お宝映画・番組私的見聞録 -67ページ目

崑ちゃんのとんま天狗

前回の「琴姫七変化」の前番組だったのが「崑ちゃんのとんま天狗」(59~60年)である。番組スタート時のタイトルは「お笑い珍勇伝頓馬天狗」というものであったが23話くらいから改題されたようである。
「鞍馬天狗」のパロディ版で、原作は花登筐。この59年、花登が東宝から独立し、大村崑、芦屋雁之助、芦屋小雁、花登の妻である由美あづさ等と共に「劇団・笑いの王国」の結成に携わり、大村が座長についた。この「頓馬天狗」は、笑いの王国が全面的に関わった作品で、主演の大村の人気を決定づけた。
頓馬天狗の本名は「尾呂内楠公」で、もちろんスポンサーである大塚製薬のオロナイン軟膏をそのまま使用したものである。ここまで露骨に商品名を名前にしてしまった例は中々ないだろう。番組自体は見たことはなかったが、「姓は尾呂内、名は楠公」という主題歌は聞いたことがあった。これは決め台詞でもあったようで、劇中でオロナイン軟膏を塗るわけではなく、「秘薬」を飲むことで頓馬天狗に変身するというパターンだったようだ。
他の登場人物だが、雁之助は土方大三、小雁は近藤勇造、という新選組をもじったもので天狗の敵役である。毎回のように斬られては、何事もなかったように復活しているのがパターンだったようだ。他はレギュラーなのかゲストなのか何の役なのかは不明だが、大屋満、谷口完、鮎川十糸子、花紀京、チャーリー浜(浜祐二)、夢路いとし・喜味こいしらの名前が記録にある。もちろん由美あづさも出演、そして三木のり平が楠公の父・鞍馬天狗として出演したという。
大屋満は円谷プロの特撮ドラマ「マイティジャック」に11人いる隊員の一人として出演。見せ場もほとんどなく殉職してしまう役であった。谷口完は時代劇で悪徳商人役などでよく見かけた。同じような役の西山嘉孝とは瓜二つで見分けがつかない。
桃屋のCMでの三木のり平のアニメキャラは、子供の頃は大村崑だと思っていた。二人が似た雰囲気なのは当然で、大村のメガネのずり落ちスタイルは元々三木のり平を参考にしたものだったという。この「頓馬天狗」で共演した際には、「この先も鼻眼鏡でやるなら、やっていいよ」とトレードマークを大村に譲り、本人は眼鏡キャラを辞めている。

 

琴姫七変化

前回ちょっと書いたが、「天馬天平」での松山容子が演じた千也姫が評判となっていた。これに眼をつけたのが大塚製薬であった。「崑ちゃんのとんま天狗」の後番組の企画として、松山を主演に「男を凌ぐ剣の腕を持つ若武者姿の姫君」というモチーフを考え、実現したのが「琴姫七変化」(60~62年)である。制作は「天馬天平」から引き続き日本電波映画である。番組は人気となり、丸2年に渡り放送された。大塚食品の「ボンカレー」の初代パッケージ(発売は68年)に彼女が起用されているのはこのためである。このパッケージは現在、沖縄地区限定発売だそうだが、ボンカレーのホーロー看板はちょっと地方へいけば、今でも見かけることはできるのではないだろうか。
さて、琴姫は11代将軍家斉の末娘という設定だが、家斉は家光、綱吉、吉宗に比べるとドラマになることはあまりない気がする。調べてみると15歳で将軍に就任し、在位は50年間に及んでいる。特定されているだけで16人の妻妾を持ち、男子26人、女子27人を儲けたというが成年まで生きたのは半数の28名とされる。琴姫はその中の一人ということになる。
番組の前期は琴姫が江戸城を飛び出し、旅先で事件を解決するというものだが、後期は姫は江戸に戻り、江戸の庶民を苦しめる悪を退治する話になっている。姫が城を出たのは、我が藩の陰謀を探るためではないかと誤解した伊達藩は行く先々で姫を暗殺しようとするが、姫はそんなことは全くしらずに悪者を成敗していく。
七変化というくらいだから色んな姿を見せてくれるが、町人姿でも「下がれ、無礼者め」というような姫様言葉が出てしまうのである。花村菊江の唄う主題歌「そよ風道中」で「七変化」を「ひちへんげ」と歌っているように聞こえるが、実際にそう歌っているという。タイトルバックのルピまでが、ご丁寧に「ことひめひちへんげ」となっている。もちろん、正式タイトルは「しちへんげ」である。ちなみに、花村菊江は60、61年と紅白歌合戦にも出場している当時の人気歌手である。
松山以外の出演者だが、前期の従者・柳生大三郎に秋葉浩介、後期の従者・大塚四郎に松本錦四郎、徳川家斉に海江田譲二。他に佐治田恵子、入川保則、名和宏、田中春男、手塚茂夫など。栗塚旭も出演したという。主題歌を歌う花村菊江に加えて、乗松ひろみ(=扇ひろ子)といった演歌歌手勢も出演していたようだ。
松山容子は当時、松竹に所属していたが、松本錦四郎も当時は松竹の俳優だった。彼については何度か書いたが、元々は第3期日活ニューフェイスの一人である。まもなく歌舞伎役者を目指し松本幸四郎門下となり、社長の目にとまり松竹入りし松本錦四郎を名乗るようになったのである。役名の大塚四郎は当然スポンサーにちなんでのものだろう。

