ウルトラマンZ(2020)

※ネタバレあり

【王道!そして、画期的な点は・・・】


第52回星雲賞メディア部門受賞。ニュージェネレーションのウルトラマンシリーズとしては初となる快挙を成し遂げた本作。(過去には「ウルトラマンティガ」「SSSS.GRIDMAN」にも受賞歴があります。)パンデミック後の巣ごもり需要ともマッチし、ウルトラマンシリーズの魅力を幅広い層へ知らしめた本作は、前提知識がなくても楽しめる、初心者にオススメしやすい作品としてもファンの間で知られ、脚本面でも高い評価を得ています。

 

筆者も本作を大いに楽しみましたが、最終回となる第25話まで見終わった感想としては、「監督、脚本家チームは、王道の魅力を追求しつつも『画期的』なことをしているな。」というものでした。本作の画期的な点、それは、ヒーロー番組であるにも関わらず、ラスボスの怪獣を主役として構成されているという点です。

【クライマックスへの伏線】


 

誤解してほしくないのですが、筆者も本作の主人公としてナツカワ・ハルキとウルトラマンゼットが魅力的に描かれているのは承知しています。彼らの成長と絆は、本作を構成する重要な要素です。ただ、本作を全25話で構成される1本の物語と考えた時、ラスボスとなる怪獣「デストルドス」を中心に構成されている巧妙な脚本であることが分かります。

本作は、様々な要素で構成されます。かつて人々を救い命を落としたハルキの父。父の真意に向き合い、怪獣の命を尊重しつつも、人を救う際には覚悟を胸に「怪獣退治の専門家」として立ち上がるハルキの成長と決意。

過度な軍拡の果て、セブンガーから始まり、ウィンダム、キングジョー、果てはウルトロイドゼロと、次第に強大な武力を開発する防衛軍。

ジード、エース、それぞれの客演の果てに、地球にもたらされる「ベリアルメダル」「D4」という地球の生命の枠を超えた強大な力。

それぞれに興味深いドラマは、寄生生物セレブロの暗躍を経て、デストルドス誕生という最悪の結果へ収斂します。

【ラスボスが主役!?】


セブンガーから始まる、特空機の強化の経緯があるからこそ、デストルドスの素体となるウルトロイドゼロの強力さが伝わりますし、ハルキが戦うこととなる怪獣の生命と向き合う描写があるからこそ、力の渇望という安易な動機で怪獣を吸収し強化されたデストルドスの醜悪さが際立ちます。

 

そしてデストルドスはベリアルメダルとD4を吸収し更なる強化を遂げる。これも過去作において再三強調されてきた「ウルトラマンベリアル」と「超獣」の脅威があるからこそ視聴者に危険なものとスムーズに伝わります。

つまり、ウルトラマンZの連続するエピソードを通して、しっかりとデストルドスの脅威が説得力を持って描写されている。デストルドスの脅威をいかに描写するかを考え、クライマックスから逆算的に構成されたシナリオと言えます。監督、脚本家チームの丁寧な仕事が生んだ成果と言えるでしょう。

これまでのニュージェネレーションシリーズでは「グリーザ」「マガタノオロチ」等、印象的で強力なラスボスは多いですが、デストルドスの存在感はTVシリーズを通して描写された伏線をベースにする分、顕著です。

【そして、最大のカタルシス!】


 

そして、そんな最強ラスボス、デストルドスを打倒するのは、全25話かけて培われたハルキとゼットの絆。王道であり、とてもすっきりした幕引きです。脅威の描写がしっかりしているからこそ、クライマックスの絶望感、勝利のカタルシスは圧倒的。「力へどのように向き合うか」というテーマ性も説得力を持って描写されます。

 

精密に構成された物語の中を自由闊達に動き回るヘビクラ隊長=ジャグラス・ジャグラーも魅力的。ヘビクラ隊長としての「表の顔」、ジャグラーとしての「裏の顔」、真意をつかませない巧妙な立ち振る舞いは、物語の枠を超えて視聴者さえも欺きます。

 

(本作は「力との向き合い方」というテーマが共通する点、そしてジャグラーの過去が描かれる点から、「ウルトラマンオーブ/オリジンサーガ」(2016)との関わりの深い作品でもあります。「オリジンサーガ」も合わせて視聴することで、本作を更に楽しむことができるはずです!なんと、ジャグラーの持つ盆栽の驚愕の正体が明らかに!?)

 

ニュージェネレーションシリーズの一つの集大成であり、万人に薦められる傑作、ウルトラマンZ。この機会に、「ラスボス視点で」再度視聴してみるのも、面白いのではないでしょうか。精密な脚本の新たな一面が見えてくるかもしれません。