お宝映画・番組私的見聞録 -256ページ目

東から来た男

ギターを持った男がふらりと街に現れる。というと日活の渡り鳥シリーズみたいだが、東宝がそれを意識して作ったのが「東から来た男」(61)である。主演は「若大将シリーズ」に入る直前の加山雄三で、さわやか路線ではなく、ボクシングの試合で相手を殺してしまったという暗い影を背負った男を演じている。渡り鳥シリーズのような無国籍な雰囲気ではなく、リアルに貧しい地域が舞台である。そこに住み付き、地域に迫った危機を救い、またいずこへと去っていくという話だ。出演者だが、大坂志郎、船戸順、柳沢真一、佐原健二などのほか、人情警官役に桂小金治、勇少年に「天国と地獄」で誘拐される少年を演じる島津雅彦、悪党役にはお馴染みの安倍徹、その用心棒であるボクサーくずれが佐藤允、そして加山といえばヒロインは星由里子、その弟役が矢代和雄といった面々である。この矢代和雄という人は割合二枚目の青年だが、映画出演記録がほとんどないので、すぐに引退した人かと思って調べると名前を変えていた。八代駿、03年に亡くなったが仮面ライダーの怪人役など独特な声の声優であった。この映画を見て同一人物だと気づく人はまずいないだろう。

花の特攻隊 ああ戦友よ

杉良太郎は映画スターではない。テレビと舞台のスターである。もともと65年に歌手としてデビューしているのだが、ヒット曲は「すきま風」くらいしかない(と本人もショーなどでネタにしているらしい)。ある筋では有名な「君は人のために死ねるか」という名曲もあるけれども。66年にドラマ「燃えよ剣」で沖田総司役に抜擢され、翌年の「文吾捕物帳」でほぼスターの座をつかむ。一方で日活俳優としてに十数本の映画に出ているが、もっぱら準主役で主役はあまりないのである。しかも日活退社後、約30数年映画には出演していないようである(出ていたらすいません)。「花の特攻隊 ああ戦友よ」(70年)は、そんな杉の主役映画である。原作はあの川内康範で、まあ正統派の戦争映画といった作品である。内容はさておき、出演者が豪華なのである。ヒロインは和泉雅子で、他に浜田光夫、藤竜也、梶芽衣子、岡崎二朗、長谷川明男、川口恒、沖雅也、三ツ木清隆、内田良平、玉川良一などに加え、ほとんど日活のイメージがない丹波哲郎、南原宏治、曽根晴美などが出演している。特に曽根晴美なんか東映以外だととても違和感がある。これは杉良ほぼ最後の映画出演作なのだが、映画には興味がないのだろうか。別にいいのだけれども。

天国と地獄

「天国と地獄」(62年)といえば、超メジャーな黒沢映画の一本だが、前項で名前が出たのでついでに取り上げてみたい。この映画、前半の誘拐から子供の帰還までと後半の犯人捜査から逮捕までと、ガラリと雰囲気が変わる。あくまで個人的意見だが、前半の息詰まる展開に比べると後半は間延びした感じがしてしまう。捜査会議とか妙に細かいし、山崎努が夜の街をさまようところとか長いよとか思ってしまう。まあ、そこを差し引いても面白いけれども。ところで、この作品で一番黒沢に絞られたのは、田口部長刑事役の石山健二郎と運転手青木役の佐田豊だったそうである。石山は大ベテランだが、もっぱら舞台の人でどうしても「芝居がかった芝居」になってしまい黒沢に散々注意されたようである。たとえベテランでも容赦しないのが黒沢流であるということか。佐田は沢山の黒沢作品に出ているが、ほとんどがチョイ役である。それが、間違って誘拐される子供の父親という大役にいきなりの大抜擢。やはり黒沢にことあるごとに叱責されたそうである。後に佐田は「あの役は私には重過ぎました」などと語っている。目立たぬ役でも満足していたのであろうか。一方ほぼ新人であった山崎努には、ほとんど注文をつけず自由にやらせていたという。両極端だが彼らの評判は上々だったそうである。

