森次晃嗣(浩司)の出演映画 その3
今回も森次晃嗣の改名前・森次浩司時代の出演映画である。
71年の森次と言えば、ボウリングドラマ「美しきチャレンジャー」での熱血コーチ役が印象に残っている人も多いのではないだろうか。ヒロイン役の新藤恵美も松竹の女優だったが、ドラマが松竹製作というわけではない。新藤自ら歌う主題歌も印象に深いが、この歌はレコードが競作で堀江美都子版、藤田淑子版、中村晃子版などがあったりする。
このドラマが始まる直前に公開されたのが「めまい」である。主演は辺見マリで、そのポスターでの表情とタイトルからエロい映画なのかと勘違いした人がいたかどうかは不明だが、「めまい」は辺見のシングル曲のタイトルで、つまりは歌謡映画である。辺見はこれが初の主演作だ。これも未見なのだが、あらすじを見た限りでは、辺見と森次、萩原健一とジャイアント吉田が高校の同級生という設定のようだ。辺見と萩原は同じ50年生まれだが、森次は43年、吉田にいたっては36年生まれでかなり無理があると思う。萩原はテンプターズ解散後で、当時はPYGに所属していた。萩原がソロで映画に出たのは本作が最初である。
ちなみにPYGとは、テンプターズ(萩原、大口広司)、スパイダース(井上堯之、大野克夫)、タイガース(沢田研二、岸部一徳)という大人気だった3グループのメンバーで結成されたグループ。ショーケンとジュリーがいながら人気にならなかったが、後に井上堯之バンドへと発展していく。ジャイアント吉田は元ドリフターズのメンバーだが、リーダーのいかりや長介のワンマンぶりに反発し、小野ヤスシ、猪熊虎五郎、飯塚文雄と共に脱退し、ドンキー・カルテットが結成された。そのドンキーは70年に解散。芸名はジャイアントだが、かなり小柄であった。
話が大きく逸れたが、他の出演者は范文雀、小川ひろみ、城野ゆき、ケーシー高峰、有島一郎など。
「喜劇・夜光族」は三木のり平主演の風俗喜劇。その娘役が倍賞美津子で、その恋人役が森次だ。劇中で彼が働くバーの店名が「セブン」である。他に長山藍子、早瀬久美、殿山泰司、伴淳三郎、悠木千帆(樹木希林)などである。
「可愛い悪女」は当時の風俗とエロティシズムを盛り込んだサスペンスと解説にはある。主演はおそらく初であろう范文雀。「プレイガール」や「サインはV」などで人気があり、映画も東宝、日活、そして松竹と各社に登場していた。彼女は週刊誌のカメラマン役で、編集長が中丸忠雄、社長が滝田裕介、その妻が生田悦子で、森次は編集部員であり、范のベッド・フレンド(あらすじより)でもあるという設定だ。ちなみに監督は井上梅次である。
その3か月後年を跨ぎ72年になるが、シリーズ2作目である「可愛い悪女 殺しの前に口づけを」が公開されている。主演は同じ范文雀だが、役名も設定も違う。ここではGSのボーカルだ。森次は役名は前作と同じ「旗」だが、今回は刑事の役である。他は前作とは違うキャストで、入川保則、藤村有弘、赤座美代子、財津一郎、フランキー堺など。殺害されるプレイボーイを演じるのが巽千太郎。「光速エスパー」で研究所員を演じていたのは記憶にあるが、そのプロフィールは不明だ。「ゴルゴ13」に同名のキャラが出てくるらしい。「ナショナルキッド」や「特別機動捜査隊」の初期に活躍した巽秀太郎とは特に関係はなさそうである。
森次晃嗣(浩司)の出演映画 その2
引き続き森次晃嗣(浩司)である。
70年の前半は「ヤングアクション プロフェッショナル」や「青春太閤記 今に見ておれ」といったドラマレギュラー出演のせいか、前半に映画出演はない。
7月になって1本目が公開された。森次は松竹と専属契約を交わしているのでこの年は松竹作品のみである。その「風の慕情」は、オーストラリアとマニラでロケを行ったサスペンス・ラブロマンで橋田壽賀子のオリジナル脚本である。主演は吉永小百合と石坂浩二。吉永小百合と言えば日活の看板女優だが、この70年は他社作品にも出演できる契約を交わしており、本作が初の松竹出演となる。香山美子が吉永の姉役で、入川保則が吉永に求婚する男。他に尾崎奈々、渚まゆみなど。渚も大映の女優であったが、この70年から他社にも出始めたようである。森次は吉永に忠告を与える謎の商社マンといった役である。