 

天馬天平

また、話が戻るのだが堀江卓の漫画が原作のドラマは「矢車剣之助」の他に「天馬天平」(60~61年)が存在する。両者は重複期間もあり、キー局は違うが放送時間は一緒(18:15~45)である。曜日は「天平」が木曜「剣之助」が金曜となっており、堀江ファンは二日連続でドラマを楽しめたわけである(途中から天平は水曜に移動)。
制作は日本電波映画で、これが同社の第1作となるようである。「矢車剣之助」にも松本常保(日本電波映画社長)の名が見られるが、番組スタート後に同社が設立されている(59年7月)。
「天馬天平」の主役は一般公募が行われ、約三万人もの応募があったという。その中から天平役に抜擢されたのは当時高校二年生だった山前五十洋(やまさきいそみ)であった。演劇経験のないズブの素人だったという。名づけられた芸名が放送局(フジテレビ)とチャンネル(8)にちなんで富士八郎というい分かりやすい名前だった。「矢車剣之助」は二丁拳銃を撃ちまくったりと派手な感じだが、天平は一本のムチと軽業によって悪者を退治していくという。
他の出演者は秋葉浩介、田中春男、海江田譲二、松山容子、天王寺虎之介など。出演者の中には藤間林太郎(藤田まことの父)の名前もある。松山容子は松竹所属の新進女優であったが、本作での男装で華麗な剣の技で新選組と闘う勤皇の姫君・千也姫が評判となった。これが「琴姫七変化」へと繋がって行くのである。
さて富士八郎こと山前五十洋だが、近年は娘が歌手の倉木麻衣ということで話題になった。本人は早いうちに役者をあきらめ、CMディレクターを皮切りに映画監督などもやっていたようだ。倉木麻衣によって、再び富士八郎=天馬天平がクローズアップされた形になったのである。

 

ワイルド7

前回より若干時代は飛ぶのだが、手塚しげお繋がりで「ワイルド7」(72~73年)である。原作は「少年キング」に69年から10年に渡って連載された望月三起也原作の人気漫画である。
メンバー7人を演じた俳優を全員言える人はかなりのマニアではないだろうか。リーダー「飛葉大陸」は小野進也。本作で一気に人気を得たといえる。「八百」には手塚茂夫。この頃はひらがな表記のはずだが、テロップでは漢字表記である。おそらく、この時点ではメンバー中一番有名な役者だったと思われる。チャーシューには花巻五郎、一際は小さく見えるが実は142センチだという。競馬の騎手でもここまで小さい人は中々いない。どう見てもリアル「両国」なのだが、何故かチャーシューである。その両国役は小池雄介。原作と一緒なのはメガネくらいで、身長は逆に大きい方に見える。以下は、「世界」にはマイケル中山、「オヤブン」には永井政春、「ヘボピー」には笹本顕となっており、この辺は知らないという人も多いかもしれない。ちなみにマイケル中山の妹は第2話にゲスト出演する中山麻理。他には草波隊長に川津祐介で、その秘書である映子に真理アンヌがレギュラー。名前が一番最初にクレジットされるのは川津である。
「ワイルド7」といえば、前述の7人というイメージが強いが、原作ファンは必ずしもそうではないかも。単行本は全48巻だが、世界とチャーシューは単行本7・8巻にあたる「コンクリートゲリラ」のエピソードで早々と殉職しているのである(以降は追加メンバーが参加)。
このドラマ版でも殉職者がいる。原作ではほぼ最後まで生き残っていた両国である。演じていた小池雄介の都合なのか11、12話とも登場せず、殉職した13話にも出演していないのである。出演していないのにどうやってという話だが、暗闇に光るヘッドライトが迫る、そこに向かってマシンガンを浴びせるブラックスパイダー。「ウワー」という悲鳴が聞こえる。これが両国の殉職シーンの全てである。ちなみに演じていた小池雄介は、その後も悪役で結構見かけている。その後任として登場するのがオリジナルキャラの「モヒカン」である。名前通りモヒカン頭で、演じるのはジョージ津川という人だが、プロフィールなどは一切不明な人である。
視聴率は20%台を記録するなど好調だったようだが、低予算にも関わらずアニメ化予定だったものを実写化したため、大幅に予算が超過したため、26話で終了せぜるを得なかったという。

