【まえがき】
これまでお読みくださっていた皆様へ。
続きを公開するまでに二年もかけてしまい、大変申し訳ございませんでした。
多忙という点もあったのですが、それ以上に内容が過激だとされたために、
ブログ公開で引っかかるという事態が発生してしまいました。
どうしても史実通りに書き上げたい気持ちと同時に、アメブロを利用する以上は、
アメブロのルールに従わなければならないその葛藤に悩んでいました。
私は過去に別のアカウントで、何度かブログ記事が表示されなくなるということがあり、
新たに作成したこのアカウントでは問題を起こさないようにと気を付けながら、
どうにか十年以上ブログを続けてこられました。
アメーバのサービスは大げさなことを言うようですが、人生の一部です。
そんなアメブロのルールは守るべきだと考えております。
経験を自分なりにうまく添削し、折り合いを付けながら書けるよう、
一生懸命に考えながら書き続けたいと思っております。
以前よりはペースも落ちてしまうかもしれません。
拙いながら頑張って筆を執り、詠んでいきたいと思います。
今後とも見守っていただけたら幸いです。
時間が空いたため、これまでの経緯をざっと三行で記しておきます。
・学校には半分くらいしか通っていなかった私が、二年生の時に新しい担任教師と出会う。
・始めは苦手な先生だったがやがて敬うようになり、国語の勉強をゼロから始める。
・尊敬の気持ちがいつしか猛烈な恋心に変わり、それを隠しながら学校生活を送る。
物語に加えて上代日本語で詠む和歌を添えてお届けしています。
詳細は過去の記事をお読みくださればと思います。
私の万葉歌 - 戀歌 第一話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
私の万葉歌 - 戀歌 第二話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
私の万葉歌 - 戀歌 第三話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
私の万葉歌 - 戀歌 第四話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
私の万葉歌 - 戀歌 第五話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
私の万葉歌 - 戀歌 第六話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
私の万葉歌 - 戀歌 第七話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
私の万葉歌 - 戀歌 第八話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
私の万葉歌 - 戀歌 第九話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
私の万葉歌 - 戀歌 第十話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
長いですので無理のないようにお読みくださればと思います。
それでは本編の続きを記していきましょう。
私は……
学校に行けば先生がいて、クラスメイトがいて、友達がいてーー。
そんな当たり前にあると思っていた日々が、
冬に差しかかったある朝。私はいつもと同じく、
副担任が来たのですが、
この時はまだ、
いつものように先生は来てくれる
ところがチャイムが鳴って朝礼が始まるなり、
副担任「今日から二日間、先生は出張でいないからーー。」
私「!?」
教室にいる誰もが特に反応も示さず聞いている中で、
日曜日や祝日といった元から学校が休みであれば、
が、前もって聞かされていたならまだしも、不意打ちで、
精神的ダメージが大きく、
先生から嫌われたと思った時のような、
何故二日間も必要なのか、どれほど遠くへ行ってしまったのか、
副担任に訊きたいことは山ほどありましたが、
表向きは「ま、そんな日もあるよね。」という態度で、
実際、こう考えるように自己啓発を行っていたことでしょう。
が、授業中に考えていたことといえば、常に先生のことばかり。
もしかしたら出張先で他の男に口説かれているのではないか、
などと心配になって、胸が苦しいほどに高鳴っていました。
思い出してもどうにもならないことは百も承知だったのですが、
国語以外の授業は正直なところどうでも良かったにも関わらず、
が、一瞬思い出してしまうとその後もずっと考えてしまうので、
胸を締め付けられないように、集中できる別の何かはないのか? 何でも良いから。
ゲームをしていても集中できそうにはありません。
読書をしていても、
会えない日は他にも幾度となくありましたが、
やはり会えると思い込んでいた日に不意打ちで会えないことが原因
いつも顔を合わせられることがどれほどありがたいものか。
そう考えるようになってしまい、
それも二日間もこれが続くのかと思うと、
ちょうど教室に空調を備える学校が増えていた時分ではありました
私が通っていた学校では教室にエアコンが設置されているのは見た
そんな教室でありながら、
ーーああ、寒い。
比較的温暖だと謳われる地域であり、
気持ちからか心なしか寒いような気がしていました。
こういう時に限って、
こんなことになるなら学校なんてサボってしまえば良かったものを
とはいえ先生が来ると思い込んでいたので、
考えても見れば、
いったい何を根拠に「今日も必ず来る。」
なぜ、いつもの幸福な日常が、
あの日の私はまだ、
今日は授業に飽きたら帰ろう。どこかでふざけていれば、
私は学校を抜け出して、どこで何をしようかと考えるわけですが、
いくら努力したところで切り離せるようなものではなかったのです
【五十一】
冱風 吾身爾甚 吹奴禮婆 心毛寒 今毛相奴可
冴ゆる風 吾が身に痛く 吹きぬれば 心も寒し 今も逢はぬか
冷たい風が強く身に染みて心まで寒いものだ。ああ、今すぐにでも会いたいよ。
先生が学校に来ないと知らされていた二日目も、
もしかしたら出張が終わって途中から帰ってくるかもしれないとい
当時の私には、教員の出張がどういうものかを理解できておらず、
「用事が終わったらいったんは学校に帰ってくる気がする。」
そもそも出張とは、
出張とはどういうものなのでしょうか?
