タイトル:青のフェルマータ

著者:村山由佳

発行:集英社文庫

発行日:2000年1月25日

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ 

両親の不和、離婚から言葉を失った里緒は、治療に効果的だというイルカとのふれあいを求めて、オーストラリアの島にやってきた。

研究所のイルカの世話を手伝って暮らす彼女に島に住む老チェリストJBが贈る「フェルマータ・イン・ブルー」の曲。

美しいその旋律が夜明けの海に響いたとき、海のかなたから野生のイルカが現れて――。

心に傷を持つ人々が織りなすイノセントでピュアな愛の物語。

 

 

 

ストレスなどで耳が聞こえなくなる突発性難聴はわりと有名になってきたけれど、

声がでなくなる心因性発声障害はまだまだ認知度が低い。

突発性難聴は薬でどうにかなりそうな気配があるけれど、声の方はどうなんだろうね…。

 

 

著者もあとがきで触れていたけれど、

この物語が執筆された1995年頃はちょうどイルカブーム。

ペットブームの流れや海洋汚染などの環境問題などもあって、海の生き物であるイルカにスポットが当たったのだろう。

2000年初頭からは日本でもアニマルセラピーの認知度は上がり、研究も本格化し、

日本のイルカセラピーの最盛期は2010年前後か。

現在は少し下火になりつつある気がする。

 

 

 

 

 

物語として。

途中まではとても私好みだった。

 

綺麗な海の近くにある家。

声が出ない日本人の里緒にも親切にしてくれる周りの人びと。

愛犬がいて、イルカがいて、大好きなチェロが弾ける。

そして恋する相手がいる。

問題は声が出ないという事だけ。

イルカとのふれあいがあって、

里緒は少しずつ自分の複雑な心と向き合っていくお涙頂戴の成長のストーリー。

 

かと思いきや。

 

 

※ここからはネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果として、里緒は声を取り戻した。

でもイルカとのふれあいで癒されたからではないし、

想い人や周りの人の支えがあったからでもない。

声を取り戻したきっかけは、想い人と身体を重ねられない鬱憤で、乱暴者と名高い男に抱かれたからである。

 

まぁーーーー・・・・・・

身勝手な大人の物語である……

 

 

結局この物語はなんだったんだ?

 

という疑問だけが残る、個人的には消化不良の物語だった。

 

ご存知の通り、R18物ダメなので……

そんなR指定される表現はなかったけれど、苦手なので僅かでもそういう表現あるとね…

余計食えない話だった。

 

身勝手に周りの人間を傷つけていく里緒にも感情移入できないし、

物語としてオチが弱いというか、オチてないというか、

全てが宙ぶらりん感がぬぐえない…。

 

自閉症の女の子はどうなったの?

里緒が傷つけた乱暴者ゲイリーは?

ゲイリーの恋人であり、里緒の想い人の娘フィオナが事故る必要あった?

ゲイリーに報復の材料として使われた野生のイルカは?

 

この物語が一番に描きたかったものは一体なんなんだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

P41

イルカたちに、いちばん望むこと――。

いちばん、などと言われなくても、望むことはひとつに決まっていた。

わたしは手を伸ばし、机の上のボールペンをとりあげると、そばに広げられていた真新しいノートの一行目に、へたくそな字で小さくこう書いた。

 

Love me.

 

それが、この島での始まりだった。

 

里緒はやや身体の成長が遅れていた。

生理が来たのが中学三年。学年で一番遅かったらしい。

(中学生だし、全然一般的な範囲だと思うけれど)

 

傷ついた里緒が早退すれば、家に母親が浮気相手を連れ込んでいた。

父親に懐いていた里緒はそのことを告げ口し、

怒り狂った父親は母親に暴力を振るいまくった。

そして父は言った。「いったいあいつは、だれの子なんだ?」と。

里緒が声がでなくなった経緯である。

 

中学3年でしょ!?

どうなるか予想できなかったの!?

