お宝映画・番組私的見聞録 -68ページ目

隠密剣士(荻島真一版)

今回も引き続き「隠密剣士」である。「新隠密剣士」は65年いっぱいで終了したのだが、それから八年たった73年に新たな「隠密剣士」が製作されたのである。タイトルはかつてと同じシンプルに「隠密剣士」だ。しかし主演は大瀬康一ではなく、荻島真一である。荻島は当時27歳で、デビューからは約二年の若手二枚目役者であった。
スタッフも企画に前作同様に西村俊一の名はあるが、この時の西村はもう宣弘社の人ではなく番組制作会社C.A.Lに移り「水戸黄門」などを手掛けヒットさせていた。ゆえに脚本も伊上勝ではなく、葉村彰子が起用されている。知っている人も多いと思うが、葉村彰子とは個人名ではなく脚本家集団のペンネームである。クレジット上は制作は宣弘社で、制作協力が東映京都制作所となっているが、事実上は東映主導で制作されていたという。前作の監督である船床定男は前年の72年に亡くなっているが、健在でも起用されなかったのかもしれない。
TBSプロデューサーだった橋本洋二は、特撮などを入れないと今の時代では難しいと考えていたが、「水戸黄門」などを成功させた自負からか西村は反対し、昔通りのスタイルで望もうとしたのである。
主人公である荻島の役名は松平信太郎といい、いかにも将軍家に関わりのありそうな名前だが実際そうであり、家康の長男・信康の落胤という設定だ。主役は変わったが、変わらず出演するのは牧冬吉と天津敏である。役どころは前作と同じようなものだが、牧が演じるのは遁兵衛ではなく賀夜猿といい、天津は敵(赤目党)の首領・赤目幻幽斎を演じる。
ヒロインとしては吉沢京子が4話まで出演、7話からは松平純子が出演する。松平は俊藤浩滋がスカウトして72年に東映入りした女優である。自分の娘である藤純子と同じ純子の名前を芸名に与えるくらい期待していたと思われる。第5話には水島道太郎、和崎俊哉、横光克彦、中田喜子と豪華ゲストが顔を並べている。
敵である赤目党忍者を演じたのは泉晶子、小田部通麿、西田良、汐路章、内田勝正、江幡高志、楠本健二、出水憲司、宍戸大全、五味龍太郎と普通に時代劇で悪役で見かける面々である。
とまあ、東映版の「隠密剣士」といった本作なのだが、視聴率は芳しいものではなく路線変更を迫られることになったのである。橋本が危惧していたとおり、この時代には向かなかったのである。

 

新隠密剣士 その2

前回の続きである。新作の「隠密剣士」としては73年の荻島真一版は割合と認知されていると思うが、この林真一郎版の「新隠密剣士」は語られることはほとんどないように思う。CSでも放送されていなかったと思うのだが、自分が見ていなかっただけかもしれない。
その第二部は「忍法薩摩秘帖」。信之介の故郷である薩摩が舞台であるようだ。
敵の首領は第一部同様に高塔正康演じる龍造寺丹波。前回書き忘れたが原健策も薩摩藩の家老役で第1部に引き続き出演している。敵の忍者役として判明しているのが巽秀太郎と大塚周夫くらい。巽秀太郎は、二代目ナショナルキッドであり、「特別機動捜査隊」の初期レギュラー内藤刑事役で知られる。二年で番組を降板したと思ったら、四年半後に突然の復帰。若手のスマートな二枚目だったのが、中年感を感じる体型に変化していた。大塚周夫は声優として大活躍。初代ねずみ男やブラック魔王の声を知らぬ人はあまりいないだろう。
後は出演者リストから、勝手に敵忍者役の俳優を予想してみる。まずは工藤堅太郎。善人役のイメージが強いが、瑳川哲郎が敵忍者役をやっているように、若手の頃は色々やっていておかしくない。浅香春彦、「魔神バンダー」では博士の役をやっていた。外山高士は見るからに悪役という感じだが、若い頃は主役の経験もある。後は最終三話に登場する大木勝、渡辺高光、中岡慎太郎。サブタイから仲間の伊賀忍者の可能性もあるが、この中の誰かは敵忍者だろうと予想する。
第三部は「黒潮忍法帖」。ここでは黒潮党という敵忍群が登場するが、その頭領である戸隠幻鬼を演じるのは天津敏である。やはり敵の頭領はこの人でなければものたりないであろう。黒潮党十人組というサブタイトルがあるので、当然十人の敵がいるのであろうが、判明しているのは滝恵一と木山ますみだけである。滝恵一は「仮面の忍者赤影」では卍党の黒道士、映画「江戸忍法帖」でも甲賀七忍の一人を演じたりと悪の忍者役も多い。くノ一として登場する木山ますみに関しては全く謎の人である。他の出演記録も見当たらないので、他の名前に改名したかテレビや映画は本作のみの出演だったのかもしれない。残りはこちらも出演者リストから予想してみると、江幡高志、黒丸良、牧田正嗣、内海賢二といったところであろうか。
さてこの「新隠密剣士」だが、前作のような人気を得ることはできず、1年放送の予定が3クール全39話での打ち切りが決定した。後番組として決定したのが「ウルトラQ」だったのである。

