「そろそろ夏山の計画を立てないと」
そう思いパソコンを起動して山行計画作成のページを開く。
「今年は久しぶりに北アルプス縦走がいいな」
「できればまだ歩いたことがないところ」
以前は「希望する山域、日程、山行スタイル、目的」などを入力すると
AIが自動的に山行計画をいくつも作成してくれた。
登山口までのアプローチ(移動方法)、時刻も調べてくれる。
その中で気になったプランを選ぶ感じだった。
「それはそれで便利だったんだけどね…」
けど最近は「My山行アドバイザー」を使っている。
「今年の夏の北アルプス縦走なんだけどどこがいいと思う?」
「そうだね、奥劔岳の仙人池とかいいんじゃない?」
「あそこはまだ行ったことないでしょ」
「ここからの劔岳の景色もすごくいいよ」
山行アドバイザー「Challe」
「でもあそこは残雪の状況でルート取りが大変なんじゃなかな?」
「今年の気象予報でいくと9月初旬がいいかも」
「ピストンなら問題ないと思う」
「そのあと阿曾原温泉にぬける縦走だと大変かな」
「もういい歳なんだから余裕のある計画を立てないとダメだよ」
「もし行くならソロではなく3~4名のグループを勧めるよ」
「いつものあの人に声を掛けたらいいんじゃない?」
「そうか、それはいいかもしれない」
「サンキュー、とりあえずその案で声かけてみるよ」
「とりあえず奥劔の詳細プランを2~3つほど考えておいて」
「9月はそれでいいとして、8月におすすめなプランも考えておいて」
「了解!まかせて」
時間がないのでアドバイザーと話しをしただけでサイトをぬけた。
さすがに僕のことを良く分かっている。
なかなか魅力的な提案だった。
魅力的なのも当たり前といえば当たり前。
僕の過去20年以上にわたる全山行記録、住所、年齢などの個人プロファイルはもちろんのこと、
個人的な趣向、性格的なものまで学習されている。
いわゆる「もうひとりの自分」に相談している感じだ。
その上で他の人の山行記録、現在の山域の状況などを加味して提案してくれる。
「あれ?ストックしてあるいくつかの山行計画にアラートが出ている」
ひらいてみると「もうすこし行動時間に余裕をもたせましょう」と書かれてある。
「確かにこの山行計画を立てたのは3年前だからな…。今と状況が違うし」
「そろそろCT(コースタイム)x0.8ではなく、CTどおりにしないとダメかな」
「つい先日も途中でロストして思わぬ時間を要してしまったし」
その時も山行アドバイザーのお世話になった。
圏外の場所でアプリ版の山行アドバイザーを起動していろいろ相談した。
ソロのときは心細い時もあるので便利だ。
これもエッジコンピューティングが進化したおかげ。
ある程度のAI処理は端末内で実行可能となった。
「けど自分で考えないとボケるからな…」
「あれこれ考える山の楽しみを放棄をするのももったいない」
----------END--------------
すべてフィクションです。
久しぶりに「あんなこといいな」を書いてみました(4年ぶり…)
過去のシリーズ記事(あんなこといいな)
・何気ない休日のRUN (2014年)
・ぶらり山歩き (2014年)
・食べては走る (2015年)
・山トレーニング (2016年)
・自由を求めて (2016年)
・Tech Mountain Orienteering (2016年)
・山へ しば刈り(仕事)に (2020年)
・ソロだけどソロじゃない山行 (2021年)
動画「熊野三山 ~世界遺産の山域を歩く~」公開
YouTubeチャンネル:としの山行記