恐怖の時間

黒沢映画「天国と地獄」(62年)の犯人役で脚光を浴びた山崎努だが、その後同じような役ばかりきてイヤになったと語っているが、まさにそのような役を演じているのが「恐怖の時間」(64年)である。原作は「天国と地獄」と同じくエド・マクベインの小説で、しかも加山雄三を差し置いて主役である。恋人の圭子(田村奈巳)を山本刑事(加山)に射殺された次郎(山崎)が、山本を殺そうと拳銃とニトロを持って刑事部屋に立てこもるというストーリーである。しかし山本は中々戻って来ず、中にいる刑事たちと緊迫したやりとりを繰り広げる。こういったシチュエーションは「大都会PARTⅡ」でも見たことがある。さて、刑事たちに扮するのは黒沢映画の顔・志村喬に土屋嘉男、まだウルトラマンになる前の若き黒部進、時代劇では悪徳商人が多い富田仲次郎、そして係長役に「天国と地獄」で間違って子供を誘拐される運転手を演じた佐田豊という面々だ。他にも逮捕された女(小林哲子)や取材に来た新聞記者(小山田宗徳)も事件に巻き込まれる。圭子は貧しさから麻薬の密売に手をそめており、現場を押さえようとして同僚刑事が撃たれたため、山本は威嚇のつもりで発砲したところ圭子に当たってしまったというものであった。山本も一応は圭子を殺してしまったことを悔いているのだが、妻とレストランで食事を取ったりと、当時の加山がやるとあまり悔いてるようには見えない。ちなみに妻役が星由里子で若大将シリーズでは恋人どまりの二人が夫婦だったりするのだ。山本が署に戻ってこないので、見ているほうも次郎同様イライラする展開なのだが、結局戻ってきた時には事件は解決しているのである。つまり二人は顔を合わせることはなく、山本も何が起こったか知ることなく映画は終わる。ストーリー展開的にはこれでいいと思うのだが、何かすっきりしない感じのする作品である。

戦艦大和(53)

戦争映画はあまり見ないほうなのだが、この「戦艦大和」は時代も53年と古く、あの新東宝作品ということで見てみたのだが、一言でいえば「良くできている」といったところであろうか。新東宝といえば、エログロ映画のイメージが強いがこうした真面目な戦記物も何本か作っている。特撮部分も、この数年後に作られる「スーパージャイアンツ」シリーズの稚拙なイメージを予想してしまったのだが、そんなことはなく50年以上前でしかも新東宝の作品にしては素晴らしいといっていい出来である。ちなみに特撮スタッフには「マグマ大使」の合成作画の渡辺善夫や「怪獣王子」「スペクトルマン」などピープロ作品の監督である土屋啓之助の名が見える。この作品は吉田満の戦記が原作となっているが、吉田は大和乗組員の生き残りで、映画では舟橋元が彼の役回りだ。もう一人生存者の能村次郎副長もスタッフに名を連ねており、映画では藤田進が演じている。舟橋元といっても、私には「赤影」に出てくる黒蝙蝠という忍者のイメージくらいしかないが、74年に43才の若さで急逝していた。なじみが薄いはずである。他の出演者は伊藤艦隊指令に高田稔、有賀艦長に佐々木孝丸、乗組員に中山昭二や高島忠夫の新東宝勢、ちらりと出てくる女優陣は久我美子や山田五十鈴の娘・嵯峨美智子などである。あと冒頭で会議をしている参謀たちにはこの翌年「七人の侍」となる宮口精二、十朱幸代の父・十朱久雄、そして後の花山大吉こと近衛十四郎などがひっそりと顔を見せている。

