こんにちは。

 

先月のことなのですが、友人に誘われて、イングリッド・フジコ・ヘミングさんのピアノソロリサイタルへ行って来たので、今日はその感想を書いておきます。

 

先月は色々と忙しく、落ち着いてブログに向き合うことができなかったものですから。

 

『イングリッド・フジコ・ヘミング ピアノソロリサイタル 2017』

会場:銀座ヤマハホール

 

演奏曲目(プログラムより)

◎フレデリック・ショパン

エチュード 変イ長調 作品25-1「エオリアンハープ」

エチュード 変ト長調 作品10-5「黒鍵」

エチュード ホ長調 作品10-3「別れの曲」

エチュード ハ短調 作品10-12「革命」

ノクターン 変ホ長調 作品9-2

 

◎クロード・ドビュッシー

月の光「ベルガマスク組曲」より第3曲

雨の庭 「版画」より第3曲

 

◎ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

ピアノソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」

 

◎セルゲイ・ラフマニノフ

プレリュード長調 作品32-5

 

◎フランツ・リスト

「3つの演奏会用練習曲」第3番 変ニ長調 作品144より

「3つの夜想曲 愛の夢」 第3番 変イ短調 作品541より

パガニーニによる大練習曲 第6番 イ短調「主題と変奏」作品141より

パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調「ラ・カンパネラ」作品141より

 

僕はクラシック音楽の演奏会は数えるほどしか経験が無く、フジコ・ヘミングさんのお名前は存じ上げてはいましたが、友人が誘ってくれなければ、多分、自分から出かけることはなかったと思うので、いい体験をさせてもらいました。友人に感謝です。

 

僕がクラシック音楽というものを意識し始めたのは、幼い頃、テレビで『赤い激流』というドラマを見た時からでした。

 

僕が観たのは再放送でしたが、『赤い激流』は1977年にTBS系列で放送された大映テレビ制作による山口百恵さん主演の「赤い迷路」から始まった「赤いシリーズ」の5作目でした。

 

水谷豊さん、宇津井健さん主演のサスペンスドラマで、音楽大学のピアノ科助教授の宇津井健さんと、宇津井健さんの初恋の人の息子で、後に義理の息子となる、街のスナックでピアノを弾く貧しい青年の水谷豊さんが、親子としてまた師弟として激しくぶつかり、葛藤しながら、音楽というものの本質を追求していくというストーリーで、子供ながらに大変熱中して観たドラマだったんです。

 

面白いドラマなんですよ〜(笑)。

 

ドラマの中で、水谷さんは「毎朝音楽コンクール」という大会に挑戦するという設定で、ピアノの課題曲を練習するシーンがあるのですが、その課題曲の1曲目がフレデリック・ショパンの「英雄ポロネーズ」、2曲目はフランツ・リストの「ラ・カンパネラ」、3曲目はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの「ピアノソナタ第17番(テンペスト)」なんです。

 

僕がフジコ・ヘミングさんが得意とされている、フランツ・リストの「ラ・カンパネラ」を初めて聞いたのはこのドラマだったんです。

 

ピアノという楽器も大好きになりました。影響されやすい子供だったんですね(笑)。

 

「赤い激流」はオープニングテーマも素晴らしかったんです!

 

作曲・編曲は菊池俊輔さん、演奏は新日本フィルハーモニー交響楽団 、指揮は籾山和明さん、ピアノ演奏は羽田健太郎さん。

 

とてもドラチックな曲で、羽田健太郎さんのピアノが胸を熱くさせるんです〜。朝に聞くとテンションが上がるんですよ〜(笑)。

 

この頃からクラシック音楽というものがとても身近になりました。

 

僕は映画好きですから、映像からクラシック音楽に親しんでいったという感じですね。

 

クラシック音楽が使われた映画ってたくさんあるんですよ。

 

思いつくままに書いてみましょうか。

 

◎『2001年宇宙の旅(1968年)』

スタンリー・キューブリック監督

リヒャルト・シュトラウス作曲

交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』

 

◎『地獄の黙示録(1979年)』

フランシス・フォード・コッポラ監督

リヒャルト・ワーグナー作曲

舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』から『ワルキューレ』

 

