2019年回顧録
もたもたしてたら大晦日になってしまった。年内最後の更新は恒例の「2019年回顧録」である。要するに今年亡くなった人を振り返るというものである。カッコ内の数字が亡くなった年齢である。
まずは大女優・京マチ子(95)。黒澤明が大映で撮った映画「羅生門」(50年)の真砂役がまず思い浮かぶが、京はこの時、映画女優としてはまだ実質2年目だった。大映ではデビュー時から主演級だが、「羅生門」への出演はオーディションで勝ち取ったものである。大映社長・永田雅一との噂はあったが生涯独身を通したようである。杉葉子(90)は、第2期東宝ニューフェイス。「青い山脈」(49年)の女学生役で人気を泊した。八千草薫(88)は宝塚歌劇団の出身。57年に黒澤の親友でもあった映画監督の谷口千吉と結婚する。谷口は三度目の結婚で、二番目に妻は前述の「青い山脈」で杉と共に人気を得た若山セツ子だった。谷口側の一方的な離婚だったらしいが、八千草とは50年間死去まで連れ添っている。
記憶に新しいであろう梅宮辰夫(81)。なんと亡くなって8日目に著書「不良役者」が発売されたのである。そこには、今年亡くなった人として内田裕也(79)と萩原健一(68)の名を挙げていた。内田裕也とは共演したことはないが、安岡力也を通じて面識はあったという。妻である樹木希林の死から半年後の死であった。結婚数年で裕也から離婚を持ちかけたこともあったが、彼女が承認しなかったという。
梅宮とショーケンといえば「前略おふくろ様」(75年)であろう。梅宮はここで料理に目覚め、女たらしのプレイボーイ的な役柄から落ち着いた役柄へシフトしていった。前述の「不良役者」では60年に事故死した波多伸二のことにも触れその代役で主演となった「殺られてたまるか」がヒットしたのが役者として転機となったと語っていた。それがデビュー作だった三田佳子とは10作くらいコンビを組むことになったが、実はお互いに好きなタイプではなかったといい、三田の方が「もう嫌です」と言い出しコンビは解消となったらしい。そういえば「前略おふくろ様(第2シリーズ)」には八千草薫も出演しており、このドラマ主演級の3人が同じ年に亡くなったことになる。また、ショーケンの兄役だった生井健夫(89)も今年亡くなっている。
伊藤克(87)という役者を知っているだろうか。自分自身もよく知らなかったのだが、最近たまたま特撮ドラマ「怪獣王子」(67年)の動画を見ており、そこで異星人と闘うレンジャー部隊の隊長・中丸一尉を演じていたのが伊藤だったのである。この番組は9人しか出演者の名前がクレジットされず、しかもたまにしか変更されないため、レンジャー部隊の面々は出番も多いのにほぼノンクレジット状態だった。最後の2話になってやっと伊藤克、山口暁、鎗田順吉の名がクレジットされた。ちなみに山口と鎗田は共に40代の若さで亡くなっている。逆にたいして活躍しないのにトップクレジットだったのが及川広信(84)。主人公タケル少年の父親役だが、パントマイムが専門の舞台役者だったためセリフがうまく言えず、途中から仙波和之のアフレコになったという。番組主題歌を歌っていたのが天地総子(78)。女優・声優としても活躍したが、やはり歌のおねえさんイメージが強い。特にCMソングは2000曲は歌っているという。年またぎでキレが悪いが次回に続く。
さて、今年の更新はこれで終了である。2020年も今年同様、以前取り上げたドラマを再び取り上げることが多くなると思う。
警視庁物語(テレビ編集版)/刑事さん
「警視庁物語」といえば、56~64年にかけて24本が製作された東映の人気シリーズである。実は本作をテレビの尺に再編集して連続ドラマのように放送されたことがあるのだ。本シリーズは長いものでは90分くらいだが、1時間弱の作品が多い。テレビの1時間枠といえば、実質50分程度なので要するに多少カットして放送したものといえる。
