こんばんは。
7日、ドラマ「特捜最前線」の刑事役などで知られる俳優の
二谷英明さんが 肺炎のため81歳でお亡くなりになりました。
11日に行われたご葬儀での喪主である妻で女優の白川由美さんの
ファンの皆様への涙を堪えてご挨拶される姿は胸を打たれました。
二谷さんは1956年、日活のニューフェスとして入社され
日活全盛期のアクション路線で、石原裕次郎さん、小林旭さん、
宍戸錠さんらと活躍されました。
僕の両親はそのど真ん中世代で、母は裕次郎さんの大ファン
でしたので詳しかったですね。日活作品については。二人の
青春時代のシンボルだったんでしょう。TVで放送があるとよく
見ていたのを思いだします。
今年は日活が創立100周年ということで、2009年キネマ旬報
オールタイム・ベスト映画遺産200日本映画篇で第4位に選出
され、川島雄三監督の代表作といわれる「幕末太陽傳」デジタル
修復版が「テアトル新宿」で今、上映されています。
若き日の二谷さん、裕次郎さん、小林旭さんらが出演されていて
瑞々しい演技をみせてくれています。
僕は二谷さんのことを語れるほど、出演された作品を見ている
わけではないのですが、僕の大好きな作品2本でとても印象的な
役柄を演じてられたのでそのお話をしたいと思います。
その2本とは1973年、森谷司郎監督「日本沈没」と
1974年、山本薩夫監督「華麗なる一族」です。
今日は「華麗なる一族」のことを少し。
「華麗なる一族」の原作は今月の15日から放送がスタートする
ドラマ「運命の人」で話題の山崎豊子さんが1970年から
2年7ヶ月にわたって週刊新潮に連載された文庫本にして上中下
と3冊にもなる長編小説です。山崎さんの小説は「白い巨塔」
「女系家族」「女の勲章」「ぼんち」「不毛地帯」「二つの祖国」
「大地の子」「沈まぬ太陽」など映像化されたものがたくさん
ありますね。どの作品も徹底的な取材に基づいて書かれていて、
読み応えのある骨太の作品ばかりで大好きな作家のお一人です。
その中でも「華麗なる一族」は単なる経済小説ではなく、
ある一族の血脈を背景にして、親と子、人間同士の葛藤、
壮絶な生き様が激しく描かれた作品です。山崎さんの作品の
中でも僕は「華麗なる一族」が一番好きかも知れません。
この小説にはモデルになった一族がいました。岡崎財閥といいます。
神戸に住んでらっしゃる方は聞いたことがあるのではないでょうか。
戦前から戦後のある時期まで「神戸の岡崎」といえば、神戸の財閥、
あるいは、神戸銀行、同和火災海上保険等に君臨する一族として、
関西一円にその名が轟いていたそうです。須磨離宮公園植物園は
その邸宅跡地だそうですよ。戦後最大の倒産といわれた山陽特殊製鋼
事件(昭和40年)と、神戸銀行・岡崎一族を題材にして山崎さんは
「華麗なる一族」を書かれたのではないでしょうか。
小説が発表された頃はまだこの倒産劇から間もない頃だと思うので
ベストセラーになったのもわかりますね。
その後、神戸銀行は太陽銀行と合併し太陽神戸銀行となり
太陽神戸銀行と三井銀行が合併し、太陽神戸三井銀行となり、
その後、さくら銀行となり住友銀行と合併し三井住友銀行と
なるのです。当時は、三井と住友の2大財閥が手を組むのかと
驚いたものでした。ちなみに僕のメインバンクは三井住友銀行
です。どうでもいい情報ですね(笑)。
2007年に、TBS開局55周年記念企画として日曜劇場枠で
木村拓哉さん主演でドラマ化されたのでストーリーは
ご存知の方も多いと思いますが簡単に紹介しますね。
関西に強力な地盤を持つ万俵財閥当主で、阪神銀行頭取の万俵大介
(佐分利信さん)は、妻と愛人を同居させるような精力的な男です。
預金高全国第10位の阪神銀行は金融再編に備え他行との合併を模索
しています。長男鉄平(仲代達矢さん)が専務を務める阪神特殊鋼は