 

新隠密剣士

話は前後するのだが、中村竹弥版の「丹下左膳」が始まった65年には、約2年半に渡って放映された「隠密剣士」が終了しているのである。で、その翌週より放送が始まったのが「新隠密剣士」(65年)なのである。
スタッフはほとんど変わらないが、主演は大瀬康一から林真一郎へとバトンタッチ。実は林の正確なプロフィールはわからなかったのだが、東伸テレビ制作の「織田信長」(62年)では主役である信長の少年期を演じたり、同じく東伸テレビ制作「白馬の剣士」(64年)では山城新伍とダブル主演を務めたりと、時代劇主演の実績ある役者だったのである。
子役も大森俊介の周作少年から二宮秀樹の大作少年に。二宮といえば後に「マグマ大使」(66年)のガム役で有名になる子役である。変わらないのが一人、霧の遁兵衛役の牧冬吉である。彼のみ前作から引き続き同じ役での登場である。
前作の秋草新太郎と違い、今回の主役である影信之介は薩摩藩の公儀隠密という設定である。影一族の若き頭領でもあったりする。つまり純粋に忍者同志で戦うことになるのである。影一族というのは「仮面の忍者赤影」(67年)でも使われている呼称であり、脚本は共に伊上勝である。
そして、前作には女性レギュラーがいなかったことから、かなえという信之介を慕うヒロインが設定されている。演じるのは白鳥みづえで、当時20歳の女優兼歌手である。51年三益愛子主演の「母月夜」で6歳にして子役デビュー。この母ものシリーズには子役として多数出演しており、名子役と言われていた。ちなみに、この51年にはレコードデビューも果たしている。60年代に入ってからは、目立つ活動はなかったようだがこの「新隠密剣士」で、挿入歌「影を求めて」を歌ったり、そのシングルが発売されたりしている。裏情報だが、彼女はこの時点で既に結婚、出産、離婚を経験していたようである。
本作も前作同様に1クールごと(短いエピソードもあったが)に、エピソードが変わる形式で、第1部は「忍秘影一族」である。前作だったら「忍法影一族」となっているところだが、今回は何故か「忍秘」である。敵の首領を演じるのは高塔正康、「月光仮面」では色々と悪役をやっていた役者である。阿蘇八天狗と呼ばれる忍者衆が部下であり、八天狗というからには八人いると思うが、判明しているのは五人だけである。岩城力也(一郎坊)、灰地順(次郎坊)、森幹太(三郎坊)、渡真二(五郎坊)、瑳川哲郎(六郎坊)とまあ、それなりに名の知れた役者が演じている。残りはやはり四郎坊、七郎坊、八郎坊なのだろうか。サブタイに「赤影」にも登場する鬼念坊の名があり、一人だけ違った名を持つのかもと勝手に想像したりする。

 

丹下左膳(65年版)