4度目の映画化となる「姿三四郎」。43年の東宝・黒澤明の監督デビュー作として初映画化(続編あり)、55年の東映版(主演波島進)、65年に再び東宝で(主演加山雄三)、そして今回の松竹版で主演は竹脇無我である。4度目と書いたがそれは「姿三四郎」というタイトルでの話。前回書いたとおり、森次の映画デビュー作「柔旋風 怒涛の対決」も中身は「姿三四郎」なのである。そこでは津崎公平役だった森次だが、今回は同じ四天王でも戸田雄次郎の役だ。矢野正五郎役は高橋幸治、乙美役は尾崎奈々、村井半助役は堀雄二、檜垣源三郎役が高城丈二である。他に加賀邦男、白木マリ、曾我廼家明蝶など。
「波止場女のブルース」は森進一のシングル曲を題材とした歌謡映画で、主演は岡田茉莉子。当時37歳だが、この時点で既に出演映画は130本を超えていた。ポスターを見ると岡田と森進一の姿が大きく載っているので、この二人のラブロマンスかなと思いきや、岡田の相手役は森次なのである。森進一は森次の友人という役柄なのだ。当時、森は24歳で岡田とは年が離れすぎかなとも思うが、森次だって27歳で、10歳の差がありバランスが良いとは言えない。岡田は美人ではあるが、既にベテランの風格のようなものがあった気がする。他の出演者だが、小川ひろみ、西尾三枝子、野々村潔、西村晃などである。
もう1本は年末に公開されたドリフ映画「誰かさんと誰かさんが全員集合」である。以前ドリフ映画として紹介したと思うが、ドリフターズ以外の出演者は岩下志麻、倍賞美津子、内田朝雄、早瀬久美など。付き人だった頃の志村けん(志村康徳名義)やその相方だった井山淳もチョイ役で出演している。森次は村山という役だが、その役柄まではわからなかった。
森次晃嗣(浩司)の出演映画
黒部進の次となると、やはり「ウルトラセブン」で森次晃嗣ということになろうか。
森次は43年北海道滝川市生まれ。滝川の有名人と言えば、脚本家の鳥海尽三や比佐芳武、タレントの藤本美貴や大政絢などがおり、大政は高校の後輩にあたる。ちなみに水谷豊は近隣の芦別市生まれ。個人的なことを言えば、自分もこの辺り(空知地方)の出身だ。あと、何故か元横綱の白鵬は滝川の観光大使だそうだ。
61年の高校卒業後に上京。デザイナー志望だったが、ジャズ喫茶で働いていた時に客として新劇の関係者が来ていたことから俳優を意識。店に黒部進や二瓶正也が来たこともあったという。詳しい経緯は不明だが、65年にテレビドラマ「青春をぶっつけろ」でデビュー。当初の芸名は森次浩司だ。当時流行っていた柔道ドラマで制作は宝塚映画と東宝で、出演者は金光満樹、黒沢年男、古川ロック、いしだあゆみ、磯村みどり、寺島達夫、夏圭子など。黒沢は東宝ニュータレント4期生で既に映画デビューはしていたが、ドラマデビューは本作のようである。
また同じ年に、やはり柔道映画である「柔旋風 怒涛の対決」で映画デビューも飾っている。松竹配給だが、製作は日本電波映画。主演の和崎俊哉を初め、同社の作品に出演していた倉丘伸太郎、平井昌一、佐治田恵子なども共演。他に内田良平、御木本伸介、中原早苗、河津清三郎など。姿三四郎(和崎)が主人公で、森次は四天王の一人である津崎公平役である。
若干の間が空き、67年はやはり柔道を題材としたドラマ「天下の青年」に出演。制作は東宝とフジテレビ。主演は原田芳雄で、初の主演作。他に沢井桂子、富士真奈美、小山田宗徳、土屋嘉男、そして菱見百合子。彼女もこれが初のレギュラードラマで、森次と菱見は既にここで共演していたのである。
終了後すぐに「ウルトラセブン」となるわけだが、当初ダン役は「ウルトラマン」同様に東宝所属の俳優から選ぼうとしていたが、適役が見つからなかったという。噂を聞いた円谷プロ演技課の新野悟が「天下の青年」の撮影を見学し、森次を候補の一人とした。そしてオーディションの末、彼が選出されたという流れだ。
セブン終了後の69年に森次は東宝ではなく松竹の所属となっている。これは68年から始まった松竹製作のホームドラマ「丸太と包丁」にレギュラー出演していたということもあるかもしれない。
そして4年ぶりに出演した映画が「夕陽の恋人」だ。主演は森田健作なので、彼の項で紹介したと思うが、森次は森田の兄役である。他の出演者は尾崎奈々、久保菜穂子、柳沢真一、岡田英次、黛ジュンなどである。