 

矢車剣之助

突然だが「矢車剣之助」(59~61年)である。当時多かった夕方18時代放送の少年向けドラマの1つである。本作は放送回数が全91回となっているので、人気は高かったと思われる。電通の行った当時の視聴率調査で27.5%を記録している。
原作は「少年」に連載されていた堀江卓原作の人気マンガだ。原作で知られているのが、剣之助が二丁拳銃を無限のように撃ちまくっているコマだ。二丁拳銃なら最大でも12発のはずだが、「バババババ」と百発は軽く撃っているように表現ンされているのだ。
個人的には堀江卓の作品はほとんど読んだことがない。60年代から70年代前半は月刊誌を中心に執筆しており、その後は青年誌、学習漫画等で活動しており、週刊少年漫画誌ではあまり書いていないことからか、あまり目にしていないのだと思う。「隠密剣士」をコミカライズしているのは実は堀江で、連載は「週刊少年マガジン」だったようである。
主演は当時17歳だった手塚茂夫。児童劇団こけし座に所属しており、58年に日映映画「怒りの孤島」でデビューし、その後は東宝で「独立愚連隊」などに出演。そして、59年に「矢車剣之助」の主演に抜擢された。本作は資料もなく、映像もほとんど世に出ていないようなので手塚以外の出演者についてはレギュラーかゲストかは不明なのだが、出演したらしい役者の名を並べてみる。小林重四郎、今橋恒、稲吉靖司、渡真二、汐見洋、美川陽一郎、阿部寿美子、朝霧鏡子、五月みどりなどである。他にも「実写版鉄人28号」や「快傑ハリマオ」にも出演した子役の内藤正一もゲスト出演したようである。
映像が世に出ていないと書いたが、そもそも原版が残っているかどうかも不明だ。ソフト化もされていないようなので、原版は存在しないと考える自然に思える。5分程度ではあるが一部の映像がネットでも見られる。手塚の殺陣は中々軽快なものに見える。
その後の手塚だが、62年にうっかり八兵衛こと高橋元太郎と入れ替わる形でスリーファンキーズに加入。この際に名前を手塚しげおとひらがな表記に改めている。66年にソロシンガーとしてもデビューするが、ヒットには恵まれず、俳優として活動していくことになる。「忍者部隊月光」や「ワイルド7」が知られているが、何と言っても「太陽にほえろ」で「ジーパン刑事(松田優作)を殺した男(会田役)」としてマニアには認知されているようだ。

 

