話を聴くとき、貴方はどんな態度で聴いていますか。 
 
 私が所属している団体であるトーストマスターズでは、会員が事前に準備してきたスピーチ(5~7分)を、みんなの前で発表します。話す人以外は全員が聴き手になります。 
 話す側は一生懸命に話そうとします。しかし、聴く側の態度はというと・・・これが本当にまちまちです。
 
 話の内容にもよるのですが、話し手の話に合わせて相づちを打ったり面白い箇所で笑ったり合いの手を入れる人もいれば、下を向いて黙々と話し手の話を書きとる人もいます。全くもって話に反応せずに話し手をじっと見続ける人もいます。
 
 いざ自分が話す側になると実感するのですが、聴き手がどんな態度で聴いているかは、話のしやすさに大きく関わってきます。
 
 話し手にとって話しやすい聴き手は、自分の話に肯定的に反応してくれる聴き手です。先ほどの例だと、相づちを打ったり面白い箇所で笑ったり合いの手を入れる人です。特に相づち、そしてうなずきながら聴くという手法は、カウンセリングにおいて傾聴の手法としても確立しています。
 聴き手の中にこういう人が一人いると、本当に話がしやすいのです。そしてその経験は、人前で話しができたという実績・自信のよりどころとなります。
 
 続いて、話のあいだ下を向いて黙々とメモを取る聴き手。こういう人は実に多いです。
 この聴き手はメモを取るぐらいなので聴いているし熱心さはあるのですが、「話は聞いてくれているんだろうけど・・・」と話し手にとっては物足りなさを感じさせます。
 その理由は、話し手は話を通して内容以外に話にかける熱意や一体感をも全て伝えたいのに、メモに終始する聴き手は内容のみを受け取っている様に見えるからです。私は指導する際は、なるべく顔を上げて積極的に反応する様に指導します。
 
 そして、全く反応しない聴き手
 話し手にとっては、聴いているのかどうかわからないというまさに不安を煽る聴き手です。こうした聴き手に話す側は、反応が無いということがどれだけ辛いかを身をもって知ることになります。
 ちなみに、この「反応しない」という態度は、実はキャッチセールスや勧誘の電話に対して非常に有効な手段です。向こうはこちらの拒否を計算に入れて話を展開してきますが、そもそも反応されないと手の打ちようがないのです。断るのが下手、という人はむしろ積極的に活用して欲しい方法でもあります。
 
 否定的な反応ばかりする聴き手に至っては論外です。
 否定的な反応ばかりされると、ついつい納得させようとやっきになったり、不安で声が小さくなったり、緊張が高まっていって話す内容を忘れてしまったりします。
 こうした聴き手は、そこに満たされない自分を重ねていることが多いですが、中にはこの否定的態度を技術として身に付け、目的をもって相手を揺さぶる人もいます。
 
 いやいやそんなこと言ったって、どんな人が相手でも話せる様にならなきゃダメだろ・・・日本人は得てしてこうした発想をします。(これは「道」という厳しい思想に基づくものです)
 
 しかしそれは、泳げなくて水泳をこれから習う人にいきなり水深5mのプールで100m泳がせる様なものです。物事には段階が有ります。いきなりハードルの高いことをしても、失敗するだけでなくもう一度やろうという気をも奪うのがオチです。
 
 聴き手の積極的な反応は、話すことを習い始めた人に積極性と上達を促します。  
 
 聴き手側もそうした態度で聴く姿勢を身に付けることは、人間関係を円滑に発展させ、結果的に周りが活きる、活かすことができる様になります。
 
 自分の聴く姿勢を、皆さんも今一度みつめてみませんか。
 
 


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