69年はもう一作あり「海はふりむかない」で、西郷輝彦、尾崎奈々主演の悲恋映画だ。タイトルは西郷のシングルと同題
で、当然本作の主題歌でもある。他の出演者は中山仁、勝部演之、夏圭子、由美かおる、美川憲一などで由美や美川は歌手(流し)の役である。森次は尾崎の兄役である。
黒部進の出演映画 その4
今回も引き続き黒部進である。
67年はもう一本あって、「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」にも出演している。ゴジラの息子つまりミニラの登場である。まあゴジラも生物なので子供が居ても不思議ではないだろうが、母親は?つまりママゴジラがいるということになるが、そこを疑問に思ってはいけないのだろう。完全に子供を意識した作品というイメージだが、本編そのものはシリアスだったりする。観客動員も前作を大きく下回ったという。
主演は高島忠夫で、共演は前田美波里、久保明、平田昭彦、佐原健二、土屋嘉男など。撮影ではグアム島ロケが行われたが、高島は大の飛行機嫌いで、実はこのロケには参加していない。代役を使って遠目から撮影し、後からアップの部分を挿入したようだ。前田美波里は当時19歳。66年に資生堂のキャンペンガールとして有名になったが、実は64年に東宝現代劇に入団(東宝ニュータレント5期生)しており、モデルが先というわけではない。翌68年にはマイク真木と結婚している。黒部は気象観測機の機長という役。「ウルトラマン」で人気を得ているが、メインとしての登場ではない。ミニラの中の人は小人のマーチャン(深沢政雄)。当時46歳にして、初のスーツアクターを務めた。
68年に入ったが、公開された出演映画は3本と少ない。まずは、岡本喜八監督の時代劇「斬る」。ちなみに英語版タイトルは「Kill!」で、音は同じだが意味は違う(広い意味では同じだが)。原作は山本周五郎「砦山の十七日」で、侍をやめた男と百姓から侍になろうとする男の物語。主演は仲代達矢と高橋悦史。高橋は67年の「日本のいちばん長い日」から岡本作品に続けて出演しているが、主役級の役どころは本作が初めて。上州の小比木藩領で二人は偶然出会うが、その頃圧政を行っていた城代家老が七人の若侍(中村敦夫、中丸忠雄、地井武男、橋本功、久保明など)に暗殺される。次席家老(神山繁)は藩政をわが物にしようと浪人隊(岸田森など)を差し向ける。若侍たちは砦山にたてこもり、仲代は彼らの味方になるが、高橋は浪人隊に加わり敵味方として戦うことになるといった感じの展開である。地井武男はこれが映画初出演で、中村敦夫はブレイク前だが60年代終盤からそれなりに活躍していた。黒部は神山と同じ苗字(鮎沢)なので、恐らく息子の役だろう。他に星由里子、東野英治郎など。ちなみに、大映の「斬る」は62年で市川雷蔵が主演。こちらは柴田錬三郎が原作である。
「怪獣総進撃」はゴジラシリーズ第9作で、怪獣が全部で11体登場しキラアク星人という女性に擬態した宇宙人も登場する。主演は久保明、小林夕岐子で、他に田崎潤、佐原健二、土屋嘉男、伊藤久哉など。黒部はコントロールセンター所員Aという役だが、資料によっては黒岩という名前が付いている。ヒロインの小林はこれが本格的な映画デビュー作。東宝ニュータレント6期生で、父は水島道太郎だ。キラアク星人役の愛京子は女優としての活動期間は3年程度で、歌手としてもシングル3枚を出している。本作以降の出演記録はなく、詳細は不明だ。同じキラアク星人を演じる宮内恵子(牧れい)、高橋厚子、佐川亜梨は小林と同じ東宝ニュータレント6期生である。
「連合艦隊司令長官 山本五十六」は東宝男優陣総出演といった感じの戦記映画。主演は三船敏郎で、以下藤田進、加山雄三、森雅之、柳永二郎、宮口精二、安部徹、加東大介、佐藤允、平田昭彦、土屋嘉男、佐原健二、田村亮、黒沢年男、久保明、辰巳柳太郎、松本幸四郎(初代松本白鸚)などが登場し、女優も司葉子、酒井和歌子、豊浦美子などが出演している。黒部は陸軍少佐参謀Bといった役。
「ウルトラマン」以降、特撮映画への出演が増えたが、メインとは言い難い役ばかりであった。
黒部進の出演映画 その3
引き続き黒部進である。
