高橋弘希の芥川賞受賞作「送り火」を読んだ! | とんとん・にっき

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高橋弘希の芥川賞受賞作「送り火」(文藝春秋:2018年7月17日発行)を読みました。ほとんどの選考委員も言ってるように、見事な描写力で、文章としては分かり易い。しかし、内容については分からないことが多々ある。が、しかし・・・、と僕はこの「送り火」に関しては疑問形をつけておきます。
 
「文藝春秋」のホームページには、以下のようにあります。
 
第159回芥川賞受賞作!
春休み、東京から山間の町に引っ越した中学3年生の少年・歩。
新しい中学校は、クラスの人数も少なく、来年には統合されてしまうのだ。
クラスの中心にいる晃は、花札を使って物事を決め、いつも負けてみんなのコーラを買ってくるのは稔の役割だ。転校を繰り返した歩は、この土地でも、場所に馴染み、学級に溶け込み、小さな集団に属することができた、と信じていた。
夏休み、歩は家族でねぶた祭りを見に行った。晃からは、河へ火を流す地元の習わしにも誘われる。
「河へ火を流す、急流の中を、集落の若衆が三艘の葦船を引いていく。葦船の帆柱には、火が灯されている」
しかし、晃との約束の場所にいたのは、数人のクラスメートと、見知らぬ作業着の男だった。やがて始まる、上級生からの伝統といういじめの遊戯。
歩にはもう、目の前の光景が暴力にも見えない。黄色い眩暈の中で、ただよく分からない人間たちが蠢き、よく分からない遊戯に熱狂し、辺りが血液で汚れていく。
豊かな自然の中で、すくすくと成長していくはずだった
少年たちは、暴力の果てに何を見たのか――
「圧倒的な文章力がある」「完成度の高い作品」と高く評価された中篇小説。
 
2014年、34歳の時に「指の骨」で新潮新人賞を受賞。第二次世界大戦中、ニューギニア戦線下の野戦病院を舞台にした中篇です。戦争を知らない世代による新たな戦争文学として話題になりました。続いて書いたのが「朝顔の日」も戦争を扱っていたので、戦争文学の書き手だと紹介されます。が、自分としては戦争文学にこだわっていたわけではないと言います。
 
「送り火」の主人公は、父親の転勤で東京から青森に越してきた中学3年生の歩です。全校生徒12名の統廃合が決まった学校に通い、歩は高校から埼玉に戻ることが決まっています。歩はクラスの中心にいる晃と行動を共にするようになります。そして徐々に晃の暴力性を目撃するようになります。
 
6人の仲間の役割を決めるのは、花札を使った「燕雀(えんじゃく)」というゲーム。それを仕切るのが晃、いつも負けるのが稔です。執拗ないじめが続きます。屈伸運動を繰り返した後に縄跳びで首を締めあげて酸欠状態にさせる「彼岸様」など、ほとんどリンチのような危険な遊戯。そして物語の最後は、晃がターゲットになった伝統的な「サーカス」という遊び、集団リンチです。
 
選考会では「どうして高橋さんはこんなに理不尽な暴力を描き続けるのか」という意見があったという。社会的な圧力や集団心理による暴力が主人公たちに迫ってきます。描写や語彙がクラシックな文芸小説を彷彿させるものでありながら、ある種の現代的な暴力を描いているのに、落差を感じます。
(参考:「受賞者インタビュー」より)
 
高橋弘希:
1979年生まれ。青森県十和田市出身。2014年、「指の骨」で新潮新人賞を受賞しデビュー。2017年、『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』で野間文芸新人賞受賞。2018年、「送り火」で芥川賞を受賞。
〈著書〉『指の骨』15年・新潮社。『朝顔の日』15年・新潮社。『スイミングスクール』17年・新潮社。『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』17年・講談社。
 
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