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~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

最近リリースされた新譜から ⑲

メンデルスゾーンの交響曲の新譜が出ていましたので、最近の演奏はどうなんだろうと思いつつ買ってみました。3,4番だったら手を出さなかったかもしれませんが、3,5番というのがミソです。最近よく、初期の1番とか5番とか聴いてみたくなります…。

【CDについて】

作曲:メンデルスゾーン

曲名:交響曲第3番イ短調 op56 (38:02)

   交響曲第5番ニ短調 op107 (26:50)

演奏:エメリャニチェフ指揮 スコットランド室内管弦楽団

録音:2022年2月14-18日 ダンディー Caird Hall

CD:CXD 867(レーベル:LINN)

 

【曲について】

メンデルスゾーンの交響曲第5番は、第1番に次ぐ2作目の交響曲で、「宗教改革」という標題でも呼ばれますが、これは初版の際に出版社によって付されたものとのことです。この曲はアウクスブルクの信仰告白の300周年を記念して作曲されましたが間に合わず、その後メンデルスゾーンの生前はあまり演奏機会に恵まれず、1回演奏されただけでした。曲のモチーフにルター作曲のコラール「神はわがやぐら」や、ドイツの賛美歌「ドレスデン・アーメン」が用いられています。

 

【演奏について】

メンデルスゾーンの交響曲の新譜というのが目についてしまいました。最近なんとなくメンデルスゾーンに惹かれるものがあります。まだ若い頃は聴きやすい曲だくらいの印象でしたが、年を

とると、この若々しい音楽になんとなく惹かれてしまうのですね。演奏しているエメリャニチェフは、イタリアの古楽器オーケストラの「イル・ポモ・ドーロ」の首席指揮者を務めていて、スコットランド室内管には、前任者のティチアーティの代役を務めてシューベルトの「グレイト」を指揮した所、これが大評判になり、その後首席指揮者を務めることになりました。古楽のオーケストラとモダンオーケストラの両方で活躍しているようです。

 

エメリャニチェフのグレイトの録音風景。

HIPの雰囲気が濃いみたいですが、是非これは聴いてみたい演奏です。

 

さて、交響曲第3番から聴いてみます。何かHIP風味があるのかなと思いましたが、これは普通に室内管弦楽団の演奏ですね。室内管弦楽団らしく見通しのいい演奏で、適度なテンポの変化もあり、活気もある演奏と思いました。編成が小さい分、本当に室内楽的な響きがする感じです。第二楽章のスケルツォは活き活きしていますし、メロディも適度に歌われて、細部までクリアで好感がもてました。スコットランド室内管弦楽団にとっては、これはむしろご当地の曲という感じでしょうか。さすがに流麗かつ爽やかなメンデルスゾーンだと思います。

 

期待の第5番です。第3番と演奏の印象が変わりました。並べて聴くと、この曲は意外とドイツ的で重厚なのですね。むしろ、第3番の方が重厚というイメージを持っていたので、認識が違っていたようです。小編成でも重厚な雰囲気が出るように演奏しているのだという気がしました。第三楽章のメロディの前半、歌曲のような哀愁のメロディですが、透明感のある美しい音が奏でられます。全体としてテンポはちょっと速めですが、メンデルスゾーンらしい活気あふれる演奏で、大変楽しめたCDでした。

 

【録音について】

大変クリアな録音で、バランスもよく、優秀だと思います。

 

【まとめ】

YouTubeで聴くと、エメリャニチェフはHIPだとかなり思い切った演奏をしているような感じですが、ここでは若々しい活気のある演奏を聴かせてもらいました。今35歳なんですね。多才な方だと思いますので、これからの発展が楽しみだと思います。

 

購入:2023/12/06、鑑賞:2023/12/08

【CDについて】

①作曲:シューマン

 曲名:おとぎ話 op132 (15:07)

②作曲:メンデルスゾーン

 曲名:2つのコンツェルトシュテュック第1番へ短調 op113 (8:28)

    2つのコンツェルトシュテュック第2番二短調 op114 (8:32)

③作曲:ブラームス

 作品:クラリネット三重奏曲 イ短調 op114 (23:19)

演奏:ウラッハ(cl)、ヴァイス(va)①、デームス(p)①②、バルトシェック(bhrn)②

   クヴァルダ(vc)③、ホレチェック(p)③

録音:1950年①②、1952年③ ウィーン Konzarthaus Mozartsaal

CD:UCCW-9017 (レーベル:Westminster、発売:ユニバーサル・ミュージック)

