遺書
願わくば
桜の下にて春死なん
その如月の
望月のころ
西行法師
カマキリ雄は交尾後にすすんで雌に食べられる。
食べられる事で決して目にする事のない子孫の栄養になってやるのだ。
羨ましい死に方だと常々思っている。
「すべての男は消耗品である」というエッセイを村上龍氏が書いているが、確かに男は消耗品なのだ。
スペアはいくらでもある。
だから男は空虚でうつろな存在なのだ。
俺の人生だってとっくの昔に終わっている。
これまでの我慢や努力や悲しみは決して累加(るいか)される事無く、
春の風にただ流れ去るだけだ。
だから死に場所を心のどこかで探している。
物事は始める事はたやすいが、終える事は非常に難しい。
季節は春。
有終の美を飾りたいものである。
RYU
桜の下にて春死なん
その如月の
望月のころ
西行法師
カマキリ雄は交尾後にすすんで雌に食べられる。
食べられる事で決して目にする事のない子孫の栄養になってやるのだ。
羨ましい死に方だと常々思っている。
「すべての男は消耗品である」というエッセイを村上龍氏が書いているが、確かに男は消耗品なのだ。
スペアはいくらでもある。
だから男は空虚でうつろな存在なのだ。
俺の人生だってとっくの昔に終わっている。
これまでの我慢や努力や悲しみは決して累加(るいか)される事無く、
春の風にただ流れ去るだけだ。
だから死に場所を心のどこかで探している。
物事は始める事はたやすいが、終える事は非常に難しい。
季節は春。
有終の美を飾りたいものである。
RYU
神戸物語
女はアルマーニをまとい軽くステップ踏みながらクルマに乗り込んできて、
サングラスをずらして俺の顔をのぞき込み目が合うとイタズラっぽく笑った。
女は有無も言わせず相手に何かをあきらめされるオーラを放っていた。
カタヤマ(仮名)はそのあきらめさせるオーラが、好きだったし、
それは何が大切かを明確にしてくれるオーラでもあった。
この女とアメリカ東海岸をドライブしてフロリダまで行けたら楽しいだろうなと思った。
実際女は元CAでソムリエ免許も持ち「制服着てるとゲストが吐いたものまで平気で片付けられるんだよ」
と屈託なく笑うが海外には強かった。
一度アメリカ土産にオーパスワンをもらったが、さすがに美味かった。
カタヤマはアメリカにも美味いワインがある事をはじめて知った。
彼女はキスが上手で、ある意味SEXよりも魅力的なキスだと思った。
彼女は何も求めなかったが、何も与えもしなかった。
その辺がカタヤマとウマがあったのか出会って5年になる。
彼女は不思議な女で彼女といるとあらゆるものにコミットするのが馬鹿らしく思えた。
二人には射撃という共通の趣味があった。
よく週末にグアムまで357マグナム打ちにいった。
44口径を持たせても姿勢がいいので、身体がブレる事がなかった。
カタヤマにとってシューティングの魅力はこの一発ですべて終わりに出来るという至極厭世的なものだ
ったが、
彼女にとってシューティングは精神集中出来るいわば禅だった。
彼女は俺といるとき「わたしたち」という言葉をよく使った。
何が共通で「わたしたち」なのか聞いたこともなかったし、今後も聞かないだろう。
クルマがオークラのエントランスに着いた。
RYU

サングラスをずらして俺の顔をのぞき込み目が合うとイタズラっぽく笑った。
女は有無も言わせず相手に何かをあきらめされるオーラを放っていた。
カタヤマ(仮名)はそのあきらめさせるオーラが、好きだったし、
それは何が大切かを明確にしてくれるオーラでもあった。
この女とアメリカ東海岸をドライブしてフロリダまで行けたら楽しいだろうなと思った。
実際女は元CAでソムリエ免許も持ち「制服着てるとゲストが吐いたものまで平気で片付けられるんだよ」
と屈託なく笑うが海外には強かった。
一度アメリカ土産にオーパスワンをもらったが、さすがに美味かった。
カタヤマはアメリカにも美味いワインがある事をはじめて知った。
彼女はキスが上手で、ある意味SEXよりも魅力的なキスだと思った。
彼女は何も求めなかったが、何も与えもしなかった。
その辺がカタヤマとウマがあったのか出会って5年になる。
彼女は不思議な女で彼女といるとあらゆるものにコミットするのが馬鹿らしく思えた。
二人には射撃という共通の趣味があった。
よく週末にグアムまで357マグナム打ちにいった。
44口径を持たせても姿勢がいいので、身体がブレる事がなかった。
カタヤマにとってシューティングの魅力はこの一発ですべて終わりに出来るという至極厭世的なものだ
ったが、
彼女にとってシューティングは精神集中出来るいわば禅だった。
彼女は俺といるとき「わたしたち」という言葉をよく使った。
何が共通で「わたしたち」なのか聞いたこともなかったし、今後も聞かないだろう。
クルマがオークラのエントランスに着いた。
RYU

武士の一分
思いやりを持てば相手はそれが当たり前になり。
譲ればそれが相手の既得権になり、譲れ返される事はなく、
また「譲れ!」と叱責される。
不遇の弱者の最後のよりどころの教会からは追い出され、
寒風吹きさらしの中、刃折れ矢尽き果てて立ちすくんだ事があるかい?
