お宝映画・番組私的見聞録 -257ページ目

新隠密剣士

「隠密剣士」というと、62年の大瀬光一版と73年の荻島真一版が有名だが(後者はそれほど知られてないかも)、2年半続いた前者が終了した翌週から始まったのが「新隠密剣士」(65)である。スタッフはほぼ同じで、霧の遁兵衛こと牧冬吉も引き続いて登場する。主役の影真之介を演ずるのは、林真一郎でもっぱら時代劇で活躍していた人で後に「まぼろし城」や「白鳥の騎士」でも主役を演じる。もう一人のレギュラーが白鳥みずえという人だが、どういう人かよくわからない。ゲストには、このシリーズお馴染みの天津敏はじめ、隠密剣士ならぬ隠密同心こと嵯川哲郎、他に工藤堅太郎、原建策、そしてマグマ大使のガムこと二宮秀樹などが出ていたようである。前作ほどの人気は得られなかったようだが、3クール(39回)放送されたので、健闘したほうではないだろうか。ところで主演の林だが、なぜか68年ごろから「徳川刑罰史」とか「エロ将軍と二十一人の愛妾」とか「温泉ポン引き女中」とか東映エロ映画路線の人になっていった。そして70年代半ばには姿を消してしまったようである。私自身その顔や名前はまったく記憶に残っていなかった。それにしても彼に何が起こったのであろうか。

新・サインはV

「サインはV」というと、どうしても岡田可愛版の方が話題になり、あまり語られないのが坂口良子主演の「新・サインはV」(73)である。実際のタイトルに「新」はついていないが、ややこしいのでつけさせてもらう。私自身、先日始まったCS放送で初めて見たので印象にないのは当然なのだが、そういえば「ウルトラマンタロウ」で、怪獣とバレーボールしたのは坂口良子だったのを思い出した。当時は意味がわからんかったけれども。牧コーチ(監督)こと中山仁のみ続けて出演しており、1話にゲスト出演の岡田可愛に「今の選手はお前たちの時代とは違う」と熱血が嫌がられる風潮であることを語っている。坂口演ずる今回の主人公も楽しくなければいやというタイプ。70年代はまだまだ熱血根性の時代だと思っていたが、現代風な主張がはやくも出ていることに驚いた。さて他の出演者たちだが、バレー選手には鹿沼エリ、水原ゆう紀の日活ロマンポルノコンビと「われら青春」「特捜最前線」の関谷ますみ、現在活躍中の人とは別人の高橋ひとみ、キャプテン役が森政芳子という人だがはっきりいって良く知らない。マネージャー役には「飛び出せ青春」の松原麻里、そして「飛び出せ青春」「われら青春」でコンビだった穂積隆信、柳生博がここでも舞台となる会社の社長、部長コンビとして登場する。とまあ役者陣だけ見れば、結構面白そうなんだけれども、話題に上らないのは、やはり一作目が強力すぎたということだろうか。それにしても赤いブルマの尻並びのアップで始まるOPは強烈である。主題歌は前作と一緒だが、坂口良子が自ら歌っている。

天馬天平

前項で日本電波映画の話題が出たが、そのテレビ第1作が「天馬天平」(60)である。私はこの作品は一度も見たことはないが、近年思わぬことで話題となった。主役の当時16歳、富士八郎(本名・山前五十洋)が歌手・倉木麻衣の父親だったということである。だいたい、その芸名からしてフジテレビ=8Chだから、富士八郎という実にいい加減な命名である。富士は実質この1作だけなので、話題に上ったとき「誰だそれ?」と思った人も多いと思う。共演の秋葉浩介も60年代前半のみ活躍した役者である。原作は「矢車剣之助」でお馴染みの堀江卓の漫画で、日テレの「矢車」がヒットしていたので、フジはこっちに目をつけたということらしい。この番組では途中から千也姫役で松山容子が登場し、人気を博した。そして彼女が主演の「琴姫七変化」が作られることになる。

幻の大怪獣アゴン

かつて日本電波映画という会社があったが、そこで制作された特撮作品の一つが「幻の大怪獣アゴン」である。90年代にDVDが発売されるまでは、まさに「幻」の作品であったといえる。テレビシリーズといっても全4回で、64年に制作されながら放映は68年という一旦お蔵入りになった作品でもある。私も近年CSで放送されたので初めて見ることができた。特撮といってもそれらしい場面はほとんどない。しかし怪獣の出来は良く、制作したのは「マグマ大使」「怪獣王子」の項でも書いた大橋史典である。この「アゴン」はマグマ大使において「アロン」として登場する(流用されたということ)。出演者も広田進司、志摩靖彦、沢明美とよく知らない役者が並んでおり、名が知れているのは刑事役の松本朝夫くらいであろうか。松本朝夫という名を知らなくても、その顔は必ず見かけたことがあるだろうというくらい、いろんな番組に出ている。「キイハンター」「ザ・ガードマン」(主に犯人)といったアクション物や「ウルトラセブン」「ウルトラマン」など特撮(主に博士やゲストの隊員)への出演も多い。ちなみに新東宝スターレット1期生で、天知茂や高島忠夫が同期生である。アゴンの中の人は東悦次で、「必殺シリーズ」を見ていると2,3回に一度の割合でいろんな役で登場するキツネ顔の人である。