それを他の教師に訊けたなら、どれほど私は救われることか。
当然そんな話を持ち出すことはありません。
ただ、もしもこの日に先生が戻って来なければ、
いや、あらかじめ知らされていたので、
が、やはり無意識にも先生のことを思い出してしまい、
出張先ーーそもそも他の学校へ行ったのかどうかもあまりわかりま
行った先でハラスメントを受けていないか、
はたまた自動車で移動と考えて、
といった類の不安が幾度となく脳内をぐるぐると巡っていたのは確
私が傍にいれば、誰も手出しはできません。
が、
高校教師の出張先が県外なのか、
遠くへ離れてしまったのだと考えてしまえば、
考えてもみれば不思議な話で、
互いの存在が合わない教師と生徒といった、
それも初めて会った時のみならず、
それが今となってはこの有り様です。
この思いを誰にも知られていないと思いつつ、
自分のいい加減さやだらしなさを感じていました。
このような惨めな私が一体いつまで続くのでしょうか。
嗚呼、こんな苦しみも、
【五十二】
欲見 左丹頰經妹之 白珠爾 薄紅之 頰與口 見卷欲者 烏玉之 永黑髪 眼兒乎哉
吾眼皮西 打偲 闇都俤 欝三 乞慕久者 勿消禰 不相時社 悲家禮 今登時爾 直相者
吾猒家口社 慰 山際敞奈流 遠都風 所褁妹 所念者 事西不勝都 侘過去蟹
見が欲しき さにつらふ妹が 白玉に 薄紅の 頰と口
見まく欲しきは ぬばたまの 長き黑髪 眼をや 吾が眼皮にし
打ち偲ふ 闇つ面影 おほゝしみ 請ひ願はくは な消𛀁そね 逢はぬ時こそ 悲しけれ
今即ちに 直に逢はゞ 吾が憂けくこそ 慰むれ 山の際隔る
遠つ風 くゝまゆる妹 思ほ𛀁ば 言にしかねつ 侘び過ぎぬがに
貴女の少しふっくらと赤らめたほっぺた、
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【五十三】
戀之妹 雲居之從餘所 所念者 玉響谷毛 相久之欲得
はしき妹 雲居の餘所ゆ 思ほ𛀁ば 玉響だにも 逢はくしもがも
愛しい貴女を雲の彼方から思われれば、ほんの一瞬だけでも会いたいと願うのです。
【五十四】
欲見 妹之目偲 永時 還將來蹟 待而暮都
見が欲しき 妹が目偲ひ 長き時 返り來むやと 待ちて暮らしつ
一目お会いしたいと願う貴女の目を思って、帰って来ないものかと、永遠とも思えるような長い間、待ち続けていたことです。
私は二日目の午後からも学校に残っていました。
先ほど書いたように、
根拠の乏しい一縷の希望に賭けていたのです。
この日の昼すぎは古文の授業でした。
先生の代わりに受け持ったのは、三年生の国語を担当している五、
なぜかその教師は、生徒たちから“カニ”と呼ばれていました。
私の知る限りだと、その教師とカニに共通点はなく、
ただ、実際にそういうあだ名だったため、
私自身はカニのことをあまり知らなかったのですが、
この時の私はというと、いつもの先生ではないといえ、
このカニという男はプリントを配ろうと準備をしています。
カニ「自習。」
代役として来た教師であれば、
が、問題のプリントを配り終えた矢先、
カニ「わしは今から寝る。
公務員が勤務中に寝るというのは何ともおかしな話ではありますが
勉強嫌いな生徒は嬉しそうにしています。
カニは言った矢先に教師用の席に座って、
問題は簡単なものだったので、
なるほど、生徒たちを自由にさせるが、
彼の授業は生徒たちが静かだという評判が、
とはいえ勉強をしたいと思っている生徒もいるわけなので、
そんな中で、クラスメイトの女子・
取り巻き「カニ先生、カニ先生。」
カニ「…………。」
取り巻き「ちょっと問題の意味教えてほしいんっすけど。」
聞こえているのか、あえて何も応えないカニは、
取り巻きはそんなカニを見てすぐに諦めたようです。
私が漫画を読んでいると、
