サンダーマスク その2
前回の続きだが、役者について見ていきたい。予算の関係もあろうが、こういっては何だが有名と思われる俳優(後に有名になる)は出演していない。主役の命光一を演じるのが菅原一高である。菅原は46年生まれで本名を菅原督三郎という。一高はイッコウと読むが、自分はずっとカズタカだと思っていた。実際にカズタカと読ませる時期もあったようだ。高校卒業後に岩手から上京し、テアトルエコーに入団している。舞台での活動が主だったが、72年に「下町かあさん」に榊原るみの恋人役でレギュラー出演してからの「サンダーマスク」だったようだ。
終了後は「特捜最前線」へのゲスト出演が多く見られる。これは同番組のレギュラー藤岡弘と同じ事務所に所属していたということが関係していると思われる。
ヒロイン役は井野口一美で、当時は17歳だった。本作以外には、数本ドラマにゲスト出演した程度で姿を消してしまったようだ。その弟役が黒田英彦。姉を「おねえちゃま」と呼ぶのに違和感を感じる。
科学パトロール隊という防衛組織が登場するのだが、彼らの肩書は警部とか刑事だったりする。つまり警察組織の人間ということになるのだが、その辺の説明は番組内ではなかったようである。その隊長である矢野警部を演じるのが加地健太郎。このキャスト陣の中では有名なほうであろう。加地健太郎は高校時代に仲代達矢の弟(シャンソン歌手・仲代圭吾)と同級生で「七人の侍」のエピソードを仲代から聞いたことが俳優を目指すきっかけだったという。仲代のいた俳優座養成所に8期生として入所。「らくがき黒板」(59年)という映画の撮影中に宇野重吉から声をかけられ、養成所卒業後は劇団民藝に入団という、輝かしいといえる経歴の持ち主である。民藝退団後は、テレビを中心に活動しており、アクションドラマや特撮ものへの出演が多い。
しかし、矢野警部はわずか4話で殉職。どのような最後だったかは不明だが、後を継いだのが滝波錦司演じる藤警部である。滝波錦司という名前はよく見かけていた気がするのだが、脇役・端役が多いので顔はよくわからないという感じの人である。東映演技研修所に所属していたといい、当然東映の作品への出演がほとんどである。この「サンダーマスク」が唯一のレギュラー作品であったかもしれない。また、サンダーマスクの中の人の一人が中山剣吾とあるが、これは後にゴジラの中の人として知られるようになる薩摩剣八郎のことである。
ところで、主演の菅原一高だが古い情報では、東北のある劇団の座長となり舞台中心の活動をしており、映画やテレビなどの映像作品には出ないと決めたそうである。あくまでも10年ほど前の情報だけれども。