自前の高炉を建設するために父親である大介が頭取を勤めるメイン
バンクの阪神銀行に融資を頼みます。それだけでは足りないので
サブメインの大同銀行にも融資を頼むのです。大同銀行の三雲頭取
役を二谷英明さんが演じてられました。
鉄平と三雲頭取は昔からの友人同士で、鉄平の夢である高炉建設の
力になろうと三雲頭取は部下の役員たちの反対を押し切って
多額の融資を決めてしまうのです。しかし阪神特殊鋼は工期の遅れ
を取り戻そうと突貫工事に入り、その結果、爆破事故を起こして
会社更生法を申請することになり、多額の不良債権を発生させた
三雲頭取は失脚し、大同銀行は阪神銀行に吸収合併されて
しまうのです。
これはすべて鉄平の父である大介による大同銀行を乗っ取るために
仕組まれたことだったのです。何故、父は息子に冷淡なのか。
鉄平の出生にまつわる確執や万俵家の華麗なる閨閥作りの裏側、
限り無ない人間の欲望や富と権力への執着、その裏で蠢く政財界の
暗躍などを描いた人間ドラマです。
山崎さんの小説は巨悪と正義が対立するドラマが多いですよね。
「白い巨塔」で言えば悪は財前、正義は里見、「華麗なる一族」
で言えば悪は大介、正義は鉄平、三雲というところでしょうか。
鉄平と三雲は非情で過酷なストーリーの中で、どんな状況でも
自分に正直に人生を生きている、裏切られ、傷ついても決して心は
汚さない人間として描かれています。だからこそ鉄平はああいう
最後を選んだんような気がします。
友の夢を自分の夢のように応援し共感し、誠実だったがゆえに足元を
すくわれ、それでも自分の信念を曲げない三雲というキャラクターを
二谷英明さんは清冽にダンディーに僕たちに魅せてくれました。
どんな時も冷静で回りの人を和ませる方だったと言う、穏やかな
二谷さんのお人柄がにじみでるような演技だったと思います。
また一人、昭和の名優が旅立たれました。
ご冥福をお祈りいたします。
7日、ドラマ「特捜最前線」の刑事役などで知られる俳優の
二谷英明さんが 肺炎のため81歳でお亡くなりになりました。
11日に行われたご葬儀での喪主である妻で女優の白川由美さんの
ファンの皆様への涙を堪えてご挨拶される姿は胸を打たれました。
二谷さんは1956年、日活のニューフェスとして入社され
日活全盛期のアクション路線で、石原裕次郎さん、小林旭さん、
宍戸錠さんらと活躍されました。
僕の両親はそのど真ん中世代で、母は裕次郎さんの大ファン
でしたので詳しかったですね。日活作品については。二人の
青春時代のシンボルだったんでしょう。TVで放送があるとよく
見ていたのを思いだします。
今年は日活が創立100周年ということで、2009年キネマ旬報
オールタイム・ベスト映画遺産200日本映画篇で第4位に選出
され、川島雄三監督の代表作といわれる「幕末太陽傳」デジタル
修復版が「テアトル新宿」で今、上映されています。
若き日の二谷さん、裕次郎さん、小林旭さんらが出演されていて
瑞々しい演技をみせてくれています。
僕は二谷さんのことを語れるほど、出演された作品を見ている
わけではないのですが、僕の大好きな作品2本でとても印象的な
役柄を演じてられたのでそのお話をしたいと思います。
その2本とは1973年、森谷司郎監督「日本沈没」と
1974年、山本薩夫監督「華麗なる一族」です。
今日は「華麗なる一族」のことを少し。
「華麗なる一族」の原作は今月の15日から放送がスタートする
ドラマ「運命の人」で話題の山崎豊子さんが1970年から
2年7ヶ月にわたって週刊新潮に連載された文庫本にして上中下
と3冊にもなる長編小説です。山崎さんの小説は「白い巨塔」
「女系家族」「女の勲章」「ぼんち」「不毛地帯」「二つの祖国」
「大地の子」「沈まぬ太陽」など映像化されたものがたくさん
ありますね。どの作品も徹底的な取材に基づいて書かれていて、