以前にも似たようなことがありましたし、
紙を広げると、そこには汚い字でこう書いてありました。
取り巻き「答えはよ。」
彼女にやる気でも芽生えたのかと意外に思っていたのですが、
私は「嫌。」と大きく書いた紙を投げて返します。
確かに国語に限っていえば成績は学年トップでしたが、
ずいぶん頼りにされているものだと少し嬉しい気持ちもありました。
さすが先生の一番弟子たる私だという誉れに浸っていましたね。
そうこうしていたところ、
私たちは寝ているカニに聞こえないよう小声でやり取りを始めます
取り巻き「教えて。」
私「えぇ?」
取り巻き「だってカニシカトすんだもん。
私「俺じゃなくても良くない?」
取り巻き「古文わかるんでしょ?」
私「わかるけどさ。
取り巻き「先生帰ってきたらさ、
私「だったら実際に頑張ってやれよw」
取り巻き「頑張って答え教えてもらう。」
私「何だそれ……。ほら、写しなよ。」
プリントを渡したところ、
取り巻きはほとんど写し終わったところで質問を投げかけてきます
取り巻き「ここらの問題さ、意味不明に長くない?」
確かにいくつか引っかけ問題と思しき遠回しな問いが見られました
どうにもカニの手作り問題集らしく、
私「いじわる問題でしょ。」
取り巻き「トシはできたん?」
私「まあ、できてると思うけど。」
取り巻き「あぁウザッ。」
私「何でやねんw」
取り巻き「いや、あんたじゃなくてカニだよカニ。」
私「ああ、カニね。」
取り巻き「そんで質問しようとしたらシカトとか、
私「良いじゃん。成績関係ないんだし。」
取り巻き「成績関係なくてもムカつくだろ常識的に考えて。」
私「まあほっとけば良いんじゃない? 成績下げるとか言ってきたわけでもないし。」
取り巻き「納得できん。」
そういったことを話していたところ、
彼は突っ伏していた上体を起こして声を上げました。
カニ「うるさい!」
カニは教員用の席を立ち教壇に移動して、
カニ「お前らか? 喋りまわりよるんは?」
取り巻きは怒りを感じたのか、ムッとした表情ですぐに言葉を返しました。
取り巻き「別にうるさくしてないじゃん。」
カニ「わしがうるさい言うたらうるさいんじゃ。」
取り巻き「めっちゃ静かだったし。なあ?」
取り巻きが周囲のクラスメイトに話を振ると、
カニ「勉強せんでもええけど静かにせえって言わんかったか?」
取り巻き「いやいや、あたし勉強まじめにやってたんすけど。」
カニ「席立って喋っとったげや。」
取り巻き「教えてもらってたんすけど。」
そう言って取り巻きは、
カニ「好きにしてええけど喋んな言うとんじゃ。」
取り巻き「授業中わかんなかったら質問するっしょ。」
カニ「何じゃお前? やる気あったんか? じゃったら前々から予習しとかんけや。」
取り巻き「やる気なんかないし。あんたみたいな先公のせいでさ。
カニ「やる気ないんならやらんでええげや。
取り巻き「…………。」
取り巻きが顔を赤くして怒りを堪えている横で、
それに気付いたカニは、ターゲットを私に変えて言い放ちます。
カニ「お前さっきから恨めしそうに見てきて何じゃ。
こういう教師は珍しくもないので学校あるある程度に思っていまし
私「俺らちゃんと勉強するために喋ってたんだろ? お前が先公の仕事ちゃんとしないから代わりに俺が教えてたんだよ
カニ「お前漢字もろくに読めんじゃろげや。
私「喋るなって言っといてお前が一番喋っとるやないけ。」
カニ「わしは注意しよったんじゃ。」
私「小声が気になって寝れないからだろ? だいたいお前何しに来たんだよ。寝に来たの?」
カニ「私語は慎め言うとんじゃ。」
私「私語じゃなしに勉強教えてたんだけど? 質問にも答えられない無能なク○先公に代わってよ。」
カニ「お前さっきから何じゃコラ。
私「狸寝入りでも質問答えられないんならそれサボりじゃないの?
