恐怖劇場アンバランス
今回は、前回に話の出た「恐怖劇場アンバランス」(73年)である。前回も書いたとおり、本作は「ジキルとハイド」と同様に69~70年に制作されたのだが、過激な恐怖描写のため「スポンサーがつきにくい」等の理由でお蔵入り状態になっていたのである。
放送解禁が同じ73年となっているが、実は「ジキルとハイド」はフジテレビにて、73年1月9日(火)23時15分から放送スタートだったのだが、「恐怖劇場アンバランス」は同じくフジテレビにて、73年1月8日(月)23時15分からの放送スタート。つまり1日違いの同じ時間帯で放送されていたわけである。この時期のフジテレビの深夜帯は恐怖アワーだったわけである。
「アンバランス」は円谷プロ制作ということもあり、「ジキルとハイド」よりは有名だろうし、目にする機会も多いと思われる。毎回出演者が変わるので、番組の案内人として青島幸男が冒頭とラストに解説を入れている。しかし、この部分は制作当時に撮られたものではなく、新たに挿入されたものだという。そのため青島の名はクレジットされていない。
今、改めてスタッフの名前を見ると円谷プロの制作とは思えない顔ぶれなのである。監督が鈴木清順、神代辰巳、長谷部安春、藤田敏八、黒木和雄、鈴木英夫など映画界の有名監督の名が並んでおり、日活の監督の名が目立つ。他にも森川時久、山際永三、井田探などテレビを中心に活動しているが、円谷とはあまり縁がなかった顔ぶれだ。円谷作品でお馴染みの名といえば満田かずほくらいだろうか。しかし制作当時、つまり69~70年の時点で名の知れていた監督は「若者たち」の森川時久くらいだったらしい。ちなみに森川はこの当時はフジテレビのディレクターである。清順や神代に至っては丁度干されていた時期だったこともあり、この仕事を受けたようである。
第1話「木乃伊の恋」は鈴木清順が監督。脚本の田中陽造は日活で清順を中心とした脚本家チーム「具流八郎」に参加していた。本作では役者として出演している太和屋竺もその一員である。第2話「死を予告する女」の主演は蜷川幸雄。演出家として知られる蜷川だが、この頃は普通に役者としてよく見かけた。サブタイにある女を演じる楠侑子の夫は演出家だが蜷川ではなく別役実である。第4話「仮面の墓場」の主演は唐十郎。この人も演出家、劇作家としての方が有名であろう。第7話「夜が明けたら」で、歌手役として出演しているのが浅川マキ。サブタイと同名の曲を歌っている。特に演技をするわけではないが、テレビはもちろん映像作品に出ることが珍しい人である。第8話「猫は知っていた」は監督と脚本が満田かずほ。そのせいか水木襄、渚健二、江村奈美、原保美と円谷特撮ではお馴染みの役者たちが顔を揃えている。他にも花柳幻舟が看護師役で出ている。「戦え!マイティジャック」でも共演していた渚と江村は後に結婚している。
第9話「死体置場の殺人者」には野坂昭如が出演するなど、意外な人が出演したりしているのが本作である。
ジキルとハイド
「江戸川乱歩シリーズ・明智小五郎」(70年)は、どちらかと言えばホラーに近いドラマだったが、この時代の恐怖ドラマといえば「ジキルとハイド」(73年)である。原作はもちろん「ジキル博士とハイド氏」だが、作者のスティーブンスンは「宝島」の原作者としても知られる。両方が同じ原作者だって意外と知られていない気もするが、常識なのか?
