魔人ハンターミツルギ
「魔神バンダー」とくれば、「魔人ハンターミツルギ」(73年)である。ちょっとタイトルが似ているが、前者は「魔神」で後者は「魔人」である。どちらも1クール放送で、かなりマイナーな存在であることは共通しているが、「ミツルギ」の方はソフト化もされているし、最近CSで放送されてもいる。こちらは、「バンダー」と違い見ようと思えば割合簡単に見ることができる作品なのである。
「ミツルギ」というのは巨大神の名前である。銀河、彗星、月光の三兄弟による合体変身で「ミツルギ」となるのである。ちなみに設定は江戸時代で、さそり座から飛来したサソリ魔人率いるサソリ軍団が本編の敵である。巨大怪獣も登場するが、全部宇宙怪獣ということになるのだ。この番組の最も大きな特徴と言えば、アニクリエーションという人形アニメ手法が使われているところである。ミツルギと宇宙怪獣との闘いのシーンにその手法が用いられるのだが、着ぐるみ怪獣に慣れてしまった当時の自分たちには、違和感でしかなかった。今見てもやっぱり違和感なのだが、見たことのない人は50~60年代くらいの洋画で恐竜が動くシーンによく使われている技法といえばイメージが浮かぶだろうか。
何故、この手法を採用したのかは不明だが、とにかくこのやり方は膨大な手間と時間がかかる。実際、撮影スケジュールは逼迫したものだったようである。労力はかかっているのだが、当時の子供たちには残念ながら稚拙なものに見えたかもしれない。
三兄弟がそれぞれの秘刀を「智」「仁」「愛」と叫んで空にかかげるとミツルギに変身するが、続けて言うと「チジンアイ」→「痴人の愛」になる。
主演の三兄弟を演じるのは水木襄(銀河)、佐久間亮(彗星)、林由里(月光)。水木襄は映画スターではあったが、「忍者部隊月光」(64~66年)「緊急指令10・4-10・10」(72年)、そして「ミツルギ」と少年向けドラマで主役ヒーローを演じている。水木は当時34歳だが、林由里は半分の17歳であった。本名は本多秀子といい、林由里をスカウトしたのは俳優の林与一だという。だから芸名も林で、デビューも林が主演の「人形佐七捕物帳」(71年)である。佐久間亮に関しては詳細は不明だが、おそらく20代であろう。佐久間も林も活動記録は翌74年くらいまでなので、その辺りには引退したのではないかと思われる。
主題歌の作詞と歌唱が水上勉となっているが、もちろん作家の水上勉とは別人である。
魔神バンダー
「サンダーマスク」は、手塚治虫の「魔神ガロン」の実写化企画に端を発しているのだが、同様の流れで誕生しているのが「魔神バンダー」(69年)である。「ガロン」のパイロット版がお蔵入りしたため、それを参考にする形で東連山が原作を担当して企画が進められた。製作は「怪獣マリンコング」のニッサンプロの後継であるNMCプロが担当している。
実は66年には製作自体は終了していたが、放送枠の関係で中々放送されず、結局69年になってしまったという。
バロン彗星から強力な宇宙エネルギー・オランがゴーダーによって持ち去られ、それを取り戻すためバロン王子と護衛のX1号、そして守護神バンダーが地球へやってくるという話である。 バンダーの特徴はその入れ替え式ヘッドにある。普段は丸を二つ書いただけのような単純な顔だが、怒りモードになると一旦頭を体中にひっこめ、頭が再び上昇してくると怒りの顔に変わっているという仕組みである。怒ると顔が変わる魔神といえば「大魔神」。大魔神がヒットしたのは、66年のことであり、バンダーの制作時期と一致している。おそらく、その影響を受けていると思われる。