青春ア・ゴーゴー

66、67年あたりの日活映画にたびたび登場するバンドがある。「ヤング・アンド・フレッシュ」という少々恥ずかしい名のバンドである。メンバーは山内賢(ギター)、和田浩治(ドラム)、杉山元(サイドギター)、木下雅弘(ベース)という日活俳優で構成されている。山内と和田は有名だが、残る二人については、杉山が「ミラーマン」の安田隊員役の人であることぐらいしか知らない。さて、そのヤンフレが初めて登場するのが「青春ア・ゴーゴー」(66)である。この映画では四人に、ボーカルとしてジュディ・オング、タンバリンで浜田光夫が加わる。女子高生役で太田雅子こと梶芽衣子や、浜川智子こと浜かおる、西尾三枝子の「プレイガール」コンビや吉田毅こと沖田駿一らも登場する(改名した人ばかりだ)。他にも井上順加入前のスパイダースなども出演している。この後ヤンフレは「涙くんさよなら」「二人の銀座」「スパイダースのむこう見ず作戦」などに登場する。和泉雅子と山内賢の「二人の銀座」は大ヒット曲となったが、映画は曲のヒットに後に作られているので、都合よくヤンフレが使われたという感じであろうか。

東から来た男

ギターを持った男がふらりと街に現れる。というと日活の渡り鳥シリーズみたいだが、東宝がそれを意識して作ったのが「東から来た男」(61)である。主演は「若大将シリーズ」に入る直前の加山雄三で、さわやか路線ではなく、ボクシングの試合で相手を殺してしまったという暗い影を背負った男を演じている。渡り鳥シリーズのような無国籍な雰囲気ではなく、リアルに貧しい地域が舞台である。そこに住み付き、地域に迫った危機を救い、またいずこへと去っていくという話だ。出演者だが、大坂志郎、船戸順、柳沢真一、佐原健二などのほか、人情警官役に桂小金治、勇少年に「天国と地獄」で誘拐される少年を演じる島津雅彦、悪党役にはお馴染みの安倍徹、その用心棒であるボクサーくずれが佐藤允、そして加山といえばヒロインは星由里子、その弟役が矢代和雄といった面々である。この矢代和雄という人は割合二枚目の青年だが、映画出演記録がほとんどないので、すぐに引退した人かと思って調べると名前を変えていた。八代駿、03年に亡くなったが仮面ライダーの怪人役など独特な声の声優であった。この映画を見て同一人物だと気づく人はまずいないだろう。

花の特攻隊 ああ戦友よ

杉良太郎は映画スターではない。テレビと舞台のスターである。もともと65年に歌手としてデビューしているのだが、ヒット曲は「すきま風」くらいしかない(と本人もショーなどでネタにしているらしい)。ある筋では有名な「君は人のために死ねるか」という名曲もあるけれども。66年にドラマ「燃えよ剣」で沖田総司役に抜擢され、翌年の「文吾捕物帳」でほぼスターの座をつかむ。一方で日活俳優としてに十数本の映画に出ているが、もっぱら準主役で主役はあまりないのである。しかも日活退社後、約30数年映画には出演していないようである(出ていたらすいません)。「花の特攻隊 ああ戦友よ」(70年)は、そんな杉の主役映画である。原作はあの川内康範で、まあ正統派の戦争映画といった作品である。内容はさておき、出演者が豪華なのである。ヒロインは和泉雅子で、他に浜田光夫、藤竜也、梶芽衣子、岡崎二朗、長谷川明男、川口恒、沖雅也、三ツ木清隆、内田良平、玉川良一などに加え、ほとんど日活のイメージがない丹波哲郎、南原宏治、曽根晴美などが出演している。特に曽根晴美なんか東映以外だととても違和感がある。これは杉良ほぼ最後の映画出演作なのだが、映画には興味がないのだろうか。別にいいのだけれども。

