危険な英雄
現都知事・石原慎太郎が主役を張っている映画があるのをご存知だろうか。まあ自分が原作の「太陽の季節」などにチョイ役で出たりしていたのは知っていたが、56年から57年にかけて数本の主演映画(もちろん裕次郎は出ていない)が存在するのである。その1本が先日CSで放送されていた「危険な英雄」(57年)である。裕次郎のいる日活ではなく東宝映画であり、共演が志村喬、仲代達矢、宮口精二、そして三船敏郎と思わず黒沢映画かと思ってしまった。OPの出演者のテロップの字体とか黒沢映画と一緒なのである(この頃の東宝映画が軒並みそうだったのかもしれないが)。ストーリーは慎太郎演じる若き新聞記者が子供の誘拐事件をスクープ、そして公開されていなかった犯人のモンタージュまですっぱ抜く。そのせいで犯人が子供を殺害し、慎太郎は責任を押し付けられる形で左遷されるというもの。報道規制が布かれる現在ではありえない展開であろう。他の出演者だが慎太郎の上司に小沢栄太郎、多々良純、誘拐された子供の姉に司葉子で、役名はなんと三原葉子。当時すでに活躍していた新東宝のあの女優さんと同じ名であるが、司のほうがやはり美人である。仲代はライバル記者の役で、このわずか3年前の「七人の侍」では通行する侍でしかなかったが、この頃は重要な役をもらえるようになっていたようだ。本当に黒沢映画で活躍するのは60年代になってからである。志村は捜査主任で犯人役が宮口である。かつての「七人の侍」の二人が取調室で刑事と犯人として向き合うのである。剣豪久蔵を演じた宮口がとても弱弱しく見えた。三船はほとんど特別出演という感じで、誘拐犯にテレビで呼びかける野球選手という役で特に筋には関係ない。
ラストで司葉子に罵られようとも「真実を書いて何が悪い、俺は間違ってない」という慎太郎の姿は、現在の姿とだぶっているような気がするのである。
眠狂四郎(江見俊太郎版)
甲賀の密使・幽霊小判
牛若天狗いざ見参
昔の番組や映画などを調べていると「えっ!あの人が主役?」などと感じることが結構あったりする。そういった番組というか役者をいくつか取り上げて見ようと思う。
まず目についたのが「牛若天狗いざ見参」(61年)で、いかにも少年向け時代劇ヒーローっぽいタイトルだが、主役を演じたのが外山高士である。内容その他は全くわからないが、月~土の帯で放映された10分番組だったようである。外山高士といえば時代劇での悪代官とか悪奉行とか、そういうイメージ以外あまり浮かばない人である。中田博久(キャプテンウルトラ)とか黒部進(ウルトラマン)とかは、先にヒーローとしての姿を見ているので、現在は悪役でもあまり違和感はないのだが、その逆は非常に想像しにくいものだ。ほぼ同時代の「隠密剣士」において外山が敵忍者として登場するが、現在のイメージとあまり変わらないのである。大変失礼なことを言っているが、やはり悪のイメージである。しかも外山がヒーローを演じたのはこれだけではない。「快傑黒頭巾」(58年)においても若柳敏三郎から主演を受け継いでいるのである。若き外山の勇姿(といっても30歳前後であったが)を見てみたいものである。そういえば声優としては「サスケ」の父・大猿大助役や、「ジャングル大帝・進めレオ」では主役のレオを演じていた。我々世代には外山は「ドスの利いたヒーロー」 であったのだった。
若草物語(テレビ版)
前項の映画「若草物語」を調べている過程で、テレビ版の「若草物語」(68年)があることを知った。しかも芦川いづみがこちらでも四姉妹の長女役である。ちなみに次女が山本陽子、三女は伊藤るり子、四女が川口晶である。山本陽子はともかく、伊藤るり子はイメージが湧かないし、川口晶は美人という感じではないし、やはり映画版には劣っているか。いや映画版の四人が美女すぎるといったほうが正しいだろう。共演の男優陣だが、同じ日活でもアクション路線だった川地民夫や、中山仁、青山恭二、山川ワタルといった顔ぶれだったようだ。青山恭二はやはり日活の「刑事物語」や「機動捜査班」両シリーズの主演だった役者で、引退後は漁師になったそうである。山川ワタルは「少年ケニヤ」だし、顔ぶれだけ見るとホント日活のアクション映画と思ってしまう。一度見てみたい気がする番組である。前述のとおり芦川いづみはこの68年に引退している。
若草物語
突然だが「若草物語」(64年)である。まあ先日CSで放送されていたのを見かけたからなのだが、芦川いづみ、浅丘ルリ子、吉永小百合、和泉雅子という日活の四大女優の共演という作品である。オルコットの名作を現代風にアレンジしたものといえるだろう。いや、読んだことはないので単に四姉妹という設定だけを使っているのかもしれない。それぞれの役柄は一応実年齢順になっていて、長女役の芦川は当時29歳、次女の浅丘は24歳、三女の吉永は19歳、四女の和泉は17歳であった。この中では、芦川いづみのイメージというのが個人的にはあまりないのである。たまに芦川よしみと混同してしまったりする。それもそのはずで、68年に結婚して引退してしまっているからであろう。私など小学校入学前である。しかもその相手が藤竜也であることも先ほど調べて初めて知った次第である。原作では次女のジョーが主役なので(その程度の知識はある)この映画でも次女役の浅丘が中心っぽい。共演の男優陣は浜田光夫、和田浩治、山内賢、杉山俊夫、内藤武敏などで伊藤雄之助が四人の父親役である。ちなみに映画の中では浅丘は石坂浩二ならぬ和田浩治と結婚するのである。
