東から来た男
ギターを持った男がふらりと街に現れる。というと日活の渡り鳥シリーズみたいだが、東宝がそれを意識して作ったのが「東から来た男」(61)である。主演は「若大将シリーズ」に入る直前の加山雄三で、さわやか路線ではなく、ボクシングの試合で相手を殺してしまったという暗い影を背負った男を演じている。渡り鳥シリーズのような無国籍な雰囲気ではなく、リアルに貧しい地域が舞台である。そこに住み付き、地域に迫った危機を救い、またいずこへと去っていくという話だ。出演者だが、大坂志郎、船戸順、柳沢真一、佐原健二などのほか、人情警官役に桂小金治、勇少年に「天国と地獄」で誘拐される少年を演じる島津雅彦、悪党役にはお馴染みの安倍徹、その用心棒であるボクサーくずれが佐藤允、そして加山といえばヒロインは星由里子、その弟役が矢代和雄といった面々である。この矢代和雄という人は割合二枚目の青年だが、映画出演記録がほとんどないので、すぐに引退した人かと思って調べると名前を変えていた。八代駿、03年に亡くなったが仮面ライダーの怪人役など独特な声の声優であった。この映画を見て同一人物だと気づく人はまずいないだろう。
花の特攻隊 ああ戦友よ
天国と地獄
恐怖の時間
黒沢映画「天国と地獄」(62年)の犯人役で脚光を浴びた山崎努だが、その後同じような役ばかりきてイヤになったと語っているが、まさにそのような役を演じているのが「恐怖の時間」(64年)である。原作は「天国と地獄」と同じくエド・マクベインの小説で、しかも加山雄三を差し置いて主役である。恋人の圭子(田村奈巳)を山本刑事(加山)に射殺された次郎(山崎)が、山本を殺そうと拳銃とニトロを持って刑事部屋に立てこもるというストーリーである。しかし山本は中々戻って来ず、中にいる刑事たちと緊迫したやりとりを繰り広げる。こういったシチュエーションは「大都会PARTⅡ」でも見たことがある。さて、刑事たちに扮するのは黒沢映画の顔・志村喬に土屋嘉男、まだウルトラマンになる前の若き黒部進、時代劇では悪徳商人が多い富田仲次郎、そして係長役に「天国と地獄」で間違って子供を誘拐される運転手を演じた佐田豊という面々だ。他にも逮捕された女(小林哲子)や取材に来た新聞記者(小山田宗徳)も事件に巻き込まれる。圭子は貧しさから麻薬の密売に手をそめており、現場を押さえようとして同僚刑事が撃たれたため、山本は威嚇のつもりで発砲したところ圭子に当たってしまったというものであった。山本も一応は圭子を殺してしまったことを悔いているのだが、妻とレストランで食事を取ったりと、当時の加山がやるとあまり悔いてるようには見えない。ちなみに妻役が星由里子で若大将シリーズでは恋人どまりの二人が夫婦だったりするのだ。山本が署に戻ってこないので、見ているほうも次郎同様イライラする展開なのだが、結局戻ってきた時には事件は解決しているのである。つまり二人は顔を合わせることはなく、山本も何が起こったか知ることなく映画は終わる。ストーリー展開的にはこれでいいと思うのだが、何かすっきりしない感じのする作品である。