 

【曲について】

メンデルスゾーンのコンツェルトシュテュックは、クラリネットとバセットホルンの作品で、当時のクラリネットの名手であったベールマン父子のために書かれました。ピアノに変わって管弦楽伴奏版も存在します。作曲されたのは24歳ころですが、出版が死後になったため、作品番号は大きな番号になっています。特に第2番の方は、ベールマンに送られた時、ユーモアにあふれる解説がついていましたが、その通りの楽し気な曲になっています。

 

【演奏について】

この12月になってアンコールプレスされたWestminsterの名盤の中から、今回1枚買ってみました。特に再発売といった形ではありません。UHQCDということで違いは判りませんが、気分は変わります(笑)。元のLPとの関係では、このうちシューマンとメンデルスゾーンが1枚のLPで、ブラームスはLPではホルン三重奏曲と組まれていたようです。その片割れのホルン三重奏曲はブラームスのクラリネット・ソナタと組まれてCDになっているので、そっちも聴いてみたいところですが、まずはこのCDを買ったので、聴きましょう。

 

「おとぎ話」は、シューマンの最後期の作品の一つにあたります。クラリネット、ヴィオラ、ピアノという編成で、中音域の楽器が2つという形。モーツァルトの「ケーゲルシュタット・トリオ」と同じ珍しい編成で、チェロの入る三重奏より全体的に明るく可愛らしい感じが出ています。ただ、音域が近いのでクラリネットの音は目立ちづらいかな?と思いました。この演奏はデームスのピアノの音が強いような気がします。基調として似た曲で構成されていますが、4番目の曲が躍動的で面白かったです。

 

メンデルスゾーンの「コンツェルトシュテュック」は、クラリネットとバセットホルンという、音域の違う同族での二重奏+ピアノというスタイル。クラリネットとバセットホルンの競演が聴きどころというところですが、そもそもメンデルスゾーンのこの曲も面白かったです。第1番では二重奏で美しいメロディが続く第二楽章や、楽し気な第三楽章。第2番は全体的に躍動的で、名手ウラッハの演奏がとても映える曲だと思います。素晴らしい録音でした。

 

最後はブラームスですが、これは別のLPからのもので、ウラッハ以外はメンバーが違っています。ブラームスの晩年の曲で、クラリネット五重奏曲と同時期作曲された名曲です。チェロの哀愁を帯びた主題で開始され、クラリネットへと受け継がれていきます。第一楽章は移り変わる感情表現の美しい曲。クラリネットとチェロと掛け合いながらというところですが、ここではチェロの方が目立つ気がします。第二楽章は今度はクラリネットから始まり、呟くようなチェロとの掛け合いをしみじみと味わうことができました。明るい感じの第三楽章を経て、躍動的な第四楽章ですが、クラリネットとチェロの演奏は常に哀愁を帯びた躍動感です。そして五重奏曲の方とは違って強奏で終わりました。

 

今回の鑑賞は、ウラッハの音を味わうという目的もありましたが、むしろ曲の素晴らしさを味わったという印象でした。もちろんウラッハの名演あってこそなのですが。

 

【録音について】

モノラル時代の優秀録音です。UHQCD化して音質は向上しているのだと思います。厳しいところもありますが、クリアな音で聴くことができました。

 

【まとめ】

さすが名手の名録音です。演奏も録音も古さを感じるところもありますが、伝統の素晴らしさを感じるCDだと思います。

 

購入:2023/12/06、鑑賞:2023/12/07

師走にマーラーのCDを消化しよう ①

マーラーは基本的に苦手なので、克服しようとCDは買ってみるのですが、どうにも手が出ないので、はっきり言っていろいろ貯まっていきます。在庫一掃はとても無理ですが、ちょっとまとめて聴いてみようと思いました。年内最後のシリーズです。5枚くらい聴いてみます(笑)。

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ⑲

【CDについて】

作曲:マーラー

曲名:交響曲第5番嬰ハ短調 (68:54)

演奏:シノーポリ指揮、フィルハーモニア管弦楽団

録音:1985年1月 ロンドン All Saints Church

CD:415 476-2(レーベル:DG)

 