夕やけ天使

前回のタケダアワー「泣き笑いさくらんぼ劇団」(60年)終了の後を継いだのが「夕やけ天使」である。その放送期間を見ると62年9月までとなっており、その後に始まるのが「隠密剣士」なのである。
丸二年続いた番組にしては、ほとんど語られることがないし、知らないという人が大半ではないだろうか。制作は引き続きTBS(当時はKRテレビ)と宣弘社であるが、「さくらんぼ劇団」同様で映像もスチールも現存していないという。やはりその手のものがないと記憶には残りづらいと思われる。
自分にも未知の番組だが、資料らしいものもなく、ネットで調べてもたいした情報は出てこない。ウィキペディアによれば、だるま船「かもめ丸」に父・良三と二人で住む少年・健チがチー坊という少年と知り合い、二少年の家族が助け合いながら水上生活を明るく変えてゆく話、だそうである。この頃は、まだ水上生活者も多く存在し、同時代には「ポンポン大将」(60~64年)というドラマもあり、これも水上生活を描いていた。もちろん、今でも存在しているが60年代後半から数は激減していったようである。
出演は健チに馬場勤、チー坊に竹腰三知郎。二人とも他の出演作が見当たらない子役である。父・良三に三國一朗、チー坊の姉マチ子に松島トモ子。三國は俳優というよりは司会者、タレントといったイメージが強い。松島は当時15歳だが、既に女優としての地位を築いていたといえる。他に三崎千恵子、楠トシエ、益田喜頓などが出演していたようだ。テレビドラマデータベースでは、津島恵子、若山セツ子、宮城まり子、千葉信男なども出演者に挙げられている。
ただ、このデータベースではこの「夕やけ天使」は1年で終了し、61年8月からは「夕やけ天使 2コ2コ人生」としてリニューアルしてさらに1年続いたように書かれているのだ。その解説には「腕の良い靴屋だが酒好きな父とその一家の生活ぶりをコミカルに描く」とある。この通りだとすれば、これはもう水上生活ではないし、全く別のドラマだったといえよう。出演者として(前作)とダブってあげられているのは、楠トシエ、松島トモ子、馬場勤、千葉信男、益田喜頓で新たな名前としては、牟田悌三、小柳徹、井上ひろし、小山田宗徳などが載っている。
「2コ2コ人生」についてはウィキはもちろん、ネット上での情報は皆無である。その真相やいかに、といったところである。
脚本は「豹の眼」の原作者である高垣眸の息子である高垣葵が担当している。ちなみに「あおい」ではなく「まもる」と読む。また赤塚不二夫が「りぼん」に本作のコミカライズを10カ月(61~62年)に渡って連載していた。赤塚が「おそ松くん」で大ヒットをとばすのはこの62年のことである。

 

泣き笑いさくらんぼ劇団

「月光仮面」「豹の眼」と大瀬康一主演のアクションドラマが続いたタケダアワーだが、その後番組を知っている人はいるだろうか?まあ、ほとんどいないだろうし、タイトルを聞いても「?」という人が大半であろうし、自分も正直初耳なのである。その名も「泣き笑いさくらんぼ劇団」(60年)という。宣弘社も制作にはかかわっているようだが、今までと一転してレギュラー出演者は女性のみのようである。
旅回り一座の中の女芸人一同が女だけの一座を結成し、全国をまたにかけて芝居をうっていく話というのが大筋である。出演は笠置シヅ子、若水ヤエ子、桜京美、市川寿美礼、安田千永子、奈良あけみ、藤戸木綿子、飯田蝶子といった面々。笠置、若水、桜、飯田あたりは知っている人も多いのではないだろうか。ベテラン女優揃いなイメージだが、この時点では笠置(46歳)、飯田(63歳)を除けば、20代半ば~30代前半という年齢である。
喜劇イメージの強い人も多いのだが、TBSのプロデューサーである橋本洋二は、「ドタバタはできるだけ避けていきたい」と述べており、「主役を置かないことがこの番組の特色」だとも述べている。とは言っても、やはり年齢的にもキャリア的にも「ブギの女王」として知名度も高い笠置が主役ということになるのではないだろうか。ちなみに飯田は一座の後援会長のような役柄だそうである。
他を年齢順(藤戸は不明)に見ていくと、若水ヤエ子は当時33歳。ズーズー弁の女中役で人気を得て、「おヤエのママさん女中」(59年)という主演映画まで作られ、それがシリーズ化。当時は一番勢いがあった頃でかなり多忙だったと思われる。市川寿美礼は当時32歳。こちらは新派女優であり、基本的には脇役の人である。ちなみに、若水と市川はともに73年に亡くなっている。つまり、それそれ45歳、44歳という若さで逝ってしまったのである。
桜京美は当時30歳。NHKの「お笑い三人組」で人気を得ており、まだ出演中でもあった。名前が似ており、立ち位置も近い小桜京子とはよく混同されていたという。奈良あけみは当時25歳。16歳でストリップの世界に入り、日劇ミュージックホールでは人気投票で一位になり「ストリップの女王」と呼ばれていた経歴を持つ。58年頃から映画に出演するようになり、女優として活動するようになっている。安田千永子は当時24歳で、劇団四季出身の女優である。
以上のように、「豹の眼」が予定より早く終了することになり、急遽集めたと思われるが、その割には中々の顔ぶれが揃っていると言えよう。
経緯は不明だが、脚本には俳優の伊豆肇が参加。この人はピンク映画の監督を務めたこともあり、そういった才を持つ人のようである。本作には俳優としても出演したらしい。本作は4か月間18回に渡って放送されたようだが、映像はもとより、スチール写真も現存していないという。