67年1月から4月にかけて16作が放送されたが、放送順はかなりランダムである。ほぼ全作に登場するのは堀雄二(長田部長刑事)、花沢徳衛(林刑事)、山本麟一(金子刑事)、神田隆(戸川捜査主任)で、他は時代によってメンバーの変動があり、佐原広二(高津刑事)、須藤健(渡辺刑事)、南廣(北川刑事)、松本克平(捜査一課長)等は比較的長く登場したメンバー。しかし、若手刑事役は2~4作くらいで交替。南原伸二(宏治)、大村文武、波島進、中山昭二、千葉真一ときて、第23作「自供」、第24作「行方不明」(いずれも64年)では、今井健二が三田村刑事を演じている。前回の「第7の男」も64年なので、この辺の今井健二は正義の味方イメージだったのだ。前述のとおり、今井だけでなく神田隆、山本麟一、南原宏治といった悪役イメージしかないであろう面々も、かつては刑事役だったわけである。
テレビシリーズ第1話として放送されたのは第18作「謎の赤電話」(62年)である。数年前に「警視庁物語」の全作品を放送との触れ込みでCS東映チャンネルで本シリーズが放送されたのだが、何故か1作だけ放送されなかったのが、この「謎の赤電話」だったのである。誘拐事件を扱った話だが、そこが関係しているかどうかは不明。単に原版不良とかかもしれない。ちなみに第2話が第14作「聞き込み」(60年)で、第3話は第5作「上野発五時三五分」(57年)というように順不同である。最終話として放送されたのは第2作「魔の最終列車」(56年)で、テレビドラマシリーズと思ってみていた人は混乱した可能性もある。ちなみに、放送されなかったのは、やはり長尺の作品が多い。90分近いものを50分にカットしては話にならない。後はテレビ向きではない作品ということになるのだろうか。
この「警視庁物語」の後番組として放送されたのが「刑事さん」(67年)である。この「警視庁物語」のレギュラーメンバーが当時と同じ役名で新作ドラマとして放送されたのである。映画から引き続き登場してたのが松本克平(捜査課長)、神田隆(戸川係長)、花沢徳衛(林部長刑事)、山本麟一(金子刑事)、そして今井健二だが役名はwikiでは三田村ではなく北川刑事となっている。林も部長刑事になっている。映画での主役・堀雄二はやはりテレビ界では「七人の刑事」の赤木捜査主任のイメージなので、こっちには出にくいであろう。他に新メンバーとして池田駿介、田武謙三、三上真一郎、田畑孝が刑事役を演じたようだ。わずか9話の放送であったが、年明け68年から第2シリーズとして全13話が放送されている。
第7の男 その2
前回の続きである。「第7の男」(64年)が放送されて話題になったのがOPの最後に表示される「ここに登場する物語 場所 並びに人物は全て創作である」という文。要するに「このドラマはフィクションです」に相当する文なのだが、これは「超人バロム1」(72年)が最初であると思われていたからである。
自分も世代だから良く覚えているのだが、この番組の敵役は魔神ドルゲという。これを知った日本在住のドイツ人であるドルゲ氏が「子供がいじめられる」とキー局のよみうりテレビにクレームを入れたのである。当時の報道ではドルゲは苗字で、下の名は日本名だったと記憶しているので、少年はハーフだったと思う。局もすぐに対応し「ドルゲはかくうのものでじっさいの人とは関係ありません」というテロップを挿入するようになったのである。クレームから3か月後にはドラマは終了したが、ドルゲ氏がドラマの終了を迫ったわけではないという。加えて、実際にいじめが起きていたわけではなく、その可能性があるという抗議だったらしい。
いずれにしろ「ドルゲ事件」をきっかけに「このドラマはフィクションです」は決まり事のようになっていく。そのせいか、「バロム1」がそのが元祖と思われていたようだが、その8年も前にこうした表示がされていたことが驚かれたのである。実は「アテンションプリーズ」(70年)にもそのような表示はあったといい、探せばまだまだありそうである。現状、確認されている中では「第7の男」が最も古いようだ。
番組協力に「フォード」と表示されているように、劇中車両はほぼフォードが使用されている。同時代にスタートした「ザ・ガードマン」(65~71年)といえば、パトカーはオペル・レコルトのイメージが強いが、初期はフォード・タウヌスだった。「ガードマン」の話が出たついでだが、今井健二はこの番組では悪役として26回登場しているという。しかし、何故か最終話においては、途中から善玉になりガードマンたちに協力している。
