おこれ!男だ
自分がリアルタイムで見ていた番組というのは、それだけで人気があったと思ってしまうのだが、実際は今一つだったというのが「おこれ男だ!」(73年)である。これは森田健作が日テレの日曜20時に返り咲いた番組でもある。時系列でいうと「おれは男だ」→「飛び出せ青春」→「おこれ男だ!」という流れになっている。本作の売りは森田健作だけでなく、もう一人の青春人気スター石橋正次とのダブル主演というところである。石橋は「飛び出せ青春」からの連投ということになる。当時、森田は23歳、石橋は24歳だが見ている方はずっと高校生のイメージがあるので急速に老けない限りは無問題である。
ただ、本作の舞台は学校よりも「望洋塾」という私塾である。身寄りが無い者、家を出た者などを受け入れる施設のような所だが、まあ学生寮のうような感じである。その塾長・吉田松造が内藤武敏、長女冬子が佐藤オリエ、次女夏代が蕭淑美(シャオ・スーメイ)、三女千春が石崎恵美子である。蕭淑美の詳しいプロフィールはわからなかったが、名前からして中国あるいは台湾系の人であろう。おそらく羽仁進監督の「午前中の時間割り」(72年)という映画がデビュー作となるようだ。この後は丘淑美と名前を変え、「俺たちの旅」などに出演。80年頃までは活動していたようである。
物語は森田扮する江藤太一が入塾するところから始まる。塾生は何故か同級生が多く、そのボス的存在が石橋扮する土方俊夫である。他の塾生の顔ぶれだが、赤塚真人(坂本兵馬)、江藤潤(高杉一作)、沖正夫(山県三平)、千葉裕(西郷四郎)で彼らはみんな同級生。そして一学年下の小田錦之助(大久保弘)である。わかると思うが登場人物の役名は幕末に活躍した維新志士から取られている。
赤塚真人、沖正夫(=森川正太)、千葉裕は青春ドラマの常連。沖は「おれは男だ」「飛び出せ青春」そして本作とすべてにレギュラー出演している。千葉は映画版「ハレンチ学園」では山岸を演じている。子役時代には「ウルトラマン」でピグモンの中に入っていたこともある。江藤潤はデビューしたばかりで、レギュラードラマは本作が初のようである。小田錦之助に関しては詳細不明だが、69年から本作にかけてドラマの出演記録がある。個人的には進士晴久によく似ていると思っていた。
ドラマはほぼ、この塾生たちを中心に展開し、森田、石橋以外が主役となる回もある。最終話では太一が唐突に故郷に帰ることになり、最後に恩返しをしたいと考えたのが長女冬子の幸福であった。大雑把にしか覚えていないが、その過程で何故か土方が崖から飛び降りて大けがしてしまう。石橋のスケジュールの都合なのだろうが出番が少ない。船で去っていく太一を塾生たちが見送るが土方の姿はない。崖の上に松葉杖姿の土方が駆け付けた時は、船は既に遠くに見えていた。海に向かって「バカヤロー」と叫ぶ土方でエンドである。最終回でありながら、妙にスキッとはしない終わり方なのだ。打ち切りっぽくもあるが、野球中継もからみ全22話で9月いっぱいで終了なので、予定通りだったともいえる。プロデューサーの岡田晋吉は成功したとは言い難い、というような言い方をしている。しかし、個人的には好きな作品であったことは確かである。