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ガンになった妻がフルマラソンを走ると言い出した

30代男。甲状腺癌の手術を終えた妻が、フルマラソンを目指すことに。そんな妻の走る日々をつづります。

久しぶりに妻がランニングに繰り出した。

暑くなってきたので、夜のご近所を走る。

 

明らかに身体が重そう。

前はキロ6分半くらいで飛ばして3km地点くらいでバテていたが、

この日はキロ8分ペースとなった。

 

ゆっくりならもう少し距離が伸びるかと思いきや、

「ひええーもうだめだ~」

やはり3kmくらいで突然の叫び。

図ったようにいつもこのあたりで足が止まってしまう妻である。

 

フルマラソンまでの道のりは果てしなく遠い。

 

 

でも久しぶりに夜風を浴びて走り、楽しそうな妻を見ていたら、思い出した。

 

病気になる前、妻と二人でこうやって近所をてくてくと、

走るような歩くような時間を過ごしていた。

仕事で忙しい夫婦の、束の間のおしゃべりのために。

 

僕が走り出すきっかけとなったのも、これだった。

 

 

GWも終盤。

仕事柄、暦の上の休日など関係ない僕は、ほとんど自宅に缶詰だった。

 

その間実家に帰っていた妻は、久しぶりに会うと唇が腫れていた。

「トイレに行こうと思ったら、寝ぼけて柱に激突しちゃったー」と笑っている。

 

僕はいつか妻がとんでもない事故を起こすんじゃないかと予想している。

 

そんなこんなであまり走れずにいる中、

東京国際フォーラムで行われていたラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017に行ってきた。

 

会場のそこかしこで演奏が行われていて、出店なども並んでいる。

普段馴染みのない人も気軽に楽しめる、クラシックの祭典なのだ。

僕ら夫婦も、妻の両親と共に毎年遊びに来ている。

  

今年はディズニー映画でも有名な『魔法使いの弟子』や、

ラヴェルの『ボレロ』を聴くことができた。

 

あまり詳しくない僕でも知っている名曲。

特に『ボレロ』のアンコールで、みんなの手拍子と共に演奏されたのはとても楽しく、興奮した。

 

 

今度走るときのBGMは、もう決まったようなもの。

 

ラ・フォル・ジュルネとは『熱狂の日』を意味するという。

 

2016年の夏。

 

その日は妻と二人で映画を観に行った。

 

映画の内容は、覚えていない。

 

観終わったあと、二人でビュッフェを食べていた。

妻は小食だけど、いろんなものを好きにとれるビュッフェが大好きなのだ。

その日も、とても楽しんでいたと思う。

 

食事中、妻がふいに顔を少し上に向けて、何気なく首筋に手をやった。

 

その時、前に座っていた僕も、それにふと目が行った。

喉の左あたりに、少ししこりのようなものがある?

触っていた妻も気づいたようだった。

 

 

写真を撮って、妻と一緒によく見る。

「……扁桃腺が腫れてるのかな」

「あはは。風邪でも引いちゃったのかも」

そんなことを言いながらも、妻の顔は曇っていた。

この時すでに、何か嫌な予感を覚えていたのかもしれない。

 

大好きなビュッフェも、妻はそれ以上おかわりをしなかった。

 

 

最近の妻はランニング&ランチの味をしめたようだ。

今度は横浜は山下公園周辺を走ることに。

 

あまりランナーたちがいるイメージはなく、ちょっと心配だ。

だが妻は「大丈夫! おいしい中華料理屋リサーチしてるから!」

と謎の自信を覗かせる。

 

そしてやってきた横浜。

まずは日大大通り駅のロッカーに荷物を預け、

みなとみらい方面へとランスタート!

 

まずは赤レンガ倉庫の方へ。

海風が気持ちいい。

ランナーは少ないけど、ちらほら。

一般観光客?もいるけど、そんなに気にすることなく走れる。

何より広くて気持ちがいいのだ。

 

そのまま大さん橋へ。

クルージング船を横目にのんびりと走る。

 

そして山下公園方面へ。

このあたりで妻が足を止め、3.5キロで終える。

キロ6分半くらい。

どうも妻はスピードを出しすぎて長い距離を走れないのだと思う。

 

その後、しっかりと中華料理を食べ歩き、ご満悦の妻である。

 

食後には、何かのイベントなのか、そこかしこに綺麗な花々が植えられている

山下公園や港の見える丘公園を歩き回る。

 

 

 

病気になる前より変わったなと思うのは、こういうところだ。

以前の妻ならもう疲れて家に帰りたがっている。

 

不思議なことだけど、病気が妻の世界を広げたのは確かだ。

 

 

夫婦はジムにも通っている。

もともとは、僕が今年の東京マラソンに当選し、そのトレーニングのために入ったのだった。

だけど一週間もすると妻も羨ましがりはじめ、

「私も私も~」と入会することになった。

我が妻はよくこのセリフを吐いては、ひょこひょことなんでも後をついて来る。

 

見ていると、ジムでの妻はウォーキングなどもはさみながら、のんびりと走っているようだ。

 

妻はとても痩せている。

もともとそうだったが、病気をしてからさらに痩せたと思う。

ランニングシャツで二の腕を出すと、簡単に折れそうに細い。

 

ジムには、痩せたい人とか、筋骨隆々とした猛者が多いため、

そんな中、ひょろひょろの妻がのんびり歩いたりしているのは、さぞや異様な光景に映っていることだろう。

 

たまに筋トレマシンも使っているが、その重量もものすごく小さい。

ちょっとした鍋くらいの重さもプルプルと腕を震わせて頑張っている。

あと、なぜかひょっとこ顔だ。

近くを通ると「ふう~」と聞こえる。

以前、息を吐きながらやるといいよと教えたからか、本人はたぶんそれを実践しているのだろう。

 

元は寒い季節の練習に活用してたけど、最近は妻も外を走るのが気持ちよくなってきて、すっかり足が遠のいている。

ということで、そろそろジムは退会することになりそうだ。

 

 

ちなみに写真はジムとは関係ない公園での一幕。

腕をプルプルさせて、このあとやっぱりすぐに落っこちていた。