俺は今朝まで金持ちのお坊ちゃんの様に礼儀正しく誠のこころで生きてきたのだ。
それが今や礼節は無く誠のこころは肉屋の精肉機でミンチにされてしまったのだ。
また不本意ながら戦わねばならぬ。
古い船を老人が操船している限りこの世界は変わらない。
古い船には若い水夫が乗り込んでいかねばならぬ。
あらゆる艱難辛苦を乗り越え戦うのだ。
お前はまだ死んでいない。
RYU
譲ればそれが相手の既得権になり、譲れ返される事はなく、
また「譲れ!」と叱責される。
不遇の弱者の最後のよりどころの教会からは追い出され、
寒風吹きさらしの中、刃折れ矢尽き果てて立ちすくんだ事があるかい?
俺は今朝まで金持ちのお坊ちゃんの様に礼儀正しく誠のこころで生きてきたのだ。
それが今や礼節は無く誠のこころは肉屋の精肉機でミンチにされてしまったのだ。
また不本意ながら戦わねばならぬ。
古い船を老人が操船している限りこの世界は変わらない。
古い船には若い水夫が乗り込んでいかねばならぬ。
あらゆる艱難辛苦を乗り越え戦うのだ。
お前はまだ死んでいない。
RYU
坂の上のフレーム
今日は休みだった。
俺の部屋には電話回線を光ファイバーで2回線敷設している。
一般電話とFAX用だ。
朝、クルマでドラッグストアーと旨いパン屋に寄ってバケット買って帰ってくると、
電話がひっきりなしに鳴っている。
今日は俺にとって神聖な休みなので、電話に出ない事に決めた。
電話は必ず俗世を運んでくる。
たとえそれがごく微量の俗世だとしても、一瞬にして俺のサンクチュアリは浸食されて
ボロボロになる。
せっかくありったけの辛抱と忍耐力で一週間を過ごしたのだ。
それにしてもよく電話が鳴る。
大事な人には携帯教えているので、世俗の電話は無用なのだ。
最近メンタルタフネスを要求されるので、今の俺に必要なのは「休養」と「美」だ。
美に囲まれていると「俺は間違っていない。」と思わせてくれる。
その確信があるから男は闘いに身を投じられる。
歯並びのいい身長169センチ、股下84センチの美しい人とホテルで飲む紅茶は、ルイ13世よりも芳醇な味がする。
相変わらず電話はよく鳴る。
バケットで軽い食事をした俺は電話から逃れ散歩に出た。
ウランが存命の時に通った散歩コースだ。
コースの中に細い坂がある。
俺はその坂の上の雲を見るのが好きだ。
俺はその風景をこころのフレームで最も美しい形に切り取るのだ。
夏になると坂の上には太陽と積乱雲が見事に調和した風景が見られる。
それは一枚の絵のようだ。
調和は美だ。
例えばドミソの和音は美なのだ。
今の俺には不協和音はいらない。
不協和音は間違った孤独と不条理の宣教師なのだ。
今の俺は一人の傷ついた美の求道者に過ぎない。
まだ闘いは序盤だ。
RYU
俺の部屋には電話回線を光ファイバーで2回線敷設している。
一般電話とFAX用だ。
朝、クルマでドラッグストアーと旨いパン屋に寄ってバケット買って帰ってくると、
電話がひっきりなしに鳴っている。
今日は俺にとって神聖な休みなので、電話に出ない事に決めた。
電話は必ず俗世を運んでくる。
たとえそれがごく微量の俗世だとしても、一瞬にして俺のサンクチュアリは浸食されて
ボロボロになる。
せっかくありったけの辛抱と忍耐力で一週間を過ごしたのだ。
それにしてもよく電話が鳴る。
大事な人には携帯教えているので、世俗の電話は無用なのだ。
最近メンタルタフネスを要求されるので、今の俺に必要なのは「休養」と「美」だ。
美に囲まれていると「俺は間違っていない。」と思わせてくれる。
その確信があるから男は闘いに身を投じられる。
歯並びのいい身長169センチ、股下84センチの美しい人とホテルで飲む紅茶は、ルイ13世よりも芳醇な味がする。
相変わらず電話はよく鳴る。
バケットで軽い食事をした俺は電話から逃れ散歩に出た。
ウランが存命の時に通った散歩コースだ。
コースの中に細い坂がある。
俺はその坂の上の雲を見るのが好きだ。