カニ「サボりと違うわや。
私「勉強したい奴もいるんだよ。
カニ「言うたにゃあ。お前授業妨害やぞ。」
私「授業してないだろ? 授業もろくにやらんくせにイチャモンばっかの先公とか邪魔なんだ
私がそんなことを言い放つなり周囲も同調したのか、
周り「帰れ! 帰れ!」
私「結局どうすんだお前。」
カニ「おう、わかったわ。お前らの言う通り帰っちゃるわ。
取り巻き「はぁ? ふざけんな!」
頭にきたのかついに取り巻きがそう叫びました。
カニ「いね言うたのお前らじゃろげや。
取り巻き「あんたが憎いのあたしらっしょ? 他の奴ら関係ないじゃん。」
カニ「お前らいね言うたじゃろげや。」
取り巻き「一部だけじゃん。」
カニ「わしに謝ったもんがおるか? ほじゃきん出ていったるんじゃ。全員欠席のう。」
取り巻き「だから一部だけだっつってんだろ。何で皆なん?」
カニ「さっきから言よろ。誰一人わしを擁護してなかろげや。
取り巻き「あんたマジで何なん? そんなに生徒憎いの?」
カニ「当たり前じゃ。言うこと聞かんと反抗ばあしくさって。
こんなやり取りがしばらくは続きます。
もう一度書きますが、
私はというと、唐突に先生のことを思い出してしまって、ボーっとしてしまい、
もしこんな時に先生がいたら、
次第に私は「先生に代わってできることはないか?」
先生と同じやり方はできないだろうけど、
そう思うとカニへの苛立ちが再び込み上げてきたのだと思います。
私は立ち上がって声を上げて言い放ちました。
私「お前逃げんのかよ。」
カニ「何べん言わすんでや。
私「取り巻きの質問どうすんだよ。」
カニ「もう知らんわ。口答えばあしよるもんに教えることないわ。
私「俺らはな、
カニ「わざわざ人の名前出して比べんなや。
私「教えちょらんやか。
カニ「お前らが教師舐めすぎなんじゃ。」
私「おんしゃあええ加減にせえよコラ。」
カニ「何ぞお前コラ。殴るんけや。」
指摘通りの行動に出ても良いとは思いましたが、
私だけではなく、
後になって思い返せば、
とにかくここは刃傷沙汰だけでも避けておくことにします。
バカなりにも先生に迷惑はかけられないと考えて。
私「殴る方も手ぇ痛いき労力の無駄じゃ。
カニ「教えんわ。暴言ばあ吐きよって。
私「やってみいや。どうせええように言うたことないがやろ。」
カニ「ええんじゃのう? どんな処分なるんか楽しみじゃのう。」
私「校長でも何でも言うたらええき勝手にせえ。」
カニ「こっちも好き勝手されたきんのう。好きにしたるわや。
私「貴様の方が問題やか。」
そんな時でした。
チャラ子「おいカニ。こればら撒くぞ。」
チャラ子は携帯電話の画面を見せつけるようにカニへ向けます。
彼女は一連の出来事を撮影しており、
私が訛り丸出しで怒鳴る声もしっかり記録されていて、
怒りを滲ませるカニは特に態度を変えることもなく、
カニ「何じゃお前も。授業中はそんなもん禁止なんじゃ。」
チャラ子「授業中だぁ? 授業なんかしてないじゃん。だからオーケー。」
カニ「屁理屈ばあ抜かすなや。ほんじゃ学校では禁止じゃ。
チャラ子「ルールなんて守る必要あんのかよ。
これ以降カニの勢いが徐々に弱まっていったように思います。
チャラ子「
カニ「お前目上のもん脅す気か?」
チャラ子「あたしのダチイビる奴に上も下もねえんだよ。
カニ「勝手にせえ。ばら撒きたかったらばら撒けや。」
チャラ子「ばら撒いてやるよ。」
カニ「これからは代わりでも絶対お前らに授業やかせんきんのう。
チャラ子「わかったからとっと帰れク○ガニ。」
カニ「帰っちゃるわ。もう知らん。」
彼はそう言い放つと荷物をまとめて早々に教室から出て行きました。
正直カニに対する怒りがどうこうというよりも、
