しさと共に…。

誠実な客

『暇だね~』



『さっきの客がさぁ~』


『実は、彼氏が…』



そんな会話を仕事仲間と楽しんでいると、私に仕事が入った。



どうやら、ご指名さん。



誰だろう?



不安と期待が入り混じる中、出迎えたのは、彼、その人だった。



再び、大勢のお客さんのうちの一人として、再び私の中では存在していた。



『久しぶり』



互いに、そう挨拶を交わし、彼の腕を絡め取る



二人きりになっても、相変わらず彼は『誠実な客』だ。



我が儘も言わず、私の就いている職業を馬鹿にし、自尊心を保つような事もしない。



純粋に『性行為』を楽しむ為に、私と時間を過ごし、誠実な客(私にとって)のまま店を後にする。



そんな事を何回か繰り返していたある日、彼は言った。


『そろそろ、身を固めようと思って』

後悔

後悔した。


少し…。


淡々と仕事をこなし、何も無かったように彼を店から送り出した事を。



そして、後悔の念を抱いている、そんな自分に呆れてもいた。



お客に掻き乱された自分の心。



こんな事は、かつて一度たりとも無かったのに。


とはいえ、相手である彼は客。


客として私を誘い、風俗嬢の『ちょっと違う顔を見たい』そんな軽い気持ちで私をデートに誘い、結果オイシイ思いも出来、満足した。



それが、先日のデートだった筈だ。



改めて現実を見つめ、私は自分の中でケリをつけた。


すると、私の中から先程の後悔は跡形もなく消え去っていく。




やはり、あの時私が感じた想いは、一瞬の気の迷いだったのだ。



やはり、客は客だ。



私は一人、納得した。