タイトル:宇宙人と出会う前に読む本

著者:高水裕一

発行:講談社(ブルーバックス)

発行日:2021年7月20日

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ 

宇宙で本当に必要な教養とは?

もしも宇宙で知的生命と会話することになったら

あなたは自分のことをきちんと説明できますか?

出身地や身体の組成など、相手はいろいろ聞いてきます。

宇宙の平均より文明が遅れている可能性がある地球人は、

それらにどう答えればよいのでしょうか?

さあ、ちゃんとした宇宙人への第一歩を踏み出すために、

宇宙標準の科学を知って宇宙偏差値をアップさせよう!

 

 

2023年4月頃『アメトーーク』という番組で紹介され、注目を集めた作品。

テレビを見ない人間なので、この番組がなんなのかは正直わかっていないが、

目を引く面白タイトルと、いろんな人の「おすすめです!」という言葉で読んでみた。

 

おもしろい!!!

 

期待を裏切らない面白さ。

ストーリー性があり、ユーモア満載で、分かりやすい宇宙に関する本!!

ジャンルとしては宇宙物理学(だと思う)。

宇宙共通の言語として元素記号を用いるため化学と、

宇宙人の見た目に関する考察で生物(進化)も少し。

数学にも触れ(ここはたっぷり)、

広く浅く、宇宙というものに興味が持てるように科学が書かれた本だ。

 

面白かった。これに尽きる。

如何に自分が狭い"常識"に囚われていたのかと痛感したね。

太陽が1つ。月が1つ。

それが常識なわけ、ない。

 

 

本書は、地球から初めて惑星際宇宙ステーションにやってきた『あなた(読者)』視点で送られる。

宇宙人たちは新参者の地球人に興味深々だ。

 

「地球はどこにある星なの?」

「あなたを構成している物質はなに?」

「太陽は何色でいくつあるの?」

「指の数は?」

「身体は左右対称?」

 

上記は宇宙人から問われた内容だ。

私たち読者は、これらの疑問にどう答えていけばよいのだろうか。

本書はそれを解説している。

めちゃくちゃ面白い着眼点とテーマである。

 

 

 

P32

では、私たちの太陽は一体何色なのでしょうか?(省略)

「黄色、だと思います……」

たしかに晴れた空に輝く太陽はそう見えますので、地球人にとっての一般的なイメージはそんなところです。

しかし残念ながら、この答えは間違いです。

スペクトル的には、太陽の色はなんと「緑色」なのです!

 

じゃあ何で黄色に見えるんだ?という話だが、

これは、目に見えている黄色い光は、

既に大気に当たって散乱して青色が飛んでしまっている状態なのだ。

だから空は青く見える。

そして、黄色+青色=緑色、というわけだ。

 

なんてわかりやすい説明!!

且つ、間違った答えにも頭ごなしの否定をしないこの姿勢。

ページを閉じずに多少難しい内容でも、最後まで読もうと気にさせてくれる。

 

 

 

というわけで

第1章『あなたはどこから来たのですか?』は、

宇宙の共通常識のお話。

 

星の明るさや重さ、寿命について。

星の寿命は単位年、タイプは恒星基準。(P31~)

 

OB型(重量型):1000万~1億

A型(標準型):4億~12億

F型(中量型):30億

G型(軽量型):100億~150億

K型(低温型):200億~1000億

M型(極低温型・巨大型):1000億~10兆

LYT型(未熟型):10兆~ほぼ死なないほどの長寿

 

太陽はG型。

 

 

 

第2章『あなたは何でできていますか?』

身体を構成する元素の話。

それから周期表が共通の言語になりえる可能性に関しても触れている。

 

 

P52

ところで、周期表がこのように宇宙で普遍的であるということは、化学的な意味にとどまらない価値を持っています。

元素によって、絶対的なものの順序が表現できるからです。

たとえば、地球でいうところの元素番号1番の水素は、どの宇宙人にとっても「1番」です。(省略)

さらに数字にかぎらず、言語として英語のアルファベットのような表音文字を使っている宇宙人となら、その文字の順序に数字を対応させていけば、言葉のやりとりをすることもできそうです。たとえばアルファベットなら、水素をA、ヘリウムをB、リチウムをC…(省略)

 

そこの何で見た話なのか忘れたが、

海に流されとある国に漂着した男性は、

現地の言葉が分からずコミュニケーションが取れなかったそうだ。

いろんなものの名詞も分からないし、それを訊ねる言葉もわからない。

そこで、男は紙にぐちゃぐちゃと意味のない図形を書き込んだ。

それを見た現地人は口々に同じ言葉を発した。

その言葉は「なに?」という意味のもの。

男は「何?」と質問する言葉をこれで知ることができたわけだ。

 