今井健二の本名は今井俊一。デビュー時は本名のままだったが、まもなく俊二を芸名とする。これは名前の最後が「二」の役者が売れていたことに肖ったのかも。ジャンルは違うが、円谷英二も本名は英一だ。今井俊二時代に悪役はほとんどなく、ニューフェイス同期の高倉健とコンビとなる作品もあった。「高度七〇〇〇米恐怖の四時間」(59年)では機長を高倉、副操縦士を今井というコンビで演じている。乗り込んでいた殺人犯を演じた3期ニューフェイス大村文武も含めて三人とも明治大学の出身である。さらに1期ニューフェイスの山本麟一も明治出身。どうやら審査するプロデューサーの一人が明治出身だったことが関係しているらしい。
正確にはわからないが、少なくとも62年までは今井俊二が芸名であった。63年か64年から今井健二となったようだが、この辺りに東映専属から離れたらしい。改名はそれがきっかけかもしれない。しかし、その後も東映作品には変わらず出演し続けている。
第7の男
今井健二と言えば、大物悪役というイメージを持つ人がほとんどだろう。悪役姿しか見たことないという人も多いと思うが、今井もデビュー当初から悪役だったわけではない。それどころか、れきっとした東映ニューフェーイス2期生なので二枚目スター候補でもあったわけである。ニューフェイス同期の高倉健との共演も多かったが、当初はその敵役というわけではなかったのである。
そんな今井が、おそらく唯一主演に抜擢されたドラマが「第7の男」(64年)である。60年代後半にはほぼ完全に悪役と化していた今井なので、二枚目としてはほぼ「晩年」となる作品でもある。長い間、フィルムの所在が不明ということで幻の作品であったが、発見されたということで10年ほど前にCSのファミリー劇場で放送された。
全15話であったが、実は本放送では全13話しか放送されていなかったらしい。ファミ劇で第4話として放送された「香港から来た女」と最終話として放送された「妖精は死の匂い」が当時未放送で、この時が初の放送だった可能性もある(再放送時に放送されたかどうかは不明)。
タイトルは当時人気だった007シリーズを意識してのもので、何が「第7」なのかは不明である。初回のサブタイトルこそ「切り札の7」ではあるが、特に意味があるわけではないと思う。今井演じる主人公の名は葵紳太郎といい、どちらかと言えば時代劇の主人公っぽい。将軍家に縁のあるようなネーミングだ。彼の本職は「コラムニスト」らしい。50年前から存在していた言葉(職業)であることに驚いた。今でいうと泉麻人のような人物が活躍するような物語ということになる。
それが表の顔であることは間違いないが、難事件解決に立ち向かう男という裏の顔については詳細が不明なのである。ある諜報機関に属しているとか、警察の秘密調査官であるといった描写もない。何故かICPOやら警視庁から依頼を受けたりしているのである。主役になりやすい職業の探偵とか事件記者でもなくよくある元刑事という設定かどうかも不明だ。彼の助手(アシスタント)である雨宮早智子に三瀬滋子こと応蘭芳。彼女も東映ニューフェーイス5期生であり、先日亡くなった梅宮辰夫も同期である。東映在籍は二年ほどで、まもなく俳優座に移っている。64年当時は青年芸術劇場に在籍していたようだ。応蘭芳の名は68年ごろから使っているようだ。
東映コンビが主演だが、本作の制作は東北新社とフジテレビである。レギュラーはこの二人だけで、後は準レギュラーである警視庁の島田警部、演じるのは武藤英司、そして恐らくだが警部と一緒にいる若手刑事役の山崎洋(後に猛)。しかし当時20歳のようなので他の役かもしれない(顔が思い出せない)。後はゲストのみであるが、あまり大物役者は出演していない印象。目立つのは後に声優としての活躍が目立つ役者が多いこと。野沢那智、柴田秀勝、森山周一郎、曽我町子、塩見龍介などで、特に第3話には近石真介、増岡弘、神山卓三、立壁和也が名を連ね、マスオさん共演があったりする(初代近石、二代目増岡)。
東京バイパス指令 その2
