SSSS.DYNAZENON(2021)

※ネタバレなし

【大義と、個人の葛藤】


ウルトラマンシリーズでおなじみ、円谷プロ、そして「天元突破グレンラガン」「キルラキル」でおなじみのTRIGGER制作。「電光超人グリッドマン」の世界観を継承する、壮大なロボットアクションアニメ。本作の特筆すべき点は、ロボットと怪獣の大スケールの戦いを扱いつつも、登場人物達の個人的な問題にも焦点を当て、しっかり尺を割いて描写していること。

現実においても、アニメにおいても、大きな問題を前にして、個人的な葛藤は二の次にされがちです。私情を捨てて、大義を成すことを求められることが多い。

本作は、怪獣による街の危機という「大きな問題」を扱いつつ、メインキャラを取り巻く「個人的な葛藤」も決しておろそかにはされません。

蓬の、母の再婚にまつわる葛藤。
夢芽の、姉の不審死への葛藤。
暦の、立場を定められない葛藤。
ちせの、不登校にまつわる葛藤。

「親の仇」「故郷の壊滅」などといった従来のアニメ的に誇張された悲劇とは異なる、詳細にして繊細な葛藤のドラマ。それゆえに心を引き裂かれるのではなく、少しづつ削り取られるような苦しみ。世界観の謎の解明が主軸とされた前作「SSSS.GRIDMAN」と比べて、本作は個人の問題に焦点を当てる側面が強まったように思います。

【等身大の善意】


公私二つのストーリーラインを同時に扱うことは、ともすれば、物語的に歪な構成になりがちですが、ギリギリでバランスを取る。主人公ガウマの力が大きいでしょう。怪獣との大きな問題を前にしては「頼れるリーダー」として。個人的な問題に関しては「アドバイスをくれる年長者」として。どちらにも頼れる存在としてしっかり引っ張るガウマがいるからこそ公私二つのストーリーラインは纏まりあるものとして引き締められる。複雑で深刻な問題に向き合う本作の作風において、先頭に立つガウマの、まっすぐで力強いキャラクター性も引き立ちます。

そして、それぞれのキャラクターが個人の問題に答えを出したからこそ、クライマックス、最大の脅威に立ち向かう各キャラクターの選択の説得力が生まれます。まず、自分の問題に向き合うこと、そして、自分が大事にしたいことに気づくこと。そして、それを守りたい想いに気づくこと。

正義の見えにくい。複雑な時代に、説得力を持つ、等身大の善意が屹立します。

 

【誰かを救うことは、自分を救うこと】

 

と、まあ、いろいろ書きましたが、とにかくガウマのカッコ良さ!これに尽きます。人々を怪獣の脅威から守るため、かつての仲間と対立しつつ、慣れない現代にあって、昼夜問わないバイトにいそしみつつ、仲間を集め、怪獣と戦い、そして、仲間の個人的な問題にもしっかり寄り添う。そして心の奥に秘めるのは、想い人への一途な想い。まさに、「頼れるアニキ」!「グレンラガン」のカミナはとにかく魅力的なアツい漢でしたが、ガウマは冷静で、落ち着いた雰囲気の中に信念とアツさを秘める漢。より現実的なキャラクター造形は写実的な世界観に良く馴染みます。

 

そして、同じく年長者の暦。こちらは打って変わって仕事に就けない葛藤を抱えます。生真面目な性格が災いし、自分の人助けさえ懐疑の目で見てしまいます。この現実的な心理の機微!胸を引き締められます。自立したガウマとの対比もあり、それぞれのキャラがメリハリをもって描写される手腕は見事!

 

そして、ちせ。彼女は学生でありながら不登校。親戚の暦の家に居候しつつ、暦の良き理解者として彼の世話を焼きます。そして、蓬は家庭の葛藤を抱えつつ、夢芽の姉を巡る真相の探求の手助けをします。これらの描写から「誰かを救うことで、いつの間にか、自分が助けられている」。それこそ本作のテーマなのではないか、そんな思いを抱きます。