66年に入り最初の映画は「暴れ豪右衛門」。三船敏郎主演の時代劇である。東宝で三船の主演とくれば、黒澤映画のイメージが強いが、本作の監督は稲垣浩。東宝版の「宮本武蔵」や「無法松の一生」など稲垣監督で三船を主演とした作品は結構あるのだ。三船はタイトルにある農民の郎党である加賀七党の首領・豪右衛門を演じる。その妻が乙羽信子で、弟が佐藤允と田村亮、他に大空真弓、星由里子、西村晃、平田昭彦、加東大介などで、黒部は神保十郎という役。未見なのでその役柄はわからないけれども。本作は田村亮の映画デビュー作。本人は役者でやっていくつもりではなかった為、芸名を稲垣に付けてもらった(本名・田村幸照)という。
黒部に戻るが、続いては「狸の王様」。裸(はだか)ではない狸(たぬき)である。狸シリーズの3作目で、監督は黒部をスカウトした山本嘉次郎である。小林桂樹主演のコメディ作品で、小林が演じるのは車上あらし。つまり窃盗犯である。他に草笛光子、伴淳三郎、団令子、藤木悠、高橋紀子などで、黒部は鹿島という役。これも未見なので詳細は不明だ。黒部が山本作品に出演するのは本作が最初で最後である。次作の「狸の休日」が山本の最終監督作品になってしまったからである。なお、シリーズ3作目の本作までは小林が主演だが、「狸の休日」は高島忠夫の主演となっている。
「奇岩城の冒険」は山本門下生である谷口千吉が監督する冒険映画。黒部には2本目の谷口映画だ。本作は太宰治の「走れメロス」を原案としている。主演は三船敏郎で、他に中丸忠雄、有島一郎、三橋達也、白川由美、平田昭彦、佐藤允、若林映子、黒沢年男、田崎潤、浜美枝、桜井浩子などが出演している。黒部は「武官長」という役で、まあメインキャストではないだろう。なお本作は三船プロダクションが製作として東宝と併記されている。
とまあ、脇役続きの66年であったが、ここで転機が訪れる。そう「ウルトラマン」の主役抜擢である。
実はここまでで黒部が出演した特撮作品は「三大怪獣地球最大の決戦」の一本だけで、イメージと違ってあまり縁のないジャンルだったのである。円谷が絡む戦争映画への出演はあったけれども。当時はそういう番組がなかったこともあり、主役とはいえ、あまりやりたくなかったという。フジ隊員の桜井浩子は「ウルトラQ」からの流れで、イデ隊員の二瓶正也は石川進降板による急遽の抜擢。彼も「ウルトラQ」に三度ゲスト出演していたところからの流れであり、東宝特撮映画の出演は少なかったのである。
66年の後半から67年前半は「ウルトラマン」に終始したようで、映画への出演はない。
67年7月に公開されたのが「長編怪獣映画ウルトラマン」で、これはテレビ版の再編集なので、必然的に黒部が主演ということになる。当時はカラーテレビの普及率が低かったこともあり「カラーでウルトラマンを見よう」と宣伝では煽っていた。
その同時上映は「キングコングの逆襲」で、主演は宝田明、浜美枝。他に天本英世、田島義文、堺左千夫などで、黒部は天本演じるドクター・フーの部下という役で登場。サービス的な出演かもしれないが、もう少しいい役でもと思ってしまう。浜美枝の役名はマダム・ピラニアだ。
黒部進の出演映画 その2
前回に続いて黒部進である。
65年は記録によると全部で5本に出演している。東宝所属なので全て東宝(東京映画含む)の作品である。
まずは「勇者のみ」。これは日米合作の戦争映画で、監督と主演をフランク・シナトラが務めている。シナトラと言えば歌手のイメージが強いが俳優としても多くの作品に出演している。監督を務めるのは本作が初である。特撮部分の監督は円谷英二だ。
ストーリーは太平洋戦争の末期、ある孤島に米軍の輸送機が不時着。そこには戦況から見放された日本軍人数名がおり、両軍が島で唯一の井戸を巡って対立する。次第に友情が芽生えていくのだが、そこに米軍の艦艇が応援に現れる。降伏するように説得するも日本軍は祖国に殉ずることを告げ、両者は戦火を交えることになる、といったもの。
シナトラが演じるのはマローニという衛生下士官で、負傷した日本兵の治療も快く行う。大尉役のクリント・ウォーカーは西部劇ドラマ「シャイアン」の主演で知られる。軍曹役のブラッド・デクスターは「荒野の七人」で、その一人であるハリーを演じた。日本側は上官の黒木中尉に三橋達也、田村軍曹に加藤武で、他に勝呂誉、佐原健二、谷村昌彦、太宰久雄、春風亭柳朝、そして黒部進などといったメンツである。