前回の続きである。「東京バイパス指令」(68~70年)は、そもそも半年の予定でスタートしたということだが、好評だったのか延長となった。
それに伴ってか、成川哲夫(並木刑事)は移動という形で26話を持って降板となった。代わりに登場したのが永井譲磁(喜多刑事)と29話より登場の柴田侊彦(佐野刑事)である。永井は竜雷太より1歳年長だが、役者としては後輩。「波の会」という演技者集団で一緒に活動していたという。「おはようこどもショー」(65~80年)の初期に体操のおにいさんとして出演していたようだが、彼を見た記憶はない。いや、年齢的にも見ていた可能性はあるが石川進と楠トシエとロバくん(演・愛川欽也)くらいしか覚えていないのだ。本作への出演は竜の後押しがあったと言われる。
柴田侊彦は当時26歳。俳優座花の15期生の一人である。父は潮万太郎、姉は弓恵子、兄は柴田昌宏という俳優一家である。兄の昌宏は「青春とはなんだ」「これが青春だ」「でっかい青春」で生徒役をやっており、夏木や竜とも関係が深いが、侊彦も「青春とはなんだ」や「太陽野郎」等にゲスト出演している。永井も柴田も並行して放送されていた「東京コンバット」にもゲスト出演している。
個人的には、本作に関しては永井や柴田のことが記憶に残っている。二人の肩書は「連絡員」ではなく先輩二人と同じ「潜入捜査官」なので、よりドラマに絡んでいたと思われる。その分、印象に深いのかもしれない。
丸一年52話が放送されたところで、さらに延長となり、その影響で「東京マスコミ研究所」は閉鎖となり宮口精二(椎名警視)も本庁へ戻るという名目で降板となった。トップ屋役で出演していた藤木悠はスナック「POLLO」のマスターへと転職。永井と柴田も登場しなくなる。代わりに登場するのが人気歌手だった西田佐知子(二宮刑事)である。歌手がドラマに出演するのは珍しくはないが、彼女の場合はほとんどドラマ出演がない。出演の経緯は不明だが、アクションドラマというのも当然、初めてだったと思われる。番組終盤は夏木、竜、西田のトリオ体制での活躍だったと思われる。残念ながら、自分は彼女の出演シーンの記憶は全くない。71年に西田佐知子は関口宏と結婚し、仕事をセーブするようになたため、この後のドラマ出演もほとんどない。ただ、「夫婦学校」(71年)、「夫婦日記」(73年)という単発ドラマにいずれも夫婦で出演している。どちらも夫婦の役のようだ。
本作は全65話で終了。最終話には永井と柴田も登場しているようだ。この後番組が、ここでもよく取り上げる東映制作の「ゴールドアイ」(70年)である。
東京バイパス指令
「東京コンバット」がスタートしたのは、68年10月1日なのだが、翌11月の8日にスタートした刑事ドラマが「東京バイパス指令」である。どちらもタイトルに「東京」がつくのだが、制作は共に東宝である。何故かこの時期の東宝は刑事ドラマを2本平行して制作していたわけである。
もちろん、こちらも東宝スターが主演である。「青春とは何だ」の夏木陽介と「でっかい青春」の竜雷太の青春先生コンビが潜入捜査官に姿を変えるのである。夏木は南郷警部、竜は槙警部補。当時の実年齢はそれぞれ32歳、28歳なので中々のエリートである。そういえば、竜雷太は「太陽にほえろ」でゴリさんを10年に渡って演じていたが、昇進することはなくずッとヒラ刑事だった。殉職して2階級特進したかもしれないが、それでやっと警部補である。
個人的に「東京コンバット」と大きく違う点は、何と言っても「バイパス指令」の方は見たことがあるという点だ。とは言っても最後に見たのはおそらく40年くらい前だったと思う。中身はほぼ覚えていないに等しい。しかし本作は、どうやらスカパー開局直後に放送されたらしい。自分はスカパーに加入して20年弱くらいになると思うが、その間は間違いなく放送されていない。
