くノ一忍法
特に書くネタもないので、大木実の出演作を調べてみたところ「くノ一忍法」(64年)が目に留まった。やはり原作は山田風太郎で、近年でも「くノ一忍法帖」といえば、Vシネマあたりで吹き出してしまうようなエロ忍法合戦を繰り広げたりしている。本作は一般映画だし、脱ぐような女優陣でもないし、特にセクシーなシーンもないようだ。
しかし、山田風太郎といえばやはり忍者同士の戦い。本作も五人の女忍者と五人の伊賀忍者が戦いを繰り広げるといった内容だ。横山光輝の「伊賀の影丸」とかが好きだった自分には、面白そうだと思わせるシチュエーションである。
その五人のくノ一に扮するのが、芳村真理、中原早苗、三島ゆり子、金子勝美、葵三津子といった面々で、対する伊賀忍者は大木実、待田京介、吉田義夫、山城新伍、小沢昭一となっている。くノ一は前述のとおり、あまりセクシーさを感じないメンバー(金子と葵は顔がよくわからんが)で、芳村は司会者のイメージだし、中原はおばさんっぽいし、三島は「なりませぬ」の人である。伊賀忍者では、やはり小沢昭一に注目してしまう。元気に動く小沢をあまり見た記憶がない。本作でも最初に死ぬ役柄だ。吉田義夫は当時、敵忍者といえば必ずといっていいほど含まれていた。既に53歳であったが、全然元気である。ちなみに小沢は35歳で全然若く、大木実(当時41歳)よりも若かったのである。その大木は前年に松竹から東映に移籍しており、生粋の東映スターである山城を差し置いて(すでに助演も多かったのだが)、唯一生き残る役である。他にも野川由美子(千姫)、品川隆二(服部半蔵)、露口茂(坂崎出羽守)といった結構豪華なメンバーが出演している。
大木や小沢はまだ健在だが、大木は数年前に見たときさすがに老けたなあと思ったが、小沢は70代になってもあまりイメージが変わっていないと思う。そう思うのは私だけではあるまい。
禁男の砂シリーズ
第二弾はそのまんま「続禁男の砂」(58年)。続といっても前作ととくに関係は無い。ヒロインの海女(泉)は前作のラストで死んじゃっているし。大木実、泉京子、諸角啓二郎、坂本武と前作とほぼ出演者が同じで、泉扮する海女が登場するという点で続なのであろう。
第三弾は「続々禁男の砂 赤いパンツ」(59年)という、タイトルだけで思わず苦笑してしまう作品。成人向け映画か「パンツの穴」のようなコメディ作品かと思ってしまうが、もちろん違うようである。当時の人はどう受け取ったのだろうか。大木、泉コンビの他は、北竜二、須賀不二夫、小山明子、渡辺文雄、左卜全などが出演している。ちなみに赤いパンツとは小山明子がはいていた赤いショートパンツのことらしい。まあ現代的な使われ方とでも言おうか(昔パンツといえばほぼ下着を意味したものだけれども)。
そして第四弾でラストとなるのが「禁男の砂 真夏の情事」(60年)という安易なタイトル(当時は知らんが)の作品だが、本作は今までの大木・泉コンビではなく、大島渚夫人こと小山明子が主演となっている。しかしそれでは「禁男の砂」ではないと思ってか大木・泉コンビも出演はしている。小山明子、瞳麗子、姫ゆり子、九条映子らは海女ではなくシンクロナイズド・スイミングの選手という設定である。しかしシンクロって新しいスポーツのイメージがあったのだが、この頃すでにあったのですな(日本にいつ入ったかは知らないが30年代には存在していたようだ)。他の出演者は第一弾にも出ていた石浜朗に加え、竹田公彦、松崎慎二郎などが出演している。ちなみに本作は解説によるとスリラー・コメディとなっており、シリーズも四年の間にどんどん俗っぽくなっていったようだ。
社長と女秘書 全国民謡歌合戦
歌合戦というだけあって、島倉千代子や小唄勝太郎など本物の歌手も多数出演しているが、その中に「東芝三人娘」というのがある。60年代で東芝三人娘というと黛ジュン、奥村チヨ、小川知子を指すことが多いようだが、三人ともデビューは64年以降(小川知子は子役としてデビューしていたが、東芝からの歌手デビューは68年)なので、おそらく別の三人ではないかと思われる。ひょっとしたら、そいうい名のグループで、個々の名前を聞いてもわからないのかもしれない。あと高城丈二の名があるが、元々は歌手なので歌手としての出演かもしれない。高城丈二が人気を得たのは丁度この63年、ドラマ「孤独の賭け」からなので、人気が出る直前の出演だったとおもわれる。