男組 少年刑務所
第1作の翌年、キャストをほぼ入れ替えて制作されたのが「男組 少年刑務所」(76年)である。今回の主演は舘ひろし、映画出演2作目にして主役で、五家宝連には村山一海、玉川雅巳、飯田和男、佐藤秀光、渡部和裕という面々。誰?と思う名前ばかりと思うが舘といえばクールス、つまりこの五人はクールスのメンバーである。舘+クールスは松田優作の「暴力教室」に引き続いての出演だが、まあほぼ素人集団の映画になっている。クールスってそんなに人気あったっけ?神竜には神有介、正直聞いたことがないが少なくとも80年代前半くらいまでは出演経歴があるようだ。涼子には武井みどり、現在の竹井みどりである。しかし武井名義はこの作品くらいしかないようで、改名したのか誤植だったのかよくわからない(そんなことはないと思うが)。もうひとりのヒロインが大関優子で、この人は当時たまたまテレビで見かけて奇麗な人だなあと思った記憶がある。後に佳那晃子と名前を変え大活躍することになる。以上のように主要キャスト総入れ替えと思いきや、何故か神竜組の四天王(日の下金太郎、光本大介、大谷朗、横山繁)だけはそのままである。
しかし1作目はれなりに良かったと思うが、なんでクールスの映画にしちゃったんだろうか。と思う今日このごろである。
男組
マガジンといえばサンデー、というわけで「ワル」といえば「男組」(75年)である。原作は今や「美味しんぼ」の人で有名な雁屋哲、そして絵は池上遼一である。妙に鎖の長い手錠をはめている主人公、ニュースならモザイクがかかってしまう流全次郎に星正人、その子分である五家宝連に白石譲(伊庭)、千田孝之(岩瀬)、津森正夫(高柳)、藤江喜幸(長浜)、そして「ワル」に続いてこちらにも登場の高月忠(大杉)の五人である。今回は32歳にして少年刑務所の受刑者だったりする。藤江は「好き好き魔女先生」など子役として活躍していた役者だ。彼らの敵である神竜組(高校生)の総帥・神竜剛次には南条弘二、その部下である四天王には日の下金太郎(大田原)、光本大介(木崎)、大谷朗(田丸)、横山繁(熊沢)という強烈な顔をした面々である。横山は「非情のライセンス」で刑事役などをやっていた。ヒロインの涼子には山口智子、といっても現在活躍中の唐沢夫人とは別人で、この映画以外の出演作は不明である。他には流に協力する生徒会長に「仮面ライダーアマゾン」こと岡崎徹、校長に室田日出男、にしきのあきら、南条弘二と混同してしまう「変身忍者嵐」こと南条竜也などが出ている。
しかし、星正人ってどこへ消えてし まったのだろうか。「大都会PARTⅢ」で黒岩軍団の一員だったとか桜木健一の後をついだ二代目「刑事くん」だったとか覚えている人も少ないかもしれない。
非情学園ワル 教師狩り
「非情学園ワル」の第2弾が「教師狩り」(73年)で、谷隼人扮する氷室の敵役として、今回はスーパー教師で佐藤允が登場する。渥美マリ、安岡力也、佐藤蛾次郎らは引き続き登場するが、氷室の仲間で前作では飛世讃治が演じていた役は高月忠に替わっている。飛世はこれ1本しか出演記録のない謎の役者である。名前を変えたのか、実際これ1本だけなのかは不明である。しかしヒセサンジと読むのだろうか。はせさん治という声優ならいるけれども。高月忠はあのピラニア軍団の一員で、東映東京制作の映画ならほぼ全部に出ているのではと言われている(そんなことはないだろうが)。ほぼチョイ役ばかりなので今回の役などはかなりの大役であったといえよう。ちなみに当時30歳の高校生役であった。この作品では生徒役に「ワイルド7」の小野進也や「ダイヤモンドアイ」の大浜詩郎などの顔も見える。
そういえば谷は東映の役者だが、蛾次郎は松竹、前作の田中邦衛と今回の佐藤允 は東宝、渥美マリは大映出身と70年くらいまでは見られないキャスティングだったのである。
非情学園 ワル
70年代の劇画を映像化した作品というのは、今見ると「なんておバカな作品だ」と思えるようなものが多い。この「非情学園ワル」(73年)もそんな作品の1つであるが、第2作「教師狩り」、第3作「ネリカン同期生」と作られているので評判は良かったのかもしれない。原作は真樹日佐夫・影丸譲也による人気劇画で、少年マガジンに連載されていたが、小学生だった自分が真剣に読むような品ではなかった。
さて映画のほうだが、注目はなんと言っても出演者たちだ。主役の氷室洋二(高校生)に谷隼人、当時27歳である。すでにスターだった谷も、27にして高校生を演じるとは思ってなかったかもしれない。主役を谷にしたからには、、まわりも合わせてしまえばよいと思ったのか、氷室の仲間には安岡力也(26歳)に佐藤蛾次郎(29歳)、そして対立する大日向に目黒祐樹(26歳)というキャスティングだ。実に平均年齢の高い高校である。教師役には田中邦衛、そしてヒロインでもある渥美マリが扮している。しかし谷隼人はハンサムではあるが、ワルという感じではないと思う 。致命的なのは声にドスがないので、あまり迫力を感じないのである。まあ生まれもってのものだから仕方ないけれども。