ウラッハ:ロマン派クラリネット作品集 (1950/52) | クラシックCD 感想をひとこと

クラシックCD 感想をひとこと

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。
一言二言で印象を書き留めておきたい。
長い文章だと、書くことが主になってしまう。
その時の印象を大切に。

【CDについて】

①作曲:シューマン

 曲名:おとぎ話 op132 (15:07)

②作曲:メンデルスゾーン

 曲名:2つのコンツェルトシュテュック第1番へ短調 op113 (8:28)

    2つのコンツェルトシュテュック第2番二短調 op114 (8:32)

③作曲:ブラームス

 作品:クラリネット三重奏曲 イ短調 op114 (23:19)

演奏:ウラッハ(cl)、ヴァイス(va)①、デームス(p)①②、バルトシェック(bhrn)②

   クヴァルダ(vc)③、ホレチェック(p)③

録音:1950年①②、1952年③ ウィーン Konzarthaus Mozartsaal

CD:UCCW-9017 (レーベル:Westminster、発売:ユニバーサル・ミュージック)

 

【曲について】

メンデルスゾーンのコンツェルトシュテュックは、クラリネットとバセットホルンの作品で、当時のクラリネットの名手であったベールマン父子のために書かれました。ピアノに変わって管弦楽伴奏版も存在します。作曲されたのは24歳ころですが、出版が死後になったため、作品番号は大きな番号になっています。特に第2番の方は、ベールマンに送られた時、ユーモアにあふれる解説がついていましたが、その通りの楽し気な曲になっています。

 

【演奏について】

この12月になってアンコールプレスされたWestminsterの名盤の中から、今回1枚買ってみました。特に再発売といった形ではありません。UHQCDということで違いは判りませんが、気分は変わります(笑)。元のLPとの関係では、このうちシューマンとメンデルスゾーンが1枚のLPで、ブラームスはLPではホルン三重奏曲と組まれていたようです。その片割れのホルン三重奏曲はブラームスのクラリネット・ソナタと組まれてCDになっているので、そっちも聴いてみたいところですが、まずはこのCDを買ったので、聴きましょう。

 

「おとぎ話」は、シューマンの最後期の作品の一つにあたります。クラリネット、ヴィオラ、ピアノという編成で、中音域の楽器が2つという形。モーツァルトの「ケーゲルシュタット・トリオ」と同じ珍しい編成で、チェロの入る三重奏より全体的に明るく可愛らしい感じが出ています。ただ、音域が近いのでクラリネットの音は目立ちづらいかな?と思いました。この演奏はデームスのピアノの音が強いような気がします。基調として似た曲で構成されていますが、4番目の曲が躍動的で面白かったです。

 

メンデルスゾーンの「コンツェルトシュテュック」は、クラリネットとバセットホルンという、音域の違う同族での二重奏+ピアノというスタイル。クラリネットとバセットホルンの競演が聴きどころというところですが、そもそもメンデルスゾーンのこの曲も面白かったです。第1番では二重奏で美しいメロディが続く第二楽章や、楽し気な第三楽章。第2番は全体的に躍動的で、名手ウラッハの演奏がとても映える曲だと思います。素晴らしい録音でした。

 

最後はブラームスですが、これは別のLPからのもので、ウラッハ以外はメンバーが違っています。ブラームスの晩年の曲で、クラリネット五重奏曲と同時期作曲された名曲です。チェロの哀愁を帯びた主題で開始され、クラリネットへと受け継がれていきます。第一楽章は移り変わる感情表現の美しい曲。クラリネットとチェロと掛け合いながらというところですが、ここではチェロの方が目立つ気がします。第二楽章は今度はクラリネットから始まり、呟くようなチェロとの掛け合いをしみじみと味わうことができました。明るい感じの第三楽章を経て、躍動的な第四楽章ですが、クラリネットとチェロの演奏は常に哀愁を帯びた躍動感です。そして五重奏曲の方とは違って強奏で終わりました。

 

今回の鑑賞は、ウラッハの音を味わうという目的もありましたが、むしろ曲の素晴らしさを味わったという印象でした。もちろんウラッハの名演あってこそなのですが。

 

【録音について】

モノラル時代の優秀録音です。UHQCD化して音質は向上しているのだと思います。厳しいところもありますが、クリアな音で聴くことができました。

 

【まとめ】

さすが名手の名録音です。演奏も録音も古さを感じるところもありますが、伝統の素晴らしさを感じるCDだと思います。

 

購入:2023/12/06、鑑賞:2023/12/07