突然だが「丹下左膳」と言えば、誰もが知る隻眼隻腕の時代劇ヒーローである。もう何度も映画化テレビ化されているのだが、宣弘社制作の「丹下左膳」があったのをご存知だろうか。65年に放送された中村竹弥主演版がそれである。
この時、既に4度目のテレビ化で前三作では丹波哲郎、辰巳柳太郎、大村崑がそれぞれ演じているが、大村版はおそらくコメディタッチなものであろう。
元来、右眼と右腕を失なっているという設定だが、丹波哲郎は迫力のある殺陣ができないからと、左腕と左眼を失っているという設定に変更させたという話は有名だ。これは前述のテレビ版ではなく63年松竹制作の映画版での話のようだ。
丹下左膳を演じた俳優第1号は、28年の団徳麿であるとされる。この28年には嵐寛寿郎や大河内傳次郎も左膳を演じているが、団が一歩先んじていたらしい。団は大スターにはなれなかったが、戦後も脇役として活躍し「隠密剣士」にも敵忍者の一人として出演したりしていた。ちょうど還暦くらいだったはずだが、素軽い動きをみせていた。ちなみに彼の娘婿は五味龍太郎である。
今回の主演・中村竹弥だが、歌舞伎出身でテレビが生んだ時代劇スターの第1号と言われている。歌舞伎界では長い下積み生活を送っていたが、テレビが開局するとまもなくテレビ時代劇に進出。「半七捕物帳」「右門捕物帳」「旗本退屈男」などで、立て続けに主演となっている。
中村は丹下左膳がやりたい、とTBSに話を持っていき、TBSから宣弘社へ依頼したものであるようだ。監督はいつもの船床定男が担当しているが、脚本は川内康範が担当している。主要スタッフは「月光仮面」と一緒であるが、放送枠が21時からであり、完全に大人向けとして作られたようである。
他の出演者だが、中原早苗、小山明子、光本幸子、砂塚秀夫、菅貫太郎、戸上城太郎、瑳川哲郎などで、「隠密剣士」の周作少年だった大森俊介が「ちょび安」役で出演、遁兵衛役だった牧冬吉も番組後半から準レギュラーのように出演している。花沢徳衛や藤原釜足、伊達正三郎、楠トシエなども中盤から後半にかけて出演している。
中村竹弥といえば「大江戸捜査網」(70年~)の内藤勘解由役で覚えている人も多いと思うが、井坂十蔵役の瑳川哲郎とはここで早くも共演していたわけである。

 

ガッツジュン その2

前回に続いて「ガッツジュン」(71年)である。今回はゲストの面から見ていきたい。
その前に監督に起用されたのは宣弘社の顔ともいえる船床定男であった。しかし、船床は野球のことをあまり知らなかったのである。さらに前番組である「柔道一直線」からあった荒唐無稽な描写を引き継いだ方がいいだろうと考えたようである。
第2話で、早くも金星高校との練習試合が描かれる。相手のエース瀬戸は火の玉のような魔球を投げるのである。瀬戸を演じるのは近藤正臣で、何故か謎の特訓中は赤い柔道着姿なのだ。勿論これは「柔道一直線」で近藤が結城真吾役を演じていたことを意識してのものだ。金星高校の監督役は堀田真三が演じるが何故か堀田真二とクレジットされていた。「我々は反則すれすれで相手チームを片付けていく」などとほくそ笑む悪役丸だしな監督である。ちなみに、近藤42年生まれ、堀田は45年生まれと、高校生役の近藤の方が年長である。
第3~4話には「サインはV」で人気者となった范文雀がゲスト。当然彼女はバレーの選手で、主人公ジュンは何故か彼女とサーブ対決をすることになる。5~6話には「柔道一直線」の主人公・一条直也を演じた桜木健一が登場。当然のように柔道部員の役だが、ジュンを特訓するのである。この辺りを見てたら「野球ドラマ」なのかバレーなのか柔道なのかわけがわからない状態なのである。
第7~9話は、本来の野球に戻るが、神子上兄弟というのが登場する。アンダースローの兄・太郎を演じるのは眞家博満で、元祖ジャニーズの一人である。弟・次郎を演じたのは本保明啓、と言ってもわからないと思うが後の潮哲也である。潮と言えば、翌72年には「快傑ライオン丸」で主役を演じることになるが、本作で本間役の清宮達夫こと南城竜也とは東映演技研究所での同期であったという。南城も前回書いたとおり翌72年に「変身忍者嵐」で主役となり、二人の時代劇ヒーローはデビュー前から繋がりがあったのである。話は戻るが、神子上次郎の持つ魔球がレインボーボールであり、ジュンはこの魔球を取得するのである。
しかし、この荒唐無稽路線はウケが悪く視聴率は低迷する。船床監督は降板し、2クール以降は今までの魔球とかはなかったことになり、普通のスポ根ドラマへとシフトチェンジを図っていくことになったのである。
全33話での終了となったが、予定では後1話あったという。フジテレビで同時間帯に「ミラーマン」が放送されることになり、次番組である同じ特撮ヒーロー番組「シルバー仮面」をスタートがぶつかるのを避けるため1週早めることになったためである。