 

豹の眼 その2

前回の続きである。「豹の眼」(59~60年)の第二部は日本編である。ここで、ついにヒーローが登場する。その名も「笹りんどう」という。現代劇だが馬に跨って現れ見た目はほとんど鞍馬天狗、いや原作の高垣眸の他の人気作になぞらえて「快傑白頭巾」(原作はもちろん黒頭巾)というべきだろうか。原作小説は見ていないので断言はできないが、これはテレビのオリジナルキャラのようである。
笹りんどうの名の由来は頭巾の額にある紋章のようで、これは源氏に多い家紋だという。その武器はさすがに刀ではなく、伸び縮みする細い金属棒で、孫悟空の如意棒のようなものだろうか。笹りんどうの乗馬シーンはスタント兼制作進行の野木小四郎が担当したが、この人は元々はただの見物人だった。「月光仮面」のロケを見物をしているとバイクのシーンの撮影があり、野木が思わず「ヘタだなあ」と呟いたのが監督の船床定男に聞こえてしまい、「君、できるの?」と問われ、やってのけたのがきっかけだったという。後日、船床に誘われ務めていたオートバイ販売店を辞め、宣弘社での仕事をすることになったという。ただし、正社員ではなく1本いくらという契約だったらしい。
冬に下がアイスバーンの状態で馬を走らせるシーンがあり、野木は乗馬の経験はなかったが無理矢理乗せられ、その後ろに乗った近藤圭子の代役はなんと泊まっていた旅館の女中さん。案の定馬ごと転倒したが、怪我はなかったという。代役と言えば、主役のモリーが剣舞を披露するシーンがあるのだが、それを演じたのは日舞の師匠でもあった船床監督夫人だったという。
走る列車の上でのアクションといえば「キイハンター」の千葉真一を思い浮かべる人も多いと思うが、本作でもそういうシーンが存在する。予算がないため、一般の乗客も乗っている小海線(小淵沢~小諸間)の運行中の列車で行われた。大瀬や赤尾関三蔵が列車の屋根上で立ち回りを演じているのだ。また、現金輸送車襲撃シーンも実際の八十二銀行野沢支店で行われているという。或る意味のどかな時代だったのである。
最終回はジャガーとジョー、つまり天津敏と牧冬吉が仲間割れして相討ちになるというもの。劇中の登場人物には笹りんどうの正体はわからないというのがお約束だが、ラストで正体を教えてと懇願されても「この仮面の下には正義があると思ってください」の名言を残して去っていく。
見どころも多そうな本作であるがあまり人気は得られなかったようで、全38話で終了となっている。予定より1クール早く終わったようである。

 