出演者で最初にクレジットされるのが立花博士役の湊俊一なのだが、23年生まれで慶応大学の出身らしい。老け役だが当時は40代半ばだったわけである。犬神博士役の浅香春彦は34年生まれで、57年の準ミスター平凡という経歴を持つ。個人的に一番印象に残っているのが「暗闇仕留人」(74年)に悪役の浪人として登場。仕留人に殺られるのではなく、つるんでいた山本学と対立し、その必殺の頭突きであばら骨を粉々にされるという役だ。立花の助手である映子役は加川淳子。「忍者部隊月光」では銀月を演じていた。
前述のバロン王子を演じたのは角本秀夫。詳細は不明だが当時は中学生くらいの年齢だったと思われる。X1号役は平松慎吾。あまり印象にないのだが結構、特撮ものへの出演が多い。俳優としても長く活動しており、07年までの出演記録がある。バンダーの中の人はきくち英一。「帰ってきたウルトラマン」のスーツアクターとしても知られる。現状、この番組の出演者の中では、一番ネームバリューが高いかもしれない。と思いきや悪役ゴーダー(誰が演じたか不明)の秘書ローズ役で佐藤友美が出演していたという。撮影時期から考えると本作が実質的なデビュー作ということになる。
この番組も「サンダーマスク」と同様に、94年に中京テレビで3話分(1、5、13話)のみ抜粋して放送されたらしいが、それを最後に陽の目を見ていないようである。「バンダー」もネット上で探せば見ることが可能だが、前述の3話分なので94年に放送されたものなのだろう。いずれも佐藤友美が出演していない回なのが残念である。
本作は特に封印作品というわけではないが、過去に一度もソフト化されたことがない。トランスグローバル社が版権とネガを所有しているらしいが、単純に需要が見込めないということだろうか。まあ、一般的にはあまり知られていない作品であることは確かだ。自分もその存在を知ったのは大人になってからだった気がする。
サンダーマスク その3
もう1回だけ「サンダーマスク」の話題である。作品自体が封印作品のようになってしまっているので、個々のエピソードについては欠番回は存在していないが、普通に再放送とかされていたら、どうなっていただろうかというエピソードは存在すると思う。
有名なところでは「ウルトラセブン」(67年)の第12話「遊星より愛をこめて」とか、「怪奇大作戦」(68年)の第24話「凶鬼人間」などがあるが、「太陽にほえろ」や「キイハンター」等にも欠番エピソードが複数存在している。それに到まで様々な事情はあるが、多いのは差別用語、差別描写があるとか、精神異常者を扱っている話などが多いようだ。
「サンダーマスク」にも第19話「サンダーマスク発狂」という回が存在している。登場する魔獣はシンナーマンという。冒頭、シンナーを吸ってラリっている若者たちのシーンから始まる。そこに婦人警官が現れ、中から男女二人を補導する。実はこの警官が魔王デカンダで、この魔王は若い女に化けたり、催眠術を使ったり、一瞬で物を消し去ったり何でもできる魔王なのである。そこに現れる人間大のシンナーマン。デカンダは「シンナーに侵された人間の狂った脳みそを食べておおきくなるのだ」と、ドリルで中毒女の脳天に穴をあけ、それをシンナーマンがストローで吸うのである。もちろん、映像上はグロテスクな描写があるわけではないが、その行為は想像できる。また、主人公の命光一とシンナーマンの脳が交換され、光一が狂ったようにというか狂って、街中で暴れまわるという場面もある。演じる菅原一高のイってしまっている顔が真に迫っている。あくまでも、ゴールデンタイムで放送されていた子ども向け番組である。昔は結構、こういうのが普通に放送されていたものである。ちなみに、このエピソードもネット上で見ることは可能である。乱れた映像だが見れないことはない。