青春大統領

前項の「おやじ太鼓」で、あおい輝彦がジャニーズ解散後の初ドラマ出演と書いてふと思ったのだが、そういえば動いているジャニーズを見た記憶がないなあと。まあ自分が小学校に入る前に解散(67年)しているし、ドラマや映画でも見かけたことがなかった。そんなタイミングでCSで放映されたのが、この「青春大統領」(66年)である。あおいの他、飯野おさみ、中谷良、真家ひろみの四人がそろって出ている映画は他にもあるようだが、「ジャニーズ」として出ている映画はこの作品くらいだ。といっても主役は大スター石原裕次郎で、浅丘ルリ子がジャニーズのマネージャー役、他に二谷英明など日活映画お馴染みの面々の中で、ジャニーズの四人も頑張っているなあという感じの作品で、アイドル映画ではなくあくまでもアクション映画だ。ちなみにあおいは説明不要の活躍中で、飯野は舞台を中心に活動中だが、中谷は十年ほど前だったか「ジャニーズの逆襲」なる本を出したりしていたが今はよくわからない。真家は当初はタレント活動していたようだが、後にタクシー運転手に転身し、それが話題になったりもしたが、数年前53歳で急逝した。白髪に白ヒゲともっと老けて見える印象であった。彼らを発掘したのが、ジャニー喜多川でその後ジャニーズ王国を築いていくのである。

おやじ太鼓

60年代から70年代にかけて、「木下恵介アワー」という枠があったが、当時子供の自分が見るようなドラマはなかったと思ったら、一つだけ見ていた(再放送だったけれども)。それが「おやじ太鼓」(68年)である。進藤英太郎扮する超頑固おやじ(鶴亀次郎)一家を描いたホームコメディである。最近CSで始まったので、見てみるとかなり自分の記憶と違っている点があった。家族は妻(風見章子)と息子四人だけだと思っていたのだが、他に娘が三人いた。つまり七人兄弟だったのだ。自分が覚えていたのは長男の園井啓介、三男の津坂匡章(現・秋野太作)、四男のあおい輝彦くらいで次男役は知らない人だと思っていたが、実際よく知らない西川宏という人だった。娘は長女の香川美子、末娘の沢田雅美はわかるが、次女役の高梨木聖という人はその顔も名前もまったく記憶になかった。他に香川の恋人役で竹脇無我、鶴家の使用人役で菅井きんといったところが出ていた。園井は60年代のスターだったが、脱税事件で捕まり70年代初頭に芸能界を去った。これが現代なら復帰できたかも知れないが…。西川も70年代初頭あたりまでしか出演記録がない。津坂は誰も名前を正確に読んでくれないということで(私も読めなかった)、津坂まさあき→秋野太作と名を変え現在も活躍中だ。「ジャニーズ」のメンバーだったあおいはこれが俳優デビュー作で、覚えやすい主題歌も彼が歌っている。ちなみに、この歌を作った木下忠司は恵介の実弟である。今白黒で放送されているのだが、私の記憶ではカラー番組だったと思っていたのだが、途中で変わるのだろうか。全65話ということで、かなりの人気作だったようだが、調べてみる一度39話で終了しており、半年後にまた26話が放送されている(この時カラーになるのかも)。さて主役の進藤はほとんど悪役専門で、初めてお茶の間に受け入れられる役だったそうである。