天国と地獄

「天国と地獄」(62年)といえば、超メジャーな黒沢映画の一本だが、前項で名前が出たのでついでに取り上げてみたい。この映画、前半の誘拐から子供の帰還までと後半の犯人捜査から逮捕までと、ガラリと雰囲気が変わる。あくまで個人的意見だが、前半の息詰まる展開に比べると後半は間延びした感じがしてしまう。捜査会議とか妙に細かいし、山崎努が夜の街をさまようところとか長いよとか思ってしまう。まあ、そこを差し引いても面白いけれども。ところで、この作品で一番黒沢に絞られたのは、田口部長刑事役の石山健二郎と運転手青木役の佐田豊だったそうである。石山は大ベテランだが、もっぱら舞台の人でどうしても「芝居がかった芝居」になってしまい黒沢に散々注意されたようである。たとえベテランでも容赦しないのが黒沢流であるということか。佐田は沢山の黒沢作品に出ているが、ほとんどがチョイ役である。それが、間違って誘拐される子供の父親という大役にいきなりの大抜擢。やはり黒沢にことあるごとに叱責されたそうである。後に佐田は「あの役は私には重過ぎました」などと語っている。目立たぬ役でも満足していたのであろうか。一方ほぼ新人であった山崎努には、ほとんど注文をつけず自由にやらせていたという。両極端だが彼らの評判は上々だったそうである。

恐怖の時間

黒沢映画「天国と地獄」(62年)の犯人役で脚光を浴びた山崎努だが、その後同じような役ばかりきてイヤになったと語っているが、まさにそのような役を演じているのが「恐怖の時間」(64年)である。原作は「天国と地獄」と同じくエド・マクベインの小説で、しかも加山雄三を差し置いて主役である。恋人の圭子(田村奈巳)を山本刑事(加山)に射殺された次郎(山崎)が、山本を殺そうと拳銃とニトロを持って刑事部屋に立てこもるというストーリーである。しかし山本は中々戻って来ず、中にいる刑事たちと緊迫したやりとりを繰り広げる。こういったシチュエーションは「大都会PARTⅡ」でも見たことがある。さて、刑事たちに扮するのは黒沢映画の顔・志村喬に土屋嘉男、まだウルトラマンになる前の若き黒部進、時代劇では悪徳商人が多い富田仲次郎、そして係長役に「天国と地獄」で間違って子供を誘拐される運転手を演じた佐田豊という面々だ。他にも逮捕された女(小林哲子)や取材に来た新聞記者(小山田宗徳)も事件に巻き込まれる。圭子は貧しさから麻薬の密売に手をそめており、現場を押さえようとして同僚刑事が撃たれたため、山本は威嚇のつもりで発砲したところ圭子に当たってしまったというものであった。山本も一応は圭子を殺してしまったことを悔いているのだが、妻とレストランで食事を取ったりと、当時の加山がやるとあまり悔いてるようには見えない。ちなみに妻役が星由里子で若大将シリーズでは恋人どまりの二人が夫婦だったりするのだ。山本が署に戻ってこないので、見ているほうも次郎同様イライラする展開なのだが、結局戻ってきた時には事件は解決しているのである。つまり二人は顔を合わせることはなく、山本も何が起こったか知ることなく映画は終わる。ストーリー展開的にはこれでいいと思うのだが、何かすっきりしない感じのする作品である。

戦艦大和(53)

戦争映画はあまり見ないほうなのだが、この「戦艦大和」は時代も53年と古く、あの新東宝作品ということで見てみたのだが、一言でいえば「良くできている」といったところであろうか。新東宝といえば、エログロ映画のイメージが強いがこうした真面目な戦記物も何本か作っている。特撮部分も、この数年後に作られる「スーパージャイアンツ」シリーズの稚拙なイメージを予想してしまったのだが、そんなことはなく50年以上前でしかも新東宝の作品にしては素晴らしいといっていい出来である。ちなみに特撮スタッフには「マグマ大使」の合成作画の渡辺善夫や「怪獣王子」「スペクトルマン」などピープロ作品の監督である土屋啓之助の名が見える。この作品は吉田満の戦記が原作となっているが、吉田は大和乗組員の生き残りで、映画では舟橋元が彼の役回りだ。もう一人生存者の能村次郎副長もスタッフに名を連ねており、映画では藤田進が演じている。舟橋元といっても、私には「赤影」に出てくる黒蝙蝠という忍者のイメージくらいしかないが、74年に43才の若さで急逝していた。なじみが薄いはずである。他の出演者は伊藤艦隊指令に高田稔、有賀艦長に佐々木孝丸、乗組員に中山昭二や高島忠夫の新東宝勢、ちらりと出てくる女優陣は久我美子や山田五十鈴の娘・嵯峨美智子などである。あと冒頭で会議をしている参謀たちにはこの翌年「七人の侍」となる宮口精二、十朱幸代の父・十朱久雄、そして後の花山大吉こと近衛十四郎などがひっそりと顔を見せている。