さて73年と書いたがそれは放送された年であって、、実は制作されたのは69年~70年だという。つまり3年以上もお蔵入り状態だったわけである。それって「恐怖劇場アンバランス」の話じゃないのと思った人もいるかもしれないが、制作された時期もお蔵入りになっていたことも放送された時期も両番組はほぼ一緒なのである。
お蔵入りだった理由だが、簡単に言えば広告代理店に敬遠されたということだ。難解な上に、暴力描写の連続では当時でもゴールデンタイムでの放送はまず無理との判断だったわけである。実際に、放送された時間帯は23時15分からであった。現在では深夜ドラマは珍しくなくなったが、当時はほとんどなかったはずである。
主演は丹波哲郎で、制作された当時は47歳である。クレジットにはないが、企画も丹波哲郎だったという。五社英雄が監督だけでなくプロデューサーとしても名を連ねている。タイトルバックは「明智探偵事務所」や「快刀乱麻」では横尾忠則の絵が使われえいたが、本作では篠山紀信の写真が使われている。
丹波が演じるのは総合病院の副院長にして医学博士の慈木留(ジキル)公彦。もちろん、実際にはそんな苗字は存在しない。設定では59歳だが、老けメイクの丹波はそれ以上に見える。妻の美奈(松尾嘉代)は32歳と20歳以上の年齢差があった。そんな慈木留が若返りの薬(のようなもの)を開発する。それを自ら飲むことによって背奴(ハイド)に変身するのである。変身と言って老けメイクの丹波がいつもの丹波に戻るのである(髪型は不自然だが)。
この背奴ときたら、邪魔する奴(男)はぶち殺し、女は犯すという普段の慈木留とは180度違う怪物である。しかも変身している間の記憶が慈木留にはない。ついには、自分の妻まで犯してしまうのである。しかも彼女は背奴のことを求めるようになってしまう。ちなみに、犯すと言っても直接的な描写があるわけではない。それとわかるイメージ描写のような感じである。
そんなハイドを追うのが、露口茂演じる山さんならぬ毛利警部である。山さんは万年警部補だったが、こちらは既に警部である。実は毛利と美奈は過去に恋愛関係にあったということもあり、ほとんど私情でハイドを追うのである。
脚本は長坂秀佳、池田一朗、小川英などが担当しているが、ラストの12~13話を担当する出雲五郎とは長坂の別ペンネームである。長坂と出雲を合わせると6話分になるが、何故ペンネームを変えたりしているのかは謎だ。
数年前にCSで放送されたが、当時でさえ中々放送されなかったぐらいなので、現在ならまず地上波放送は無理であろう。
江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎 その2
前回の続きである。「江戸川乱歩シリーズ・明智小五郎」(70年)は、東映と東京12チャンネル(テレビ東京)の制作で、土曜の夜8時から放送されていた。ゴールデンタイムに放送するには、当時でもかなり際どい内容だったのだが、裏番組はあの「8時だよ全員集合」だったわけで大体の子供たちはそっちを見ていたと思われる。
原作に明智が出てる出ていないにかかわらず、広い範囲の江戸川乱歩作品を取り入れている。第1話「殺しの招待状」の原作は「蜘蛛男」。初っ端から氷漬けの裸女のオンパレードだ。蜘蛛男役は伊丹十三である。第3話はサブタイトルそのままの「黄金仮面」。黄金仮面を演じたのは当時21歳の団次郎。「帰ってきたウルトラマン」はこの翌年の話で、まだ俳優というより資生堂MG5のCMに出ている人という認識の方が強かったのではないだろうか。一見普通の美青年だが、その肌の下に醜い異様な刺青が彫られているという設定だ。黄金仮面はこの後、11話と19話にも登場する。団次郎といえば、この5年後の「少年探偵団(BD7)」(75年)では怪人二十面相を演じることになる。乱歩作品とは縁が深い役者なのだ。