剣道一本

今回はスポ根ものである。大映テレビのスター候補生、当時二十歳だった三浦友和の初主演作が「剣道一本」(72年)である。タイトルからして、この年に放送を終了していた「柔道一直線」の剣道版といった感じの作品である。実際「柔道」における吉沢京子のポジションが中田喜子、高松英郎のポジションが中谷一郎といったぐあいである。オープニングの壁を突き破る所とかも一緒である。他の出演者が「新・三匹の侍」の高森玄、当時の青春ドラマでキャプテン役の多かった(印象の)亀谷雅彦、生徒役の常連であった沢田勝美などである。しかし以前「クラスメートー高校生ブルースー」の項でも書いたが、沢田の名前はない。で今回一致したのが鷹市太郎という名だ。この頃は鷹市太郎名義で活動していたようだ。それにしても勝新太郎の息子(鴈龍太郎)のような名前だ。ちなみに沢田は後に「三浦友和と仲間たち」のメンバーとなる。この番組の挿入歌「剣道仲間」の作詞補に鷹市太郎の名がクレジットされている。さて、この番組を契機に友和はスターへの道を駆け上ったかというと、そうはいかなかった。低視聴率のため13回で打ち切りとなったのである。ちなみに裏番組は「ワイルド7」であった。その隊長役は「ザ・ガードマン」の川津祐介で、「シークレット部隊」の見習い隊員(友和)ではガードマンにはかなわなかったようだ。

新諸国物語 笛吹童子

唐突だが「笛吹童子」である。予め言っておくと、ここに取り上げるのは50年代に東千代之介などがやった映画版ではなく、先日唐突にCSで始まった72年のテレビ版である。「ヒャリコヒャラレロ」という歌だけなら子供の頃から知っていたので、見たことがある気でいたのだが、改めて考えるとまともに見たことがないことに気がついた。72年といえば特撮ブームまっさかり。「笛吹童子」なんていう由緒正しい子供向け番組なんて見てられるかい、と子供だった私は敬遠したのかもしれない。アニメの「赤胴鈴之介」は見ていたのに。さて主役の菊丸を演ずるのは当時中学生の岡村清太郎。劇団の子役ではないなと思ったら、現在は七世清元延寿太夫を名乗る歌舞伎の人であった。「騎馬奉行」で若い同心を演じていたのを思い出した。その兄萩丸が内田喜郎。以前取り上げた「新十郎捕物帖・快刀乱麻」の主題歌を歌っている人と同一人物と思われる。その父に「七人の侍」の木村功、他にも市毛良枝、瞳順子、玉川良一などで、敵側が霧の小次郎に神太郎、赤柿玄審に藤岡重慶、その部下の四天王が五味龍太郎、内田勝正、上野山功一、花岡秀樹といった豪華なキャスティングである。特に四天王は時代劇のザ・悪役といった顔ぶれだ。花岡秀樹って誰だという人もいるだろうが、用心棒の一人とか子分の一人とか時代劇のキャスト表を注意深く見てれば、その名を見かけることができる(正直私も顔が把握できていないが)。このドラマの難点といえばやはり、主人公の菊丸が強そうに見えないことだろう(まあ当たり前だが)。殺陣の場面では相手が負けてあげているように見えてしまうのだ。せっかく個人的にも好きな楠本栄一、布目真爾、美山晋八といった「必殺シリーズ」「木枯し紋次郎」の殺陣師を揃えているのにもったいないと思ってしまった。

無宿侍

前項の「戦国ロック はぐれ牙」が打ち切られた関係で、急遽オンエアされたのが「無宿侍」(73年)である。どうやらオクラ状態だった作品であったらしい。「三匹の侍」の五社英雄のオリジナル企画で、主演は天知茂なので、それはもうシブイ作品なのである。抜忍となったゲン(天知)が、次々迫り来る刺客と戦うというもので、一言でいえば実写版「カムイ外伝」である。第1話でゲンが抜忍となるきっかけになる弥藤次を演ずるのが裏番組「必殺仕置人」の主演でもある山崎努である。天知に倒されるが回想で時々登場する。刺客を差し向ける雲十郎は二代目黄門こと西村晃で、最初の刺客は山さんこと露口茂だ。俗に言う一夜妻だった九の一(松岡きっこ)なども天知の命を狙う。第10話ではゲストが宮口二朗に梅津栄と「非常のライセンス」での特捜部の同僚たちが登場する。それにしても天知は小奇麗な浪人スタイルで、とても逃げ回って旅をしているようには見えないのが難点か。ちょうど今CSで放映されているので、可能な人は見てみるとよい。とても暗い気分にしてくれる。