隠密剣士(荻島真一版) | お宝映画・番組私的見聞録

隠密剣士(荻島真一版)

今回も引き続き「隠密剣士」である。「新隠密剣士」は65年いっぱいで終了したのだが、それから八年たった73年に新たな「隠密剣士」が製作されたのである。タイトルはかつてと同じシンプルに「隠密剣士」だ。しかし主演は大瀬康一ではなく、荻島真一である。荻島は当時27歳で、デビューからは約二年の若手二枚目役者であった。
スタッフも企画に前作同様に西村俊一の名はあるが、この時の西村はもう宣弘社の人ではなく番組制作会社C.A.Lに移り「水戸黄門」などを手掛けヒットさせていた。ゆえに脚本も伊上勝ではなく、葉村彰子が起用されている。知っている人も多いと思うが、葉村彰子とは個人名ではなく脚本家集団のペンネームである。クレジット上は制作は宣弘社で、制作協力が東映京都制作所となっているが、事実上は東映主導で制作されていたという。前作の監督である船床定男は前年の72年に亡くなっているが、健在でも起用されなかったのかもしれない。
TBSプロデューサーだった橋本洋二は、特撮などを入れないと今の時代では難しいと考えていたが、「水戸黄門」などを成功させた自負からか西村は反対し、昔通りのスタイルで望もうとしたのである。
主人公である荻島の役名は松平信太郎といい、いかにも将軍家に関わりのありそうな名前だが実際そうであり、家康の長男・信康の落胤という設定だ。主役は変わったが、変わらず出演するのは牧冬吉と天津敏である。役どころは前作と同じようなものだが、牧が演じるのは遁兵衛ではなく賀夜猿といい、天津は敵(赤目党)の首領・赤目幻幽斎を演じる。
ヒロインとしては吉沢京子が4話まで出演、7話からは松平純子が出演する。松平は俊藤浩滋がスカウトして72年に東映入りした女優である。自分の娘である藤純子と同じ純子の名前を芸名に与えるくらい期待していたと思われる。第5話には水島道太郎、和崎俊哉、横光克彦、中田喜子と豪華ゲストが顔を並べている。
敵である赤目党忍者を演じたのは泉晶子、小田部通麿、西田良、汐路章、内田勝正、江幡高志、楠本健二、出水憲司、宍戸大全、五味龍太郎と普通に時代劇で悪役で見かける面々である。
とまあ、東映版の「隠密剣士」といった本作なのだが、視聴率は芳しいものではなく路線変更を迫られることになったのである。橋本が危惧していたとおり、この時代には向かなかったのである。