タイトル:冒険の書 AI時代のアンラーニング

著者:孫泰蔵

発行:日経BP

発行日:2023年2月22日

 

今回の記事、書評やレビューなどと言えるものではない。

これは未来に向けた自分自身へのメッセージである。

 

ビジネス書はタイトルや話題性だけで買うな。

 

 

何故これをビジネスパーソン向けに売り出しているのか、本当に謎である。

正直、小学生や中学生が夏休みの自由研究で取り扱うような内容だ……

 

忘れることなどないだろうが、

もし十数年経って記憶が忘却された際に、間違ってもこの本を再び手に取らないために、私はここにあらすじと感想を記載しておく。

 

酷評も酷評なので、読むならば自己責任で閲覧して。

 

 

 

 

 

 

 

まず。

 

この本は、「AIの時代なんだから、教育の有り様も変える必要がある」という点を指摘した書籍だ。

真に仰る通りだと思う。

書籍の進行は、著者が主人公となって、現在の「教育」や「制度」の基礎となる理論を唱えた偉人たちにタイムスリップして会いに行く、という小説風で書かれており、読みやすい。

「どうして勉強しなくてはならないのだろう?」という、小中学生の頃に誰しもが一度は思ったであろう疑問を、過去の名著を引用して語っていく。

 

この時点でビジネスパーソン向けではない…。

勉強しなくてはならない理由など、普通の社会人ならば自ら見つけて、実践している。

ただ、名著の紹介もしているし、多様な考え方を知る、という意味では、暇なら読んでもいいかもしれない…。

とはいえ、どう頑張っても小中学生向けの書籍である。

 

 

この書籍の如何ともしがたいところは、

過去の偉人の築き上げたものをぶち壊そうとしているところにある。

例えば。

 

 

 

P87

また、「しなければならない」と同時に、「してはいけない」ということも社会にはたくさんあります。明らかに失敗しそうなことをやろうとすると、先生や親、先輩、友だちなどがその人に対して「ダメダメ、それじゃあ失敗するよ!」「ちがうちがう、こうやったほうがいいって!」など忠告したり、たしなめたり、自分の意見を押しつけたりします。

(省略)

しかし、それは僕に言わせれば、本当によけいなお世話です。

「害」だといっても言いすぎではありません。

なぜなら、彼らは失敗から学ぶ「権利」を奪ってしまっているからです。

 

明らかに失敗しそうなことをやろうとしていたら、そりゃ止めるわ!!

人類が文明を持ち、こうして栄えているのは、先人たちの「失敗」を知り、

そこから「成功」する最も効率的な方法を次世代に伝えてきたからである。

 

本人一人が失敗する程度ならいいが、今や世界はインターネットや航空機で繋がっているのだ。

一人の失敗が、小規模ながら社会へのダメージとなることだってある。

COVID-19に感染しているのにマスクもせずに外出したり、

違法ダウンロードサイトで「バレないだろう」とか思ってウイルスに感染した挙句、知人にウイルス振りとかがいい例である。

明らかな失敗だろう!!やめろばか!!害はどっちだ!!

 

「多分大丈夫」とか「やってみなくちゃわからない」なんて、

それは「可能性のある分野」でやる事であって、先行研究を調べることもせずに

「ボクのかんがえたサイキョウのほうほう」を試す免罪符ではない。

 

 

P87に辿り着く前にも、

「大人も子どもも一緒に勉強しよう(物理)」という、効率丸無視の発言があったり、

時間の無駄すぎて読むのを止めた。

前提知識や経験のある人間と、まるで素人の人間とでは、物事の理解スピードは異なる。

その辺りをざっくり効率よく教育しようと生み出されたのが、クラスという年齢別の学校制度だ。

大体、「社会人経験がなくイメージがわかず、そのせいでつまらない大学生活だった」とどこかで述べられていたが、著者が!自分の判断で!大学へ!進学したんだろうがッ!!

自分の判断ミスを、勝手に教育制度へ責任転嫁するとは何事か!!

そもそも発言が矛盾してる。

「経験がない人」と「経験がある人」を一緒に教育することが難しい、って自ら言ってるものである。大体の足並みをそろえたのが、年齢で区切った義務教育だろうに。

 

 

 

と、いうわけで。

怒り心頭の私は途中で読むのを止めました。

 

多少義務教育で扱う内容は変更しなければならないことに関しては同意だが、

学校教育そのものを否定する点については真っ向から反対である。

 

先人たちが築いた教育制度のおかげで、私たちは文字が読めるし、書けるのです。

教育は、あって当たり前じゃない。

毎回「やってみなくちゃわからない」で一人一人が文明0からスタートしてたら、人類はいつまでたっても労働から解放されない。

だから学校には「行きたくなくても行かないといけない」し、

大人が「やらないといけません」と言ったら、それ相応の理由があるのだから、やっておくべきだ。

もちろん、子どもはただ従うのではなく、疑問に思ったらそう言われる理由を調べ、考える必要がある。著者と同じようにね。

そして、大人は「しなければならない理由」を相手に説明できないといけない。

で、考えて調べた結果、子どもが「ひとりで勝手に生きる!」というのなら、山や海で動物として暮らしなさい。

社会性動物である人間は、ある程度協調性がないと生きていけないのだから。

 

 

こんなのはどれだけ世界が進歩してAIが発達しても、基礎も基礎の考えである。

基礎も知らずに応用なんかできるか!

著者はそこらへん侮って甘ったれたことを書いていたけれど、

ラノベの主人公じゃないんだから、「素人が大発見!」とか「逆転の発想!」なんてないわけよ。

勉学を侮るなんて、笑止千万。

東大出てるのになんでこんなチンプンカンプンな書籍書いたのか、本当に謎。

勉強したくないのにさせられていた、という周囲への鬱憤を、

教育制度へ八つ当たりしているように感じるね。

 

 

本書の内容は、冒頭にも記載したが、小中学生の夏休みの研究で扱うものだ。

話の進行や結論としても、とても学校図書にはおすすめできないものだが、

反面教師として手に取るのなら適している。

 

 

無知な子供に甘言を囁いて、危険な行動を見て見ぬふりするなんて、

大人として恥である。

 

 

 

 

いやぁ…‥‥

今年は、とことんビジネス系の書籍との巡り合わせが悪かった…。

 

以上、未来の自分に向けた「買うなよ」というメッセージでした。

おしまい。