◎『ベニスに死す(1971年)』

ルキノ・ヴィスコンティ監督 

グスタフ・マーラー作曲

交響曲第5番『アダージェット』

 

◎『時計じかけのオレンジ(1971年)』

スタンリー・キューブリック監督

ヘンリー・パーセル作曲

『メアリー女王の葬送音楽』

 

◎『愛と哀しみのボレロ(1981年)』

クロード・ルルーシュ監督

モーリス・ラヴェル作曲

『ボレロ』

 

『愛と宿命の泉(1986年)』

クロード・ベリ監督

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲

『運命の力』序曲

 

◎『逢びき(1945年)』

デヴィッド・リーン監督

セルゲイ・ラフマニノフ作曲

ピアノ協奏曲『第2番第1・2・3楽章』

 

◎『アポロンの地獄(1967年)』

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲

弦楽四重奏曲『第19番『不協和音』第1楽章』

 

◎『ある貴婦人の肖像(1996年)』

ジェーン・カンピオン監督

フランツ・シューベルト作曲

歌曲『死と乙女』第2楽章

 

◎『イノセント(1975年)』

ルキノ・ヴィスコンティ監督

フレデリック・ショパン作曲

ワルツ第6番変ニ長調『小犬のワルツ』

 

◎『運命の逆転(1990年)』

バーベット・シュローダー監督

リヒャルト・ワーグナー作曲

楽劇『トリスタンとイゾルデ』〈愛の死〉

 

◎『獲物の分け前(1966年)』

ロジェ・ヴァディム監督

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル作曲

オルガン協奏曲集『第3集より』

 

◎『おはん(1984年)』

市川崑監督

グスタフ・マーラー作曲

交響曲『第5番第4楽章』

 

◎『細雪(1983年)』

市川崑監督

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル作曲

『セルセ』より〈オンブラ・マイ・フ〉

 

◎『ツィゴイネルワイゼン(1980年)』

鈴木清順監督

パブロ・デ・サラサーテ作曲

管弦楽伴奏付きのヴァイオリン独奏曲『ツィゴイネルワイゼン』

 

まだまだたくさんあるんですよ〜。名監督は音楽の使い方にもセンスがあります。

 

そういえば、一部を除いてセリフが一切なく、オーケストラによるクラシック音楽をバックに奏でられた、ディズニー製作のアニメーション映画『ファンタジア』という作品もありましたっけ。幼い頃に熱中して観たものです。

 

クラシック音楽の作曲家をモデルに描いた映画もたくさんありますね。

 

◎『アマデウス(1984年)』

ミロス・フォアマン監督

 

◎『恋人たちの曲 悲愴(1972年)』

ケン・ラッセル監督

※この作品はDVD化希望です。復刻シネマライブラリーさんお願いします〜(笑)。

 

◎『マーラー(1974年)』

ケン・ラッセル監督

 

◎『不滅の恋 ベートーヴェン(1994年)』

バーナード・ローズ監督

 

などなど。

 

こう書いていると、僕は映画からいろんなことを教わったんだな〜と感じます。

 

また、どうでもいい話が長くなってしまいました〜(笑)。フジコさんの演奏のことを書かなくてはですね。

 

フジコ・ヘミングさんは、ロシア系スウェーデン人で、画家・建築家だったヨスタ・ゲオルギー・ヘミングと日本人ピアニストの大月投網子さんの間にベルリンでお生まれになります。

 

幼い頃から、ピアニストだったお母様の手ほどきでピアノを習い始め、10歳から、父の友人であり、ドイツでお母様がピアノを師事したロシア生まれのドイツ系ピアニスト、レオニード・クロイツァーに師事され、青山学院高等部在学中、17歳で、デビューコンサートを果たされます。

 

東京芸術大学音楽学部在学中には新人音楽家の登竜門である、第22回NHK毎日コンクールに入賞を果たし、さらに文化放送音楽賞など、多数の賞を受賞されました。東京藝術大学卒業後、本格的な音楽活動に入られ、日本フィルハーモニー交響楽団など多数のオーケストラと共演もされました。

 

その後、ベルリン高等音楽学校に入学され、卒業後はパウル・バドゥラ=スコダに師事し、また、作曲家・指揮者のブルーノ・マデルナに才能を認められてコンサートを行っていましたが、聴力を失うというアクシデントに見舞われ、演奏家としてのキャリアを一時中断しなければならなくなったんだそうです。