脚本は「ガメラシリーズ」で知られる高橋二三。「フミ」ではなく「ニイサン」と読む。まあ二月三日生まれだからであろう。「ガメラ」の時は、怪獣映画で科学考証など意味がないと言い切り、キャラクラライズされた仕上がりとなっている。「ガメラ対ギャオス」(67年)では、公開後に本多猪四郎から「素晴らしい内容だった」と賞賛されたという。「サンダーマスク」では、高橋の担当は二本だけで、本多との「共演」は実現しなかったが、その存在は高橋が「サンダーマスク」に参加した要因なのかもしれない。で、高橋の書いたもう1本が21話「死の灰でくたばれ!」。登場魔獣はゲンシロンといい、なんとなく想像できると思うが、肩書は放射能魔獣である。体内に原子炉を装備しており、常に放射能や水蒸気を発散させているという設定なのだ。これこそ、昨今の事情から封印されそうな気がする。最も、この魔獣は映像はもとより着ぐるみのスチール写真すら現存せず、デザイン画でのみ紹介されている
サンダーマスク その2
前回の続きだが、役者について見ていきたい。予算の関係もあろうが、こういっては何だが有名と思われる俳優(後に有名になる)は出演していない。主役の命光一を演じるのが菅原一高である。菅原は46年生まれで本名を菅原督三郎という。一高はイッコウと読むが、自分はずっとカズタカだと思っていた。実際にカズタカと読ませる時期もあったようだ。高校卒業後に岩手から上京し、テアトルエコーに入団している。舞台での活動が主だったが、72年に「下町かあさん」に榊原るみの恋人役でレギュラー出演してからの「サンダーマスク」だったようだ。
終了後は「特捜最前線」へのゲスト出演が多く見られる。これは同番組のレギュラー藤岡弘と同じ事務所に所属していたということが関係していると思われる。
ヒロイン役は井野口一美で、当時は17歳だった。本作以外には、数本ドラマにゲスト出演した程度で姿を消してしまったようだ。その弟役が黒田英彦。姉を「おねえちゃま」と呼ぶのに違和感を感じる。
科学パトロール隊という防衛組織が登場するのだが、彼らの肩書は警部とか刑事だったりする。つまり警察組織の人間ということになるのだが、その辺の説明は番組内ではなかったようである。その隊長である矢野警部を演じるのが加地健太郎。このキャスト陣の中では有名なほうであろう。加地健太郎は高校時代に仲代達矢の弟(シャンソン歌手・仲代圭吾)と同級生で「七人の侍」のエピソードを仲代から聞いたことが俳優を目指すきっかけだったという。仲代のいた俳優座養成所に8期生として入所。「らくがき黒板」(59年)という映画の撮影中に宇野重吉から声をかけられ、養成所卒業後は劇団民藝に入団という、輝かしいといえる経歴の持ち主である。民藝退団後は、テレビを中心に活動しており、アクションドラマや特撮ものへの出演が多い。
しかし、矢野警部はわずか4話で殉職。どのような最後だったかは不明だが、後を継いだのが滝波錦司演じる藤警部である。滝波錦司という名前はよく見かけていた気がするのだが、脇役・端役が多いので顔はよくわからないという感じの人である。東映演技研修所に所属していたといい、当然東映の作品への出演がほとんどである。この「サンダーマスク」が唯一のレギュラー作品であったかもしれない。また、サンダーマスクの中の人の一人が中山剣吾とあるが、これは後にゴジラの中の人として知られるようになる薩摩剣八郎のことである。
ところで、主演の菅原一高だが古い情報では、東北のある劇団の座長となり舞台中心の活動をしており、映画やテレビなどの映像作品には出ないと決めたそうである。あくまでも10年ほど前の情報だけれども。
サンダーマスク
話はガラリと変わって特撮関係である。再放送もほとんどされずソフト化もされていない特撮作品の代表的なものといえば「サンダーマスク」(72~73年)ではないだろうか。俗にいう「封印作品」としても知られているかもしれない。個人的には「世代」なので、見ていたという記憶はあるが資料も少なく内容はほとんど覚えていなかった。