【曲に関して】

マーラーの交響曲は、2〜4番が歌入りで、この5〜7番が管弦楽のみとなります。中でもこの5番は比較的親しみやすく、第四楽章がヴェニスに死すに使用されたこともあって、かつてのマーラーブームのきっかけとなったとのこと。この曲は、マーラーがウィーンで活躍した頃に作曲され、アルマとの出会いや結婚もこの曲の作曲中のことでした。

 

【演奏についての感想】

マーラーの歌の無い中期の三曲の中では、私はこの第5番は、クラシックを聴き始めて比較的初期の頃から聴いていたと思います。第1番など聴いあとで、次に聴く曲としては、最も入りやすそうだと、いろいろ解説本を読んで感じたからだと思いますが、実際当時の私としては、こういった長い曲を聴くのは、そう簡単なものでもありませんでした。映画に使われたということも親しみやすいのですが、そもそも当時は「ヴェニスに死す」を見ていたわけではありません。そう言えば、あの主人公は独特ですね。マーラーもモデルになっているようで、マーラーの曲とシンクロする異常性と諦観がなんとも言えない映画でした。

 

この演奏ですが、まず冒頭のババババーが少し早い気がします。しかし全体が速いわけでは無いようです。運命だって最初の動機が速いからと言って全体が速い訳とは限らないですね。あっ、あれも5番か…。印象としては、緩急のメリハリや強弱のメリハリがはっきりした演奏と思いましたが、輪郭はあまりはっきりしている訳でもなく、いろいろ細部も前に出てきて、渾然一体となっている感じがしました。そんな中で後期ロマン派的管弦楽が冴える。リヒャルト・シュトラウスみたいな音を感じたりしました。そんないろいろな効果が一様でなく混ざっていて、いろいろ工夫を凝らされた、興味深い演奏だと思いました。

 

そんなこんなで第四楽章まで来ました。出だしの揺らめきの浮遊感がいいですね。映画で繰り返し聴いたメロディの、じっくり歌われる強弱やテンポの移ろいが素晴らしいと思います。光り輝く波打ち際で、美少年のシルエットを前に光悦の表情を浮かべる。とても健康的とは言えない美学に魂を奪われるのでした。そんな感じに浸っているうちに、いつのまにか第五楽章に入って、だんだん現実に戻ってきます。再び混沌の雰囲気で進み、押しては引く様なアクセントを不思議に感じつつ盛大に終わるのでした。

 

【録音に関して】

音は広く捉えられて迫力のある録音だと思いますが、少し遠く感じる雰囲気がないでもないかな?と思いました。

 

【まとめ】

この曲についてここで書くのは初めてですが、改めてよくまとまったいい曲だと思いました。少しづつマーラーに免疫ができてきたかな…(笑)

 

購入:不明、鑑賞:2023/12/04

【CDについて】
作曲:グラズノフ

曲名:ヴァイオリン協奏曲イ短調 op82 (20:00)

作曲:プロコフィエフ
曲名:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 op19 (22:22)

作曲:シチェドリン
曲名:ロシア受洗一千年記念のスティヒラ(1988) (22:14)

演奏:ムター(vn) ロストロポーヴィチ指揮 ナショナル交響楽団
録音:1988年3月 ワシントン Kennedy Center for the Performing Arts

CD:0630-17722-2(レーベル:ERATO)

 

【曲について】

プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番は、1917年に作曲され、1923年に初演されました。いろいろとアヴァンギャルドな時代ですが、メロディのとても美しい曲なのでした。雲間に漂うような雰囲気と躍動感を行きつ戻りつする曲で、白昼夢のような不思議な世界観があります。

 

【演奏について】

このCDは、ジャケットが印象的で、なかなかいいセンスだと思います。でもたぶんオリジナルではなくて、再発時のジャケットではないかと思います。オリジナルはオーソドックスなものでした。ムターの演奏するプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番というと、なかなかイメージが湧きづらいのですが、どうなんでしょう。そんな興味にひかれて、買ってみました。

 

グラズノフは、後期ロマン派時代のロシアの作曲家ではありますが、音楽はかなり西欧志向です。この曲は、グラズノフの曲の中でも比較的よく演奏される曲と思います。内容はやはり、ロシア風の哀愁のあるメロディという印象はあまりなく、聴いていると、大地の風景よりは、西欧に開いているロシアの港町の風景なんかが頭に浮かびました。ムターの演奏は、技巧的部分もあるこの曲を美しく表現している素晴らしいものでした。

 