お笑い関係ではコロムビア・トップや由利徹の名がある。由利徹といえば、当時は脱線トリオだが、64年八波むと志が事故死した後に脱線トリオに加入したのは佐山であった。それ以前に佐山と八波は「あらいやだコンビ」というコンビを組んでいたことがあり、それで佐山が加入することになったのだろう。「あらいやだコンビ」については今回初めて知った次第である。
海女の怪真珠
その一方で一般向け映画も制作していたが、やはりその作風は新東宝っぽいものであった。「海女の怪真珠」(63年)は、そんな大蔵映画の一作だが、主演はかつての赤胴鈴之助役者である梅若正二。鈴之助のヒットで増長し、しまいには干されてしまったという逸話をもつ梅若が何故か大蔵映画に登場。新東宝作品は「殺されるのは御免だ」くらいにしか出ていなかったと思うが、梅若はこの年「社 長と女秘書 全国民謡歌合戦」「怪談異人幽霊」などにも出演し、大蔵映画のある意味看板として活躍した(この年だけのようだが)。共演の泉京子は「海女女優」といわれていた人だが、新東宝ではなく松竹で活躍していた人である。「禁男の砂」というシリーズで海女を演じていたようだが、松竹にもそんな怪しげなシリーズがあったとは意外である。
他には新東宝で活躍していた扇町京子、大原譲二など。扇町も大原も前述に作品すべてに出演している。特に扇町京子は「肉体の市場」にも出演しており、この後もピンク映画方面で活躍したようである。
太平洋戦争と姫ゆり部隊
主演は南原宏治で、当時はすでに悪役にシフトしていたはずだが、元は二枚目路線、本作でも普通にいい人のようだ。その相手役となるのが宝塚出身の上月佐知子で、この二人はこの共演がきっかけとなり結婚することになる(後に離婚)。ところで南原は東映ニューフェース1期の南原伸二としてデビューしたと思っていたのだが、それより前に大映ニューフェース6期で船上爽の名でデビューしていたという。全然知らなかった。
他には山村聡、安部徹、柳永二郎、伊豆肇、長谷川待子、歌手の仲宗根美樹など新東宝路線ではなかった人たちが出演。もちろん松本朝夫、林寛、そして嵐寛寿郎という新東宝でお馴染みの顔ぶれも出ている。
ところで70ミリ映画というのは日本では大映の「釈迦」と「秦・始皇帝」、そして本作の三本しかないという。ある意味貴重な作品なのである。そのせいか知らないが、本作はDVDもちゃんと発売されている。日本では定着しなかったこともあり70ミリといってもピンとこない(もちろん私も)。海外でいえば「ベン・ハー」とか「ウエストサイド物語」とか60年前後の大作に多かったりするようだ。まあ劇場の大画面でみないとあまり意味はないようだけれども。
大宝の配給作品
「飼育」(61年)。流れから新東宝っぽい作品ばかりと思いきや、これは監督が大島渚である。出演者も三國連太郎、沢村貞子、戸浦六宏、小松方正、浜村純、そして奥方となる小山明子といった大島映画っぽいメンバーの中に何故か三原葉子が紛れている。
「黒い傷あとのブルース」(61年)。主演は牧真史という人だが、日活ニューフェースの1期生だった牧真介と同一人物と思われるがはっきりしない。牧真介は記録では59年で引退したことになっているが、復帰していても不思議はないだろう。他の出演者には島崎雪子、龍崎一郎、清水元、南道郎といった渋いメンバーが並んでいる。
「黒と赤の花びら」(62年)。これは出演者が天知茂、三原葉子、丹波哲郎、松浦浪路、細川俊夫、沖竜次といった新東宝メンバーが並んでいる。ヒロイン役は新東宝系ではない上月左知子。松浦浪路は本作で引退したらしい。前項の「狂熱の果て」と「黒い傷あとのブルース」と本作は佐川プロの制作となっているが、佐川とは石井輝男作品でプロデューサーを務めた佐川滉のことである。
「大吉ぼんのう鏡」(62年)。寺内大吉の原作でシナリオ文芸協会が制作となっている作品。出演は龍崎一郎、筑波久子、川喜多雄二、炎加世子、そして松原緑郎など。
以上が大宝が存在した3ヶ月の間に公開された作品だが、業務停止後に「波止場で悪魔が笑う時」(62年)という作品が公開されており、これも大宝の作品らしい。これの主演は先ほどの牧真史で、泉京子、筑紫あけみ、そしてコロムビアトップ・ライトなどが出演していたようだ。しかし、マキシンジというと、どうしても牧伸二の方を思い浮かべてしまう。この頃すでにデビューしており、翌63年頃から人気を得たようである。役者の牧真史は本作で姿を消したようである。
いずれもソフト化などされていないのではと思いきや「飼育」はDVD化されているようだ。さすがは大島渚である。しかし、これらの作品は新東宝作品と同様に国際放映が管理しているのだろうか。
狂熱の果て