さて、本作において怪人二十面相は中々登場しないのだが、15話「怪人二十面相・夜光人間」になってやっと登場。演じたのは三上真一郎だが、ミステリアス感のない二十面相に感じた。出番は次回16話「怪人二十面相・悪魔の燈台」との二本だけで、中村警部(天田俊明)や少年探偵団(塩屋翼、松葉寛祐など)も登場する。天田俊明といえば「七人の刑事」であり、69年に終了したばかり。ゆえに視聴者からは刑事にしか見えなかったかもしれない。塩屋翼は声優として有名であろう。第4話「ダイヤモンドを喰う女」の原作は「黒蜥蜴」である。黒蜥蜴といえば、映画では京マチ子や美輪(丸山)明宏が演じ、「明智探偵事務所」では倍賞美津子が演じた。で本作では野川由美子である。この人も美人ではあるが、ミステリアスな雰囲気はあまりない気がする。
本作は全26回だが、実は本放送時のレギュラー枠で放送されたのは24話までであった。残る2話は三か月後に「金曜スペシャル」という怪しいドキュメンタリー番組を放送していた枠で突如放送されたのである。その2話はいずれもショートショート「白昼夢」を原作とした25話「殺人金魚」と26話「殺人狂想曲」である。脚本はいずれも大原清秀だが、彼の本作での担当はこの2話だけであった。放送枠の関係かとも思ったが、「殺人金魚」の監督を務めた佐伯孚治によれば内容が難解すぎるので外されたとのことだった。確かに犯人(斎藤晴彦)が、地下水路から現れた巨大な金魚に飲み込まれていくというラストは意味不明と思う人もいるかもである。ところで犯人役の斎藤晴彦がKDDIのCMをきっかけに一般に知られるようになるのは15年も後のことである。当時は全くの無名だったと思われるが、このような大役に起用されていたのは驚きである。
ところで「殺人金魚」を偶然見た円谷プロのプロデューサー熊谷健はその作風を気に入り監督の佐伯を「帰ってきたウルトラマン」で起用することにしたという。「黄金仮面」を見て、団次郎の起用を決定したという話はないが、あっても不思議はないだろう。
江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎
見ることのできない明智小五郎シリーズが「明智探偵事務所」なら、比較的見やすいのが「江戸川乱歩シリーズ・明智小五郎」(70年)である。見やすいというのは東映チャンネルで21世紀になってから三回ほど放送されているからである。「明智探偵事務所」より前に作られているがフィルム撮影というのが大きかった。それに東映という会社は基本的には映像を保管している(1話のみ保存というケースも多いが)。
さて、コチラで明智を演じているのが滝俊介。知らないという人も多いかもしれないが、その正体は溝口舜亮なのである。それでも知らなかったりするかもしれないが、「Gメン75」で関屋警部補(原田大二郎)と相討ちになった犯人・遊佐を演じていた役者と言えばわかる人もいるだろう。基本的には悪役が多い役者であり、主演作もおそらく本作のみだと思われる。
加えて滝俊介という芸名も本作のみで使用したと思われ、基本的には本名の溝口舜亮で活動していたようなので滝俊介という名前を知らなくても無理はないのである。名付け親は乱歩未亡人だという。番組終了後にすぐに名前を本名に戻したところを見ると、本人は名前を変えたくなかったのだろうと推察する。しかし、世間的には無名役者で乱歩未亡人から名前を送られたとなれば、使わないわけにはいかなかったのだろう。
当時はアングラ劇団「自由劇場」に所属していたが、実は俳優座花の十五期生の一人。同期は原田芳雄、夏八木勲、林隆三、前田吟、村井国夫、竜崎勝、秋野太作、小野武彦、地井武男、浜畑賢吉、赤座美代子、太地喜和子、栗原小巻、そして前回も触れた高橋長英と成功した役者がずらりと並ぶ。
