恐怖のミイラ | お宝映画・番組私的見聞録

恐怖のミイラ

前項で名前が出たところで「恐怖のミイラ」(61年)について触れてみたい。何度か取り上げようと思ったこともあったのだが、これといったネタもないのでやめてしまったという記憶がある。幻のホラー的な作品であったが、近年CSで放映され、DVDも発売されている。
個人的には、子供の頃には一度も見たことがなく、存在自体「テレビ探偵団」か何かで知ったような気がする。大人になった今見ても、どうってことはないのだが、当時見ていたらそれはもう怖かったろうなあと感じる。映画でやれば、90分で終わってしまう内容を無理矢理1クールでやったという感じがしないでもない。
番組スタートは61年7月で、ちょうど新東宝倒産の時期に重なっており、その影響で新東宝の俳優が多く出演している。制作は「月光仮面」「隠密剣士」「怪傑ハリマオ」でお馴染みの宣弘社で、本作は「ハリマオ」の後番組にあたるのだが、その作風といい新東宝が制作したのかと思ってしまう。
主演の松原緑郎は新東宝末期のスター的存在で、彼が主演の作品も何本か撮られている。その後、松原光二と名を改め主にテレビで活躍した。「特別機動捜査隊」の刑事役や「プレイガール」や「大江戸捜査網」などに何度かゲスト出演したり70年代半ばまでは活動していたようだ。数年前、不法就労者斡旋の罪で逮捕されたとの情報もあるが、本当かどうかは不明だ。で、ヒロインがシクレット・フェイスこと三条魔子で、その母親役が若杉嘉津子。若杉が「四谷怪談」でお岩さんを演じており、こういう番組にはピッタリかもしれない。その夫の博士が佐々木孝丸なのだが、ちょっと年が離れすぎでは。佐々木は19世紀(1898)年の生まれだし。
新東宝勢では、舟橋元や泉田洋志、ゲストで出てあっさり殺される三原葉子、そして川部修詩。川部は映画では脇役専門で目立った作品もないが、本作での刑事役はかなり目立っていた。新東宝以外では部長刑事役の高木二朗、そして宣弘社作品の顔でもある牧冬吉。二人とも年を重ねてからは、時代劇の悪徳商人の役などでよくお目にかかった。
肝心のミイラを演じたのはバブ・ストリックランドという人。2メートルの長身を買われて抜擢された在日米人だったという。つまり素人さんだったようだ。ユセフ・トルコやエンゼル・アルテンバイ(当時活躍していた外国人俳優)ではあの雰囲気は出せなかったかもしれない。