これは当時話題になっていた六本木野獣会をモデルにした作品らしい。本物の野獣会は田辺靖雄、大原麗子、加賀まりこ、峰岸徹、井上順などが有名だが、本作にはそのメンバーで原作者でもある秋本まさみという人が出演している(本人役ではないらしい)。主演は前項と同じ、星輝美と松原緑郎に松浦浪路、鳴門洋二の新東宝勢に加えて、当時はまだ歌手という感じだった藤木孝が出演し、無軌道な若者を演じている。彼らに轢き殺される婆さんにはお馴染みの五月藤江が、他にも「七人の刑事」の堀雄二や、「三人ひろし」の一人である井上ひろしなども出演している。
鳴門洋二はこの時点で、唯一新東宝の契約俳優として居残っていた役者である。潰れた会社に残ってどうするつもりだったのかは知らないが、これを最後にテレビ界の方に移り、以前取り上げた「鉄道公安36号」で6年間レギュラーを務めている。個人的には、その顔のイメージが浮かんでこないのだが、若い頃の写真を見ると東山紀之に似ていたりするのである。あくまでも個人的な主観だけれども。
俺が裁くんだ
ちなみに殿山は刑事役、細川は松原の兄役、そして天知は相変わらず?殺し屋の役である。他にも、「マグマ大使」の木田記者役で知られる黒丸良、「スペクトルマン」の加賀チーフ役や「無用ノ介」など時代劇の殺陣師も勤める渡辺高光、そして「恐怖のミイラ」で刑事役を演じた川部修詩なども出演している。
松原緑郎は天知を向こうに主役を張ったぐらいだから期待されていた役者であったことは間違いない。ラストはその天知との対決である。
恐怖のミイラ
個人的には、子供の頃には一度も見たことがなく、存在自体「テレビ探偵団」か何かで知ったような気がする。大人になった今見ても、どうってことはないのだが、当時見ていたらそれはもう怖かったろうなあと感じる。映画でやれば、90分で終わってしまう内容を無理矢理1クールでやったという感じがしないでもない。
番組スタートは61年7月で、ちょうど新東宝倒産の時期に重なっており、その影響で新東宝の俳優が多く出演している。制作は「月光仮面」「隠密剣士」「怪傑ハリマオ」でお馴染みの宣弘社で、本作は「ハリマオ」の後番組にあたるのだが、その作風といい新東宝が制作したのかと思ってしまう。
主演の松原緑郎は新東宝末期のスター的存在で、彼が主演の作品も何本か撮られている。その後、松原光二と名を改め主にテレビで活躍した。「特別機動捜査隊」の刑事役や「プレイガール」や「大江戸捜査網」などに何度かゲスト出演したり70年代半ばまでは活動していたようだ。数年前、不法就労者斡旋の罪で逮捕されたとの情報もあるが、本当かどうかは不明だ。で、ヒロインがシクレット・フェイスこと三条魔子で、その母親役が若杉嘉津子。若杉が「四谷怪談」でお岩さんを演じており、こういう番組にはピッタリかもしれない。その夫の博士が佐々木孝丸なのだが、ちょっと年が離れすぎでは。佐々木は19世紀(1898)年の生まれだし。
新東宝勢では、舟橋元や泉田洋志、ゲストで出てあっさり殺される三原葉子、そして川部修詩。川部は映画では脇役専門で目立った作品もないが、本作での刑事役はかなり目立っていた。新東宝以外では部長刑事役の高木二朗、そして宣弘社作品の顔でもある牧冬吉。二人とも年を重ねてからは、時代劇の悪徳商人の役などでよくお目にかかった。
肝心のミイラを演じたのはバブ・ストリックランドという人。2メートルの長身を買われて抜擢された在日米人だったという。つまり素人さんだったようだ。ユセフ・トルコやエンゼル・アルテンバイ(当時活躍していた外国人俳優)ではあの雰囲気は出せなかったかもしれない。
0線の女狼群
他の出演者は寺島達夫、大原譲二、国方伝、鳴戸洋二、松原緑郎、左路京子など顔はパッと思い浮かばないが、名前だけはよく見かけるメンバーが並んでいる。その中で目を惹くのが「シークレット・フェイス」なる人物。何者かと思って調べたら三条魔子のことだと、あっさり判明した。三条魔子は、フランス映画「女猫」の公開記念に行われた「ミス女猫コンテスト」で優勝して、新東宝に入社。そんな彼女を「シークレット・フェイス」としてデビューさせたのだが、別に顔を隠して出演させていたわけではないし、しかもデビュー作は「金語楼の海軍大将」。柳家金語楼の映画にそんな謎めいた名の女優を出演させてもしょうがないと思うのだが。結局、三本ほどで飽きたのか、意味が無い と思ったのか三条魔子名義で出演するようになり、この年だけでも十本以上の映画に出演している。
この三条魔子と松原緑郎は、翌年のテレビドラマ「恐怖のミイラ」で主演に抜擢されている。