「太平洋奇跡の作戦キスカ」は東宝男優陣総出演といった感じの戦争映画で女性は登場しない。三船敏郎の海軍少将を筆頭に、志村喬、藤田進、西村晃、田崎潤、中丸忠雄、平田昭彦、土屋嘉男、久保明、船戸順、児玉清、佐藤允、山村聰といった豪華メンバーで、黒部は水兵の役。二瓶正也や阿知波信介も水兵役である。本作も特技監督は円谷英二だ。
「けものみち」は松本清張原作のサスペンス。主演は池内淳子で、彼女は新東宝倒産後は東京映画の所属となっていた。
他に池部良、小林桂樹、小沢栄太郎、伊藤雄之助、大塚道子、森塚敏、千田是也、中丸忠雄、土屋嘉男などで、黒部は黒谷という得体のしれない男を演じた。小沢栄太郎の用心棒で、小林桂樹や主役の池内まで手に掛けるのである。ちなみに、82年のNHKドラマ版は名取裕子の主演で、山崎努、伊東四朗、西村晃、加賀まりこなどが出演。黒部の役は林ゆたかが演じている。
「国際秘密警察 鍵の鍵」は三橋達也主演のシリーズ第4作。黒部は「虎の牙」に次いでシリーズ2度目の登場。ここでは蔡というギャングのボスを演じる。ただの敵役ではなく三橋演じる主人公と共闘したりする。他の出演者は浜美枝、若林映子、中丸忠雄、堺左千夫、天本英世などで、安岡力也がチョイ役で顔を出している。このシリーズは何故か毎回監督が変わっており、本作は谷口千吉が担当。三船敏郎や黒部を東宝に導いた山本嘉次郎監督の弟子にあたる一人で、三船を最初に映画に起用したのは山本でも黒澤でもなく谷口である。
「100発100中」は宝田明主演のアクションコメディ。他には浜美枝、有島一郎、平田昭彦、多々良純、堺左千夫などで、黒部は「サングラスの男」という役名ながらクレジット順は7番目。実は前述以外の出演者はほぼ大部屋役者ばかりで、ノンクレジットや二役の役者も多くいたりするのだ。堺の子分役の伊吹徹や当銀長太郎は東宝ニュータレント二期生で、黒部の一期先輩ということになる。次回に続く。
黒部進の出演映画
新年第1弾として何をやるか考えたが、結論から言えば昨年と同じスタイル。テレビイメージの強い役者の出演映画を辿って行くというもの。今回は自分が最初に触れたヒーローは何だったか考えたのだが、正直記憶が曖昧なので、ここは無難に「ウルトラマン」ということにした。というわけで、初代ウルトラマンと言えば黒部進である。
黒部進は39年生まれで、本名は吉本隆志。中大4年の時に家賃滞納からホームレス状態となり、靴磨きで生計を立てていた。そこに客としてやってきたのが東宝の山本嘉次郎監督。あの黒澤明、本多猪四郎、谷口千吉の師匠にあたる人物である。山本は黒部に東宝ニューフェイスの受験を勧め、62年に第3期オール東宝ニュータレントに見事に合格。同期には緑魔子がいた。
東宝ニューフェイスの名称は60年の15期まで用いられ、61年からオール東宝ニュータレントの名称が用いられるようになったのだが、後者出身でも東宝ニューフェイスと言われることが多い。ちなみに、そのニューフェイス15期には「ウルトラマン」のスーツアクターとなる古谷敏、イデ隊員役となる二瓶正也、ニュータレント1期にはフジ隊員役となる桜井浩子がいた。桜井は15歳での東宝入社であった。
映画初出演は63年の「六本木の夜 愛して愛して」で本名の吉本隆志名義であった。ちなみに主演は峰健二、後の峰岸徹である。峰岸はこの後、俳優座養成所に演技を学び、68年に大映から再デビューすることになる。
黒部の正式デビュー作とされているのは「暁の合唱」(63年)。ヒロインである星由里子の相手役で、ほぼ主役といえる大役であった。この際に出身地の富山県黒部市にちなんでプロデューサーの藤本真澄から黒部進の芸名を与えられている。他の共演者は宝田明、新珠三千代、山村聰など。この「暁の合唱」は3度目の映画で、41年の松竹版は木暮美千代、近衛敏明、佐分利信、川崎弘子など。55年の大映版は香川京子、根上淳、高松英郎、小沢栄太郎などである。本作で黒部は色々と失敗して信頼を失ったとしている。実際、次回作から藤本ではなく田中友幸や森田信プロデュース作品に回っている。
