『忠臣蔵外伝 四谷怪談』 (1994) 深作欣二監督 | FLICKS FREAK

FLICKS FREAK

いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

『東海道四谷怪談』は歌舞伎の世話物狂言として有名な作品。その初演時(1825年)には、時代物狂言の『仮名手本忠臣蔵』とセットで上演された。四谷怪談が忠臣蔵のスピンオフ作品という背景からであろう。お岩は浅野内匠頭の家臣の娘であり、夫の伊右衛門がお岩を捨てて結ばれる相手が吉良上野介の家臣の娘という設定。つまり、「恨めしやー」という憎しみの構図が忠臣蔵に通ずるものがある。再演以降、単独で上演されることになるこの二作品を、深作欣二はマッシュアップして映画化したのがこの作品。

 

オリジナルでは、お岩の恨みは自分を裏切った伊右衛門に向かうのだが、この作品ではそうでないところが大きな差異。毒を盛られたのは、伊右衛門をお岩から奪い、娘と結婚させようとした吉良家家臣・伊藤喜兵衛の策略なのだが、この作品ではお岩の恨みは、吉良家に向かう。そして四十八番目の浪士よろしく、吉良家に霊力で復讐をするというのがこのSFホラー的な作品の主題。

 

自分にはこの主題があまりにピンとこなかった。オリジナルでは武家の娘のお岩は、この作品では遊女という設定。そして彼女が身ごもったことを知ると、「なんで俺の子供か分かるんだよ」と言ってのけるのが伊右衛門。そして自分を裏切ってほかの女に気移りする男であれば、可愛さ余って憎さ百倍というのが自然な感情だろう。それほどまでにされながらも、無垢な愛を貫くというのがよいとされての高評価(日本アカデミー賞作品賞受賞)なのだろうが、それはあまりに虫が良すぎる気がしてならない。

 

この年の各賞の主演女優賞を総ナメにしたお岩役の高岡早紀だが、なぜ脱がなければならないのか、観客に媚びる以外の必然性はストーリー上からは全く感じなかった。鼻の下を伸ばしたことは確かだが、それを見透かされたようで、あまり気分はよくなかったというのが正直なところ。

 

伊藤喜兵衛一家が顔を白塗りにしているのは何かの記号なのだろうが、自分には意味不明だった。そして、伊藤家に嫁ぐことになった伊右衛門の白塗りの顔のなんと間抜けなこと。

 

時代劇物にスプラッターSFホラーを盛り込んだ意欲は感じるが、とにかく盛り込み過ぎで、登場人物の心情の機微に深みを感じない。日本アカデミー賞作品賞はこの程度ということがよく分かる作品。

 

★★★ (3/10)

 

『忠臣蔵外伝 四谷怪談』予告編

 

近年の日本アカデミー賞作品賞の個人的評価

 

1994年 『忠臣蔵外伝 四谷怪談』 ★★★ (3/10)

1995年 『午後の遺言状』 ★★★★ (4/10)

1996年 『Shall we ダンス?』 ★★★★★★★ (7/10)

1997年 『もののけ姫』 ★★★★★★★ (7/10)

1998年 『愛を乞う人』 ★★★★★ (5/10)

1999年 『鉄道員(ぽっぽや)』 ★★★★★★★ (7/10)

2000年 『雨あがる』 ★★★★ (4/10)

2001年 『千と千尋の神隠し』 ★★★★★★ (6/10)

2002年 『たそがれ清兵衛』 ★★★★★★★ (7/10)

2003年 『壬生義士伝』 ★★★★★ (5/10)

2004年 『半落ち』 ★★★★ (4/10)

2005年 『ALWAYS 三丁目の夕日』 ★★★★★★★ (7/10)

2006年 『フラガール』 ★★★★★ (5/10)

2007年 『東京タワー オカンとボクと、時々オトン』 ★★★★ (4/10)

2008年 『おくりびと』 ★★★★★★★★ (8/10)

2009年 『沈まぬ太陽』 ★★★★★★ (6/10)

2010年 『告白』 ★★★★★★★★ (8/10)

2011年 『八日目の蝉』 ★★★★★★ (6/10)

2012年 『桐島、部活やめるってよ』 ★★★★ (4/10)

2013年 『舟を編む』 ★★★★★★★ (7/10)

2014年 『永遠の0』 ★★ (2/10)

2015年 『海街diary』 ★★★★★★ (6/10)

2016年 『シン・ゴジラ』 ★★★★★★ (6/10)

2017年 『三度目の殺人』 ★★★★★★ (6/10)