潜入捜査官と書いたが、普段の彼らは「東京マスコミ研究所」の所員でルポライターをやっていることになっている。ゆえに拳銃はもちろん、警察手帳すら持っていないのである。その所長が宮口精二で、正体は彼らの上司である椎名警視だ。宮口といえば「七人の侍」の久蔵役で知られるが、東宝の俳優だったわけではない。所属は文学座で退団したのは65年のこと。この当時は東宝演劇部に1年ごとの契約で本作などに出演していたようだ。南郷や槙からはボースン(水夫長)と呼ばれていたらしいが、それは黒澤映画つながりで「天国と地獄」で田口部長刑事(石山健二郎)がそう呼ばれていたのを拝借してきたのだろう。どこかの本で椎名部長刑事となっていたが、部長刑事(=巡査部長)だと彼らの部下になってしまうので間違い。刑事部長なら別だけれども。さらにその上には清水将夫演じる木村警視監もいる。この人は「ザ・ガードマン」でも宇津井健演じる高倉キャップの上司である三原チーフという役であった。番組初期に数回登場しただけであったけれども、本作でも似たような感じなのだろうか。
他のレギュラーは「スペクトルマン」で知られる成川哲夫(並木刑事)。南郷や槙との「連絡員」となっているので活躍の場面は少なそうである。本作が正式なデビュー作となっているが、26話で移動という形で降板した。それからまもなく東宝も退社しているようだ。
「東京マスコミ研究所」の一階はスナック「POLLO」となっており、白川由美(タキ)と柏木由紀子(ユキ)の姉妹が切り盛りしている。ただ、白川は20話くらいで姿を消してしまったようだ。ところで、この「POLLO」は夏木が資材を投じて開いた実在の店だったという。次回に続く。
東京コンバット
前回の「秘密指令883」と近い時期に作られ、やはり五人の刑事が活躍するのが「東京コンバット」(68~69年)である。ここで取り上げるのは3度目になるようだが、前回は2010年なのでほぼ9年ぶりということになる。その間に本作の情報に関して進展があったかと言えば、全くない。一度も目にしたことのない番組という状態が今も続いているわけである。
米の戦争ドラマ「コンバット」から発想されたわけではなく、この年警視庁内に特殊犯罪捜査班「コンバットチーム」が結成されたのをモデルに製作されたようだ。タイトルからすると激しい銃撃戦をイメージしてしまうが、基本は科学捜査が主体のようである。
とは言え、やはり銃撃戦や激しいアクションもあったようで、主演の三橋達也(三村警部)などは早撃ちのシーンがあることが魅力で本作の出演を引き受けたと言われる。他の出演者だが、佐藤允(江藤警部補)、山口崇(宅警部補)、前田吟(桜井警部補)、山下洵一郎(木津川警部補)がメインキャスト。全員警部補以上に設定されているので、エリート集団ということになるのだろうか。一番若く今も活躍している前田吟は当時24歳であり、完全なキャリア組ということになる。無論、実年齢イコールではないし、前田は若い頃からほとんど印象が変わらなく当時は老けて見えた方だと思われるので、設定年齢は上だったかもしれない。
「秘密指令883」にも出演していた山下洵一郎がこちらにも5人のうちの一人として登場。大映の所属だった山下だが、本作は東宝の製作である。はっきりとは言えないが、「883」の後、大映を退社しているようだ。刑事役が続いた山下だが、70年代に入ると悪役がほとんどとなる。
山口崇は当時32歳。それなりに人気俳優ではあったと思うが、ブレイクといえるのは翌70年からではないだろうか。「大岡越前」の徳川吉宗役、「柳生十兵衛」で主役の十兵衛を、「天下御免」で平賀源内役と立て続けに時代劇で人気役を演じることになる。
三橋と佐藤は東宝のスターだったが、他にも藤田進(内田刑事部長)、船戸順(和田鑑識課員)、久我美子(三村の妻)、菱見百合子(里見ユリ)といった東宝スターたちもレギュラーとして出演していたようだ。菱見は後期(21話)からの出演で「ウルトラセブン」で既に人気を得ていた時期である。
全38話、3クールに渡って放送されたので(休止も多く放送期間は1年)人気はあった方だと思われる。おそらくだが、最低でも40年くらいは日の目を見ていないのではないだろうか。映像が残っているか否かは謎だが、あると信じて待つしかない。
秘密指令883
さて、今回は前回までとガラリと変わってアクションドラマである。60年代後半~70年代に流行った特殊捜査官ものとでもいうのだろうか、その中から「秘密指令883」(67~68年)である。10年以上前だったと思うが、一度CSで放送されている。