こちらも小林君は少年ではなく青年であり演じるのは当時21歳の岡田裕介。そう現在は東映グループの会長となっている偉い人なのである。父親の岡田茂は当時は東映の企画制作本部長兼京都撮影所所長でこの翌年には社長に就任しているが、俳優になったきっかけは父親のコネではない。「水戸黄門」などで知られるプロデューサー逸見稔(松下電器所属)が石坂浩二と間違えてスカウトしたのがきっかけだという。元々仕事上で付き合いのあった岡田茂の息子とは当然知らなかったわけである。デビュー作はナショネルゴールデン劇場「レモンスカッシュ4対4」である。俳優になったのはコネじゃなくても東映入社(88年)はコネだろう。
他のキャストだが、浪越警部は山田吾一、浪越亜沙子は橘ますみ。助手の亜沙子は浪越の妹という設定である。橘ますみは芸名っぽいが本名である。当時の彼女は東映お色気路線のエース格的存在であった。66年に東映入社。68年、石井輝男監督の「温泉あんま芸者」がキャスティングに難航し、彼女を主演に抜擢する。それが運の尽きというか、以後石井作品の常連となり、どんどん脱がされるようになる。その分人気も出てスターダムにのし上がる。本作での起用もその辺を期待されてのことだろう。しかし、番組終了後まもなく持病の気管支炎を悪化させ女優業も嫌気がさしてきたところだったので、東映を辞めようとしたが慰留され、71年6月の契約切れの際に辞表を当時の大川社長に提出。大川にも「旅行にでも行っておいで」と休暇を与えられるが、その大川が8月に急逝。橘のショックは大きく女優廃業を決意。翌9月には引退してしまったのである。前述のとおり、大川の後任が裕介の父・岡田茂だったのである。
キャストの話だけで長くなってしまったので、内容は次回に。
明智探偵事務所 その2
前回の続きである。「明智探偵事務所」(72年)は、当初1年間放送される予定だったというが、半年で打ち切られることになる。当時の記事には低視聴率が理由となっていたようだが、小学生の自分が面白いと感じてみていたくらいだから、低視聴率ということはないと思う(自分基準)。実際のところ高くはなかったのかもしれないが、出演者の消耗度が著しかったので打ち切らざるを得なかったというような事情も語られている。
しかし、近年になって夏木自身がインタビューで語ったことによれば、第一の原因は一言でいえば、夏木が降板を申し入れたからである。本作はNHK大阪の制作だが、まず第一に毎週大阪に通うのが面倒になっていたこと。もちろん、最初からそうだったわけではないだろう。大きな仕事はこれ一本に絞って臨んだというが、細かい仕事があったため、毎週東京に帰らなければならなかったという。
また、脚本の仕上がりが遅いうえに、セリフの意味が通じない箇所があったという。さらに、その脚本家の一人である福田善之がリハーサルに同席し、演出家が何も言ってないのにNGを出してきたりしたので夏木は「演出家の言うことしか聞かない」と突っぱねたりしという。福田は演出家としての顔もあるので、それが普通だったかもしれないが、本作では別に演出家はいたので夏木にすればあくまでも脚本家扱いだったのである。ちなみに、福田は役者としても数本の作品に出演しており、前々回ちらっと触れたウルトラセブンの欠番回「遊星より愛をこめて」にも出演している。
台本を直すように言っても直ってなかったりとスタッフへの不満が募っていき、ついには演出家の頭を台本で強く叩いてしまったという(軽く叩くつもりが手元が狂ったとは本人談)。そんなこともあり、夏木は降板を申し出て番組終了が決定したというのが打ち切りの原因らしい。
調べた限りでは、本作ではレギュラー陣の二役というのが多かったようだ。11話「三文王子の暗殺ロック」は福田のオリジナル作品ということだが、狙われていた某国のプリンスがタカシ(萩原健一)にそっくりだったので、タカシがその身代わりをするという「キイハンター」辺りでありそうな話である。12話「花を枯らしたのは誰」では、公害を出す工場の社長役を二十面相役の米倉斉加年が演じており、住民の抗議を受けて自殺するという展開らしい。
