【CDについて】
①作曲:ベートーヴェン
曲名:ピアノ・ソナタ第17番ニ短調 op31-2 (23:28)
②作曲:シューマン
曲名:幻想曲ハ長調op17 (31:41)
演奏:リヒテル(p)
録音:1961年8月1-5日 ロンドン Abbey Road Studios
CD:TOCE-13035(レーベル:EMI、販売:東芝EMI)
【曲について】
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番は、「テンペスト」という通称で呼ばれています。ベートーヴェンの弟子のシンドラーがこの楽曲の解釈について尋ねると、ベートーヴェンは、「シェイクスピアの「テンペスト」を読め。」と言ったという逸話に由来するそうです。ただし、この逸話の信憑性は今一つだとか…。
【演奏について】
このCDは、ジャケットもカプリングもオリジナルと思いますが、そのあたりが気にいっています。リヒテルが西側に姿を現わしてたくさんの録音を始めた頃の名盤の一つですね。SACDも出ているようです。そんな20世紀のピアノの巨人の演奏を今日は聴いてみようと思います。
ベートーヴェンのテンペスト。全体的にゆったりとした雰囲気で始まります。音は、少し硬めでクリアな響き。リヒテルの音ですね。演奏は、大変彫りの深いもので、まさに劇的でした。第二楽章は、静かにしみじみと経過し、第三楽章へ。風通しが良くて、はっきりした感じがします。この楽章ををパワーで押し切るような演奏もありますが、リヒテルの演奏は劇性と叙情性に富み、むしろインテンポな感じがするくらいの、細やかで豊かな表情を持つ演奏でした。
続いてシューマンの幻想曲です。硬質できらめくような音色で、ガッチリと演奏されています。往年のシューマンのピアノ曲の演奏を聴いているようで、何か思い出深い感じもします。第二楽章の行進曲風のフレーズは、もともとのフロレスタンとオイゼビウスという標題を思い起こすものですが、この楽章の演奏は軽快で自由闊達なイメージを持ちました。そして、第三楽章の静かなメロディは、かつてよく聴いていたピアノ演奏の雰囲気を思い起こさせるものだと思いました。
【録音について】
少々高音がきついかな?と感じるところもありましたが、リヒテルの音をよく伝えていると思います。
【まとめ】
じっくりと、リヒテルの演奏を聴いてみました。なにか、すごく懐かしい感じがしました。巨匠の時代のピアノの音と至芸ということでしょうか。
購入:2023/11/22、鑑賞:2023/11/23