これは警察最高首脳より秘密指令を受け、あらゆる現代の悪に挑戦する5人の秘密調査官・シークレットマンの物語である、というようなナレーション(大平透)がOPにあったりする通り、シークレットマンというのが彼らの名称である。883って何だという話だが、5人の中のリーダーの名が速水四郎。だから883である。フルネームだと88346ということになるのだろうか5ケタでは長すぎる。長くても「海底人8823(ハヤブサ)」のような4ケタまでだろう。どちらも大映テレビ室の制作である。しかし、次回予告のナレーションでは「秘密指令ハチハチサン」と発音しており、だっちなんだいということになっている。
その速水を演じるのが川口浩である。当時31歳と若いが、他のメンバーは彼よりも年下が選ばれている。本郷功次郎(野津隼人)、山下洵一郎(白戸譲二)、新克利(神坂京介)、力石勝彦(蒲生達夫)の4人はいずれも20代だったが、最終回直前に本郷は30歳に、山下は29歳になっている。
前述のとおり大映テレビ室の制作なので、川口、本郷、山下という大映スターが起用されている。同じ大映テレビ室制作の「ザ・ガードマン」(65~71年)では宇津井健、藤巻潤、倉石功といった大映スターが人気となり、映画では脇役だった中条静夫も40歳を過ぎてから人気を得ている。「883」もそれを狙って始まったのかもしれないが、いかにも短命に終わりそうな雰囲気が漂っているに感じてしまう。
正確には川口浩は62年に一度引退し実業家転身を図っているのである。本作は俳優に復帰したばかりの作品でもあったのだが、半年足らずの19話で本作は終了してしまう。しかし川口は東映の人気ドラマ「キイハンター」に69年よりレギュラー入りしている。
さて、この中で謎の存在だったのが力石勝彦。このメンバーでは一番の若手だったはずだが、役者としての活動記録は本作のみ。長身でいい男ではあったが、演技がヘタなのは素人目にもわかった。今回、改めて調べてみると「メンズクラブ」などで活躍した人気モデルだったようだ。しかも、50年以上経ったいまでも現役モデルとして活動中のようである。画像を見る限りでは、おそらく70代であろう現在でもスラリとした体型が維持されている。役者は一作で見切りをつけたようだが、歌のCDなども出しているようである。
「秘密指令883」という番組自体知っている人は少ないと思うが、モデルの世界では力石勝彦の名は有名なのだろう。
おこれ!男だ
自分がリアルタイムで見ていた番組というのは、それだけで人気があったと思ってしまうのだが、実際は今一つだったというのが「おこれ男だ!」(73年)である。これは森田健作が日テレの日曜20時に返り咲いた番組でもある。時系列でいうと「おれは男だ」→「飛び出せ青春」→「おこれ男だ!」という流れになっている。本作の売りは森田健作だけでなく、もう一人の青春人気スター石橋正次とのダブル主演というところである。石橋は「飛び出せ青春」からの連投ということになる。当時、森田は23歳、石橋は24歳だが見ている方はずっと高校生のイメージがあるので急速に老けない限りは無問題である。
ただ、本作の舞台は学校よりも「望洋塾」という私塾である。身寄りが無い者、家を出た者などを受け入れる施設のような所だが、まあ学生寮のうような感じである。その塾長・吉田松造が内藤武敏、長女冬子が佐藤オリエ、次女夏代が蕭淑美(シャオ・スーメイ)、三女千春が石崎恵美子である。蕭淑美の詳しいプロフィールはわからなかったが、名前からして中国あるいは台湾系の人であろう。おそらく羽仁進監督の「午前中の時間割り」(72年)という映画がデビュー作となるようだ。この後は丘淑美と名前を変え、「俺たちの旅」などに出演。80年頃までは活動していたようである。
物語は森田扮する江藤太一が入塾するところから始まる。塾生は何故か同級生が多く、そのボス的存在が石橋扮する土方俊夫である。他の塾生の顔ぶれだが、赤塚真人(坂本兵馬)、江藤潤(高杉一作)、沖正夫(山県三平)、千葉裕(西郷四郎)で彼らはみんな同級生。そして一学年下の小田錦之助(大久保弘)である。わかると思うが登場人物の役名は幕末に活躍した維新志士から取られている。
