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この記事は2882文字です。(読破予想時間:約6分51秒)
バンドとソロ。
「どうして、バンドではなくソロでやってるのか?」とか、「もうバンドはしないの?」とか、ちょくちょく尋ねられる。
そして俺は、もうバンドをするつもりはない。
いろいろ、それぞれの利点も欠点もあるけど、どうしてかを一言で言うと、バンドより気楽だからって言うのが、一番の理由だと思う。
現時点ではバンドをするつもりはないが、もっと先にどうなっているかは、正直な所「分からない」が答え。
少なくとも、今は、人間関係に疲れ果ててるのでソロがいい。
バンドの大きなメリットの一つに、何が起こるか分からない化学変化って言うのは、確かに魅力だ。
でも、計算不能のイレギュラーさってのが、デメリットであるとも言える。
では今回は、ソロに至るまでのその代表格のエピソードでは決してなく、その中でもかなりプチな方のエピソードを。
20歳前後の時、組んでたバンドのギタリストとのエピソードを2つばかり書くとしよう。
彼の事をここでは、仮にレスポール君と呼ぶ事にしよう。
俺がベースボーカルで、レスポール君がギター、そしてドラムとキーボードがいるという、4人編成のバンドだ。
レスポール君とは出会ってけっこう直ぐに打ち解けて、しょっちゅう、つるんで遊ぶ程、当時、トップクラスに仲のいい友人だった。
でも、お互いにどこか気を遣い合ってる部分もあって、キツい事を言ったり怒りをぶつけて喧嘩をしたりって言うのは、何か微妙な壁があって有り得なかったのを覚えている。
俺は決して、気が弱い方ではなく、どちらかと言えば気は強い方なのだが、たまに妙なトコで気を遣う所がある人間なのだ。
レスポール君もどうやらそういうタイプの人間らしい。
そして、彼とはしょっちゅうセッションをしたりして遊んでいたのだが、そんなレスポール君はハードロック畑のギターリストなので、ブラックミュージックやポップスや昭和歌謡中心の自分とは全然違う感性で、その時のその融合が凄く気持ちよくて、結局バンドに誘ったのだ。
俺が彼に、ギターはこう弾いてくれと指示を出すと、彼は「へぇ~、そんな弾き方があるのか。凄く格好いいな。俺、ハードロックの弾き方しか知らないから、凄く新鮮」とか興奮気味に言いながら、弾いてくれてた。
レスポール君自身が自分で言う通り、ハードロックしか知らない彼が弾くと、俺が指示した雰囲気とかけ離れた解釈で弾き始めるのだ。
一応、軽く実演して見せて、更に説明も加えてはいる。
その説明の表現を、同じ様な趣味嗜好の人間にしたのなら、必ずこう弾くと言うお決まりの説明でも「あれ!?」と思ってしまうくらい意外な弾き方をいつも彼はする。
俺の世界を詳しく伝授すべきか迷ったりもしたけど、その意外さがいい方向に働いてるので、そのままにしていた。
レスポール君にしても、珍しいプレイに新鮮さを覚えてた様で、やたらやる気を出してくれてた。
そこで、高校生の時に原案が出来て、表現が何とも難しく、保留したままの思い入れの深い曲をこのバンドでならいける気がして「よし!試そう」って事になった。
その曲のコンセプトは『和』。
テーマは『祭り』。
で、その時はストレイ・キャッツ 風の和風サイコビリーをイメージしたアレンジをして、各パートに指示をした。(今なら、誰々風は絶対にしない が、まぁ、当時はまだまだ青かったので)
◇Stray Cats - Live At Montreux 1981
◇パクリと影響の狭間
ブライアン・セッツァー を彷彿とさせるスマートさなんか微塵もない。
指示したポジションも違うし、余計な音を一つ加えて弾いている。
その余計な音を彼はやたら気に入ってるらしい。
でも、その音が下品さを更に強調し、曲の雰囲気を台無しにしている。
なのに、妙に気を遣って何も言えずそのまま進めてしまう俺がそこにいた。
そのアレンジでは元の歌詞もメロディーも全く合わず、全てが台無しである。
もはや、和でもなければ祭りでもない。
サイコビリーもロカビリーも何処かへいってしまって、ただ、下品にうるさくハードな曲。
結局、原曲の原型をとどめないくらいにメロディーも歌詞も何もかも崩して、やる気も何も急降下して行く中でやけくそで歌ってたのを覚えている。
で、ライブ中の恥ずかしい気分は今でも色濃く残っている。
そして実はそのバンドは歴代組んだり入ったりしたバンドの中で、思い出したくないバンド、トップ5に入るバンドなのだ。
悪いのは、勿論、レスポール君ではなく、自分である。
言うべき事は言わねばならない。
後に強くそう思った。
ほとんど思い出せないバンドもいくつもあるというのに、そういうバンド程鮮明に記憶されてたりするから、困ったもんだ。
自分が悪いのだが、こういう所がバンドのデメリットであり、面倒な所かな。
そのショックとイメージの縛りからようやく抜け出して、一時は下品なハードロックに成り果てたその曲は、最近ようやくキチンと完成した。
勿論、ブライアン・セッツァーの要素を意識したりはしていない、本当の意味での完全オリジナルの初期コンセプトに沿った和風ロック&ポップの祭りソングに仕上げている。
その曲こそがソロファーストアルバム『解放』 に収録された、『祀る想いと祭りの中で(JASRAC作品コード:215-8085-5)』である。
◇祀る想いと祭りの中に/皆見つかさ
(『せっかくだから、少しでもいい音で音楽を楽しんで欲しい。 』)
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長い間、トラウマの様にひきずって、なかなか着手出来ずにいたのだが、けっこう納得のいく仕上がりに出来た。
自由に気楽に思いのままにイメージ通り出来てしまうのが、ソロのメリットである。
意外性には欠けるが。
長くなるので、話を2回に分ける事にしよう。
て事で、話はレスポール君のエピソード2、『それは作曲じゃない!』
へ続く。
◇ごめんね、レスポール君。〜それは作曲じゃない!
それではまた、次回。
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