『インテリア』 (1978) ウディ・アレン監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



ウディ・アレンの黄金期、前年の『アニー・ホール』と翌年の『マンハッタン』にはさまった作品。

コメディの要素を完全に封印し、ウディ・アレン本人は出演していないシリアスな心理劇。

イヴは完璧主義のインテリア・デザイナーであり、娘3人は彼女の影響を強く受けて育った。一見、何不自由ない裕福な家庭であったが、亀裂の表面化は、父親がイヴとの別居を言い出した時に始まった。イヴはショックから、精神に異常をきたし始める。娘同士の間もそれに従いギクシャクし始めた。そして別居した父親が、新たな再婚相手のパールを連れてくることで、夫婦の決裂は決定的になる。

イヴにとって、家族は自分がデザインするインテリアのようなものだったのだろう。「こうあるべき」という彼女のルールに家族は長らく縛られていた。完璧なように見えた家族関係だったが、やはり人間は静物とは異なり、インテリアを配置するようにはいかないものだ。

イヴの選ぶインテリアは落ち着いた色調(ブルーグレイやベージュ)。そこに生気は乏しい。かたやパールは原色(赤)のイメージ。下世話だが、生命力にあふれている。

パールを一番拒否していたのは、3人娘の二番目のジョーイ。彼女は姉のレナータ(ダイアン・キートン)の芸術家としての才能に嫉妬し、人生に焦りを感じていた。そして、それは母親のイヴから評価されていないという不満から来ている。

映画の最後に、入水自殺するイヴを救おうとしたジョーイの命を救ったのがパールというのは実に皮肉だが、それはジョーイの人生における救済を意味しているのだろう。ジョーイの新たな人生の扉が開くことを暗示したエンディングは、全体に重苦しい作品の最後に希望の光を当てている。

全編、緊張感にあふれた、家族とは何かを考えさせる佳作。観て損はないと思う。

★★★★★ (5/10)


『インテリア』予告編