前回、9話「うらおもて心理試験」について触れたが、その後の調査で(3日前だが)どうやら全員が二役を演じる話だったようだ。蕗屋の役は高橋長英だった気がするという自分の記憶も正解だったようだ。あと、ゴーゴー喫茶のようなところは「チコ」というスナックで、吉行和子の役は「チコ」とは別の拠点となるおでん屋のおかみさんだったらしい。ドンキー(佐藤蛾次郎)の姉という設定である。
10話「呪われた手紙」から妙子役でレギュラー入りする冨田良子は大阪のFMでDJをやっていた人だという。川手(河野秋武)の娘として登場するが、妹(久万里由香)は殺害されてしまう。妙子にも危機が及ぶが…というような展開らしい。
以上、判明したのはこんなところである。夏木自身はこの作品に関しては、いい思い出はなかったようである。
明智探偵事務所
新十郎捕物帖・快刀乱麻」と同じ理由、つまりVTR撮影だったため高価であったテープを上書きして使用していたため映像が残っていないとされる代表的なドラマその2が「明智探偵事務所」(72年)である。タイトルからわかると思うが、江戸川乱歩の小説を原作とした推理ドラマである。制作はNHKなのだが、そのNHKでさえも当時はまだ映像を残しておこうという意識が欠けていたわけである。残念ながら1話たりとも残っていないと言われている。
「快刀乱麻」とは映像が残っていないこと以外にも、タイトルバックが横尾忠則のイラストだったことも共通している。番組の中身はほぼ覚えていないのだが、OP音楽とその不気味な絵柄(というイメージ)は何故か覚えていた。この音源が過去にレコード化、CD化されたことは一度もないようだが、「快刀乱麻」同様に当時カセットテレコで録音した人がいるようで、動画サイトに挙げられている。どうせなら、ドラマの中身も録音しておいて欲しかったと思ったりする。
明智小五郎役は夏木陽介で、明智と言えば怪人二十面相だが、米倉斉加年が演じている。少年探偵団は登場しないが、時代に合わせて青年探偵団が登場する。そのメンバーが斎隠寺忠雄(小林青年)、佐藤蛾次郎(ドンキー)、高橋長英(詩人)、六人部健市(ジロー)、そして萩原健一(タカシ)。女性陣レギュラーも探偵団メンバーかどうか不明なのだが、田村奈巳(文代)、麻田ルミ(ユッコ)、冨田良子(妙子)など。個人的に記憶にあるのは蛾次郎と高橋長英だけで、ショーケンが出ていたのは全く記憶になかった。ショーケンのドラマ初出演は本作だという。小林青年役の斎隠寺忠雄は後に芸名を西園寺章雄(宏)としている。「必殺シリーズ」の悪役としてよく見かけた。麻田ルミと言えば「おさな妻」(70年)の主役だ。72年当時は17歳なので、15歳で「おさな妻」を演じてわけである。
彼らはゴーゴー喫茶のような場所でカウンターに座り、討論?していたようなイメージがある。原作の時代ではなく現代(といっても72年)に舞台を合わせたという。このドラマは完全に大人向けに作られていたという印象はある。自分は小学生だったが、子供にこびたようなドラマは嫌いだったので、本作は好きだったわけだ。
当時のサブタイトルで唯一記憶に残っていたのが「うらおもて心理試験」。蕗屋清一郎という登場人物の名も記憶にある。調べてみると当時第9話として放送され、原作はタイトル通り「心理試験」だが「D坂の殺人事件」と「指環」も使われているらしい。ゲストで名が挙がっているのが吉行和子のみ。蕗屋は誰が演じたのか謎だが、詩人役の高橋長英がやっていたような気がしないでもない。ちなみに、吉行和子は全部で5回登場するようなので、セミレギュラーみたいなものである。それにしても「陰獣」→「夏の恋」とか「一寸法師」→「誰がために探偵はある」とか、サブタイを聞いただけでは原作を想像できないものもいくつかある。次回に続く。
新十郎捕物帖 快刀乱麻 その3
もう1回だけ「新十郎捕物帖・快刀乱麻」(73~74年)である。前々回に最終回のみ映像が残っているらしい、と書いたがテレビ探偵団で流れたのも最終回「西郷札は最後殺」の映像であった。それも、新十郎(若林豪)が、悪党(神田隆)を刺殺する場面である。それを見る限りでは最終話は、様相が違うようで、いつもの謎解きはなさそうである。