製作はひろみプロと東洋エージェンシー(現・創通)だが、番組終了後にマスターを東洋側が一方的に引き上げてしまったという。それをきっかけに本作の権利が分散し、創通のみの判断では再放送やそソフト化ができなくなっているということのようだ。ひろみプロという会社は、手塚治虫のマネージャーを担当していた平田昭吾が虫プロのメンバーを集めて独立した会社で、社名はプロデューサーにも名が挙がっている斎藤ひろみという女性の名を取ったものだという。
元々は手塚の「魔神ガロン」の実写化を虫プロが企画していたが、同社が倒産したためひろみプロが引き継いだものである。しかし「ガロン」のパイロット版を見た東洋エージェンシーが納得しなかったため、サンダーマスクに変更することになったという経緯がある。
「サンダーマスク」を手塚治虫の原作としている資料もあるし、手塚もマンガ版を書いていたりするのでそう思っている人も多いかもしれないが、実際は逆である。テレビ版が原作で手塚はそれをコミカライズしたのである(内容は全く別)。手塚にしては珍しいが、これは上記のような人間関係があったからである。
本作のスタッフは前述の「魔神ガロン」のパイロット版の監督を務めた金田啓治がその人脈を利用して、ほとんど一人で招聘したという。その中には監督の本多猪四郎や脚本の藤川桂介、上原正三といった大物もいた。着ぐるみや特殊美術は当時「仮面ライダー」も担当していたエキスプロダクションに依頼し、キャラクターデザインも成田亨に引き受けてもらったが、「突撃ヒューマン」に引き抜かれたため成田マキホが担当することになった。同じ成田だが、特に関係性はないらしい。
94年に中京テレビで3話分(1、13、26話)のみ抜粋して放送されたらしいが、それを最後に陽の目を見ていないようである。しかし、そこはネット時代。おそらくこの時に録画した映像がネット上に流れていたりするのである。
それを見た限りでは、低予算番組とはいえスタッフは中々の顔ぶれだったこともあり、魔獣(本編では怪獣ではなくこう呼ぶ)の造形はしっかりしているという印象である。
主題歌は若木ヒロシとなっているが、平素は若子内悦郎(おそらく本名)の名で活動している。ちのはじめという名を使っている時もあり、アニメ「はじめ人間ギャートルズ」のED「やつらの足音のバラード」は「ちのはじめ」名義である。音楽担当の中村二大はクラリネット奏者で中村八大の兄である。次回に続く。
黄色い風土
「事件記者」を筆頭に当時は新聞記者、雑誌記者など記者が活躍する映画や番組が多く存在したが、「黄色い風土」(65年)も週刊誌の記者が単身で悪の組織に挑んでいく姿を描いた作品である。
原作は松本清張の長編推理小説で、「黒い風土」のタイトルで新聞連載されていたものを改題して刊行されたものである。主人公の記者・若宮を演じるのは西沢利明。西沢と言えば、大抵の人は悪役のイメージだと思う。それも知的な悪役ではないだろうか。たとえば、警察の幹部として登場しても大体裏で悪の一味と繋がっていたりするイメージだ。
西沢利明は36年生まれ。学習院大学を中退し、俳優座養成所に10期生として入所。養成所卒業後は文学座に入団し、映画デビュー作は「放浪記」(62年)だった。
63年文学座から29人もの役者が集団で脱退し劇団雲を結成するという事件があったが、西沢もそのメンバーの一人であった。ちなみに一緒に脱退したメンバーには芥川比呂志、小池朝雄、仲谷昇、名古屋章、岸田今日子、加藤治子、山崎努などがいた。「雲」の舞台では西沢は主役を張るなど中心的な存在であったようだ。おそらく、映画でもテレビでも実績のなかった西沢の突然の主演抜擢は舞台を見てのことだと思われる。実際に「黄色い風土」の共演者には仲谷昇、岸田今日子、名古屋章など「雲」のメンバーが多かった。ちなみに仲谷と岸田は当時既に夫婦である(54年結婚)。あまり主役イメージのない西沢だが、他にも単発ドラマでは主演も何本かあったようだ。
