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素晴らしい作品。ケチのつけようがない。エヴァのファン以外の人にとっては。
ゴジラ作品としては、ハリウッドの2014年『GODZILLA ゴジラ』に続き、日本版としては2004年の『ゴジラ FINAL WARS』以来12年ぶりとなる。
ゴジラは1954年の初ゴジではヒールだったが、人気を博すると、人類の守護神となりほかの怪獣と戦うという設定になった。ハリウッド版の『GODZILLA ゴジラ』のストーリーが評価できるのは、初ゴジのヒールに戻ったから。そして本作でもゴジラはヒール、そして初ゴジの精神である反核が生きている。原点を踏襲しつつ、3.11以降日本が経験した復興がモチーフになり発展している。
映画は最初から観せてくれる。いきなり出てくるゴジラの第一形態が、「ん?ゴジラなのか?ん?ん?」という意外性で惹きつけ、危機対策に翻弄する政治ドラマがときおりコミカルにそして緊張感を持って描かれている。
そしてファンが最も気にするゴジラ(の第二形態)の造形もイケている。固まった溶岩を思わせる表皮の奥に赤く光る様は、荒ぶる火山のマグマを思わせる。
ストーリーのよさ、特撮の本物感、それに加えて全てのシーンにリアリティがある。
総監督にエヴァンゲリオンの庵野起用は、明らかに成功と言える。隅々まで庵野節が生きている。第一形態のゴジラはまるで第6使徒ガギエルのようであり、進化するゴジラは、使徒を食って覚醒した初号機のよう。「目標、沈黙しました!」というエヴァ用語をファンは見逃さないだろう。
アニメでの成功とは裏腹に、実写映画では、『ラブ&ポップ』『式日』『キューティーハニー』と評価の低かった庵野がエヴァでの成功パターンをそのまま持ち込んで「勝ちに来た」作品と言える。
この作品は、エヴァを知らない人には、エヴァのディテールを造り込むヲタク感が作品の面白さになっているだろうが、エヴァのファンにとっては、あまりにも露骨な「エヴァ感」は評価の別れるところではないだろうか。つまりゴジラ映画ではなく、エヴァの実写版のようなゴジラ=使徒の世界観をよしとするかどうかである。
出演陣の演技はどれも悪くない。日本映画に出演する外人の演技のまずさは興醒めということがよくあるが、この作品では名もない脇役であっても外人俳優の演技がしっかりしている。細かなところだが。
唯一、石原さとみは頂けなかった。ハーフ(クウォーターかな?)の設定での英語混じりの日本語もざーとらしいし、「パーティー帰りで着替える服がなかっただとお?」みたいな。重要な役であるがゆえに、ハリウッド女優起用でよかったのではないだろうか。
大ヒットの予感だが、それだけのことはある。
★★★★★★ (6/10)
『シン・ゴジラ』予告編