そして、楽しみにしていたプロコフィエフ。冒頭からねっとりと歌われるのかと危惧していましたが、かなり抑えて、透明感のある演奏になっていました。これでひと安心。ゆっくり聴いていけます。素晴らしく安定した演奏ですが、ムターの特徴はかなり抑えられています。第二楽章のスケルツォのリズムなどは、ムターの技巧も冴えて聴きごたえがあります。そして第三楽章の前半でヴァイオリンがメロディを歌う部分は、ムターの面目躍如という感じです。全体としては、とても美しい演奏に仕上がっていました。ただこの曲とムターの相性という意味では、やはりちょっとね…という感じはあると思います。

 

最後はシチェドリンの曲で初めて聴きます。この曲はオーケストラ曲なので、ムターの登場はありません。シチェドリンがロストロポーヴィチに捧げた曲で、この録音の月に同じメンバーで初演されました。宗教性のある管弦楽曲で、旋律の奥に聖歌の響きを感じつつ時折、先鋭的な響きを連発する現代的な曲でした。今回初めて聴き知った曲となりました。

 

【録音について】

 ヴァイオリンとオーケストラの響きがバランス良く捉えられ、細部までクリアな優秀録音です。

 

【まとめ】

ムターとプロコフィエフ第1番の組み合わせということで興味深く聴きました。結果はそうだよね…という感じではありますが、ムターの素晴らしい演奏を楽しめるものでした。ロストロポーヴィチの指揮も表情豊かなサポートで、とてもいいと思いました。

 

購入:2023/12/01、鑑賞:2023/12/04

ショスタコーヴィチの時代 ㉑

久しぶりの交響曲の登場です。ショスタコーヴィチのプラウダ批判前後に亘って作曲された大規模な曲で、ショスタコーヴィチ初期の代表作の一つであり、それまでの到達点が盛り込まれたものとなっています。また、ショスタコーヴィチの作品でも、この時期の一つの転機を見ることができる作品群であると思います。この曲は作曲後、初演は取り下げられ、長らく演奏されることがありませんでした。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:交響曲第4番ハ短調 op43 (63:47)

演奏:スラットキン指揮、セントルイス交響楽団

録音:1989年10月3日 セントルイス Powell Symphony Hall

CD:SICC 1488(レーベル:RCA、販売:ソニーミュージックジャパン)

 

【曲と演奏について】

この交響曲は、ショスタコーヴィチの4番目の交響曲として、1935年から1936年にかけて作曲されました。作曲中に発生した「プラウダ批判」とその後のショスタコーヴィチの身辺の人物の拘留や処刑という状況の中で作曲・準備は続けられており、1936年末には初演を迎える予定であったということです。レニングラード・フィルによるリハーサルは続けられていましたが、そういった異常な状況の中での継続に大きな抵抗が発生したことや、当局からの圧力もあって、初演は断念され、1961年にコンドラシンによって初演されるまで、日の目をみることはありませんでした。

 

この曲は私がショスタコーヴィチに興味を持って聴き始めていた頃は、全集の録音という形で存在し、単独で録音されることは稀ではなかったかと思います。そして、このスラットキンのショスタコーヴィチも他の3つの交響曲とともに、1980年代末に録音されたのですが、日本では第4番のみ発売されませんでした。当時は、それほど聴く機会の少ない話題に上らない曲だったのですが、このCDがやっと日本で発売され(2011年)、レコ芸で取り上げられる頃から、この曲の録音が増え、ついにはレコードアカデミー賞までとってしまうことになります(2012年度/インバル=都響盤)。このスラットキンによる録音は、その日本での転換期に発売され、第4番人気が急上昇した契機の一翼を担っているものだと思っています。

 

曲は、破壊的で印象的な強奏で入っていきます。次々と現れるメロディに、今までのいろいろなタイプの、ショスタコーヴィチの曲でみられた雰囲気のフレーズを回想できます。そして、静寂と強奏が交差する展開となっていきます。そこには、これから作曲される作品の原形も見てとることができると思います。そして、突如として始まる弦楽器の激しい合奏。この曲の名場面です。最高潮に達したあと再び静寂から重々しいコラールと機械音楽のような上昇音。アヴァンギャルドなショスタコーヴィチが現れ、また静寂に戻り、第一楽章が終わります。

 