実はこの作品、61年にニュー東映で映画化されており、主役の若宮を演じたのが鶴田浩二なのである。この二人では全くイメージが異なっており、同じ東映とは思えないキャスト変更に思える。他の判明している映画とテレビの配役の違いだが、木谷(丹波哲郎→仲谷昇)、カトレアの女(佐久間良子→富士真奈美)、島内(柳永二郎→山形勲)、村田(春日俊二→千秋実)、島内夫人(故里やよい→岸田今日子)となっており、そこまでグレードダウンしているわけでもないのかなと思った。ちなみに、原作では「沈丁花の女」だったのが佐久間のイメージから「カトレアの女」になったらしい。映画版の監督は石井輝男で、後にプロデューサーとして君臨する近藤照男が美術監督として参加している。
絢爛たる復讐
無実の罪を着せられ復讐に燃える男を演じるのは、何も天知茂の専売特許ではない。
「絢爛たる復讐」(69年)では、竜崎勝がそういう主人公を演じている。「絢爛たる復讐」とは実に画数の多いタイトルである。絢爛(けんらん)とは単独で使うと分かりにくいが、「豪華絢爛」の「絢爛」である。つまり、華やかなさまのことをいう。
主演の竜崎勝は40年生まれで、本名は高島史旭という。大学在学中に第5期日活ニューフェイスに合格。同期には高橋英樹や中尾彬がいた。しかし、61年6月発行の「日活映画」誌では、合格者として発表された13人の中に中尾の姿はないので話がややこしくなる。事情は不明だが、高橋は中尾と民藝に研修に通っていたと証言しているので、同期には違いないのだろう。高橋と高島は顔写真が並んで掲載されているが、4歳下の高橋の方が精悍な顔立ちで年下には見えない。
知っている人も多いと思うがそれぞれの娘、つまり高橋真麻、高島彩は共にフジテレビのアナウンサーになっている(現在は共にフリー)。
竜崎が日活出身というイメージを持っている人は少ないと思うが、それも当然で、竜崎は本名名義で数本の作品に脇役で出演した後、62年には日活を離れているのである。そして俳優座養成所に入りなおし、「花の15期生」の一人となったのでえある(同期に夏八木勲、地井武男、原田芳雄、太地喜和子、前田吟、林隆三、栗原小巻など)。
当面は目立った活躍はなかったが、68年に若林豪主演の「顎十郎捕物帳」のレギュラーに抜擢。この時点ではまだ本名の高島史旭だったようだが、翌69年に「絢爛たる復讐」の主演に抜擢。ここまで東映の作品にはほとんど縁がなく、突然の抜擢のように思える。この作品を機に竜崎勝になったのか、その直前に改名したのかは不明だが、まだあまり知られている存在ではなかったはずである。
さて、番組のストーリーだが竜崎演じる青年医師・千田は犯罪シンジケートに巻き込まれ、無実の罪を着せられた上、海に投げ込まれて殺されかける。しかし、奇跡的に助かりフィリピンに逃れる。千田の父(加藤嘉)は、息子の代わりに自首し、獄中で自殺する。それを知った千田はシンジケートへの復讐を誓う、というお話である。
他の出演者は高松英郎、城野ゆき、佐藤友美、堀勝之祐、南原宏治、池部良などで、ここまで書いといて何だが、本作についてはOP以外は見たことがないのである。顔ぶれからいえば、南原や堀あたりは悪役かなと思われる。
ゲストには大友柳太朗、水島道太郎、伊藤雄之助といった重鎮に加え、俳優座同期の夏八木勲の名も見える。主役はこれ以降なかったと思われるが、茶の間に存在を知らしめた竜崎は、続く松本幸四郎版の「鬼平犯科帳」(69年)で筆頭同心の酒井祐助を演じ、人気者となっていったのである。
孤独の賭け