64年は「恐怖の時間」。これは黒澤映画「天国と地獄」での誘拐犯役で一気に知名度を上げた山崎努が主演。本作も「天国と地獄」と同じエド・マクベインが原作となっている。誤射により恋人を殺された男(山崎)が銃を持って刑事部屋に乱入。その刑事(加山雄三)は不在で、彼の帰りを待つ男と刑事たちとの密室劇だ。加山と同姓(山本)のベテラン刑事役に志村喬で、黒部は若手刑事の一人。係長役が「天国と地獄」で子供を間違って誘拐された運転手を演じた佐田豊で、彼にとって二番目にセリフのある役かもしれない。他に星由里子、土屋嘉男、富田仲次郎、田村奈己、小山田宗徳など。
「国際秘密警察 虎の牙」は三橋達也主演のスパイアクションで本作はシリーズ2作目。黒部は中丸忠雄演じる某国スパイの部下のような役。他に白川由美、水野久美、久保明、藤田進など。
「裸の重役」は森繫久彌主演のサラリーマンもの。星由里子、団令子、児玉清、有島一郎、加東大介、東野英治郎などが出演。黒部は梶本という役。未見で何とも言えないが、若手社員の一人ではないだろうか。
「三大怪獣 地球最大の決戦」。三大怪獣と言いながら、ゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラの四匹が登場する。敵役のキングギドラは含まないらしい。出演は夏木陽介、星由里子、若林映子、小泉博、ザ・ピーナッツ、佐原健二、平田昭彦、志村喬など。黒部にとっては初の東宝特撮出演だが、役柄は暗殺団の手下一というもの。伊藤久哉がそのボス役だ。64年は以上だ。デビュー作こそ次期スター候補の扱いだったが、以降は存在感のある若手と言った扱いになっている気がする。
2023年回顧録 その2
前回に続いて回顧録である。今回は俳優編だ。
元日に亡くなったのが長谷川哲夫(84)。個人的には「ザ・ガードマン」等に出てくる知的悪役のイメージなのだが、世間一般的には「七人の孫」とか「水戸黄門」の徳川綱吉役のイメージであろうか。13部~28部まで同役を演じている。その間に黄門様は東野英治郎→西村晃→佐野浅夫と変わっている。俳優座養成所10期生で、同期にはやはり知的悪役のイメージが強い西沢利明や中野誠也などがいる。
同じ一月には悪役として活躍した上野山功一(89)も。58年に日活に入社し、鈴木清順監督から「ワルに向いている」と言われて悪役の道に進んだという。65年に日活を離れ大映に移籍する。現代劇だけでなく時代劇の出演も多くなる。大映倒産後はテレビに活躍の場を移し、前述の「ザ・ガードマン」や「キイハンター」「プレイガール」といった人気アクションドラマ、時代劇でも前述の「水戸黄門」や「必殺シリーズ」等の人気番組に何度も登場する悪役として活躍。例外的に「イナズマンF」の荒井役や「超神ビビューン」のダイマ博士など正義側の人間として登場することもあった。
同じ89歳では扇千景。国会議員としてのイメージが強い人も多いかもしれないが、77年に参議院議員初当選するまでは女優であった。ちなみに「おうぎ」ではなく「おおぎ」と読む。54年に宝塚歌劇団に入団し、その年から東宝の時代劇映画へ出演している。ただ、メインヒロインになることはほとんどなかった。58年には映画で共演した二代目中村扇雀(現・四代目坂田藤十郎)と結婚している。60年代からはテレビが活動の中心となっていた。彼女の場合、映画やドラマより富士フィルム「シングル8」のCMでの「私にも写せます」が一番有名かもしれない。
まだ記憶に新しいであろう財津一郎も89歳であった。熊本では伝統のある進学校済々黌高校の出身。平仮名で書くと「せいせいこうこうこう」だ。くりいむしちゅーの二人もここの出身だ。55年に石井均一座に入り、62年から吉本興業へ。64年から吉本新喜劇に参加し、その際に芸名を財津一郎(それ以前は財津肇メ)としている。名付け親は当時の林社長で「吉本では大衆的な名前でなければいかん」という理由から。66年の「てなもんや三度笠」出演から全国的に名が知れるようになった。2011年を最後に活動を休止していたが、タケモトピアノのCMは2000年から同じものが流れ続けていた。そのCM契約が終了した翌月に亡くなったのである。
同じく89歳では勝部義夫。知る人ぞ知る東宝の脇役俳優だ。名前は知らないという人も多いかも。327本もの映画に出演しているが、ゴジラシリーズなど特撮ものの印象が強く、記者や通信担当の軍人の役が多かったりする。「ウルトラセブン」でも通信担当のウエノ隊員として十数回出演している。俳優は76年に引退しており、その後は地元の島根で「しまね映画祭」設立なぢに携わっていた。
