GOTHAM/ゴッサム(2014~2019)
(ドラマシリーズ)
個人的評価:S
※ネタバレなし
【主役の椅子は、悪を浄化する?】

DCコミック、バットマン原作のドラマシリーズ
コミックの悪役を主役に据えたスピンオフシリーズですが、発想自体は珍しいものではありません。
シリーズ物の悪役が主役に並ぶ人気を獲得し
番外編が作成される事例は数多くありますし
アメコミ映画作品においても
「スーサイド・スクワッド」(2016)「ヴェノム」(2018)などといった、悪役を主役としたスピンオフ作品は数多くあります。
そのような悪役主役のスピンオフは今まで干渉してきましたし、面白い作品も多いです。
しかし、そのような作品を見るとき
このように感じたことはないでしょうか
「この悪役、思ったより良い人では?」
たとえ悪党という設定が改変されずとも
作劇の設定上で法律を破っていると描写されても
映画の主役という椅子に収まり「目的意識をもって、過程を積み重ね、結果を出す」その行いを成す時点で、そのキャラクターは善性を帯びます。
たとえ悪党が主役となり、その作品が名作だったとしても、悪党の悪党性が主役の立場で描写されることは難しいのです。
そんな諦観を完膚なきまでに破壊するドラマとの出会いがありました。それがこのゴッサムです。
【悪党の輝く舞台、ゴッサム】

ゴッサムはバットマン本編の数十年前の犯罪都市、ゴッサムを舞台に、ペンギンやリドラーといったコミックの悪役の若き日の姿を主人公としたクライムサスペンスドラマです。
ギャングの下っ端としてキャリアを始めるペンギンの成り上がりドラマ。警察の鑑識として法を順守すべき立場にありながら凶器に染まるリドラー。親との確執から、善良な市民から道を踏み外すスケアクロウ。支配者として君臨し抗争に明け暮れるフィッシュ。そして、存在としての輪郭さえつかませない虚空より、物語に影を落とすジョーカー・・・
ほかにも様々な悪が登場し、それぞれが手前勝手な欲望を指針に、被害など顧みない仁義なき抗争の渦中に身を投じています。
そして、若き日のブルース・ウェイン(後のバットマン)も登場し、誰もが知るスーパーヒーロー誕生の前日譚も展開していきます。
このドラマ最大の魅力は悪役同士の化学反応です。リドラーが策を弄せば、それをぶち壊すジョーカーの無計画な暴走、皆の注意の逸れた隙にペンギンは街の権力者と手を組み、頂点を取るかと思えば感情的な凡ミス一つでペンギンは権力の階段を崩れ落ち、闇の奥では、ラーズの魔術的儀式が街を蝕む・・・
戦国時代の戦記物を想起させるダイナミズム
勢力争いで紡がれる、一級の悪党群像劇です。
アベンジャーズ(2012)やジャスティス・リーグ(2017)といったヒーローの集結、その魅力が「団結」なら。
悪党終結のゴッサムの魅力は「仲間割れ」「足の引っ張り合い」と言えます。
前述したスーサイドスクワッドは2時間に収めるという事情もあってか、悪党主役のわりに善性を感じさせる悪党同士の団結映画でした。(これはこれで面白かったのですが、悪党の悪党としての魅力を引き出せていたかは疑問符です)
翻ってゴッサムの悪役は団結、協力という発想はなく、利害の一致から手を組むことはあってもすぐに決裂します。
足の引っ張り合い
逆恨みといった感情に従い
全力で暴れまわる彼らの紡ぐドラマには
目をくぎ付けにさせるだけの
力強い魅力があります。
【意外と見やすいドラマ】
このような書き方で魅力を伝えると
面白くとも
疲れるドラマと思われるかもしれません。
しかし、このドラマ、非常にバランス感覚に優れています悪役と並び立つ、若き日のゴードン警部は後のバットマンを、彷彿とさせる善性で希望を体現しますし
ブルースとキャット、そしてその二人に振り回されるアルフレッドの掛け合いは、殺伐としたドラマに牧歌的な癒しを与えます。
キャラクターや要素は多いものの、コミック原作ということもあり、アイコニックなキャラで構成されるため、キャラの名前と顔が一致しないという海外ドラマあるあるが起きにくいのも見やすいポイントです。「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016)でも思ったことですがマンガ的な特徴の際立つキャラクターは混同しにくく複雑な群像劇とアメコミ映画は相性が良い。
また、悪党同士の抗争の横軸が風呂敷を広げるように、膨張し理解を超えそうになるタイミングを見計らい、ブルース両親の死の謎という縦軸が物語の軸を補強し、物語の指針を揺り戻します。
どれほど悪が栄えても、最後にはバットマンの誕生に続くと視聴者は、分かっているのですから、安心してみることができるのです。
【連続ドラマ、その力】

これまでのバットマン映画では
悪党が順番に登場します
スケアクロウを倒せばラーズ
ラーズを倒せばジョーカー
ジョーカーを倒せば・・・
といったように、さながらテレビゲームのボスキャラのごとく、法を破る悪党が律儀に順番を守るのです。(これは問題ではありません、2時間、1話完結の映画構造の宿命故のことです。順番を守ることで、掘り下げられるドラマもあるでしょう)
しかし、「ゴッサム」の悪党は違います。順番を守りません。悪党が次々と暴れまわるせいでゴッサム市警はてんやわんやです。
この予測のつかないライブ感が
ゴッサムの魅力なのです。
2時間の枠に収まり、すべてに意味があり、無駄なことなどなく、教訓を与えてくれる映画は私は好きです。「理想」を指し示し、私たちを救ってくれます。
しかし、現実はそうはいきません。期待はかなわず、積み重ねた努力という伏線は回収されず、取ってつけたような悲劇が襲い掛かります。
そんな現実に寄り添えるのは、むしろ連続ドラマのほうではないでしょうか。
連続ドラマは視聴率との勝負です。制作陣は視聴者にチャンネルを変えさせないように、目を引くような濃い味付けの展開を後先考えずに放り込んでいきます、伏線の回収は後から考えるのでしょう。
そんな行き当たりばったりな番組のありよう、
そして、後先考えない悪党の暴れっぷりは
どこか現実を生きる私たちに重なります。
そんな海外ドラマの魅力を
最も体現する作品の一つが
このゴッサムではないでしょうか。