東映お得意の1話のみ現存として放送されたものの1つが「孤独の賭け」(63年)である。主演は天知茂だが、これは一人で巨悪に立ち向かうというタイプの話ではない。すでに金持ちで成功者として登場するが、落ちぶれていくという話のようだ。天知演じる千種悌二郎と知り合ったことをきっかけになりあがっていく女・乾百子を演じるのが小川真由美。主演は天知と書いたが、どちらかと言えば小川が主役と言えるだろう。小川は当時24歳だが、既に貫禄のようなものを感じる。
百子の恋人役が高城丈二。ドラマのレギュラーは恐らく初だと思われるがまだ初々しさを感じる。わずか1、2年後には自信たっぷりな感じに変貌するわけである。千種の妻役が星美智子。若い頃は可愛らしかったのだが、30代後半になるとおばさん感が強くなっていく。百子の同居人信子に八木昌子で、気の弱そうな顔立ちが役にはまっている。
第1話には登場しないが、野川由美子、渡辺文雄、高倉みゆきらが後にレギュラーに加わっていくようだ。渡辺文雄は千種の役を狙っていたというが、結局は氷室という役におちつく。渡辺にキザな二枚目役は似合わないと思うが。高倉みゆきは天知とは新東宝時代の同僚であり、社長である大蔵貢の愛人と揶揄されもしたが大蔵の一方的なものだったようだ。天知とは同時期に「続・炎の河」というドラマでも共演しており、二人で本作のセットに駆けつけたこともよくあったという。野川由美子は百子のいとこの高校生・美香の役。当時19歳で、これをきっかけに上京したという。
実は65年に映画化(こちらも東映)もされており、千種役の天知のみ映画にも出演している。他はキャスト変更となっており、わかりやすく俳優で書くと、小川真由美⇒佐久間良子、野川由美子⇒大原麗子、星美智子⇒野中マリ子、八木昌子⇒岩崎加根子、三条美紀⇒木暮実千代、渡辺文雄⇒春日章良などである。映画版には梅宮辰夫、菅原謙次、小林千登勢なども出演しているが、テレビ版での対応者が不明である。
映画版は未見なのであくまでも印象だが、全体的にはテレビ版の方がしっくりくる気がする。やはり主演の佐久間良子に悪女感を感じないのが原因である。
ここから10数年を経た78年にも再ドラマ化(全9回)されているのだが、ここでも千種を演じるのは天知である。余程この役が気に入っていたのだろうか。もう一人、三条美紀も63年版と同じ役(大垣田鶴子)で出演している。
夜の主役
今回は「夜の主役」(68年)である。別にエロい男が主人公というわけではない。これは前回の「ローンウルフ一匹狼」の後番組で、「天知茂主演シリーズ第二作」と掲げられていたのである。やはり、このドラマも罠におちて職を失った天知が巨悪に一人挑んでいくというパターンのドラマなのだ。
原作は邦光史郎の「地下銀行 夜の主役」で、タイトルに「地下銀行」とあると何となく社会悪の存在を感じさせる。「ローンウルフ」は東映製作であったが、「夜の主役」は主演俳優、時間帯が同じありながら大映製作である。新東宝倒産後の天知は大映と契約していたが、この時点では独立(事務所設立)していたようだ。
当時のインタビューでは天知は「天知茂シリーズなんていうキャッチフレーズをつけられているのですから、どんなことがあっても頑張ります。今のところテレビはこの作品しぼっています」と答えていた。当面は、言葉通り他のドラマへの出演はなかったようだが、後半に入ると「密会」という主演ドラマがスタートしている。主題歌は天知が歌っているが、作曲は美輪明宏(当時・丸山明宏)である。
さて「夜の主役」のストーリーだが、天知演じる伊東法律事務所の弁護士・尾形は自動車事故で乗せていた恩師の伊東(清水将夫)を死なせてしまう。尾形は重過失致死に問われ弁護士資格をはく奪され、恋人であった伊東の娘(北林早苗)との結婚も断念した。しかし、これは何者かに仕込まれた事故であったことがわかり、その真相に迫っていく、といったもので元刑事ではなく、元弁護士として事件を追っていくのである。原作タイトルに「地下銀行」とあるので、当然それがらみの話となっていく。