西郷隆盛の生存説が流れ、紙くず同然であった西郷札の値段が暴騰する。新十郎の活躍により、それがある新聞社の社主(神田隆)が流したデマであることがわかる。社主は逮捕されるが、繋がりの深い政治家の力で釈放される。その不正への怒りから新十郎は社主を成敗したのだ。
殺人者となった新十郎(+英太郎=尾藤イサオ)の前に勝海舟(池部良)が現れ、その逃走の手助けをする。二人は逃亡の旅に出たところで番組は終了する。
「テレビ探偵団」で流れる映像だが、役者と当時の年齢がテロップで出たりする。植木等(当時47歳)は合っているのだが、次の池部良(当時42歳)は明らかにおかしい。若々しく見えるとはいえ、どう考えても池部が植木より年下のはずがないのである。正しくは当時56歳が正解のようだ。単純なミスか池部が年齢をサバ読んでいたかだが、池部のサバ読みは2歳だけのようだ。1918年生まれとなっているが、実は1916年生まれだったことを亡くなる3年ほど前に告白していた。つまり、「快刀乱麻」の時は当時58歳というのが真実のようだ。
ちなみに、この最終回には佐藤慶がゲスト出演しているのだが、悪人役ではなくおそよ(野川由美子)の別れた亭主という役柄のようだ。佐藤慶は本作ではナレーションを担当していた。出演者全員がが突如として動きを止め、佐藤のナレーションが入るというスタイルが名物でもあった。オープニングも1話分聞いただけではあるが、アバンタイトル、つまり事件が起こるシーンがあって、そこに佐藤の声で「第25話空手の約束は空手形」というようにサブタイトルが読み上げられ、主題歌である「少女ひとり」が流れ始めるというのがパターンだったようだ。
脚本家は複数の名前が挙がっているが、細かい担当話数については不明である。しかし当時の新聞記事には、初期は坂口安吾の原作に寄せたエピソードも多かったが、中盤からはほとんど佐々木守のオリジナルになっていたとある。なので多くの話数を佐々木守が担当していると思われる。佐々木守といえば、プロデューサー山内久司とのコンビで「脱ドラマ」を掲げた「お荷物小荷物」(70~71年)などで知られる。一人で全話を書いてしまうことも多く、特撮ドラマ「アイアンキング」は全話佐々木の担当である。「ウルトラマン」(66~67年)で印象に残る話として挙げられることの多い「故郷は地球」(ジャミラ)、「怪獣墓場」(シーボーズ)、「空の贈り物」(スカイドン)は全て佐々木の脚本(監督は実相寺昭雄)である。「ウルトラセブン」で幻の12話と言われ、封印作品となっている「遊星より愛をこめて」も佐々木と実相寺が担当していた。
話がそれたが、要するにプロデューサー・山内久司、脚本家・佐々木守のコンビは当時、次々と新しい試みをドラマで行っていたということである。
新十郎捕物帖 快刀乱麻 その2
前回の続きである。動画サイトには25話の他にも21話「鳥と鳥とをとりちがえ」の音声もアップされている。ただし、冒頭の15分くらいは欠けており途中からである。それでも、大体のことはわかる。
因果(植木等)、虎之介(花紀京)、古田巡査(河原崎長一郎)が、その状況から勝手な推理を始める。彼らは単純に一番怪しいと思った人物を犯人だと決めつける。そこに、おそよ(野川由美子)が絡んできたりする。三人そろって彼女に惹かれているという設定だ。おそよは「必殺シリーズ」でも見られるような少々やかましく威勢のいいキャラである。
虎之介は事件の状況を必ず勝海舟(池部良)に報告する。勝は現場ではなく虎之介の報告から、事件を推理するのである。先の三人よりはマシな推理だが、正解には至らない。
物語の中盤まで主人公・新十郎(若林豪)は何をしているかというと英太郎(尾藤イサオ)と共に、ただゴロゴロしているのである。ちなみに二人とも自由民権運動の闘士である。そこに毎度、古田が呼びにやってくる「新十郎、立ち上がってくれ」というのがお決まりのセリフのようだ(二話分聞いただけなので)。英太郎は古田を「官憲」と呼んだりして、対立することもあるあるらしいが、今回聞いた分では「官憲さん」であった。とにかく、古田の呼びかけによって重い腰を上げるのがパターンのようである。