俺はその風景をこころのフレームで最も美しい形に切り取るのだ。
夏になると坂の上には太陽と積乱雲が見事に調和した風景が見られる。
それは一枚の絵のようだ。
調和は美だ。
例えばドミソの和音は美なのだ。
今の俺には不協和音はいらない。
不協和音は間違った孤独と不条理の宣教師なのだ。
今の俺は一人の傷ついた美の求道者に過ぎない。
まだ闘いは序盤だ。
RYU
HEAVY GAUGE(ヘビー・ゲージ)な人生
「すさまじいですね。」と彼女は言った。
何が「すさまじい」かと言えば俺の今おかれている状況がだ。
人が一生のうちに一度あるかないかの問題を2つ抱えている。
確かにすさまじいと言えばすさまじいと言える。
崖っぷち×崖っぷちだ。
若い頃の苦労は買ってでもしろと言うが、
年とってからの苦労は売ってでもしたくないものである。
禅僧良寛は災難に遭わない方法を聞かれて、
「災難に遭うときは災難に遭うがよろしかろう、死ぬ時は死ぬがよろしかろう、是、災難を逃るる妙法なり。」と言ったが、
確かに逃れようと思って逃れられるのは本来災難ではない。
災難にあったら居直る(居住まいを正して座り直す事)事だ。
それにしてもヘビーゲージな人生だなと我ながら思う。
まあ立って半畳、寝て一畳だ。
なるようになるだろう。
中島みゆきの「宙船」ではないが、自分のオールで懸命にこぎ続けようと思う。
たとえ海の端からこぼれ落ちようとも。
最後に彼女は「自殺しないで下さいね。」と言った。
RYU
何が「すさまじい」かと言えば俺の今おかれている状況がだ。
人が一生のうちに一度あるかないかの問題を2つ抱えている。
確かにすさまじいと言えばすさまじいと言える。
崖っぷち×崖っぷちだ。
若い頃の苦労は買ってでもしろと言うが、
年とってからの苦労は売ってでもしたくないものである。
禅僧良寛は災難に遭わない方法を聞かれて、
「災難に遭うときは災難に遭うがよろしかろう、死ぬ時は死ぬがよろしかろう、是、災難を逃るる妙法なり。」と言ったが、
確かに逃れようと思って逃れられるのは本来災難ではない。
災難にあったら居直る(居住まいを正して座り直す事)事だ。
それにしてもヘビーゲージな人生だなと我ながら思う。
まあ立って半畳、寝て一畳だ。
なるようになるだろう。
中島みゆきの「宙船」ではないが、自分のオールで懸命にこぎ続けようと思う。
たとえ海の端からこぼれ落ちようとも。
最後に彼女は「自殺しないで下さいね。」と言った。
RYU
未完の時
未完の時が好きだ。
花はつぼみと満開の中間地点。
胡蝶蘭は咲く一歩手前がSEXY。
花だけでなく、本も若い頃はがむしゃらに読破していたが、
今は読破するよりも経過が楽しい。
恋愛も未完がいい。
二人が成熟した関係になり、
やがて別れがくるのなら、
俺は永遠の恋に身をおきたい。
枯れかけの男の独り言だ。
RYU
花はつぼみと満開の中間地点。
胡蝶蘭は咲く一歩手前がSEXY。
花だけでなく、本も若い頃はがむしゃらに読破していたが、
今は読破するよりも経過が楽しい。
恋愛も未完がいい。
二人が成熟した関係になり、
やがて別れがくるのなら、
俺は永遠の恋に身をおきたい。
枯れかけの男の独り言だ。
RYU
みんなが泣いた夜
最近朝起きると、
こめかみに涙の跡がある。
夢の中で泣いたのか?
そう思うと己が少しいじらしく感じる。
泣きぼくろより、笑いじわがきざまれる人生を歩みたいものだと思ってきた。
だが現実は混沌としている。
引き潮で座礁した難破船は、満ち潮を待たなければならない。
待つという行為も一つの方策だ。
明日はどっちだ!!!
RYU
こめかみに涙の跡がある。
夢の中で泣いたのか?
そう思うと己が少しいじらしく感じる。
泣きぼくろより、笑いじわがきざまれる人生を歩みたいものだと思ってきた。
だが現実は混沌としている。
引き潮で座礁した難破船は、満ち潮を待たなければならない。
待つという行為も一つの方策だ。
明日はどっちだ!!!
RYU