第二楽章は、静かで短めのスケルツォ楽章。ショスタコーヴィチのいつもの強烈にグロテスクなものではありませんが、静かな中で繰り返される主題のフレーズが効果的な音楽です。そして最後となる第三楽章。静かなゆっくりとした葬送行進曲で始まります。そして曲は加速して一度盛り上がり、その後は古今の作品のパロディなどを含むいろいろなメロディが現れてきます。そのような楽しげな時が静かに消えていくと、ティンパニーの強打が静寂を打ち破り、金管の咆哮で葬送行進曲が戻ってきます。そしてそれも鎮まると、チェレスタの音と共に静かに曲は終わりました。

 

この曲から憶測できることはいろいろあると思います。ラストは、ショスタコーヴィチの最後の交響曲の第15番をも思い浮かべますが、これは何を意味するのでしょう。この時点でショスタコーヴィチはこれが最後になるかも知れないと悟って取り組んだのか、あるいは諸々の芸術の終焉を表現したのか、または自身の前衛的で自由な芸術の終焉と転換を意味するのか、いろいろと憶測は出来ると思います。最後のティンパニーの強打から始まる一連の動きはマーラーの交響曲みたいです(というか、マーラーの交響曲のように表現することもできます)。確かにショスタコーヴィチは、その表現のためにマーラーをかなり参考にしているようです。

 

この曲を聴いていると、この時期の状況下での作曲に、ショスタコーヴィチの覚悟のようなものを感じますし、初演の中断には大きな葛藤があったものと思います。そして、この曲で一つの区切りとなって、ソビエト社会の中と折り合いながら、大作曲家の道を更に進んでいくのでした。

 

このCDにおけるスラットキンの演奏は、オーソドックスで、録音も素晴らしく充実した演奏と思います。ただし、人気曲となって演奏され始めてからは歴史が浅いので、まだまだいろいろな録音が出てくると思います。初演のコンドラシン盤以降は、主に全集の中で録音がされていますので、アシュケナージ、ハイティンク、ロジェストヴェンスキー、ヤンソンス等一通りそろっているとは思いますが、この曲で何かを表現したいという演奏が、今後たくさん出てくることに、期待していきたいと思います。

 

2013年12月1日のゲルギエフとマリインスキー劇場管弦楽団によるライヴ

 

さて、いまショスタコーヴィチの作品を順に聴いてきて、前半の総決算と過渡期を進行中です。次回以降、徐々に新しいショスタコーヴィチへと移っていきます。

 

購入:2013/01/20、鑑賞:2023/12/07(再聴)

【CDについて】

作曲:ベートーヴェン

曲名:①七重奏曲変ホ短調 op20 (42:19)

   ②六重奏曲変ホ長調 op71 (20:07)

演奏:バリリ弦楽アンサンブル①、ウィーン・フィルハーモニー木管グループ①②

録音:1954年3月①、1949年② ウィーン Konzarthaus Mozartsaal

CD:MVCW-19007 (レーベル:Westminster、発売:MCA VICTOR)

 

【曲について】

 ベートーヴェンの六重奏曲というと2曲あります。このop 71と、op 81bのものです。後者はホルン2本と弦楽四重奏という編成で、そちらも珍しい編成と思いますが、このop 71の方は、クラリネット2、ホルン2、ファゴット2という管楽六重奏曲で、中低音域の管楽器による編成です。作品番号は中期に当たりますが、両者ともに比較的初期に書かれて、後になって出版されたとのことです。

 

【演奏について】

時々思い出したように復刻される、Westminsterレーベルの録音です。大戦直後の1950年代に最盛期を迎え、モノラルですが当時の名演奏家たちの美しい録音が多数残されています。今年は、創立75周年ということで、一部音源のUHQCDによるアンコールプレスが案内されています。聴いてみたいのはいろいろありますが…。今回は、そんなリニューアル対象音源の旧盤をオークションでお安く買ってみました。


CDが始まります。あぁこれはいい音ですねぇ。この時代の典雅なウィーンの音です。ディヴェルティメント的な音楽として作曲当時大人気となった曲とのことですが、少し前の時代のウィーンの音が溢れ出てきます。そして、ウラッハのクラリネットやバリリのヴァイオリンの音が、この上なく美しいのでした。こういった曲ですので、かけ流し(温泉か…?)しておくにも最適で、部屋がいい雰囲気に包まれます。