 

ガッツジュン

話は前後するのだが、東映製作の「妖術武芸帳」(69年)が1クールで打ち切られた後、同じく東映製作の「柔道一直線」(69~71年)が大ヒット。その終了後TBS系日曜19時という放送枠が「新隠密剣士」(65年)以来、再び宣弘社に戻ってきたのである。
「柔道一直線」の後番組ということもあり、やはりスポ根で行こうということになり企画されたのが野球スポ根ものである「ガッツジュン」(71年)であった。原作は「少年チャンピオン」に連載していたマンガ(神保史郎、小畑じゅんじ)である。当時の野球人気は今とは比較にならないくらい凄く、スポーツといえば第一に野球というような時代であった。しかし、人気の割に野球ドラマというのはほとんどなかった気がする。まあ映像にしにくいということもあったのであろう。いろいろと特撮場面も必要となってくる。
主役の沢村純に選ばれたのは藤間勘十郎・藤間紫夫妻の長男である藤間文彦であった。当時20歳であったが、高校一年生の役である。純の姉・映子に丘みつ子、祖母の房江に小夜福子。ちなみに母は早くに亡くなり、父も死んだと聞かされているが、純はわけあって身を隠し、どこかで生きていると信じているという設定だ。ヒロインの美代子役には子役出身で雑誌モデルとして活動していた桜井マリ。当時15歳の中学生で丸顔の娘であった。その後は「イナズマン」(73年)にレギュラー出演したりしていたが、その後の活動は不明である。
純が入部する名雄高校野球部の関係者は平賀部長に隠密同心で知られる瑳川哲郎、萩原監督にアニメ「Gガンダム」の東方不敗役で有名な秋元羊介。今はすっかり声優のイメージであろう。純の同級生でキャッチャーとなる野島役に畠山麦。言わずと知れたキレンジャーである。ちなみに、秋元と畠山は同じ44年生まれで、当時27歳である。同じく同級生でセカンドとなる本間に清宮達夫。後の南城竜也であり「変身忍者嵐」「鉄人タイガーセブン」でヒーローを演じることになる。主砲であるファースト川越に小野進也。この翌72年「ワイルド7」で主役の飛葉を演じる。途中から登場のサード進藤に篠田三郎。大映ニューフェイスだが、倒産したためテレビに活躍の場を移した。「ガッツジュン」はその最初の作品である。この後、「シルバー仮面」にも起用され、そして「ウルトラマンタロウ」へと繋がっていく。先輩ピッチャーの大野役は日吉としやす。宣弘社の「月光仮面」「遊星王子」には子役時代にレギュラー出演していたが、この時はすっかり成人であった。ちなみに、南城、小野、篠田、日吉はいずれも48年生まれで、当時23歳であった。日吉はこの後、やはり野球ドラマである「がんばれ!レッドビッキーズ」(78年)にもコーチ役で出演している。
このように、名雄ナインを演じたメンバーには後にヒーローとなった者も結構いたりするのである。

 

遊星王子

宣弘社が「月光仮面」の次に製作したテレビシリーズが「遊星王子」(58~59年)である。これは、日本初の宇宙人を主人公とするテレビヒーローとなる作品である。
58年、宣弘社に入社したばかりの企画課の井上正喜が一晩で書いたという脚本が、そのまま原作採用され映像化に至ることになったのである。これが井上正喜こと伊上勝の脚本デビュー作でもある。デビューにして全46話を一人で書いてしまうのであった。ちなみに、翌59年に企画課に入社して来るのが深田公之、後の作詞家・阿久悠である。この時、伊上にはすでに企画課長という肩書がついていたようだ。二人は共に明治大学の出身でもある。
主演は新東宝の俳優だった三村俊夫、後の村上不二夫である。「アフタヌーンショー」のレポーターとして記憶している人も多いかもしれない。ちなみに、彼も明治大学の出身だ。当時30歳で、彼が選ばれた経緯は不明だが、若い頃はとりわけ二枚目だったというわけでもない。劇中では子供たちから「おじさん」と呼ばれることが多いが、実際既におじさん感が漂っていた。王子の姿になると体形が中年っぽく見え、カッコいいとは言い難い。地球での姿は、銀座の靴磨き・ワクさん。和久田とか涌井という名前を想定していたのだろうか。
他のレギュラーでは、「月光仮面」では悪役だった武藤英司が武田刑事役、繁少年だった日吉としやすが誠少年を演じるなど、使いやすい人を起用していたようだ。月光仮面の大瀬康一自身も第3話にゲストで出演している。
監督は藤田潤一で、34年に24歳にして監督デビューしているベテランである。新興キネマや片岡千恵蔵プロダクションで活動しているが、映画界では監督よりも脚本家として参加していることが多かった。戦中はエノケン一座で座付き作家をするなどしており、「喜劇天国」(56~57年)あたりからテレビにも関わるようになっている(脚本で参加)。この頃に宣弘社との関わりができたと思われ、本作での起用となったようだ。記録を見る限り、映画テレビを通じて監督を務めるのは戦後は初めてだったと思われる。
59年には東映で映画版が製作された。こちらでの主演はデビューまもない梅宮辰夫であった。当時は体形もスリムな二枚目で、同じ「遊星王子」とは思えない感じだった。