ウルトラシリーズでは「帰ってきたウルトラマン」の団時朗(74)。資生堂「MG5」のCMで注目され、68年に映画出演した際の役名である団次郎を芸名とした(本名は村田秀雄)。71年に帰りマンの主役に抜擢されたが、前年の「江戸川乱歩シリーズ明智小五郎」では悪役の黄金仮面を演じていた。昭和のウルトラマン俳優としては初の物故者となっている。
「ウルトラマンタロウ」で最終の3話だけだが、新副隊長を演じたのが三谷昇(90)である。29歳の時、事故で片方の眼を失明したが、俳優活動を続けていた。オファーを受けた時は初めて子供にも言えるような役で嬉しかったと答えていた。
「ウルトラマンレオ」でMACの梶田隊員を演じたのが朝倉隆(71)。MAC隊員は途中で入れ替わったり全滅したりで印象に残っていない人も多いと思うが、梶田は17~40話まで登場している。
後は列記となってしまうが、中真千子(86)、津山登志子(69)、奈良岡朋子(93)、小桜京子(90)、市川段四郎(76)、鈴鹿景子(67)、鈴木瑞穂(96)、中庸助(93)、花ノ本寿(84)など。海外では「0011ナポレオンソロ」のイリヤ役であるディヴット・マッカラム(90)などが世を去っている。
ここに挙げた以外の方にも合掌。
本日は大晦日なので、必然的に2023年最後の更新である。来年も今年ぐらいのペースで更新できればいいなとは思っている。
2023年回顧録
年末なので、恒例の回顧録である。内容は今年亡くなった有名人を偲ぶというものだ(文中敬称略)。
全体の印象として、2023年はミュージシャンが大勢亡くなったイメージを持っている方も多いのではないだろうか。
まずは1月に、YMOのドラマーとして知られる高橋幸宏(70)が亡くなった。そして3月には同じくYMOのメンバーだった坂本龍一(71)も続いた。残された細野晴臣はわずか2カ月で唯一の生存者になってしまったのである。
また1月にはシーナ&ザ・ロケッツのリーダーだった鮎川誠(74)も。このグループはYMOとの関係が深く、鮎川がYMOのツアーにギタリストとして参加することもあった。
7月には、頭脳警察のボーカルであるPANTA(73)。21年に前述のシーナ&ザ・ロケッツとのジョイントコンサートが予定されていたが、自分の肺疾患のため公演を延期する。病状も安定したので、延期していた公演の開催が決定されたところ、今度は鮎川が病気療養のため入院。治療に専念してもらいたいと頭脳警察の単独ライブに変更した。しかし、鮎川は1月に亡くなり、PANTAもその二日後に容態が急変し緊急入院となり、公演自体を中止せざるを得なかった。
まだ記憶に新しいと思うが、10月8日に谷村新司(74)が還らぬ人になった。すると10月18日にもんたよしのり(72)、翌19日にBUCK-TICKのボーカル櫻井敦司(57)、29日のX-JAPANのベーシストHEATH(55)、11月9日に大橋純子(73)、26日にはミッシェル・ガン・エレファントのボーカルだったチバユウスケ(55)と相次いで亡くなっている。何故か70代前半と50代中盤に集中している。
大橋純子は北海道は夕張の出身。財政破綻で有名になった街だが、もう一人夕張出身のアーティストが1月に亡くなっている。双子のアイドルだったザ・リリーズの妹・燕真由美(62)である。大橋と年齢差はあるが、デビューはリリーズが1年遅いだけである(75年)。燕姓は全国で80件程度で、新潟の燕市にルーツがあるらしい。姉の奈緒美は結婚し、3人の子供を育てたらしいが(その後離婚)、真由美は生涯独身だった。
そして、ミュージシャンでもあり俳優でもあるクレージーキャッツの最後の生存者であった犬塚弘(94)も10月に亡くなっている。あまり報道されていなかった気がするのだが、自分がしらなかっただけだろうか。桜井センリが亡くなってから11年、最後のメンバーとして頑張っていたわけである。