チャラ子が意外と頼りになるところがあって感心していたように思います。
教室内がざわついている中で、取り巻きがチャラ子に問います。
取り巻き「でさ、どこにばら撒くの?」
チャラ子「校長に見せればいいんじゃね? 知らんけど。」
取り巻き「そういうもんなん?」
チャラ子「さあ。」
取り巻き「ってかトシロー途中から何言ってんのか全然わからんかったwww」
話を振られた私は動画に残っていた自分の怒鳴り声を思い出して、
急にとんでもなく恥ずかしさが込み上げていました。
私「もう忘れろ。っていうか動画消してほしいかも。」
取り巻き「せっかくの証拠なんだから消せないっしょ。」
私「うわあ……。まあええけど。」
結局のところ、その日に先生が戻ってくることはありませんでした。
――先生大丈夫かな? 事故に遭っていないかな? 事件に巻き込まれていないかな?
パワハラされていないかな? ナンパされていないかな?
俺のこと思い出しているのかな?――
待ちわびていた翌日の朝。
朝礼に合わせて先生が教室に入ってきました。
この瞬間をどれほど待っていたことでしょう。
二日見ない間に、またしても美しさが増したような、そんな気がいたしました。
飛びつくように――ではなかったと思いたいところでありますが、
私は他の生徒たちに先んじて、先生に声を掛けたのでした。
私「おかえりなさい。」
先生「ただいま。」
私は優しくにっこりと笑って応える先生を見て、安心感と同時に、
さらに膨らんでいく恋心を確かに感じていたのです。
そのあまりにもまぶしい笑顔に――。
【五十五】
難相 妹之目見者 無限 悞有來 吾戀哉
逢ひ難き 妹が目見れば 限り無く 嬉しかりけり 吾は戀ふるかも
ずっと会えなかった貴女に会えたならば、この上なく嬉しい限りです。
私の恋心はまたしても大きくなっていくことでしょう。
私の万葉歌 戀歌 第十二話 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
【あとがき】
前回から時間が空いてしまったのと、初めて来られた方もいらっしゃると思いますので、
私が上代日本語で和歌を詠む上で念頭に置いていることを三点ご紹介します。
・二句切れ、四句切れを意識している。
万葉集においても絶対というわけではありませんが、意識して詠んでいます。
長歌の場合、句切れは特に気に留めてはいません。
・字余りはア行音が含まれる場合のみ可。
上代語の歌はこのケースに当てはまらない場合もありますが、基本として押さえてあります。
また、ヤ行エはア行エとは別物ですので、字余りの対象とはなりません。
・ヤ行エについて
上代日本語の万葉仮名ではア行エとヤ行エが明確に書き分けられています。
私のこだわりで”𛀁”と表記して区別することとしておりますが、
デバイスによっては表示されない可能性がございます。ご了承ください。
ヤ行エが表示されない方に向けて画像を用意しました。
こんな形の文字で「ye」「イェ」のような発音をする文字ですね。
パソコンからだと入力、表示はされるようですが、あくまで環境依存のようです。
誰もがちゃんと読めるように表記法を考えるのも、私の課題の一つではあります。
名案がございましたら、ご教示くださるとありがたいです。
※8/12追記。更新
サムネイル画像がヤ行エになるのが気になるため、
今回より木板に書いた行書の万葉仮名表記画像を載せることにしました。
もしよろしければそちらにも目を通していただけると幸いです。
ということで今回は以上になります。
最後までお読みくださりありがとうございました。
ではでは皆さんまたお会いしましょう。