 

名探偵明智小五郎シリーズ 怪人四十面相

前回、宣弘社の制作である「恐怖のミイラ」を取り上げたところで、今回も宣弘社作品でもかなりマイナーな部類に入るであろう「怪人四十面相」(66年)である。もちろん原作は江戸川乱歩の少年向け推理小説シリーズだが、二十面相ではなく四十面相なところがミソ。
勝手に水増ししたわけではない。原作でも二十面相は一度、変装が増えたことを理由に四十面相に改名してパワーアップを計っているのである。実は米小説「四十面相のクリーク」という作品に影響を受けたものらしいが、この呼び名は定着することはなく、結局元の二十面相に戻しているのである。原作「怪奇四十面相」の解説にも、改名は失敗だったとはっきり書かれたりしているのだ。
あえて「四十面相」をタイトルにすることによって、「少年探偵団」や「怪人二十面相」とは違った番組であることを強調したかったのかもしれない。タイトルといえば正確な番組タイトルは「名探偵明智小五郎シリーズ 怪人四十面相」という長ったらしいものである。当時は007の影響によりスパイブームみたいなものがあり、本作も推理物というよりはスパイアクション的な作りになっていたりする。
明智役には中田博久が抜擢される。この翌年に「キャプテンウルトラ」でも主役に抜擢され、一気に人気者となっていくが、この「怪人四十面相」の時点では、ほぼ無名だったと思われる。中田は高校在学中の60年に日活映画数本に出演しているが、その後日本大学芸術学部にを卒業して、65年に東映から再デビューしたばかりであった。ヒロイン役も当時は無名だった梓英子が演じている。デビューは何故か成人映画だったが、その後清純派女優への転身に成功している。
四十面相役は宣弘社御用達の天津敏が演じている。敵忍者の首領だけではないのである。もう一人の御用達である牧冬吉も豊臣大八なる役で登場しているが、実はNATOの調査官であるという設定だ。
脚本は伊上勝が全話担当。「黄金仮面」が4話、「天空魔人」が4話、「透明怪人」が5話という構成になっている。1クールでの終了は予定通りか打ち切りかははっきりしない。10年以上前にCSでも一度放送されているが、それ以降はされていない。しかし、14年にDVD-BOXが発売されている。

 