宇宙人と会話する場合も、まずは「なに?」という質問文を手に入れて、

物体を次々に刺して名詞の確認からだと思うが、

そうか、周期表……。

これが共通言語になるかもしれないね。

 

というか、私は面倒くさがりなので、地球の言語ですら

もう英語で世界統一したらよくない?って思ってる。

自分の国の文化を否定するのか!?みたいな意見もあるし、

言語学という分野からしたら困った話にはなると思うけど、

出来るだけコミュニケーションに齟齬をなくしたほうが文明の発達上がると思うんだよね…

でも多様性という面で言えば、やはり悪手になりえるのかな?

 

 

 

 

第3章『あなたたちの太陽はいくつですか?』

この章、特に面白かったね。

 

地球のお土産にカレンダーでも買って帰ろうかと思った『あなた』は、

数字が重複している変わったカレンダーを目にする。

普段あまり意識することはないが、

一日とは即ち太陽が上がって下がるまでの平均の時間よね。

では、太陽が複数あったら、カレンダーはどうなっちゃうの?という話。

そこで、私たちは地球が如何に珍しい星か知ることになる。

 

 

P76

「地球の特殊さは、太陽が1つしかないことだけじゃない。地球には月も1つしかない」

ああ、たしかに。

太陽系の他の惑星がもっている衛星の数をみると、水星と金星はゼロですが、火星は2個、木星は72個、土星は53個、天王星は27個、海王星は14個(今後も観測によって増える可能性あり)と、衛星が1個しかないのは地球だけです。

なんと地球は太陽系でも「変わり者」だったのです!

 

そこから、宗教の話にもちらっと触れる。(P92著者はここをメインで書きたかったようだが)

地球でメジャーな宗教はいくつかあるが、多くが一神教だ。

これは太陽が1つ、月が1つだからではないか、と、そういう話。

興味深かったね。

多神教の日本人からしたらなんのこっちゃいな感覚ではある。

(感覚ではあるといいつつ私は無神論者だ)

 

P92

拙著『時間は逆戻りするのか』を書評してくださった言語学者の川添愛さんの、この言葉を私は折にふれて思い出すのです。

「物理学とは、現在の神話を創る試みである」

 

川添愛さんとは、以前記事にさせていただいた、働きたくないイタチと言葉がわかるロボットの著者様ですね。

 

 

 

第10章『宇宙人の孤独を知っていますか?』

それぞれの星がどのくらい離れているのか、という話。

直接会うことは無理でも、通信くらいなら…なんて思っていたけれどね…

無理そう(絶望)

 

P246

逆に、これまで宇宙人からまったく音沙汰がないことが、宇宙における「文明の寿命」の短さを示唆しているのかもしれません。

本当なら、文明が発達するほど、宇宙人と交信できる能力は高まるはずです。

なのに、どこからも何も言ってこないのは、文明の発展は原子力などの、文明を一瞬で崩壊させる不安定要素も増やすからかもしれません。

 

広い宇宙で、数多の星々。

生命が誕生していそうな星は、観測できるだけでわずか数える程度。

どこも遠い。

 

もしかしたら私たち地球人は、

この真っ暗闇の宇宙でひとりぼっちなのかもしれない。

 

めっちゃ悲しい…。

 

 

SFで、宇宙人が地球を占領しにくるっていうシチュエーションはいくつもあるけれど、

広い宇宙でやっと会えた『おしゃべりできそうな仲間』だよ?

まずは抱擁だよ。

ようこそ、地球へ。出会えてよかった。

全米が泣くこと間違いなしよ。

 

 

 

ストーリーとしても、初めて声をかけてくれた親切な宇宙人とも、

念願の再会を果たし友達になれて、めでたしめでたしよ。

特にP233の再会のシーンはよかったね。

 

 

面白かった。とても。

これは本棚で保管して、数年後にまた読み返したいね。

 

 

NASAの「ボイジャー1号」でシステム障害 エンジニアが「数十年前に書かれた資料」と格闘中 - ITmedia NEWS

これが、地球人が宇宙に放った、最も遠くにある『遺書』。

文明が滅びる前に見つけてくれないと、本当に遺書になってしまう。

 

 

 

TOP画は以下からお借りしました!

クレイ 宇宙船1 - No: 186575|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK (photo-ac.com)

宇宙はロマン!

 

 

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引き続き読んでいきたいね!!

 

 

他にもおすすめの本があれば教えてくださいね!!

それでは素敵な読書ライフを!!