 

頼るものもない外国で、生活面ではお母様からのわずかな仕送りと奨学金で何とか凌いでおられたそうですが、大変貧しく苦しい状況が長らく続き、真冬でも部屋の暖房をつけることができなかったため、風邪をこじらせ、高熱のため聴力を失ってしまわれたのです。

 

失意の中、フジコさんははストックホルムに移住し、耳の治療の傍ら、音楽学校の教師の資格を得て、ピアノ教師をしながら欧州各地でコンサート活動を続けられていましたが、お母様の死をきっかけに日本へ帰国し、母校東京藝大の旧奏楽堂などでコンサート活動を行ってらっしゃいました。

 

1999年2月にNHKでドキュメント番組『ETV特集』「フジコ〜あるピアニストの軌跡〜」が放映されて大きな反響を呼び、フジコブームが起こったんだそうですね。

 

その後、発売されたデビューCD『奇蹟のカンパネラ』は、発売後3ヶ月で30万枚のセールスを記録し、日本のクラシック界では異例の大ヒットとなり、第14回日本ゴールドディスク大賞の「クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー」他各賞を受賞したんだそうです。

 

僕はこのNHKの番組は観てはいないし、個性的なファッションをされた、聴力に障害をお持ちのピアニストの方がいらっしゃるんだというくらいの認識でしたが、2003年でしたか、フジテレビ系で『フジ子・ヘミングの軌跡』というタイトルでフジコさんの波瀾の半生がテレビドラマ化された時に観て、苦難を乗り越え、ピアニストになられた方なのだと初めて知りました。

 

これまで、フジコさんの演奏をちゃんと聞いたことがなかったのですが、今回、生で聞かせていただいて感じたのは、とても優しい、sweetな演奏をされる方だなということです。幾つになられても、女の子の気持ちを持ち続けてらっしゃるのかも知れませんね。

 

ご年齢もあるでしょうが、メカニカルなテクニックをひけらかすのではなく、懐かしい、古き良き時代の演奏と言いましょうか、メロディーを大切にして弾いてらっしゃるなあと思いました。

 

友人は何度もフジコさんのリサイタルへは足を運んでいるみたいで、演奏前に、「フジコさんの演奏はユニークだよ〜、たまに音がガタガタになったりする〜」と言っていて、僕はイマイチ何のことかわからなかったのですが、最後の曲の演奏の最後の方で音が少し流れた様な気はしましたが、全体的には印象に残る満足できる演奏会だったと思います。

 

自宅に帰って、バソコンでフジコさんのことを検索していたら、フジコさんの演奏って賛否両論なんですね〜。大好きな方もいれば、全否定される方もいて…。

 

『フジコ・ヘミングは下手です』とはっきりblogに書いてらっしゃる方もいて驚きました。

 

でもこの曲は絶対こう演奏しなくてはダメだとか、私はこう弾いてくれなきゃ嫌だとかっていうのは意味が無いような気がするんですけどね〜。

 

演奏の仕方や解釈なんて、演奏者によって様々ですし、自由でいいと僕は思います。

 

歌もそうですけれど、音符通りに正確に歌えれば上手い歌手なのでしょうか?

 

テクニックだけをひけらかすような歌に魅力があるのでしょうか?

 

僕はフジコさんのどこか即興的でメロディアスな演奏を楽しませてもらったし、良い時間を過ごさせてもらったと思っています。

 

僕は自分のセンスを信じています。他人にとやかく言われる筋合いはありません(笑)。

 

無国籍者として貧困と孤独の半生を送ったとか、今も天涯孤独でたくさんのネコと暮らしているといった、音楽とは関係のないフジコさんの人生までもバカにしたり否定したりすることなど誰にもできないことじゃないかと僕は思います。

 

美空ひばりさんがオペラを歌えば、「演歌歌手風情が」なんて宣う人たちと同じ匂いがしますね。

 

「誰が弾いても同じなら、私が弾く意味なんてない。だから私は私だけの音を大切にしているの」

 

そうフジコさんはおっしゃいます。

 

そんな演奏家がいたって良いじゃない。

僕はそう思います。

 

 

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