六重奏曲の方は、CDの最後にあって最初から聴くと目立たないのですが、第一楽章が立派で、以降は比較的シンプルでした。管楽六重奏の渋い雰囲気が楽しめますが、曲調はあくまで明るい感じです。全体を通して、穏やかで優雅な雰囲気のCDでした。


【録音について】

モノラルではありますが、音はクリアで、充分演奏の雰囲気を楽しめるものでした。


【まとめ】

久しぶりに聴くWestminsterのCDの雰囲気はなかなかよかったです。気になっているものもあるので、今回のアンコールプレスから、1〜2枚買ってみようかなと思いました。


購入:2023/10/02、鑑賞:2023/11/28

【CDについて】
作曲:シューマン

曲名:交響曲第2番ハ長調 op61 (37:51)

   マンフレッド序曲 op115 (12:10)

演奏:シノーポリ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1983年6月 ウィーン ムジークフェラインザール
CD:F35G 50110(レーベル:DG、発売:ポリドール)

 

【曲について】

シューマンの3番目の交響曲で、1846年に完成しました。初演は同年にメンデルスゾーン指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって行われています。1843年からメンデルスゾーンが設立したライプツィヒ音楽院で教鞭を執っていたシューマンですが、次第に精神障害の症状に悩まされるようになり、辞任後ドレスデンに移りました。この曲はドレスデンで、ピアノ協奏曲に続いて作曲されています。

 

【演奏について】

シノーポリの演奏に関しては、聴いた数がそれほど多くないのではっきりしたイメージを持っていません。ただ、最近シューマンの第2番はいろいろ聴いたので、このCDを聴くのは楽しみではあります。なかなか評判の演奏のようです。どんなのでしょう。

 

さて、第一楽章。なんだか混沌として始まりますね。そして起伏の大きい序奏。ちょっと、何コレ?という感じで惹きつけられます。主部に入ってからも、演奏はかなり尖っています。細部まで明瞭ではありますが、いろんな楽想が次々と現れ、混然一体と襲ってくる感じです。おまけに、かなり快速で駆けていきます。これは凄いですね。ウィーン・フィルが全開です。シューマンがあちこちに飛び交っている感じです。

 

そして第二楽章のスケルツォは、第一楽章の調子で進めばそうなりますよね…。という感じの溌剌とした進行です。このスリルと美音を合わせた演奏ができるのは、ウィーン・フィルだからではないかと思いました。これはめったに聴かれないような迫力があります。一転第三楽章は、アダージョで、彼岸すれすれを行くようなメロディを美音で奏でています。この音も静かな迫力を持っています。シノーポリ=ウィーン・フィルならではの演奏ではないでしょうか。

 

最後の第四楽章で、いままでの性格の違う三つの楽章をきっちり調えているようです。これは、見事ですね。この曲の表現としてはかなり尖ったものだとは思いますが、やれるところまでやり切ったという、すさまじさが感じられる演奏でした。起伏の大きさや、輪郭のクリアさ、楽章ごとの音楽の表情を極限まで表現した、素晴らしい演奏と思います。参りました…。

 

【録音について】

無理なくはっきりとした音でウィーン・フィルが捉えられています。いい録音です。

 

【まとめ】

なんとなく聴き始めましたが、いきなり掴まれましたね…。これほどとは思いませんでした。彫りの深い熱演が聴かれました。確かにこれは、この曲の名演ですね。

 

購入:2023/11/25、鑑賞:2023/11/25

最近リリースされた新譜から ⑱

シューベルトのピアノのための舞曲集です。気軽な小品がたくさん入ったアルバムですが、個々には有名な曲がある訳ではないので、どちらかというと資料的価値?と思いながら、メロディーメーカーのシューベルトを味わってみようと買ってみました。

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:①12のワルツ、17のレントラーと9つのエコセーズ op18 D145 (23:57)

   ②12のエコセーズ D299 (7:34)

   ③20のワルツ op127 D146 (27:41)

   ④12のエコセーズ D781 No.2-12 (5:41)

   ⑤エコセーズ ニ長調 D782 (0:28)

   ⑥12のレントラー D681 No.5-12 (5:11)

   ⑦ギャロップと8つのエコセーズ op49 D735 (5:22)

   ⑧8つのエコセーズ D529 (3:26)

   ⑨6つのエコセーズ D421 (2:43)

   ⑩ドイツ舞曲とエコセーズ D643 (1:28)

   ⑪エコセーズ 変ホ長調 D511 (0:34)

