愛人 | この先の行く末~お客が男になった時~

愛人

『今夜、都合どうかな?』


仕事帰りの私に、彼から電話が入った。



待ち合わせの場所と時間を決め、電話を切る。



いつも前もって誘ってくる彼にしては、珍しい事だ。



急遽、代休にでもなったのかしら?



しかし、彼はスーツ姿で待ち合わせ場所にやって来た。



彼の勤務先の定時が気になるところではあったが、日に焼けた彼を見て、そんな事はどうでも良くなってしまった。



そうだ。新婚旅行に行ってたんだっけ…。



少しの切なさを抱えたまま、二人で食事をしに店に向かう。



店内に入り席に着くと、自然と話題は新婚旅行の事に…。



笑えるエピソードを交えながら話す彼に、私は聞いた。



『いつ、日本に帰って来たんだっけ?』



聞けば、それは二日前ショック!


時差ボケもあるだろうに、相変わらずパワフルな彼に感心してしまう。



呆れ半分で笑っている私に、彼が小さな包みを手渡して来た。



『たいしたモンじゃないけど…』



開けてみると、中には数本の爪ヤスリ。



『いつも、綺麗にしてるからさ。使ってくれたらな。と思って』



お土産もさることながら、こういうマメさが無いと愛人は作れないのかも…。