そりゃあ…自責の念で声出なくなるかもねぇ……

 

 

 

 

 

P74

『なあに?この山のようなフェルマータは』

 

JBの答えはたった一言だった。

「――永遠」

わたしは、そのあと何度も、JBの言ったその言葉について考えた。

永遠。

青の、永遠。

 

オーストラリアで出会った、60代半ばも過ぎた老チェロリスト。

里緒がこの島でチェロの稽古をつけてもらう相手で、想い人でもあった。

その彼から貰った、里緒の為に作られた曲が、『フェルマータ・イン・ブルー』である。

 

里緒の年齢からしたら父親ほどの年齢のJB。

里緒は彼と身体を重ねたかったわけだが――

当たり前だがJBに拒否された。

 

これ、純愛とは呼べんね……

父親に娘として愛してもらえなくなったから、

父親の代わりとして愛してくれる人を無意識に探したんでしょうよ。

結果、思春期と重なり、『親子愛』なのか『恋愛』なのかの区別つかなくなってしまったように思う。

ちゃんとカウンセリング受けて欲しいね。

 

 

 

 

 

P94

自由であること。

野生とは、つまり、誇り高い自由のことだ。

 

私は動物が好きというより、野生動物が好きなのだけれど、

それは多分彼らが人間と対等だからだと思う。

ペットと違って人間に媚びて餌を貰う必要などない。

彼らが考えるのは、他の生き物と同じように人間も生存に利用できないかだけ。

気に入らなければ攻撃してくる。彼らの都合で。

その自由さが、好き。

(現在2023年の11月なのだけれど、世間は熊被害で話題になっている)

 

 

 

P162

「(省略)テクニックも表現も、素晴らしかった。なのに、何かが足りない。

何だと思うね?自信だよ。

きみのは、『よろしかったら聴いてくださいませんか』なんだ。

そうじゃない、『聴け!』だ。

演奏家にとって最終的に重要なのは、『この音を聴け!聴いて、打ちのめされるがいい!』という、その自信なんだ」

 

大事なことだよねぇ…

音を飛ばすには、音量じゃないものな…

ありったけの自信が必要だ…

 

 

 

 

島に住む、ゲイリーという荒くれ者がいるのだが、

里緒は彼が自分と同じ、親から愛されなかったという傷を持つことから徐々に惹かれていく。

で、なんやかんやあって、彼に抱かれて、

その後にJBのことが本当は好きだったのに!っと勝手に傷ついて、

里緒を愛してくれようとしたゲイリーを見捨てて一人逃亡。

ゲイリーにはフィオナという恋人がいて、フィオナはJBの一人娘。

けれど、JBはフィオナにチェロを教えず、里緒にばかりレッスンをつけ――。

 

フィオナ可哀想すぎないか?里緒が悪女すぎる。

ゲイリーと里緒が寝たのを知ったフィオナはショックのあまり家を飛び出し、

そのまま車で事故を起こし入院。

 

里緒の身勝手な振る舞いに傷ついたゲイリーは、里緒に会いに来る野生のイルカを殺傷。

研究所でイルカの治療を寝ずに行う友人の横で、

JBへの愛を爆発さえた里緒が通訳してくれる友人を間に挟み、

電話でJBへの告白を行う――。

 

いや、意味わからんやろ……。

物語は、JBが里緒の告白を聞きに直接そちらに向かうよ、みたいな宣言で幕を閉じている。

JB…あんたの娘が事故って死にかけたのは、里緒のせいなんだぞ?

しかも娘が事故った直後だぞ?

正気か??

 

 

 

誰一人として幸せになっていないからね。

里緒は自分と同じ傷をフィオナにつけた形になるし、

ゲイリーの古傷にはカサブタをひっぺがして塩を塗り込んだし、

巻き込まれた野生のイルカは単なる報復の道具になり下がった。

JBへの愛も恋愛的な愛なのか不明だし、

なにより、里緒の声がちゃんと出るようになったというわけでもない。

 

 

 

……不満だね!!

 

 

 

 

 

物語の紹介文、『ピュアな愛の物語』ってなっているけど、

ピュアとは?って感じです。

 

 

TOP画は以下からお借りしました!

イルカのシルエット - No: 27483108|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK (photo-ac.com)

 

 

 

 

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生きてりゃ傷ついたり傷つけたりもするもんだ!

くよくよすんな!気にすんな!

生きのびるには強くなるしかないんだよ!!!

 

 

他にもおすすめの本があれば教えてくださいね!!

それでは素敵な読書ライフを!!!