   ⑫エコセーズ ニ短調 D158 (0:22)

演奏:カストル=ジャコマン(p)

録音:2021年8月17-18日①-③⑫,2022年4月12-15日④-⑪

   フランス Rouen Piano Auditorium

CD:8.574165(レーベル:NAXOS)

 

【曲と演奏について】

シューベルトのこういった舞曲はピアノ曲では452曲あるということですが、いろいろな経緯で作曲され、まとめられたり、まとめられなかったり、あるいは流行に従って改変されたりと、すべてを網羅的に整理するのは不可能なことのようです。作曲当時は、かつて音楽が貴族のものであったのが、市民層の台頭によって広く一般に広がり、作曲家はこういった作品を出版して生計を立てるといった形になってきていました。家庭やパーティーで気軽に演奏できるようにと、技術的にも平易なものが多くなっています。

 

さて、そんな曲を集めたCDですから、ことさら有名曲はなく、いろいろなメロディが続いていきます。形式も単純で、長さも1分に満たないものばかりです。あまり真剣に聴いてみるという雰囲気でもないので、一度一通り聴いてみたら、あとは部屋で繰り返し流して聴いていました。すると、時々いいメロディがすっと耳に入ってきます。シューベルトのメロディです。

 

カストル=ジャコマンの演奏は、それほどニュアンスをつけるでもなく、軽やかな雰囲気でしっかりと奏でられていると思います。これらの曲は、メインで弾かれることもあるとは思いますが、アンコールピースなどで巨匠たちが時々弾いたのではないかと思います。そういえば、12月にエマールの来日公演がありましたが、なんとプログラムの半分をこれらのシューベルトの舞曲が占めていました。どんな演奏がされたのか興味深いです。下の動画のD145(このCDの冒頭部分でもあります)もプログラムの最初に入っていました。

 

巨匠が弾いたシューベルトの舞曲という事で、リヒテルのライヴ録音を探してきました。さすが、リヒテルともなると…、という感じがしました。

 

カストル=ジャコマンはフランス出身のピアニストで、モーツァルトの録音や、変わったところでは、シャミナードやボニなど女性作曲家のピアノ作品集といったCDを出しています。ナクソスからはシューベルトの録音が続々出るようで、幅広く活動の場を広げながら、活躍されているようです。このCDは、また普段と違う世界が味わえて、良かったと思います。

 

購入:2023/10/14、鑑賞:2023/12/02

【CDについて】

①作曲:ベートーヴェン

 曲名:ピアノ・ソナタ第17番ニ短調 op31-2 (23:28)

②作曲:シューマン

 曲名:幻想曲ハ長調op17 (31:41)

演奏:リヒテル(p)

録音:1961年8月1-5日 ロンドン Abbey Road Studios

CD:TOCE-13035(レーベル:EMI、販売:東芝EMI)

 

【曲について】

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番は、「テンペスト」という通称で呼ばれています。ベートーヴェンの弟子のシンドラーがこの楽曲の解釈について尋ねると、ベートーヴェンは、「シェイクスピアの「テンペスト」を読め。」と言ったという逸話に由来するそうです。ただし、この逸話の信憑性は今一つだとか…。

 

【演奏について】

このCDは、ジャケットもカプリングもオリジナルと思いますが、そのあたりが気にいっています。リヒテルが西側に姿を現わしてたくさんの録音を始めた頃の名盤の一つですね。SACDも出ているようです。そんな20世紀のピアノの巨人の演奏を今日は聴いてみようと思います。

 

ベートーヴェンのテンペスト。全体的にゆったりとした雰囲気で始まります。音は、少し硬めでクリアな響き。リヒテルの音ですね。演奏は、大変彫りの深いもので、まさに劇的でした。第二楽章は、静かにしみじみと経過し、第三楽章へ。風通しが良くて、はっきりした感じがします。この楽章ををパワーで押し切るような演奏もありますが、リヒテルの演奏は劇性と叙情性に富み、むしろインテンポな感じがするくらいの、細やかで豊かな表情を持つ演奏でした。

 

続いてシューマンの幻想曲です。硬質できらめくような音色で、ガッチリと演奏されています。往年のシューマンのピアノ曲の演奏を聴いているようで、何か思い出深い感じもします。第二楽章の行進曲風のフレーズは、もともとのフロレスタンとオイゼビウスという標題を思い起こすものですが、この楽章の演奏は軽快で自由闊達なイメージを持ちました。そして、第三楽章の静かなメロディは、かつてよく聴いていたピアノ演奏の雰囲気を思い起こさせるものだと思いました。

