ローンウルフ 一匹狼
「悪の紋章」(65年)は、天知茂演じる元刑事が自分を罠にはめた者たちに復讐するという話だったが、罠におちた天知茂が一人で巨悪に立ち向かっていくというパターンのドラマは他にも存在する。
「ローンウルフ 一匹狼」(67~68年)でも、拳銃を奪われ妻が失踪し、本人は免職されるという元刑事を演じているのだ。天知演じる警視庁の敏腕刑事・響は仕事の鬼であり、妻・冴子(野際陽子)との仲は冷え切っていた。そんな中、響きは自宅で冴子が見知らぬ男と争っているのを目撃、男と揉み合いになるが拳銃が暴発し、冴子が被弾、動揺したところを殴打され気を失ってしまう。拳銃を奪われたことで響は懲戒免職になり、入院中の冴子も姿を消してしまう。響きは奪われた拳銃と失踪した妻を追う、というのが大雑把なストーリーだが、全39回の長丁場である。元刑事ではあるが、探偵でも秘密調査員でもない響が色々な事件に首を突っ込んでいくのである。
天知がバーで飲んでいるOPしか見たことがなかったので、探偵ものかなと単純に思っていた。天知と野際以外のレギュラーはバーのマダム(瞳麗子)、冴子の妹(城野ゆき)、かつての後輩である荒木刑事(今井健二)、そしてかつての上司である小田切警部(丹波哲郎)等である。小田切や荒木は響に協力的であるようだ。悪役のイメージしかないであろう今井健二もこの頃はまだ刑事役などをやっていたのだ。前に東映はタチバナ(立花、橘)が大好きと書いたが、小田切も好きなようである。「キイハンター」では中丸忠雄、「Gメン75」では夏木陽介が「小田切」を演じている。
丹波と野際といえば「キイハンター」がすぐ思い浮かぶだろうが、この「ローンウルフ」が放送中の68年4月よりスタートしている。キイハンターのメンバーとなる大川栄子や川口浩、仲谷昇もゲストで出演している。同じ東映製作で、スタッフも近藤照男、深作欣二、佐藤純弥などが共通している。
丹波と天知といえば、共に新東宝出身。新東宝時代は二人とも悪役が多かった。天知は新東宝スターレット1期生だが、同期である小笠原弘、松本朝夫もゲスト出演している。そして、真理明美、八代万智子、高毬子、西尾三枝子、緑魔子といった後の「プレイガール」メンバーも顔を出している。
あらすじを見る限りでは、響と冴子は何度もニアミスを起こすが、結局彼女が逃げてしまう。37話で奪われた拳銃は発見され、ラストの38、39話は前後編となっている。番組終盤にモナジェリアという新興国(もちろん架空の国)の解放戦線が登場するのだが、実はこれが冴子失踪の大きな理由であったことが判明するという意外な展開が待っているようだ。