最近リリースされた新譜から ⑱
シューベルトのピアノのための舞曲集です。気軽な小品がたくさん入ったアルバムですが、個々には有名な曲がある訳ではないので、どちらかというと資料的価値?と思いながら、メロディーメーカーのシューベルトを味わってみようと買ってみました。
【CDについて】
作曲:シューベルト
曲名:①12のワルツ、17のレントラーと9つのエコセーズ op18 D145 (23:57)
②12のエコセーズ D299 (7:34)
③20のワルツ op127 D146 (27:41)
④12のエコセーズ D781 No.2-12 (5:41)
⑤エコセーズ ニ長調 D782 (0:28)
⑥12のレントラー D681 No.5-12 (5:11)
⑦ギャロップと8つのエコセーズ op49 D735 (5:22)
⑧8つのエコセーズ D529 (3:26)
⑨6つのエコセーズ D421 (2:43)
⑩ドイツ舞曲とエコセーズ D643 (1:28)
⑪エコセーズ 変ホ長調 D511 (0:34)
⑫エコセーズ ニ短調 D158 (0:22)
演奏:カストル=ジャコマン(p)
録音:2021年8月17-18日①-③⑫,2022年4月12-15日④-⑪
フランス Rouen Piano Auditorium
CD:8.574165(レーベル:NAXOS)
【曲と演奏について】
シューベルトのこういった舞曲はピアノ曲では452曲あるということですが、いろいろな経緯で作曲され、まとめられたり、まとめられなかったり、あるいは流行に従って改変されたりと、すべてを網羅的に整理するのは不可能なことのようです。作曲当時は、かつて音楽が貴族のものであったのが、市民層の台頭によって広く一般に広がり、作曲家はこういった作品を出版して生計を立てるといった形になってきていました。家庭やパーティーで気軽に演奏できるようにと、技術的にも平易なものが多くなっています。
さて、そんな曲を集めたCDですから、ことさら有名曲はなく、いろいろなメロディが続いていきます。形式も単純で、長さも1分に満たないものばかりです。あまり真剣に聴いてみるという雰囲気でもないので、一度一通り聴いてみたら、あとは部屋で繰り返し流して聴いていました。すると、時々いいメロディがすっと耳に入ってきます。シューベルトのメロディです。
カストル=ジャコマンの演奏は、それほどニュアンスをつけるでもなく、軽やかな雰囲気でしっかりと奏でられていると思います。これらの曲は、メインで弾かれることもあるとは思いますが、アンコールピースなどで巨匠たちが時々弾いたのではないかと思います。そういえば、12月にエマールの来日公演がありましたが、なんとプログラムの半分をこれらのシューベルトの舞曲が占めていました。どんな演奏がされたのか興味深いです。下の動画のD145(このCDの冒頭部分でもあります)もプログラムの最初に入っていました。
巨匠が弾いたシューベルトの舞曲という事で、リヒテルのライヴ録音を探してきました。さすが、リヒテルともなると…、という感じがしました。
カストル=ジャコマンはフランス出身のピアニストで、モーツァルトの録音や、変わったところでは、シャミナードやボニなど女性作曲家のピアノ作品集といったCDを出しています。ナクソスからはシューベルトの録音が続々出るようで、幅広く活動の場を広げながら、活躍されているようです。このCDは、また普段と違う世界が味わえて、良かったと思います。
購入:2023/10/14、鑑賞:2023/12/02