 

【録音について】

少々高音がきついかな?と感じるところもありましたが、リヒテルの音をよく伝えていると思います。

 

【まとめ】

じっくりと、リヒテルの演奏を聴いてみました。なにか、すごく懐かしい感じがしました。巨匠の時代のピアノの音と至芸ということでしょうか。

 

購入:2023/11/22、鑑賞:2023/11/23

グレイト ~節目となったCDから3選~ ③

シューベルトのグレイトを再び確かめる特集の第3回です。もう最終回になってしまいました。今回は、ブリュッヘンと18世紀オーケストラの演奏です。いろいろグレイトに憑かれたように聴いてきた時期があったのですが、ある意味これが一つの終止符というか、普通の状態に戻ったという節目の演奏であったと思います。もちろんその後も聴いていますが、これで落ち着いたという感じですかね…。

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:交響曲第9番ハ長調 D944 (55:54)

演奏:ブリュッヘン指揮、18世紀オーケストラ

録音:1992年3月 ユトレヒト Vredenburg

CD:438 006-2(レーベル:PHILIPS)

 

【曲について】

この交響曲は作曲当時としては非常に長く、オーケストラにとって演奏が難しいものでした。作曲当初は、ウィーン楽友協会からは演奏を拒否されており、メンデルスゾーンによる初演後も、パリやロンドンで演奏しようとしたときは、オーケストラに演奏を拒否されています。ロンドンでは、ヴァイオリニストが最終楽章の第2主題のリハーサル中に笑い崩れたと言われています。

 

【演奏について】

このCDを買ったきっかけはよく覚えていないのですが、なんとなく目についた程度ではなかろうかと思います。グレイトを見つけたら、なんとなく買ってしまうという時期だったのです。ブリュッヘンについては、リコーダーの人というイメージで、こと古楽器演奏に関しては、当時私は異端視していたきらいもあって、ほとんど聴いていませんでした。ただ、シューベルトの古楽器演奏は当時はかなり珍しいものだったと思いますし、グレイトだからこのCDを買ったことは間違いないのです。そして、実際聴いてみるとかなり衝撃的だったのでした。

 

今や、いろいろなHIP演奏を聴いた中でこの演奏を聴くと、しごく真っ当な演奏に聴こえてしまうのも不思議な所ですが、最初の印象は、リズムの彫りが深く表現内容の濃い演奏で、演奏の流れも私の思い描いていたグレイトのイメージに符合してしまいました。そして、古楽器演奏のスタイルでこういった切れのいい演奏を出してくるのは、ある意味反則技だぞ…、と思ったりしたのですが、実際面白いから仕方がないのです。そして、モダンオーケストラをいろいろ聴き比べて細かい所で良し悪しなど考えていた状況からは、解き放されてしまいました。その後あまり執着が無くなったというか。演奏のいろいろな可能性を強烈に教えてくれた録音かも知れません。

 

現時点で、再びこの演奏を聴いてみます。いつものごとくゆったりと始まり加速していく感じは、しっくりと波長があいます。素晴らしい導入です。古楽器の暖かい柔らかな音に包まれますが、主部に入っていくとリズムの刻みなどよりはっきりしています。これは極端に刻みを強調するという風でもなく、大変品のいい感じがします。そして、適度にアゴーギクが入りながら進んでいきます。第二楽章はとても聴かせる演奏で、この曲の素晴らしさの新たな発見です。一方、第四楽章は急ぎ過ぎではと思うくらいですが、時々遅くなって息をつかせてくれる部分もあり、バランスはいいと思います。HIPの特徴で売るという演奏ではなく、真摯に曲を追求している感じがとても好ましく感じました。

 

【録音について】

音は柔らかな雰囲気がとてもよく捉えられていい感じでした。バランスや細部の明晰さについてはよく解らないのですが、演奏の性格もあると思います。

 

【まとめ】

3回シリーズは、これで終了です。ありがとうございました。好きな演奏はもちろんこの3枚だけでなく、いろいろとあるのですが、それはまた追々聴いてみたいと思います。この曲のCDが増殖していく傾向は、現時点でも続いています(笑)。

 

購入:1993/09/19、鑑賞:2023/12/02(再聴)

 

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