豹の眼

時代が前後するのだが、そのまま宣弘社作品で「豹の眼」(59年)である。知っている人も多いと思うが、豹はジャガーと読ませている。そもそも豹とジャガーは別種だが、姿がよく似ておりジャガーを「豹(ジャガー)マン」などとなぞらえらたりすることもあるという。
本作は「月光仮面」の後番組であり、TBS日曜19時つまりタケダアワーの第2弾である。スタッフのほとんどが「月光仮面」のスタッフであり、主演も大瀬康一が引き続き務めた。ちなみにタイトルの「豹(ジャガー)の眼」とは、正義のヒーローのことではなく、悪の秘密結社の名称であり、その首領が隻眼の男ジャガーなのである。ちなみにジャガーを演じたのは天津敏であり、「隠密剣士」以前から宣弘社作品では悪役を務めていたわけである。
これは宣弘社のオリジナル作品ではなく、原作は高垣眸の小説である。悪役サイドがタイトルになっているのは斬新だが、当初は変身ヒーローが登場しないので、そうせざるを得なかったのかもしれない。単純に原作のタイトルを用いただけかもしれないけれども。
脚本には御手俊治、森利夫、伊上勝の名があるが、御手は「遊星王子」の項でも書いたとおりプロデューサー西村俊一のペンネームであり、森利夫は伊上勝の変名だそうである。監督はお馴染みの船床定男であった。
主役の大瀬が演じるのはモンゴルとのハーフ青年であるモリーで、日本名を黒田杜夫といった。ちなみに56年には大映で映画化されており、主演は北原義郎が務めているが、こちらでは旭杜夫となっている。ヒロインである錦華は、当時16歳の女優兼童謡歌手の近藤圭子が演じている。他の出演者は高塔正康、野口元夫、赤尾関三蔵、三田隆、そして牧冬吉も殺し屋ジョーという役で出演している。
赤尾関三蔵は以前にも書いたが、映画で手錠で繋がれた二人(赤尾関と高須賀忍)が川を渡るというシーンで二人とも川に流されて死亡している(正確には遺体は発見されなかった)。三田隆は、重光彰(彬)の芸名で「私はシベリヤの捕虜だった」(52年)等で主演した後、同年に大映に入社。数本の作品で主演を務めていたスター俳優だったが、女性問題などで54年からは脇役に回され56年には退社している。「豹の眼」では少林寺拳法の達人という役だったが、この時アルコール依存症が進んでおり、体力もなく吐血することもあったという。番組終了から9か月後の61年元旦に37歳の若さで亡くなったという。

 

隠密剣士 突っ走れ!

前回の続きである。荻島真一版の「隠密剣士」(73年)は、12話を持ってテコ入れされることになった。わかりやすいところから言えば、まずタイトルが「隠密剣士 突っ走れ!」になったことである。実制作も東映から宣弘社へと戻り、撮影拠点の京都から東京へと移ることになった。
宣弘社主導になったこともあり、脚本に伊上勝が復活した。今回は一人ではなく佐々木守や阿井文瓶も担当。オーソドックスな時代劇から怪奇アクション色が強められ、「特撮時代劇」と銘打たれたりしていた。
昔は途中でタイトルが変更になった番組というのは結構あった気もするが、近年は連続ドラマは1クールが多いことや海外ドラマのようにシーズン制を取り入れている人気ドラマも多くなってきたので、放映途中でというのはあまり見かけなくなったと思う。
主演の荻島真一と相方の牧冬吉はそのままだが、同行の少年が山田雅英から山瀬洋に変更(山田も13話のみ出演)。レギュラーは基本彼らのみだが、当時のアイドルなどをゲストで登場させ華やかさを添えていた。歌手では、浅田美代子、岡崎友紀、水沢アキ、野村真樹(将希)、三善英史など。特撮物では「ウルトラマンタロウ」の篠田三郎、「ウルトラマンA」の高峰圭二、星光子、「ライオン丸」潮哲也、「キカイダー01」の池田駿介、「レッドバロン」の牧れい、大下哲矢、ちょっと古いが「矢車剣之介」の手塚茂夫、他にも「柔道一直線」の桜木健一、「ガッツジュン」の藤間文彦、「赤い靴」のゆうきみほ、「美人はいかが」の奈良富士子など。宣弘社人脈やTBSプロデューサー橋本洋二の人脈をフルに使ったゲスト陣である。
対する敵は暗闇一党。登場順に列挙すると千波丈太郎、城所英夫、外山高士、宮口二朗、中田博久、大月ウルフ、上野山功一、佐藤京一、梅津栄、梶健司、三角八郎となっている。個人的なイメージだが、後に行くほど弱そうな気がする。特に梅津栄、三角八郎は悪役もやるけれども強そうなイメージはない。それぞれの役名だが、千波が「闇の行者」、城所が「黒の将軍」、中田は「月影法師」、梶は「蝙蝠軍師」とたいそうなものだが、何故か大月は「南蛮人ロドリゲス」で、三角に至っては「トン松」となっている。統一制に欠ける気がする。そしてラストに登場するのが天津敏である。役柄はそのまま赤目幻幽斎だが13、14話のみの登場のようだ。
ところで、この「突っ走れ」だが、スタートが73年12月30日なのである。どうせなら、年明けからやればいいのにと思ったのは自分だけではあるまい。だから話数も「隠密剣士」13話、「突っ走れ」13話ではなく前者12話、後者14話とバランスが悪くなっている。