恐怖のミイラ

突然だが、「恐怖のミイラ」(61年)である。これは大ヒットした「快傑ハリマオ」(60~61年)の後番組であり、制作は、引き継いで宣弘社が担当することになった。夏なのでホラーをやろうということで企画されたという。全14話というのは打ち切りではなく、最初から決まっていたものらしい。
監督は田村正蔵。宣弘社の作品と言えば、「月光仮面」「豹の眼」「快傑ハリマオ」とほとんどを船床定男が一人で監督しており、田村はハリマオ終盤に監督に昇格し、数話を担当していた。本作に船床が関わっていないのは、大映で「黒いパトカー」というテレビシリーズを手掛けていたためらしい。タイトル通り刑事ドラマだが、その詳細はほとんどわかっていない。初動捜査班に所属する覆面パトカーが活躍し、高松英郎、友田輝、伊東光一などが出演していたようだ。
話がそれたが、脚本は御手俊治となっているが、これはプロデューサーである西村俊一のペンネームである。彼は後にCALに移り、「水戸黄門」のプロデューサーとして活躍することになる。ただ、この「恐怖のミイラ」に関しては、実は伊上勝が書いているという情報がある。伊上の名では資金が出せないための措置だったと田村が証言しているらしい。
さて、本編については当然CGなどない時代だが今見ても十分に怖いのではないだろうか。夜のムードとミイラのグロいメイクだけといえばそうだが、当時の視聴者は恐怖に慄いたようだ。
出演者はこういうドラマにぴったりな新東宝出身の役者が多い。松原緑郎(光二)、三条魔子、若杉嘉津子、舟橋元、川部修詩、泉田洋志、高松政雄、そして三原葉子などである。丁度この時期に新東宝が潰れたため流れ込んできたのである。新東宝系でないといえば、高木二朗、牧冬吉くらいだろうか。ミイラ役のバブ・ストリックランドは京都のクラブでバーテンダーをしていたところをスカウトしたといい、役者ではなかったらしい。実際、スケジュールがあまりとれなかったといい、序盤だけにしか出演しておらず、シーンを使い回したりスタッフが代役を務めたりしていたという。
本作はレーザーディスク、DVD、ブルーレイと過去にソフトが発売されており、映像を入手することは難しくないと思われる。

 

妖術武芸帳 その2

前回の続きである。月形龍之介はレギュラー扱いになっているが、登場するのは3回のみのようだ。大スターだから安っぽく登場しないというわけではなく、この翌年に亡くなったように、身体の不調という側面もあったようだ。
代わりに準レギュラー的に登場するのが、悪役サイドの尾張江戸屋敷の家老・大住内膳役の小柴幹治である。54~61年に制作されていた東映の少年娯楽版の時代劇によく出演していた人で、その頃は三條雅也を名乗っていた。
原建策演じる毘沙道人の配下の妖術師は四賢八僧と呼ばれる12人。誰が四賢で誰が八僧かまではわからなかったが、登場順に役者を列挙してみると、今井健二、成瀬正彦、不破潤、森章二、三島ゆり子、江見俊太郎、尾上鯉之助、早川研吉、五味龍太郎、丹羽又三郎、安藤三男、中村竜三郎といった面々である。今井健二、五味龍太郎、江見俊太郎などはお馴染みの悪役だが、森章二、早川研吉あたりは誰?と思う人も多いかもしれない。
森章二は時代劇ファンなら、お馴染みの顔で小者といった感じの悪役が多い。刀よりドスといった雰囲気だが実は新国劇の出身である。彼の登場する4話には百地八双という忍者が登場するが、演じるのは牧冬吉である。白影や霧の遁兵衛といった主人公を助ける忍者というイメージが強く、今回もそういう感じで登場するのだが、その正体は妖術師・八双道士であったというもの。何故か八双道士は牧ではなく森が演じていたのである。そのままでもいいような気がするのだが、当時の牧には悪役のイメージなどなかったからであろうか。
江見俊太郎と中村竜三郎は新東宝の出身。共に社長・大蔵貢に無理矢理に改名させられたのである。大蔵退陣後、同様に改名させられた和田孝や若杉英二は元に戻したのだが、江見と中村はそのまま使い続けた。ちなみに、中村竜三郎と言っても歌舞伎とは何の関係もない。
3話には赤影で知られる坂口祐三郎が徳川家治役で出演。赤影のイメージが強すぎて悩んだという坂口だが、「暗闇仕留人」では悪徳同心の一人を演じたりしていた。その「仕留人」で妙心尼を演じて「なりませぬ」の台詞をヒットさせた?のが三島ゆり子だ。羽花仙女という妖術の役だが、彼女は姉弟で活動する。その弟・蘭童子を演じたのが堀川亮。「ドラゴン」でベジータを演じた声優といえば、わかる人も多いだろう。
第12話には群衆の一人として登場しているのが石橋正次である。この69年当時はまだ無名の存在であり、この翌年辺りから有名スターへと駆け上がっていくのである。
さて、番組の視聴率は下がる一方という結果に、わずか4週目でTBSのプロデューサーだった橋本洋二は打ち切りの決断を下したという。京都に移り住んでまで、番組に賭けようとした佐々木功には気の毒な事をした、と東映のプロデューサーだった平山亨は述べていたが、そこは非情な世界である。そして、急遽企画されたのが「柔道一直線」であった。ご存知の通り、大ヒット番組になったのである。