読み応えのある骨太の作品ばかりで大好きな作家のお一人です。
その中でも「華麗なる一族」は単なる経済小説ではなく、
ある一族の血脈を背景にして、親と子、人間同士の葛藤、
壮絶な生き様が激しく描かれた作品です。山崎さんの作品の
中でも僕は「華麗なる一族」が一番好きかも知れません。
この小説にはモデルになった一族がいました。岡崎財閥といいます。
神戸に住んでらっしゃる方は聞いたことがあるのではないでょうか。
戦前から戦後のある時期まで「神戸の岡崎」といえば、神戸の財閥、
あるいは、神戸銀行、同和火災海上保険等に君臨する一族として、
関西一円にその名が轟いていたそうです。須磨離宮公園植物園は
その邸宅跡地だそうですよ。戦後最大の倒産といわれた山陽特殊製鋼
事件(昭和40年)と、神戸銀行・岡崎一族を題材にして山崎さんは
「華麗なる一族」を書かれたのではないでしょうか。
小説が発表された頃はまだこの倒産劇から間もない頃だと思うので
ベストセラーになったのもわかりますね。
その後、神戸銀行は太陽銀行と合併し太陽神戸銀行となり
太陽神戸銀行と三井銀行が合併し、太陽神戸三井銀行となり、
その後、さくら銀行となり住友銀行と合併し三井住友銀行と
なるのです。当時は、三井と住友の2大財閥が手を組むのかと
驚いたものでした。ちなみに僕のメインバンクは三井住友銀行
です。どうでもいい情報ですね(笑)。
2007年に、TBS開局55周年記念企画として日曜劇場枠で
木村拓哉さん主演でドラマ化されたのでストーリーは
ご存知の方も多いと思いますが簡単に紹介しますね。
関西に強力な地盤を持つ万俵財閥当主で、阪神銀行頭取の万俵大介
(佐分利信さん)は、妻と愛人を同居させるような精力的な男です。
預金高全国第10位の阪神銀行は金融再編に備え他行との合併を模索
しています。長男鉄平(仲代達矢さん)が専務を務める阪神特殊鋼は
自前の高炉を建設するために父親である大介が頭取を勤めるメイン
バンクの阪神銀行に融資を頼みます。それだけでは足りないので
サブメインの大同銀行にも融資を頼むのです。大同銀行の三雲頭取
役を二谷英明さんが演じてられました。
鉄平と三雲頭取は昔からの友人同士で、鉄平の夢である高炉建設の
力になろうと三雲頭取は部下の役員たちの反対を押し切って
多額の融資を決めてしまうのです。しかし阪神特殊鋼は工期の遅れ
を取り戻そうと突貫工事に入り、その結果、爆破事故を起こして
会社更生法を申請することになり、多額の不良債権を発生させた
三雲頭取は失脚し、大同銀行は阪神銀行に吸収合併されて
しまうのです。
これはすべて鉄平の父である大介による大同銀行を乗っ取るために
仕組まれたことだったのです。何故、父は息子に冷淡なのか。
鉄平の出生にまつわる確執や万俵家の華麗なる閨閥作りの裏側、
限り無ない人間の欲望や富と権力への執着、その裏で蠢く政財界の
暗躍などを描いた人間ドラマです。
山崎さんの小説は巨悪と正義が対立するドラマが多いですよね。
「白い巨塔」で言えば悪は財前、正義は里見、「華麗なる一族」
で言えば悪は大介、正義は鉄平、三雲というところでしょうか。
鉄平と三雲は非情で過酷なストーリーの中で、どんな状況でも
自分に正直に人生を生きている、裏切られ、傷ついても決して心は
汚さない人間として描かれています。だからこそ鉄平はああいう
最後を選んだんような気がします。
友の夢を自分の夢のように応援し共感し、誠実だったがゆえに足元を
すくわれ、それでも自分の信念を曲げない三雲というキャラクターを
二谷英明さんは清冽にダンディーに僕たちに魅せてくれました。
どんな時も冷静で回りの人を和ませる方だったと言う、穏やかな
二谷さんのお人柄がにじみでるような演技だったと思います。
また一人、昭和の名優が旅立たれました。
ご冥福をお祈りいたします。