21話に話を戻すが、ゲストは4人だけのようである。殺された磯吉(沢村宗之助)と、犯人候補であるその娘・ランラン(吉田日出子)、カンカン(関根世津子)の姉妹、料理人・三郎だけである。娘と言っても本当の娘ではなく、二人も本当の姉妹ではない。清国人を名乗っているが、本名はとも子によし子で、日本人である。三郎が実は清国人という表向きとはすべて逆なのである。吉田日出子は音声だけでもわかるが、関根や沢村は他の資料などから恐らくあっていると思う。三郎に関しては音声だけではわからなかった。ウィキペディアでは、21話のゲストに10人の名が並んでいるが、最低6人は他の回のゲストであろう。
沢村宗之助は伊藤雄之助の兄だが丸顔である。末弟の沢村昌之助も丸顔である。三兄弟で真ん中の雄之助だけが、何故かあの長い顔なのである。関根世津子は当時18歳で、個人的に美人女優として注目していた存在だった。女優活動は80年代初頭までだったようだ。
嵐の夜の強行直後、死体のそばにいたのは姉とも子だったが、凶器を持っていなかった。勝らの推理で犯人と疑われたのは三郎だった。この時点で三郎の犯人はない。セオリーでは全く疑われていない妹よし子の犯行となりそうだが、彼女は密かに愛する三郎が疑われると「私、結城新十郎って人を呼んでくる」と言い出したのだ。視聴者サイドから見て、これで彼女の犯行説も消えるので、残るは一人。真っ先に疑わしく、犯人の風格を持つ吉田日出子がそのまま犯人だったというパターンだった。見ている方が、意外と思うような人が犯人というパターンや難しいトリックなどは、あまりなかったのかもしれない。
サブタイトルは毎回洒落ている。というかシャレになっているというべきか。今回は音声だけではわからなかったのだが、犯行時に大きく鳴いていた九官鳥ではなく屋根の風見鶏がポイントになるという意味である。風見鶏というキーワードが出てくるのが新十郎の推理が始まってからなので、映像がないとトリックの見当は付けにくい話だった。
新十郎捕物帖 快刀乱麻
本ブログでいつか見たいと書いていた「ゴールドアイ」や「ターゲットメン」などのCSでの放送は実現したが、確実に放送不可能という作品も存在する。フィルムの所在が不明というならば、いつか発見される可能性があるわけだが、70年代前半あたりまでのVTR収録作品はテープが高価であるという理由で、上書きされてしまい映像が消去されてしまった作品が多くあるようだ。
その代表的なものが、ここでも昔取り上げた「新十郎捕物帖・快刀乱麻」(73~74年)である。テープ上書きだと再放送すら出来なくなるので、基本的には初回放送しか見ていない人ばかりのはずである。自分は小学生時代だったが、とにかく面白かったという印象が残っているのみである。
本作は坂口安吾の「安吾捕物帖」を原作とした、明治時代を舞台にした推理ドラマである。タイトルは9話まで「快刀乱麻」だったらしいが、10話より「新十郎捕物帖・快刀乱麻」に変更されている。これは視聴率が低迷していたため、内容を分かりやすくするための措置だったという。
主役の結城新十郎を演じるのは若林豪で、その相棒である荒牧英太郎に尾藤イサオ。コメディリーフ的な存在として植木等(因果)、花紀京(虎之介)、河原崎長一郎(古田巡査)、そして唯一の実在人物である勝海舟に池部良、その愛人が志摩みずえ。とまあ個人的に記憶にあったのはここまでで、忘れていたのが野川由美子(おそよ)、沖雅也(小山田鉄馬)である。共に本作がスタートしてまもなく最終回を迎えた「必殺仕置人」に出演していた。両番組のプロデューサーは共に山内久司であり、その繋がりでの出演だろう。