赤塚真人、沖正夫(=森川正太)、千葉裕は青春ドラマの常連。沖は「おれは男だ」「飛び出せ青春」そして本作とすべてにレギュラー出演している。千葉は映画版「ハレンチ学園」では山岸を演じている。子役時代には「ウルトラマン」でピグモンの中に入っていたこともある。江藤潤はデビューしたばかりで、レギュラードラマは本作が初のようである。小田錦之助に関しては詳細不明だが、69年から本作にかけてドラマの出演記録がある。個人的には進士晴久によく似ていると思っていた。
ドラマはほぼ、この塾生たちを中心に展開し、森田、石橋以外が主役となる回もある。最終話では太一が唐突に故郷に帰ることになり、最後に恩返しをしたいと考えたのが長女冬子の幸福であった。大雑把にしか覚えていないが、その過程で何故か土方が崖から飛び降りて大けがしてしまう。石橋のスケジュールの都合なのだろうが出番が少ない。船で去っていく太一を塾生たちが見送るが土方の姿はない。崖の上に松葉杖姿の土方が駆け付けた時は、船は既に遠くに見えていた。海に向かって「バカヤロー」と叫ぶ土方でエンドである。最終回でありながら、妙にスキッとはしない終わり方なのだ。打ち切りっぽくもあるが、野球中継もからみ全22話で9月いっぱいで終了なので、予定通りだったともいえる。プロデューサーの岡田晋吉は成功したとは言い難い、というような言い方をしている。しかし、個人的には好きな作品であったことは確かである。
青春をつっ走れ
青春ドラマといえば、森田健作を思い出す人も結構いるのではないだろうか。彼が千葉県知事になってもう三期10年になるらしいが、先日の台風での対応のまずさから四期目はないだろうと言われている。それはさておき、大抵の人は森田健作ドラマといえば「おれは男だ」(71~72年)を思い浮かべるだろう。「青春をつっ走れ」(72年)が最初に来る人というのは少数派といえよう。
約1年続いた「おれは男だ」の終了から1カ月半、放送局を日テレからフジに移し、ヒロイン役に「アテンションプリーズ」などで人気のあった紀比呂子が抜擢され、タブル主演だったといえるかもしれない。
進学校の渚高校に転校してきた主人公の大次郎(森田)が男子バレー部を結成する。初回では大次郎を含めて五人が集まる。クラスメートの鍋谷孝喜と小林文彦。鍋谷は「おれは男だ」からの続投で、小林は「ハレンチ学園」の山岸である。小林は当時15歳だったが、高校三年の役である。後輩の1年生が二人、川代家継と郷ひろみである。郷は歌手デビュー前だったが、ある程度の人気はあったようだ。本作の放送中に歌手デビューしている。当時16歳で役柄通りだが、小林より年上である。女子バレー部のキャプテンが紀比呂子で、他の部員が大和撫子、大谷照代、高橋みつ子、林由里など。林は「魔神ハンターミツルギ」でヒロインとして活躍している。
他の出演者だが、バレー部顧問が松本留美、郷ひろみの姉が熱田洋子、ライバル東南高の部員が仲雅美、渚高の教師が砂川啓介、浅茅しのぶ、教頭先生が財津一郎、道徳教師で住職が笠智衆、その息子でバレー部のコーチとなるのが森次浩司、大次郎の伯父が森川信、大次郎の父が菅原謙次などである。
第2話で六人目の部員となるのが高田直久。3話に登場する東南高のキャプテンが三崎玲資こと速水亮である。速水や熱田洋子は大映の出身。菅原謙次は大映のスターだった人。高田直久は大映映画「片足のエース」の主人公を演じており、松竹作品だが、前年に倒産した大映の関係者が多い。
何故かこの番組は途中降板が多い。森川信は亡くなったので仕方がないが(8話より江戸家猫八に交替)、熱田洋子は9話より沢久美子に、松本留美も13話より高林由紀子に変更となっている。
結構、豪華な出演者だったと思うのだが本作は18話にて終了。次番組の「あしたに駈けろ!」わずか8話で終了したところを見ると合わせて26話。前者は打ち切り後者はそのテコ入れだったと予想される。「あしたに駈けろ!」の次番組が先日ここで取り上げた「泣くな青春」なのである。
人気者を揃えながら長続きしなかったのは「泣くな青春」と同じ理由が成り立つ。強力な裏番組、つまり「水戸黄門(第3部)」「大岡越前(第3部)」がそれである。