声優界では、貴家堂子(87)、飯塚昭三(89)、北浜晴子(85)など。貴家は「サザエさん」のタラちゃん役で有名。69年の番組開始からサザエ役の加藤みどりと共に同役を演じ続けていた。2月2日には通常通り収録していたが、その3日後に急逝した。初見ではまず読めないと思われる名前で問い合わせも多かったことから、エンディングで「さすがたかこ」と読みがなが振られるようになったという。
アニメソング界では黒崎真音(35)。21年の配信ライブ中に倒れ緊急手術を受ける。22年には復活するが、この2月に持病の悪化により急逝した。19年には神田沙也加と音楽ユニットALICesを結成しているが、神田も21年に急逝している。
漫画家では松本零士(85)、寺沢武一(68)、土田よしこ(75)など。
例外的に実業界では東映社長の手塚治(62)。あの漫画の神様と言われた手塚治虫の本名と同じ名前だが、苗字はたまたまで、さんずいのある名前の家系であり漫画家の手塚治虫とは関係なく名付けられたそうだ。とは言え、手塚治虫を知らないはずはないだろうし、多少は意識して付けられたのではないだろうか。東映ではプロデューサーとして活躍し「スケバン刑事」「科捜研の女」などを手掛けた。20年に六代目の東映社長に就任したが、翌年から体調を崩し治療を受けながら業務をこなしていたという。そして、この2月に62歳で亡くなった。手塚治虫も60歳で亡くなっている。
次回はできれば年内に2023年に亡くなった俳優等について触れてみたい。
夏夕介の出演映画 その4
引き続き、夏夕介である。
75年の出演映画はまだある。東宝「花の高2トリオ 初恋時代」は「スター誕生」からデビューして人気となった「花の中三トリオ」こと森昌子、桜田淳子、山口百恵を主演としたアイドル映画。無論、いつまでも中三なわけもなく、当時は高2になっていた。森、山口はホリプロだが、桜田はサン・ミュージックということもあり東宝を加えた三社の提携作品となっている。ちなみに三人揃っての映画は本作だけである。夏はホリプロ映画には必ずといっていいほど出演しており、本作では三人に憧れられる役どころ。他の出演者はフランキー堺、南田洋子、藤田弓子、川口厚、黒部幸英(当時はクロベー)などである。
東映「爆発!暴走族」はタイトル通り暴走族の実態をセミドキュメンタリータッチで描いたもの。バイクチーム・クールスの副団長だった岩城滉一の写真を見て、その主演デビュー作として企画された。
しかし、素人役者で当然名が知られていないこともあり、トップクレジットは千葉真一を据え、予告編も千葉が主演であるかのように作られている。ちなみに千葉は岩城の恋人(藍とも子)の兄という設定。岩城は暴走族ブラックパンサーのリーダーで、メンバーの一人が町田政則で、夏夕介、松平純子が紅バラ会のメンバーを演じる。他に名が知れた役者は名和宏、初井言栄くらいで、暴走族メンバーを演じているのは応募で集まった本物やバイカーで、一回限りの映画出演も多かったようだ。当時の岡田茂東映社長は「新しい企画をまかせられるのは石井輝男しかいない」と石井を監督に抜擢したが、石井本人は暴走族に興味はなく、あまり気乗りしてなかったようだ。藍とも子は「プレイガールQ」にレギュラー出演が決まり、東映に衣装合わせに来ていたところ、たまたま石井が居合わせ、その場で決まっていなかった岩城の恋人役にスカウトされている。
76年はテレビの方で夏は「宇宙鉄人キョーダイン」の主役に佐々木剛と共に抜擢されている。夏の初主演作である「突撃!ヒューマン」の裏番組が「仮面ライダー」で、その2号を演じていた佐々木との共演である。1号の藤岡弘とも後に「特捜最前線」で共演することになるのは周知のことだろう。
また映画の方でも東宝「愛のきずな」という作品の主演に抜擢されている。これはサイパン島を舞台に被ばく二世の青年と米軍パイロットの父を持つハーフの娘との恋を通して戦争の傷痕を描いている重いテーマの作品である。そのヒロインを演じたのが野村パレーという(おそらく)ハーフの人で、出演作はこれ1作のようなので、詳細は不明である。他の出演者は峰岸徹、和田浩治、ケーシー高峰、伴淳三郎などである。
一方で「新・女囚さそり701号」で夏は、恋人(多岐川裕美)を裏切って嘘の証言をして、彼女を刑務所送りにした卑劣な男を演じたりしている。その黒幕を演じたのが中谷一郎で、悪役イメージの薄い二人が悪役を演じているという作品である。