特に沖雅也は出演してたっけ?という感じだったのだが、どうやら前半1クールのみの出演で、姿を消したようである。沖は「バーディー大作戦」(74年)でも途中で消えてしまっている。
あと、タイトルバックが横尾忠則のイラストだったのも印象に深い。この時代には横尾のタイトルバックは他番組でも見かけている。しかし、そこに流れる主題歌・内田喜郎「少女ひとり」については全く忘れていた。シングルとしても未発売だったようだが、10年くらい前に出た「ちょんまげ天国」という時代劇主題歌を集めたCDに収録されている。
最終回のみ映像は残っているらしく、実際に「テレビ探偵団」で、その一部が流れている。映像は他に存在しないようだが、実は音声のみならば3話ほど動画サイトに挙がっているのだ。フルバージョンなのは25話「空手の約束は空手形」だけだが、それを今回聞いてみた。音声だけとはいえ、レギュラー陣は誰が話しているかはっきりわかるし、十分に面白く約45年ぶりの再会を果たした気がする。この回はゲストについての情報がないのだが、さすがに音声だけでは誰だかは判断つかなかった。
この回に関しては、推理小説ファンじゃなくてもすぐに犯人はわかってしまう。当時の自分の分かったかどうかは何とも言えないが、トリックや犯人捜しについては難しいものではなさそうである。番組のパターンとしては、殺人事件が起きると、まずは因果や虎之介が単純な推理をし、続いて勝がそれよりはまともに見える推理をする。しかし結局は間違っており、最後に登場する新十郎が真相を明らかにする。その過程を楽しむ番組なのである。、
無宿侍
「戦国ロックはぐれ牙」が急遽打ち切りになったため、後番組として放送されることになったのが「無宿侍」(73年)である。慌てて製作されたわけではなく、どうやらお蔵入り状態だったものが陽の目を見ることになった、ということらしい。
とまあ、10年以上前に本ブログで取り上げたときも、同じ流れであった。我ながら長く続けているものである。
確かに急遽製作されたにしては、スタッフにしろ出演者にしろ豪華と言えるので、既に完成していた作品だったと思えば、納得は行く。お蔵入り状態になった事情は不明だが、内容が暗すぎるとかそういうことだろうか。
その内容だが、忍者集団の一員だった主人公がふとしたことから、そこから抜けることを決意。いわゆる「抜け忍」ものである。まあ、我々の世代だとアニメ「カムイ外伝」のイメージであろうか。抜け忍は死ぬまで追われ続けるのである。
主人公ゲン(天知茂)と弥藤次(山崎努)は忍者集団「陰」の一員。しかし、弥藤次は忍びという存在を疑問を感じている。そして村娘さと(宇都宮雅代)との出会いをきっかけに抜け忍となる。追手となったゲンは弥藤次を倒すのだが、「お前は何のために生きているのだ」というような言葉に、ゲンの心にも迷いが生じる。そして「俺はぬけるぞ」と抜け忍の道を選ぶのである。
前回「戦国ロック」が打ち切れれた原因の一つとして裏番組「必殺仕置人」の存在を挙げたが、そちらの主役念仏の鉄を演じていた山崎努がこちらにも登場したわけである。とは言っても「無宿侍」での山崎の登場は実質この1回のみである(死んでしまうので)。後は、回想シーンでちょこちょこ登場するだけである。実はかぶっているのは2話だけで、「仕置人」は最終回を迎えているのである。
さて、ゲンの追手となるのが子作りのために一夜妻となったきらら(松岡きっこ)である。当時のTBS土曜日は22時は「必殺仕置人」、21時は「アイフル大作戦」。松岡は「アイフル」のレギュラーであった。
スタッフに目を向けると企画・プロデューサーに五社英雄。五社は監督も務める。監督は他に田中徳三、土屋啓之助、中川信夫など。脚本は宮川一郎、石川孝人、小山内美江子、鎌田敏夫などである。天知茂、中川信夫、宮川一郎は新東宝つながりであろうか。
1クールではあったが、力の入った番組であったと思われる。丁度今、時代劇専門チャンネルで放送中である(あと2回だが)。未見で興味のある方は今がチャンスである。