レギュラーは北林の他、佐藤慶、藤岡琢也、内田朝雄、梅津栄、美川陽一郎などで、大映感の薄いキャスティングだが、ゲストとして藤村志保、渚まゆみ、弓恵子、北原義郎、早川雄三などが出演している。伊東の妻役で三宅邦子が出ているが、序盤5話辺りで毒殺されてしまう。顔ぶれで予想はつくと思うが「悪」と設定されているのは佐藤慶や内田朝雄である。天田俊明が美川陽一郎と共に出演している回があり、当時まだ放送中だった「七人の刑事」共演が見られる。
ゲストで気になるのはジャズ歌手のホキ徳田で、46歳上の小説家ヘンリー・ミラーと結婚したことで話題になった(後に離婚)。映画は何本か出演しているが、こうしたドラマのゲストは珍しいと思われる。
実はこのドラマ、最近までその存在も知らなかったので、当然見たこともない。しかし、最近DVDボックスが出たらしい。買ってまでみたいとは思わないが、いつか見るチャンスはあるかもしれない。
ローンウルフ 一匹狼
「悪の紋章」(65年)は、天知茂演じる元刑事が自分を罠にはめた者たちに復讐するという話だったが、罠におちた天知茂が一人で巨悪に立ち向かっていくというパターンのドラマは他にも存在する。
「ローンウルフ 一匹狼」(67~68年)でも、拳銃を奪われ妻が失踪し、本人は免職されるという元刑事を演じているのだ。天知演じる警視庁の敏腕刑事・響は仕事の鬼であり、妻・冴子(野際陽子)との仲は冷え切っていた。そんな中、響きは自宅で冴子が見知らぬ男と争っているのを目撃、男と揉み合いになるが拳銃が暴発し、冴子が被弾、動揺したところを殴打され気を失ってしまう。拳銃を奪われたことで響は懲戒免職になり、入院中の冴子も姿を消してしまう。響きは奪われた拳銃と失踪した妻を追う、というのが大雑把なストーリーだが、全39回の長丁場である。元刑事ではあるが、探偵でも秘密調査員でもない響が色々な事件に首を突っ込んでいくのである。
天知がバーで飲んでいるOPしか見たことがなかったので、探偵ものかなと単純に思っていた。天知と野際以外のレギュラーはバーのマダム(瞳麗子)、冴子の妹(城野ゆき)、かつての後輩である荒木刑事(今井健二)、そしてかつての上司である小田切警部(丹波哲郎)等である。小田切や荒木は響に協力的であるようだ。悪役のイメージしかないであろう今井健二もこの頃はまだ刑事役などをやっていたのだ。前に東映はタチバナ(立花、橘)が大好きと書いたが、小田切も好きなようである。「キイハンター」では中丸忠雄、「Gメン75」では夏木陽介が「小田切」を演じている。
丹波と野際といえば「キイハンター」がすぐ思い浮かぶだろうが、この「ローンウルフ」が放送中の68年4月よりスタートしている。キイハンターのメンバーとなる大川栄子や川口浩、仲谷昇もゲストで出演している。同じ東映製作で、スタッフも近藤照男、深作欣二、佐藤純弥などが共通している。
丹波と天知といえば、共に新東宝出身。新東宝時代は二人とも悪役が多かった。天知は新東宝スターレット1期生だが、同期である小笠原弘、松本朝夫もゲスト出演している。そして、真理明美、八代万智子、高毬子、西尾三枝子、緑魔子といった後の「プレイガール」メンバーも顔を出している。
あらすじを見る限りでは、響と冴子は何度もニアミスを起こすが、結局彼女が逃げてしまう。37話で奪われた拳銃は発見され、ラストの38、39話は前後編となっている。番組終盤にモナジェリアという新興国(もちろん架空の国)の解放戦線が登場するのだが、実はこれが冴子失踪の大きな理由であったことが判明するという意外な展開が待っているようだ。